### 幕間:境界を穿つ「ネットスーパー」と雪山の美食家たち
**序章:事の始まりは、ダ・ヴィンチちゃんの「ほんの小さな」寸法違い**
「いやあ、面目ない! ほんのちょっと、霊脈の波長計算をミリ単位で誤っちまってね! いやあ、ハハハハ!」
カルデア中央管制室。
万能の人、レオナルド・ダ・ヴィンチは、いつもの華やかな微笑みを浮かべながら、実に見事に額をかいていた。その足元には、真っ白な床を汚さんばかりに散らばった数々の破片――ではなく、巨大なモフモフした「何か」が、あからさまに不機嫌な唸り声を上げて鎮座している。
「ハハハ、ではないですよダ・ヴィンチちゃん! これ、どう見ても通常の召喚術式で呼べるようなサーヴァントじゃないですって!」
悲鳴のような声を上げたのは、ドクター・ロマニ・アキマンだ。モニタ越しに映し出される生体反応のデータを見て、顔色を蒼白にさせている。
そりゃそうだろう。何しろ、その「召喚された何か」から発せられる魔力量の凄まじさは、単体の神霊クラスをあっさりと凌駕していたのだから。
「グルゥゥゥゥ……。おい、ムコーダ。ここはどこだ? 妙に寒く、嫌な鉄の匂いのする場所だな。異世界か? まさか我をこのような薄暗い鉄の箱に閉じ込めようというわけではあるまいな?」
銀狼の神獣――フェンリルのフェルが、金色の瞳をぎらつかせながら低く唸る。その背の上からは、ぷにぷにと可愛らしく揺れる青い球体、スライムのスイが顔(?)を覗かせていた。
『あるじー? ここどこー? スイ、お腹すいたー!』
さらに、ムコーダの肩のあたりをパタパタと飛び回る小さな影。ピクシードラゴンのドラちゃんが、不満そうに尾を揺らす。
『なんだよー、急に眩しくなったと思ったら変な部屋か? なあムコーダ、肉は? 肉の時間はまだか?』
「いやいやいや! お前ら落ち着け! 暴れるなよ!? 絶対暴れるなよ!? ここ、床が金属だし、なんかすげえヤバそうな精密機械がいっぱいあるから!! 弁償とか無理だからね!?」
その中心で、頭を抱えて悲鳴を上げている男――それが、異世界帰りの平凡なサラリーマン(のはずだった)、ムコーダこと向田剛志であった。
状況はこうだ。
いつものようにフェルたちのご飯を作り、さて食後のコーヒーでも飲もうかとした瞬間、空間が唐突に歪んだ。気がついた時には、この見知らぬ「真っ白で寒そうな施設」の真っ只中に立っていたのである。
「す、警備班! サーヴァント各位に緊急招集を――!」
ロマニが慌てて通信ボタンを押そうとした瞬間、バチバチと火花を散らしながら、管制室の重厚な扉がスライドして開いた。
飛び込んできたのは、カルデアのマスターである藤丸立香と、そのデミ・サーヴァントであるマシュ・キリエライト。そして、気配を察知して急行してきた数人のサーヴァントたちだった。
「ドクター! 大規模な霊気障害を感知しました! 敵襲ですか!?」
「マスター、お下がりください! 異様な圧迫感……この巨大な狼のような存在、タダものではありません!」
マシュが大きな盾(ロード・カルデアス)を構え、フェルとの間に割り込む。
フェルは面倒くさそうに片目を細め、鼻を鳴らした。
「ぬ……人間どもか。我に向かって武器を向けるとは、いい度胸だ。ムコーダ、こいつらを滅ぼしても構わんか?」
「構うに決まってんだろーーーーー!! やめろフェル! 頼むからその口を閉じてくれ!!」
一触即発。いや、フェルが息をひと吹きすれば、カルデアの防衛システムごと全滅しかねない絶望的な緊張感が室内を支配した。
(やばい、やばいやばいやばい! この女の子(マシュ)もなんかごつい盾持ってるし、後ろにいる赤い弓兵(エミヤ)とか、黒い鎧の騎士(アルトリア・オルタ)とか、目が完全に『やる気』じゃん! ここでフェルが爪を出したら、一瞬で大戦争だ!!)
パニックに陥ったムコーダの脳裏に、サラリーマン時代に叩き込まれた悲しき習性が閃いた。
――営業の基本。手ぶらで謝罪に行く奴はない。まずは菓子折りだ。人間、美味いものを食わされている間に怒る奴はそうそういない!
「あ、あの! 違います! 俺たち、別に怪しいもんじゃありません! ほら、これ! これあげるから! 落ち着いて!!」
ムコーダは半狂乱になりながら、スキル『ネットスーパー』を開き、あらかじめ『アイテムボックス』にストックしてあった「とある名物」を素早く取り出した。
「これでも食って、ちょっと心を落ち着けてくださいッ!!」
勢い任せに突き出されたのは、丁寧に紙袋へ包まれた、こんがりと黄金色に焼き上がった大きなパンであった。
**第一章:伝説のパンと、カルデア腹ペコ騎士団**
「……パン、ですか?」
マシュが盾を半分下ろし、首をかしげる。
ムコーダが差し出したのは、茨城県境町の道の駅で爆発的な人気を誇る――**『道の駅さかいの究極のメロンパン』**であった。
ふわりと広がる、香ばしいバターの豊かな香り。
外側のクッキー生地から漂う、アーモンドプードルと極上メロン果汁の上品な甘い芳香。それが管制室の冷やりとした空気に乗って、一瞬にして部屋中に充満した。
「くっ……! なんという甘美な香り……! だが惑わされるなマスター、これは敵の精神攻撃(メンタル・ポイズン)の可能性が……」
マシュがそう言いかけた時、マスターである立香の喉が「ぐぅぅ……」と盛大な音を立てた。
「マシュ……私、わかるよ。このパンは、悪人の作るパンじゃない……!」
「マスター!?」
立香は吸い寄せられるように一歩踏み出し、ムコーダの手から慎重に紙袋を受け取った。
カリッとした表面の感触。ずっしりとした重み。
一口、かじる。
**サクッ――……。**
極上の音が管制室に響いた。
直後、立香の瞳がカッと見開かれた。
「――っ!??!?!」
「マスター!? 大丈夫ですか、マスター!?」
「な……なにこれ……!? 外は信じられないくらいカリッカリなのに、中は羽毛ふとんみたいにフワッフワ……! しかも、この中に詰まってるクリーム……! メロンの果肉そのものを煮詰めたみたいな濃密さなのに、後味が信じられないくらい爽やか……! んんんん〜〜〜っ美味ぁぁぁぁい!!!!」
立香がその場に崩れ落ち、頬を染めて悶絶する。
「えっ、そんな……マスターがそこまで!? 誇張表現では……むぐっ!?」
見かねたマシュが一口もらい、次の瞬間――マシュの目が完璧に飛んだ。
「ん、ふぁ……ッ!? なん……なんですかこの幸福感は……! 濃厚なバターのコクが脳を揺さぶります……! カルデアの非常食(カロリーメイト)とは比べものにならない、圧倒的な『生命の喜び』が……ッ!」
「な、なんだと……!?」
後ろで警戒していたサーヴァントたちに激震が走った。
特に、青い服の槍兵(クーフーリン)と、黒いドレスの騎士王(アルトリア・オルタ)の目の色がガラリと変わる。
「おいおい……あのガキ共のリアクション、仕込みじゃねえぞ。おい兄ちゃん、そのパン、まだあんのか?」
「……見過ごせませんね。その香ばしき小麦と果実の調和。カルデアの食堂の糧食を預かる者として、検分(試食)の必要があります」
「あ、いや、アイテムボックスにはまだ何個か……」
ムコーダが引きつった笑顔で追加のメロンパン(プレーン、プレミアムメロンクリーム入り)を取り出した瞬間であった。
「待て! 私が先だ! 王としての特権を行使する!」
「ふざけんな腹ペコ王! 食い物に関しては平等だろうが!」
「我にも寄越すのだ! 菓子などという生ぬるいもので我の腹を満たせると思うな……だが、その香りは不問にしてやらんこともない!」(※いつの間にか入ってきたギルガメッシュ)
「わあああ! やめろ! 押すな! フェル、スイ、ドラちゃん、助けて!!」
『む? なんだ人間ども、ムコーダのパンが欲しいのか? 無理もない、それは美味いからな。だがムコーダ、我の分の肉はどうなった?』
『スイもねー、あまいパンすきー! ぽんぽんすいたー!』
管制室は一瞬にして、極上のメロンパンを巡るサーヴァントたちの泥沼の争奪戦へと変貌を遂げたのである。
**第二章:ドクター・ロマニの極秘面談と「10年分の証」**
「いやあ……一時はどうなるかと思ったよ……」
一騒動が収まり(ダ・ヴィンチちゃんが「試食用」と称して半分以上を懐に押し込み、アルトリア・オルタとクーフーリンが最後の1個をかけたじゃんけんで真剣勝負をした後)、ムコーダ一行はドクター・ロマニの執務室へと通されていた。
フェルは部屋の隅で、ムコーダが慌ててネットスーパーで購入した「特選オーク肉のステーキ(※黒毛和牛A5ランクで代用)」をガツガツと平らげている。スイはジュースの空き瓶をポヨンポヨンと跳ねさせながら満足そうに漂い、ドラちゃんは肉の骨を齧っていた。
「改めて自己紹介しよう。僕はロマン……ドクター・ロマニ・アキマンだ。カルデアの医療トップ兼、まあ……今の現場責任者みたいなものさ」
ロマニは疲れ切った顔で温かい紅茶(ネットスーパーで買った高級紅茶葉)を啜りながら、ムコーダをまじまじと見つめた。
「君の置かれている状況は理解したよ。異世界召喚……しかも『ネットスーパー』という独特すぎる固有結界……いや、魔術回路の結実かい? 現代日本の商品をどこからでも取り寄せられるなんて、ある意味で概念伝承レベルの奇跡だよ」
「はぁ……まあ、俺にとってはただの買い出しスキルなんですけどね……。それでドクター、俺たちは元の世界(異世界)に戻れるんでしょうか?」
「それについてはダ・ヴィンチちゃんが今、理論を再構築している。君たちが巻き込まれた空間歪曲は一時的なものだ。数日……いや、遅くとも今週末には元の世界へ送り返せるはずだよ」
「本当ですか!? よかった~……!」
ムコーダは心底胸を撫で下ろした。だが、ロマニの表情はどこか真剣であり、同時に――どことなく「すまなさそう」な、奇妙な遠慮が混ざっていた。
「……でね、ムコーダ君。ここからが本題なんだ」
ロマニはスッと姿勢を正し、両手を机の上で組んだ。
「君も見た通り、うちのサーヴァントたちは……まあ、エネルギー消費が激しくてね。特に最近は人理修復の連戦で、みんな心身ともに疲弊している。特に『食生活』に関しては、カルデアの自動調理プラントの味にみんな飽き飽きしていて、食堂のスタッフ(エミヤやブーディカ)も連日の大量調理で限界気味なんだ」
「はぁ、大変なんですね……」
「そこでだ! 来るべき次の特異点修復に向けて、今週末、カルデアでは士気向上のための**『夏の大納会(決起集会)』**を開催する予定なんだよ!」
「はあ。夏のお祭り、ですか」
「そう! 本来なら自動プラントの特別メニューで濁すつもりだったんだが……君のあの『メロンパン』と、今その巨大な狼さんが食べている『見たこともない極上肉』を見てしまってはね……。サーヴァントたちが黙っていない」
ロマニはガバッと身を乗り出し、ムコーダの手を固く握りしめた!
「お願いだムコーダ君! カルデア夏の納会――**サーヴァント数百人分の大宴会料理を、君の『ネットスーパー』と料理スキルで仕切ってくれないだろうか!?**」
「はいぇええええっ!?!??!」
ムコーダはひっくり返りそうになった。
「む、無理ですよドクター! 数百人分!? 相手は英雄とか神様とかでしょ!? 俺はただの元サラリーマンですよ!? 普段はフェルたち3頭+αのメシを作るので手一杯なんですって!」
「もちろん、タダでとは言わない! 報酬は君が元の世界で役に立つ魔術結晶や金貨、あるいはダ・ヴィンチ特製の万能素材を用意する! それに、君の『ネットスーパー』の仕入れにかかる費用(お金)だって……!」
「いやいや、お金の問題じゃなくて量とスケールが――」
断ろうとしたムコーダの頭の中に、不意に**「ある記憶」**が電撃のように蘇った。
(待てよ……? ネットスーパーの画面……あそこには確か……)
ムコーダは異世界に飛ばされる直前、現実世界で「ある爆買い」をしていた。
それは、近所に新規オープンした大型会員制倉庫型スーパー――**『コストコ(Costco)』のオンライン提携コーナー**の解放手続きだった。
異世界に旅立つ前、キャンペーンで「年会費10年分一括払い(※永久プレミアム会員)」のボタンを勢いでポチッてしまい、口座から恐ろしい金額が引き落とされた時の血の気が引く感覚。
そして異世界へ行ってからも、その膨大な「業務用バルクサイズ」の食材ラインナップは、あまりの量の多さにフェルたちへの普段の食事でも持て余し気味で、ほとんど手をつけていなかったのだ!
(コストココーナー……! 1ポンド超えの巨大ステーキ肉のマルチパック! ディナーロール数千個単位のカートン! 巨大なプライムリブの塊! 業務用のピザ! 巨大なサーモンのフィレ!! あの『悪魔の業務用量力』なら……カルデアのバケモノどもの胃袋を満たせる……!?)
「……ムコーダ君? どうしたんだい、急に遠い目をして……?」
「ドクター」
ムコーダの目が、諦めと覚悟、そして悲しきサラリーマンの習性によって静かに澄み渡った。
「買い出しの予算(コイン)……それと、調理のアシスタントを何人か出してもらえるなら……引き受けます」
「本当かい!? 助かったー! 神様、仏様、ムコーダ様だー!!」
ロマニが涙目で歓喜の声を上げる。
だが、ムコーダの心の中の葛藤はここからが本番だった。
**第三章:決戦の地は「コストコ」――準備編と不穏な予感**
「というわけでだ、フェル、スイ、ドラちゃん。数日間の滞在の間、ここで宴会用のメシを作ることになった」
『ぬ……宴会だと? ほう、つまり我もその『えんかい』とやらの肉を存分に喰らって良いのだな?』
『スイもー! おいしいものいっぱい食べたいー!』
『ヒッホー! 俺も肉! ガッツリ焼き肉な!』
「お前らはいつも食ってるだろ……。だがまあ、今回はスケールが違う。相手は英霊だからな」
ムコーダは自室として与えられた部屋で、空中におどろおどろしく浮かび上がる『ネットスーパー』のホログラム画面を操作した。
カテゴリ選択――【法人・業務用/コストコ提携決済】。
**ピコン!**
画面一面に躍り出る、過剰なまでにデカい肉、デカいパン、デカいピザの群れ。
* **US PORK スペアリブ(真空パック・約5kg×20セット)**
* **カークランドシグネチャー ビーフパティ(冷凍100枚入り×10箱)**
* **国産品さくらどり 若鶏モモ肉(2.5kgパック×30個)**
* **アトランティックサーモンハラミ(丸ごと刺身用フィレ×15本)**
* **プルコギベア(タレ漬け牛肉・2kgパック×20パック)**
「よし……これならいける。これならカルデアの怪獣ども……いや、サーヴァントたちの胃袋を物理的に粉砕できる……!」
ムコーダが一人で不敵な笑みを浮かべ(すでに感覚が麻痺していた)、大量のカート注文ボタンを連打していたその時。
コンコン、とドアがノックされた。
「ムコーダさん、入ってもよろしいでしょうか? 納会の厨房スタッフとして志願してくれたサーヴァントの方々をお連れしました」
立香の声だ。ムコーダが「どうぞ」と答えると、扉が開き、圧倒的な圧力を放つ「厨房のプロフェッショナルたち」が入ってきた。
「やあ、異世界の料理人殿。話は聞かされたよ。何でも『異世界の珍味と無限の食材』を用いて宴を催すのだとか。赤の弓兵――エミヤだ。よろしく頼む」
「ブリタニアの母、ブーディカよ! 大人数分の料理なら任せて! 剥きものは得意なんだから!」
「猫の給仕、タマモキャットだニャン! 料理とあらば黙っていられん! 毒見なら任せるのだ!」
一癖も二癖もあるサーヴァント料理人たちが勢揃いした。
エミヤはその鋭い眼光で、ムコーダが画面越しに注文している「コストコの食材リスト」を盗み見ると、眉をピクリと動かした。
「……ほう。この肉のカット、そしてタレの漬け込み具合……どれも素晴らしい歩留まり(ポーション)だ。これほどの食材をこの短時間で、これほどの量調達できるとは……君、ただの商人ではないな?」
「いや、ただのネット通販なんですけどね!?」
「まあいい。これだけの食材があるなら、メニューの組み立ては自由自在だ。よし、ムコーダ殿。厨房の指揮は君に執ってもらう。我々は君の指示に従おう」
エミヤが頼もしく腕を組む。
(よし……! エミヤさんたちが手伝ってくれるなら勝てる! 勝てるぞこの勝負!!)
ムコーダが胸を撫で下ろした――その時だった。
カルデア全域に、甲高い警告音が響き渡った。
『緊急警報! 緊急警報! シバの観測波形に異常発生! カルデア地下第5貯蔵庫付近に、突発的な『局所特異点(微小微小特異点)』の発生を確認!』
「な、なんだって!?」
モニタに飛び込んできたロマニの顔が蒼白になっている。
『マシュ、マスター! すぐに向かってくれ! 原因はわからないが……どうやら、ダ・ヴィンチちゃんの召喚エラーの余波で、カルデアのエネルギー線と……ムコーダ君の『ネットスーパーの空間歪曲』が変に干渉して、地下の食料庫が【怪獣たちの巣窟】に変貌しているらしい!!』
「食料庫が……怪獣の巣窟!?」
『それだけじゃない! 食料庫に保管されていた『納会用の最高級ワインと熟成肉』が、その特異点の核に取り込まれてしまった! あれを取り戻さないと、納会のメインディッシュが……!』
「……なんですって?」
静かに声を発したのは、後ろに控えていたエミヤ、そしていつの間にかドアの影から覗いていたアルトリア・オルタだった。
「私の……宴の肉が……そこに閉じ込められていると……?」
「……フッ、食堂を預かる者として、食材の危機を見過ごすわけにはいかないな」
フェルもまた、退屈そうにあくびをしながら立ち上がった。
『む……地下から美味そうな肉の匂いと、威勢のいい獲物の気配がするな。ムコーダ、狩りか? 狩りなら我も行くぞ。とびきりデカい奴を倒せば、今夜のメシはさらに豪華になるのだろう?』
『スイもいくー! びしゅびしゅってやっつけるー!』
「え、えぇぇぇぇーーーっ!? なんで俺まで地下に行かなきゃいけないの!?」
「当たり前でしょうムコーダさん! 食材の目利きと、現地での『ネットスーパー』によるサポートが必要です! さあ、地下特異点へ出撃です!」
立香に背中を押され、ムコーダはフェル、スイ、ドラちゃん、そしてカルデアが誇る腹ペコサーヴァント軍団と共に、薄暗い地下の階段へと連行されていくのだった――。
**「ちょっと待ってくれぇぇぇ! 俺はただの買い出し係なんだよぉぉぉ!!」**
### 後半:地下の怪物は一瞬で肉になり、そして伝説のBBQ宴が幕を開ける
**第四章:瞬殺の地下特異点と、呆然とするカルデア**
「う、うわあああああ!! なんて数だ……! 食糧庫の魔力線と同化した『魔獣(バイコーン)』と『巨大イノシシ(ハングリーボア)』の群れ!!」
地下第5貯蔵庫。
扉を開けた瞬間に広がっていたのは、カルデアの地下施設とは思えない、鬱蒼とした不気味な空間と、血走った目で唸り声を上げる巨大な魔獣たちの群れだった。本来ならサーヴァントが数名がかりで宝具を展開し、陣形を組んで挑むべき難所である。
「マスター、お下がってください! 私が前面に――」
マシュが重厚な盾を構え、エミヤが双剣「幹将・莫耶」を握りしめた、その直後だった。
『ぬ……鬱陶しいな。我が鼻を突く下品な獣の臭いだ。おい、スイ、ドラ。サクッと片付けるぞ』
フェルが不機嫌そうに鼻を鳴らすと、前足をひょいと一歩踏み出した。
**ドォンッ!!!!!**
ただそれだけの動作で、地下空間の空気が破裂した。
フェルが纏う巨大な雷光と風の結界――『風神の加護』を伴う衝撃波が、一瞬で前方の空間を薙ぎ払う。
『ドラちゃん、右ねー! スイ、ひだりー!』
『おうよ! 焦げ肉にしてやるぜッ!』
スイがポヨンポヨンと凄まじい速度で跳ね回り、体内から強力な【酸弾】をマシンガンのごとく連射する。ドスドスドスッ!と命中した先から、巨大なハングリーボアたちが悲鳴を上げる暇もなくただの「綺麗な肉(ドロップアイテム)」へと変わっていく。
同時に、ピクシードラゴンのドラちゃんが超音速で飛翔し、手のひらから解き放たれた【火炎魔法】の爆炎がバイコーンの群れを丸焼きに変えていった。
「……は?」
マシュの盾が、力なくカタンと音を立てて床に落ちた。
エミヤは構えていた双剣をそのままフリーズさせ、アルトリア・オルタに至っては開きかけた宝具の真名(「約束された……」)を口の途中で飲み込んで固まっている。
わずか**3分**。
カルデアの警報を鳴らし、ドクター・ロマニを蒼白にさせた「局所特異点の怪物たち」は、跡形もなく駆逐され、その場には熟成された極上の魔獣肉と、無傷で回収された最高級ワインの樽だけが残されていた。
『ふむ、大した歯ごたえもなかったな。ムコーダ、この肉も後で焼いてくれよ?』
『スイ、いっぱい倒したよー! ムコーダ、ほめてー!』
『ヘッ、楽勝楽勝! なあムコーダ、約束の肉の宴、早くやろうぜ!』
「お、お前らなぁ……もうちょっと加減ってものを覚えろよ……。カルデアの人たちがドン引きしてるじゃないか……」
頭を抱えるムコーダの後ろで、藤丸立香がプルプルと震えながら言った。
「す……すごい……。グランドクラス(冠位)のサーヴァントでも連れてきたんですか……!?」
「いえ……彼の連れている従魔たちは、この世界の『神霊』や『幻獣』の領域を易々と超えています……。恐ろしい(そしてなんて頼もしい)一行です……」
こうして、地下の食材奪還作戦は呆気なく幕を閉じた。
そして、回収された熟成食材と、ムコーダの『ネットスーパー』が本領を発揮する――カルデア史上最大の「夏の納会バーベキュー」の火蓋が落とされたのである!
**第五章:火蓋は切られた! コストコ×ネットスーパー至高のBBQフルコース**
場所はカルデアの全天候型シミュレーションルーム。
ホログラムによって再現されたのは、爽やかな夏の風が吹き抜ける雲一つない大草原だ。特設された巨大な鉄板とバーベキューコンロの前には、エミヤ、ブーディカ、タマモキャット、そして主厨を務めるムコーダが、ネジの飛んだハチマキを締めて並んでいた。
「よし……行くぞみんな! 相手は腹を空かせた英霊たちだ! 手を抜いたらこっちが食われるぞ!」
『『オーッ!!』』
ムコーダは息を呑み、ネットスーパーのホログラム画面から次々と「悪魔のコストコ食材」を現実へと召喚していく。
**【一品目:USポークのシカゴ風スペアリブ】**
ムコーダがドサッと鉄板の上にぶちまけたのは、骨付きの巨大なUSポークスペアリブ(真空パック・数10kg分)だ。
「エミヤさん! これに特製のスパイス(パプリカパウダー、ガーリック、黒コショウ、ブラウンシュガー)を擦り込んで、まずは表面をカリッと焼き上げてください! その後、網の上でじっくり燻し焼きです!」
「任せろ! スパイスの浸透度、火の通り具合……すべて完璧に調整してみせる!」
エミヤの精密な魔術的火加減によって、スペアリブから脂が滴り落ち、炭火の上で**バチバチッ**と弾ける。表面に塗られた濃厚なシカゴスタイルのBBQソースが熱で焦げ、甘酸っぱくスモーキーな香りがシミュレーションルーム全体に爆発的に広がった。
「むぐっ……! なんだこの骨付き肉は……! 骨の周りの肉が、歯を立てた瞬間にホロリと崩れる……! 濃厚な甘辛ソースと、ジューシーな豚肉の脂が溢れ出して止まらん!」
真っ先に食らいついたアルトリア・オルタが、骨を両手で掴みながら目を見開いて叫ぶ。
**【二品目:KIRKLANDのパティで作るてりやきバーガー・ヨシダソースのかほり】**
続いてムコーダが取り出したのは、コストコの名物『KIRKLANDシグネチャー ビーフパティ』。100%牛肉の分厚い肉塊だ。
「次はこれだ! 鉄板でこの激厚パティを焼きつつ……味付けはこれ! アメリカ生まれの日本の味、**『ヨシダソース(グルメのたれ)』**だ!!」
トロリとしたヨシダソースが熱々のパティに絡みつき、醤油とニンニク、みりんの香ばしい「和風照り焼き」の香りが空気を支配する。それを軽く炙ったふんわりバンズに挟み、シャキシャキのレタスとマヨネーズをたっぷりと追いがけ!
「ぬおおおっ!? これは……なんだこの『パンと肉』の究極の合体兵器は!?」
ガツガツとバーガーを貪り食うのはクーフーリンだ。
「このタレ……醤油ベースなのに、奥行きのある甘みとコクがハンパねえ! パティから溢れる肉汁とマヨネーズが合わさって、脳みそが溶けそうだぜ!!」
**【三品目:さくらどりの北京ダック風チキンステーキ】**
「まだまだ行くぞ! ブーディカさん、この『さくらどりモモ肉』を皮目からバリバリに焼いてください!」
「任せて! 皮を極限までパリッと香ばしく、中はフワフワのジューシーに仕上げるわね!」
こんがりと黄金色に焼き上がったチキンステーキに、ムコーダ特製の甜面醤(テンメンジャン)ベースの甘辛ダレを塗り、細切りにしたネギとキュウリを添えて、薄いモチモチの生地(カオヤーピン)でくるりと包む。
「……ん!! ふむ……皮のパリパリとした食感と、噛んだ瞬間に弾ける鶏肉の旨味。そこに甘辛い味噌とネギの清涼感が完璧なハーモニーを奏でている……。まるで極上の北京ダックを、より豪快に食しているかのようだ!」
優雅に一口食べたシバの女王やギルガメッシュすらも、その完成度に唸りを上げた。
**【四品目:アトランティックサーモンの握り】**
肉の怒涛の攻撃の合間に、ムコーダは隠し玉を投入する。
コストコの怪物商品、一度も冷凍されていない『極上アトランティックサーモン』の丸ごとフィレだ。
「ここで口直しだ! 脂の乗ったサーモンを厚切りにして、酢飯に乗せた『サーモンの握り寿司』だ!」
トロリと脂の乗ったオレンジ色の身に、醤油をちょんとつけて口へ運ぶ。
「んんんんんっっっ!??!?」
マスターの立香が絶叫した。
「口に入れた瞬間、サーモンの脂がシャリと一緒にスッと消えた……!? 全く臭みがなくて、トロより甘い! 肉の後のこのさっぱり感、無限に食える……無限に食えてしまうよマシュ!!」
「はい、マスター! このサーモンの脂、あまりにも罪深いです……!」
**【五品目:プルコギベアとラクレットのフィリーチーズステーキサンド】**
宴が最高潮に達した時、ムコーダが繰り出した本気(マジ)の悪魔的メニュー。
コストコ名物『プルコギベア(甘辛タレ漬け牛肉)』を鉄板で豪快に炒め、炒めた玉ねぎと共にフランスパンへ挟み込む。そしてその上から――熱々にとろけた**『ラクレットチーズ』**を滝のようにドバドバと回しかける!
**ジュワァァァァァァ……ッ!!**
「な……なんという禍々しくも美しい食べ物なんだ……!」
ドクター・ロマニが鼻血を出しそうな顔でトロトロのチーズを見つめる。
「甘辛いプルコギの旨味! そこに絡みつく濃厚極まりないチーズのコク! カリッとしたパンの歯ごたえ! これぞ男の夢、カロリーの暴力、フィリーチーズステーキサンドだぁぁぁ!!」
「うーまーいーぞーーーーーっ!!」
管制室のドクターも、戦場で戦うサーヴァントたちも、全員がチーズと肉まみれになりながら歓喜の悲鳴を上げた。
『ぬ……ムコーダ、我の分がなくなっておるぞ! 早くあのチーズの乗った肉を寄越せ!』
『スイもー! とろとろのちーず、おいしいー!』
『俺にもおかわり! ムコーダ、もっと焼きまくれー!』
「はいはい! 今焼いてるから慌てるな!!」
**第六章:宴の締め括りと、明日への予感**
**【デザート:ハーフカットメロンクリームソーダ〜器のメロンも頂きます〜】**
熱気に包まれた大宴会の締め括り。
ムコーダが用意したのは、ネットスーパーで仕入れた最高級クラウンメロンを贅沢に真っ二つにカットした、特製スイーツだった。
種をくり抜いた果肉の凹みに、シュワシュワの炭酸サイダーとメロンシロップを注ぎ入れ、その上に巨大なバニラアイスクリームとチェリーをポンと乗せる。
「最後はこれだ! 『ハーフカットメロンクリームソーダ』! 炭酸ソーダを飲み干した後は、器になっているメロンの果肉をスプーンでガリガリ削って食べてくれ!」
「「「「神(ゴッド)!!!!」」」」
全員の歓声を背に、マシュがスプーンで贅沢にメロンの果肉をすくい取り、アイスと一緒に口へ運ぶ。
「ひんやりとして……シュワシュワで……メロンの甘みが口いっぱいに広が生きます……。あぁ、なんて幸せな夏の終わりなのでしょうか……」
冷たい甘酸っぱさが、肉とチーズで熱火した全員の胃袋を優しく癒やしていく。
カルデアの誰もが、日頃の重圧や戦いの恐怖を忘れ、子供のような笑顔でメロンを削っていた。
**終章:さらばカルデア、そして……**
宴が終わり、大満足のサーヴァントたちが去っていったシミュレーションルーム。
片付けを終えたムコーダのもとへ、ドクター・ロマニとダ・ヴィンチちゃんが歩み寄ってきた。
「いやあ、見事だったよムコーダ君! カルデアの士気は過去最高まで高まった! 君の『ネットスーパー』と料理の手腕には、心から感謝するよ」
「ダ・ヴィンチちゃんの次元修正計算も完了したよ! これでいつでも君たちを元の世界(異世界)へ送り返せる」
「本当ですか! ありがとうございます……! 正直、もう肉を焼く腕がノックアウト寸前でした……」
ムコーダが深々と息を吐き出す。
フェルは満腹になって腹を放り出して寝転がり、スイは丸くなってスースーと寝息を立てている。
「あ、そうだムコーダ君」
ロマニがふと思い出したように、一枚の『ゴールドカード』のようなものを手渡してきた。
「これは今回の報酬と、君の『ネットスーパー』の経費補填として……ダ・ヴィンチちゃんが用意した『カルデア特製・無限魔力決済タグ』だ。これを使えば、君の世界のネットスーパーの決済画面で、魔術エネルギーを電子マネーに自動変換して支払えるようになる」
「え……? えええっ!? つまり……実質『無料』で買い出しができるってことですか!?」
「まあ、うちの魔力炉の余剰分から引き落とされるからね。君がカルデアを救ってくれたお礼さ!」
ムコーダの目が輝いた。
(勝ち組だ……! これでコストコの高級牛肉も、ネットスーパーの最高級品も、一切自分の懐を痛めずにポチり放題……!!)
「よし、フェル! スイ! ドラちゃん! 帰るぞ! 異世界に戻ったら、この無料カードで肉の宴のやり直しだー!」
『む……? 無料の肉か。よくわからんが、美味い肉ならいくらでも付き合うぞ』
『スイ、もっともっと食べるー!』
『ヒッホー! 異世界に戻っても大食い祭りだな!』
光の粒子がムコーダたちを包み込み、ゆっくりと異世界へと送り返していく。
マスターの立香とマシュが、名残惜しそうに手を振った。
「ありがとうムコーダさん! またお腹が空いたら、ダ・ヴィンチちゃんの計算ミスを祈ってますねー!」
「絶対また来てくださいねー! メロンパン待ってますからー!」
「計算ミスを祈るなー! 二度とごめんだよーーーーっ!」
ムコーダの悲鳴と共に、光が弾け――カルデアに再び静寂が戻った。
後に残されたのは、完璧に片付けられたバーベキューコンロと、お腹を膨らませて幸せそうに眠るサーヴァントたちの姿。
そして、ダ・ヴィンチちゃんがニヤリと笑いながら呟いた一言だった。
「さて……『ネットスーパーの年会費10年分』のバックアップデータは取れたし……また宴会がしたくなったら、ちょっとだけ霊脈をバグらせちゃおうかな?」
カルデアの夏の狂乱は、こうして美味しく、そして賑やかに幕を閉じたのであった。
**(完)**