東方剣創記   作:スペイン

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 博麗神社を出て1時間ほど経っただろうか、人里の入口の門が見えてきた。

 霊夢に書いてもらった地図を見てみると、人里を超えたその先にある森、自分が先日の事件(慧音を助けた)の際に入っていった森の少し奥まった所が魔法の森のようだ。

 このまま魔法の森へと行くのもよいのだが、士郎は一つ気になる事・・・というよりも聞いておきたいことがあったので進む先を人里の中、知り合いの家の方へと向けた。

「(よくよく考えたら、私は勤務地を知らないままだ)」

 たどり着いたのは上白沢邸。

 実は士郎は3日後に勤務を開始する寺子屋の正確な位置を未だに覚えておらず、それを聞きに立ち寄ったという次第であった。

 いきなり家に上がっては失礼に当たると考え、呼び鈴を探すもその技術自体がまだ浸透していないのかそういったものは見当たらなかった。

 その代わり、なのだろうか、前回来た時には気にも留めなかったが玄関の横、スライド式の入口とはまた別に、取っ手のようなものがついていた。

 押し込もうとしても何やら固く壊してしまいそうなので一度引いてみる。すると小さくすーーーっと何かの音がした。

 その後、引いた取っ手を押して見ると甲高い音が鳴り響いた。

「はーい、今行く」

 家屋の中から慧音の声が聞こえて、こちらへと歩いてくる足音が続いて聞こえた。

 扉を開けた慧音は綺麗な笑顔のままに一瞬固まると、その表情のまま視線を下へと、つまりは慧音自身の衣服へと向けた。

 士郎も釣られるように彼女の服装へと目を向けてみる。

「見るなぁッ!」

「ぐあぁああぁああぁ目があぁああぁ!」

 刺突。

 それもダブル。

 それも眼球。

 士郎は唐突に自らの目を襲った痛みにのたうちまわった。

 チラリと士郎の視界に映ったのはなんの色気もない灰色のスウェ「思い出すなぁ!」

「ゴフゥッ!」

 正拳。

 それも鳩尾。

 それもジャストミート。

 ふと脳裏を過る某純情系乙女キャスターの元暗殺者の旦那様。

「し、士郎はそこで待っていてくれ!今着替えてくる!」

 そう言って玄関を勢いよく閉めて家の中へと走り戻っていく慧音。

 それだけ言って着替えに行くという選択肢は無かったのか・・・と胸の内で不満をいいながら、士郎は今も未だ、なおも痛む人体の急所を抑えた。

「な…なんでさ」

 久し振りに口にしたその言葉は、誰とも無く虚空に向けられる事になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「て、寺子屋の位置だって!?」

 あの後、慧音に家に上げてもらって一体何のようなのかと尋ねられた士郎は前置きもなにも無しにそう答えた。

 慧音はというと、士郎が自分を雇って欲しいと言ったあの日、住む場所を探しているとも言われていたがために変に緊張をしてしまった。

 もしかしたら気が変わって自分の家に…なんて淡い期待、期待にも似た不安を抱えていたからだ。

 そこに、先ほどの灰色事変(慧音命名)が緊張の炎にガソリンを投下したものだから何を言われるのかとドキドキしていたのだが…。

 聞かれたのは寺子屋の位置、それも、考えてみれば自分の伝達ミスときたものだから恥ずかしくて仕方がない。

 自分が希望していたこととは違った結果に落胆・・・にも似た安堵を覚えながらも人里の入口から寺子屋までの地図を士郎へと渡した。

 さりげなくそこに自分の家を書いたのには特に意味はないと慧音は自分に言い聞かせた。

「それにしても、先程のスウェット姿はどうにも忘れられそうにも無い」
「士郎、命が惜しいのなら忘れてくれないか」
「恥じる必要は無いと思うがな、あぁした油断のある姿というのは可愛さを感じさせる」
「そっ…」

 それは口説いているのか?

「(なんて聞けるわけがないだろバカか私はぁ!)」
 思わず紅潮する頬を隠そうと頬っぺたに手を当てるけれども、まぁ全然隠せていないどころか傍から見ればとても可愛らしい行動だ。

「よくよく伝えたい事が分からないと言われがちなのでストレートに言わせてもらうと、私の前では油断してくれて構わんよ、一度見たのだから、着飾らない姿の慧音と接したいとも思っているからな」
「んなぁ!?」

 これは口説いているよな?

「(と確認したいが肯定されたとしてどんな反応をすればいいんだっ!!)」

 困惑しながらも血流は早まるばかり、ドクンドクンと鼓動が身体の中で響き渡る。

「それに、自分の想定し得なかった姿を他者に見られる事は、私も経験があるからな」
「?」

 士郎は口には出さず、ただ風見幽香に成された恥辱の数々を思い出していた。



第10話 魔法の森

 

 魔法の森は予想していた以上に深い森だった。

 

 森の中は方向を狂わせるかのような胞子が飛んでいた。

 

 以前、魔理沙が自分の家の近くでは多くのきのこが取れると自慢していたが、もしもその手に入るきのこがこの幻覚作用付きの胞子を飛ばすものなら羨ましさはゼロになる。

 

 てっきり舞茸やえのきなんかが取れるのだと思っていたが、これは魔法のきのこばかりがとれるのではないだろうか、

 

 しかして実際、士郎のような『理由』を持った人間からするとこの森は過ごしやすい場所に違いなかった。

 

 士郎には体内に『鞘』があることからなのか、それとも体質的になのか、方向感覚を狂わせるこの胞子が効かない。

 

 つまり、もしもここに住むと決めたとして、士郎には何の問題もないこととなる。それどころか、魔理沙という知り合いが近くに住んでいて、食事にはきのこを調理すればどうにか調達ができる。さらに、士郎の家に近づこうとする者がいようものならきのこの胞子によって遮られるだろう。

 

「問題は・・・森自体が深すぎて俺自身が迷子になっている現状なんだけどさ・・・」

 

 どこだここは・・・。

 

 そんなことを胸の内でつぶやいて一体何度目になるだろうか。

 

 時折、淡い光を遠くに見ることがある。それがもしかして人の作った家屋なのではと思い向かってみれば、まるで食虫植物の様な工夫で人間を襲うきのこ型の魔物だったり、唐突に足元が爆発したと思ったら地雷型の不思議なきのこだったり、小腹がすいてきた時に目をこらして探してみたら松茸が生えているのを発見したりと奇想天外、予測不可能なこの森だ。

 

 そしてそんな森で自分は今、認めるのも嫌だが迷子になっている。

 

 迷子になるのなんていつぶりか・・・どこぞの死徒が使用してきた固有結界の迷宮以来かもしれない。

 

「クソッ・・・こんなことなら魔理沙と一緒に見て回るんだった」

 

 魔理沙には、今日魔法の森に来ることは伝えていない、伝えておけば色々と変わったのだろうけれども現状では伝える方法もない。

 

 どうしたものかと考えながらもできることは進むだけ、

 

 奥へ、奥へ、ひたすら奥へ。

 

 いや、実際はどうなのだろうか…。

 

 奥へと進んでいるつもりだが実際のところは森の浅いところをウロウロとしているだけなのかもしれない。

 

 ふと時間が気になり、空の色を確認してみる。

 

 木々の葉の隙間から覗いた空はまだ青さを残していた。

 

「まだ昼なのか…夕方になるまでにはどうにかして森を出たいが」

 

 道がわからないのではどうしようもない。

 

 いや、本当にどうしようか・・・そんな悩みを胸に一度木に体を預けて疲れの溜まった体・・・ではない、体に疲れはない、体よりも疲れているのは心だ。今欲しいのは、何よりも心の余裕、なんせ、先ほどついつい名も無い剣を投影準備して全弾射出(ソードバレルフルオープン)をしてしまおうかと思った程だ。

 

 体と心を休めて・・・というよりも立ち寝をして何分経っただろうか。

 

 耳に、自分ではない何者かが発する足音が聞こえた。

 

 隠そうとしている足音ではない、慣れた足取りでこの森を歩いている。

 

 迷いがない、行き先がはっきりとしている足取りだ。

 

 野生の生物であるならば都合がいい、彼らは水分補給を必要とするため近辺に存在する水場を知っているはずだ。後をつけていけば水分の確保はできるだろう。

 

 どこだ。

 

 耳を澄ませる。

 

 逃すわけには行かない一縷の望み、

 

「ッ!」

 

 音、というよりももはや振動、僅かな空気の震え、おそらくはソイツ(・・・)が僅かに動いたことによって生じたもの、

 

 それで十分だ。

 

 2時の方向、距離は300mといったところか。

 

 さらに耳を澄ましてみれば、得られる情報は多くあった。

 

 移動速度と地面を踏みしめる音、その点から判断するにおそらくは女性。

 

 もしかしたら、いや、ほぼ確実にこの森に精通している人だろう。

 

 自分にとっては今現在最も必要な知識を持ち得ているであろう、水以上に貴重な存在だ。

 

 その人の方向へと移動を開始する。

 

 ――目視。

 

 金髪、でこそあるが魔理沙ではない、髪はストレートで首元を隠す程度に伸びている。結び目こそ見えないが、頭部にあかいリボンをしている。服装は西洋風の濃い青のドレス、そして肩に白いケーブを纏っている。

 

 右手にはバスケットを抱えており、その中には草花がいくつか盛られている。

 

 どれも歪な形をしていることから、おそらくはこの魔法の森で摘み取ったものだろうと想像できた。

 

 警戒をさせるわけにはいかない、偶然を装い、わざと目立つように茂みへと突っ込む形で音を立てながら近づいていく。

 

「(まるでやっていることは変質者だな…)」

 

 近づいてきた士郎に気がついたその女性は彼へと向き直った。

 蒼い瞳が士郎を射抜き、次いで小首を傾げた。

 

「どうもこんにちは、えっと・・・もしかして迷ってたりするのかしら?」

 

 挨拶からの質問、ひとまず士郎はその女性が会話のできる相手だったことに安心し、胸中に抱えていた警戒心をなくした。

 

「あぁ、こんにちは…恥ずかしながら迷子だ。この森を侮っていた」

 

 この歳で迷子、それを認めるのはすごく恥ずかしかった。

 

 それを察してなのか、金髪の…改めて見ると人形のような美しさをもったその女性はくすりと笑った。

 

 からかい…というよりも慈愛に満ちた微笑みだった。

 

「ふふ、正直な人ね、とりあえずあたしの家まで来てもらうわね、歩き疲れていると思うし紅茶くらい出させてもらうわ」

 

 その言葉に従って、歩き出した女性の後に付いていった。

 

 歩いている途中、女性がそういえばと思い出したように聞いてきた。

 

「そういえば、あなた…えっと、ごめんなさい、名前を教えてもらってもいいかしら?」

 

「あぁ、私は士郎、衛宮士郎だ」

 

「士郎、ね…あたしはアリス、アリス・マーガトロイドよ、よろしくね」

 

 差し出された右手を握り返す。

 

 女性特有の柔らかな肉付きを感じさせながらも硬い皮膚、日頃から手を、いや、(てのひら)を使用して行う習慣づいた何事かがあるのだろう。

 

 そんな感想を抱いていた士郎に対して質問が飛び込んできた。

 

「それで、士郎はどうしてこの森に?余程の用事でもない限り魔物ですら迷うことを恐れて入ってこないような場所よ?」

 

 当然の疑問だ。言うなれば入ったら危ないから入るなと言われているところに自分からホイホイと入り、さらに迷子になっているのだから余程の用事があると考えるのは当然のことだ。

 

「あぁ、実は住む場所を探しててさ、この辺に知り合いが住んでるから住み心地・・・というよりも周辺の環境がどんなものなのかを見てみようと思ってな」

 

「住む場所に魔法の森を・・・?住んでいる私がいうのも変な話だけどやめておいたほうがいいわよ?変人のレッテルがほしいって言うならもってこいの場所だとは思うけど、それにしても知り合い、ねぇ」

 

 自分で言うのか・・・それにしても変人のレッテルか、そう言う意味では魔理沙も確かに変人と言えるところがあるな、なんて考えを巡らせる士郎だった。

 

「まぁ、私も変人に違いない、それに、他人が入ってこれないような場所というのは私にとってそれだけでありがたいものなんだ」

 

「あら、興味を持たせるようなこと言ってくれるのね、隠し事があるっていうのは女性なら魅力になるけど男性じゃ、やましいことがあるようにしか思われないわよ?」

 

「なるほどな、じゃあアリスはよほど隠し事を抱えてるんだろうな」

 

 その言葉に士郎は特に意味はない、言葉遊びの仕返し程度の考えで言っただけだった。

 

 しかしどうやら、アリスという女性はこの返しを予想していなかったようで唐突に黙ってしまった。

 

「(む、言葉選びを間違えたか…?)」

 

 後悔を胸中に隠しながらも、歩幅を緩めることのないアリスの後を逃さぬよう付いていく。

 

 

 

 

 しばらく歩くと、小さな西洋風の家屋が見えてきた。

 

「ついたわ、ここが私の家よ」

 

 気になることといえばアリスがいなかったはずなのに家の中の灯りが点いていることだ。本来なら怪しみ、家の中の状態を確認して突入と行きたいところだ。

 

 しかし、アリスはそういった事を省いて堂々と玄関から自宅へと入っていった。

 

「失礼する」

 

 続いて士郎も家の中へ、

 

 最初に士郎が見たのは人形だった。

 

 可愛らしい金の長髪をしていて、大きなリボンをしている。青いドレスに白いエプロンをつけているその人形の横には、その人形にはとても似つかわしくない40cm程の槍が添えられていた。

 

 よく見れば似たような人形は家の中に多くあり、そのどれもが傍らに何らかの武具を添えられていた。

 

「ちょっと、また勝手に来てたの?」

 

 そう言ってアリスは侵入者に対して慣れたように接する。

 

 いつものことなのか…自分の家に突然人がやってくるというのは士郎にとっても慣れたことではある。

 

 そう、冬木のあの地でもどこぞの教師や小さな姉、そしてその姉と行動を共にしている2人の侍女・・・思い出すだけで笑がこみ上げてくる思い出だ。

 

「へへっ、お邪魔してるぜ~」

 

 どこかで聞いた声がした。

 

 このお気楽な声、そして彼女特有の明るい雰囲気。

 

 誰が間違えようか、衛宮士郎がこの世界に来て最初に会話した人物にほかならない。

 

「魔理沙…なのか?」

 

――走る殺気。

 

 それはアリスからだったが、行動に移してこない事から平静を装った。

 

「あら?知り合い?もしかして…」

 

 名前を呼んでみたところ、アリスが反応し、それから一瞬の間を置いて何かが落ちる音がした

 

 音の発信源は前方、魔理沙の声がした方角からだ。

 

 魔理沙の声がした方から聞こえたそれに続いて、

 

「しっ、士郎ォ!?」

 

 と驚きの声が聞こえた。無論、それは魔理沙のものだ。

 

「あっ、アリス、なんで士郎が!?」

 

 当然の疑問なわけなのだが答えとして士郎が用意できるのも、アリスが用意できるのもただ一つの真実だった。

 

「そこで会ったのよ」

 

 簡潔、簡潔すぎて寂しさを覚えるほどだ。

 

「そこって、ここ魔法の森だぜ?…あー、いや、士郎なら平気だな、うん」

 

 魔法の森に人がいること、それは自分が体験したように危険なことだ。だから、本来は人に会うこと自体が珍しく、疑問に思うべきことなのだがなるほど、自分なら平気というのは魔理沙が自分の事を一定以上に評価してくれていることの現れなのだろう。

 

「なんだ…その様子だと魔理沙に復習やら仕返しで来たわけじゃなさそうね、良かったわ」

 

 少しだけ感じた鋭い殺意が安らぎ、アリスは笑顔になった。

 

「(成程…疑って、さらに言えば、私を殺そうとまで考えていたワケだ)」

 

 そう考えると、一人で外に出ていたアリスもなかなか『できる』のだろう。

 

 家の中にあった人形の数から考えて、それを行使して戦うのだろう。

 

 人形使いだとしたら、それは非常に恐ろしい存在だ。

 

 人形使いには、武器が多い。

 刀やハルバードといった武器では無く、戦いの術が多いという意味でだ。

 

 とはいえ、これは自分の知っている人形使いだけかもしれないなと士郎は自分の中で自己完結した。

 

「魔理沙はよくアリスのところに来るのか?」

 

 アリスの家のリビング、その中央に置かれたソファーの背もたれから顔を覗かせている魔理沙に問いかけてみた。

 

「ん~、よく来るかって言われたら結構来てるな」

 

「結構ってどこがよ…最近じゃ毎日じゃないの」

 

 と、反論をしながらも不思議と嬉しそうなアリス。

 

「ほぉ、仲がいいんだな」

 

「まぁな!私とアリスは仲良しだぜ!」

 

「まぁ…仲は悪くないわね」

 

 どうにも、素直になれていないアリスと素直な魔理沙という組み合わせのようだが不思議と上手くいっているようで安心だ

 

 いや、まぁ父親でもない自分が安心するのはおかしな話なのだが、なんというか霊夢にしろ魔理沙にしろ人里に住んでいないということで人間関係がいろいろと心配だったのだ。

 

「士郎、貴方いつまでもつっ立ってないで魔理沙とソファーにでも座っててよ、紅茶の用意をしてくるわ」

 

「あぁ、そうさせてもらうよ」

 

 ソファーに座ると、隣に座っている魔理沙がこちらを見つめてきているのが気になった。

 

 アリスは家の奥の方へと向かっていった。紅茶をいれると言ってくれていたのだ。奥まった部分に厨房があるのだろう。

 

「なぁ士郎?今日はどうして魔法の森にきたんだ?」

 

「あぁ、何故そうも熱心に私のことを見つめているのかと思ったらそれが聞きたかったのか」

 

「いや、だって士郎はきのこに興味なんてないだろうし、魔法の森に来る理由ってなんだろうなって思ってさ、いや、別にそこまで気になってるわけじゃないぜ?教えてくれるなら聞いておいてやろうかなっていうか」

 

 ?

 

 け、結局聞きたいのか?聞きたくないのか?

 遠回しな聞き方というのも度が過ぎると遠くへ行き過ぎて帰ってこれなくなるものだ。

 

「住む場所だよ」

 

「え?」

 

「こっちに来た時に霊夢にも言ったんだけどさ、ずっとあいつのところでお世話になるわけには行かないと思っててな、それで自分が住む場所を探してるんだ」

 

「住むって、魔法の森にか?」

 

 とはいえ、人里に住むのは難しい。

 

 理由は多くあるが、『もしも』のことを考えると周りに人が住んでいない場所が一番いい。

 

 それでいて、人が来ることも少ない場所が望ましい、それを考えるとやはり、魔法の森というこの場所は最高だ。

 

「まぁ、士郎がどうしてもって言うならいいけど、狭いぜ?」

 

「いや、広いだろう」

 

 魔法の森が狭いとはどんな世界観の持ち主なのか、どこぞの黄色いクマのぬいぐるみが住む森にはかなわないかもしれないが、普通の森というスケールから考えればかなりの大きさだ。

 

「え?なんで知ってるんだ?」

 

「あぁ、何故ならアリスと会うまで歩き回ってたからな」

 

 その言葉に、魔理沙の顔が驚きの色に染まる。

 

「あ、歩き回ってた!?」

 

「あぁ、ところが途中で疲れて一眠りしたがな」

 

「ね、寝たのか!?」

 

「あぁ、それで、近くで散策しているアリスを見つけて、声をかけたらここに連れて来てくれたというワケだ」

 

「あ、アリスもいたのか!?」

 

 何をそんなに驚いているのだろうか。

 

 魔法の森では外にいること自体が珍しいとでもいうのだろうか。

 

 

 

「ふ、二人して私の家で何をしてたんだぜ!?」

 

 

 

 間。

 

 

 

「(これは、どっちだ…!?)」

 

 1つ目の可能性は魔法の森を自分の家だと言っているナワバリ意識的なイメージ、これの場合は魔理沙にとって魔法の森という場所が大切なんだな、という感想で終わる。

 

 2つ目は私とアリスが魔理沙の家、もちろん未だにいったことすらない魔理沙が寝起きしている場所という意味での魔理沙の家だ。こちらの場合は素晴らしい妄想力だと賞賛をする必要がある。

 

「(いや…流石に1だろ、どうやったら誤解するんだ漫画じゃあるまいし)」

 

 たびたび、漫画などで言い回しと思考の不一致から起きる誤解によって登場人物が困るというシーンを見たことがあった。見るたびにそんなことは起きるはずがないと思っていたし、どういう理解力と妄想力なのかと毎回のように呆れ、笑っていた。

 

 流石にそんな漫画のような理解をする人間は実際にはいないだろう。士郎はそう考えた。

 

 ならば、ここでの答えは1つだ。

 

 

 

 

 

「無論、住み心地を確かめていた」

 

 

 

 

 

 その後、アリスと一緒に3時間に渡る事情の説明を要求された士郎は二度と偏見で物事を決め付けるのはよそうと心に誓った。

 

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