東方剣創記   作:スペイン

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 幽香、聞きたいことがあるんだ。


 あら?何かしら?


 幽香はどうして、ここに住もうと思ったんだ?元からこの向日葵畑があったのか?それとも、手頃な土地だったのか?


 この子達は元々ここにいたわ、私はその管理をしているだけよ


 つまり、管理をするためにここにいる・・・ということか?


 ・・・そうねぇ、貴方は存外頭が硬そうだから理解してもらえないかもしれないけれども、ここがいいって思ったのよ。


 ここが良い・・・っていうのは、この場所が?


 いいえ、この場所だけじゃないわ、場所だけなら、あなたの世界で似たような場所があったらそこに住むこともアリってことになるわよね?


 あぁ、似たような場所で、似たような地形、幽香の場合はこうやって周りに花が咲き乱れていたら・・・そうじゃないのか?


 えぇ、幻想郷(このせかい)太陽の畑(このばしょ)だから私は住んでいるの、しばらくは別のところに移ろうとも思わないわね。



 明確な理由とかは無いのか?


 私にとって必要ないの、場所も時間も空間も、その時、その場所に私が住んでいたいと思ったからそこにいるのよ。


 俺には、難しいな・・・。


 あら?そうかしら?貴方最初から太陽の畑(たいようのはたけ)に住むつもりなんて無いでしょ?


 ・・・バレてたか、あぁ、俺も住みたい場所はあるんだ。ただ、理由が見つからなかったんだ。


 理由っていうのはね、必ずあるわけじゃないのよ・・・何かを成すのに理由が必要なら理屈だらけの世の中になっちゃうわ、貴方はすべての行動に理屈がないと動かないのかしら?


 いや、違うな、あぁ、成程、そうか、はは…ははは、ふはははは、悪い癖だな考え過ぎるというのも。


 いきなり笑い出すなんておかしな人ね、けど、うじうじ悩んでるよりもずっといいと思うわよ


 ありがとう幽香、本当にありがとう。自分がくだらないことで悩んでいたのが笑ってしまえる。この太陽の様な花々と君に感謝しているよ。


 感謝するのは嫌だけどされる分には構わないわ、感謝ついでに一緒にお酒でもどうかしら?


 昼間っからか?・・・まぁ、たまにはいいか。


 はい、貴方の分よ。


 そうだな、それじゃあ。


 この乾杯に理由はいるのかしら?


 …いや、それこそ無粋というものだろう。


 それなら、特に理由も無く、ただ飲みたいが為に、


 あぁ、ただ飲みたいが為に、


 乾杯。



第14話 選択

 

「今帰った」

 

 風見幽香との対談を終えた士郎は、博麗神社へと帰ってきた。

 扉を空けながらの言葉が所帯染みているのは彼の前世での生活からの物だ。

 

 月明かりを雲が隠してしまう、そんな空模様だったのに対して、士郎の心は月明かりを遮るものがなにもない空のように晴れ晴れとしていた。

 

 どこに住むか、ということはもう決めていた。

 

 あとは、その事を霊夢に告げるだけだ。

 

 木製の廊下を進み、霊夢がいるであろう居間のふすまを開ける。

 

「おかえり」

 

 湯呑を手に、彼女はそう言った。

 

 何を緊張しているのか、いつもより佇まいが硬いのが分かる。

 

 湯呑を見ると、波紋が立っていることも目に見えて分かる。震えている・・・何を緊張しているのだろうかと疑問に思いながらもテーブルを挟んで霊夢の向かい側に座る。

 

 霊夢は湯呑をテーブルに置くと、ギクシャクとした動きで居間から出ていこうとした。

 

 そんな動きをするものだから見ていないと不安で、ひとまず自室に着くまでを見守ってから厨房に立つことにした。

 

 今日の料理は野菜たっぷりのシチューだ。とろみをつけるためにでんぷん質の高いじゃがいもをすりおろして高温で熱するのがポイントだ。ちなみにじゃがいもが無くてもバターと小麦粉があればそれで代用できるのもポイントだ。

 

 ニンジンは一口大にして熱したことで柔らかさを、厚めに切った玉ねぎも忘れてはいけない、鶏肉にホワイトペッパーと薄力粉をまぶし、フライパンで中火で表面を少し焦がすくらいで焼く。香り付けとして少し大きめのベーコンを、隠し味として少量の白ワインとローリエを加える。

 

 ここからが重要だ。かぼちゃを半分に切って、中身をスプーンで掻き出していく。掻き出したかぼちゃの中身は白玉粉と砂糖、水を加えて練り練りしたあとに、沸騰したお湯の中に一口サイズに形を整えたソレ等を入れることで白玉かぼちゃを作り上げる。

 

 あとは中身の少し残したかぼちゃにシチューを注ぎ込むだけでパンプキンシチューの出来上がりだ。

 

 食卓には士郎の調理したパンプキンシチューとさらに乗せられたスライス済みのフランスパン、そして小皿に盛られたシーザーサラダが並べられていた。添えられた白ワインはもちろん調理に使った調理用とは別の物だ。

 

 出来上がった料理に満足しながら士郎は霊夢の部屋へと行き食事を告げる。

 

 扉を開けた霊夢は何かを嗅ぎ取ったのか一目散に居間へと急いだ。

 

「し、シチューですって・・・!?和食ばかりだった私の食生活に洋風の彩りが・・・ッ!」

 

 余程嬉しいのだろうか、早口気味に言葉を並べる霊夢を見て、ますます作った甲斐を感じる。

 

「さ、座ってくれ、頂くとしよう」

 

 促され座る霊夢、対面にはもちろん士郎だ

 

 二人は慣れた様子で合掌。

 

 

 

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 いつもの夕食が始まった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 食事も終わり、霊夢は居間で食後にデザートして用意した白玉かぼちゃを口に運んでいた。

 

「霊夢」

 

 士郎が名前を呼ぶまでは、

 

「話が・・・ある」

 

 士郎の真剣なトーンに、しっかりと彼の目を見る。

 その目はいつもの優しげな目と変わらない、変わらないはずなのに、今はその優しげな目が怖かった

 

 何故、自分に優しさを向けるのだろうと不安になるのか、私には分からない。

 優しさが、怖いだなんて思う日が来るなんて。

 

 きっとそれは、私の事を想って言ってくれる事だから。

 私がそれを否応なしに受け止めなくてはいけないと分かっているから。

 

 だから、その、避けられない優しさが怖いんだ。

 避けられないから、怖いんだ。

 

「分かったわ」

 

 それでも、受け止めなくてはいけない、

 避けられないなら、受け止めなくてはいけない。

 

 受け止めなくては彼は前に進めない、そう思って返事をする。

 

 士郎は佇まいを直すと、霊夢に面から向き合い口を開いた。

 

「私がこの幻想郷(せかい)に来たとき、最初に声をかけてくれたのは・・・いや、それは魔理沙か、それでも、私が最初に、きっと無自覚の内に心の拠り所にしていたのは霊夢、君だ」

 

 士郎の言葉に、嬉しさがこみ上げる。

 自分が彼の『何か』に成れていた嬉しさが込み上げた。

 

 お門違いなタイミングなのかもしれないけれど、確かに嬉しさを感じたんだ。

 

「そんな君に博麗神社はいつか出るって言っていたが、ここ数日自分がどこに住むのかとを考えていたんだ」

 

 そして、不安も、

 込み上げるといよりは、圧し掛かる様な不安。

 

 内側から来る物では無い、外から襲い来る物だ。

 

「魔理沙やアリス、幽香のところに行って考えた。昔のことを思い出したり、理由を求めたり、考えがまとまらなかったりもした」

 

 無言で、ただ聞く。

 聞きながら、短いながらも共に過ごした時間を思い出す。

「(寝ている私を起こしてくれた。寝ている間にご飯を作ってくれた。朝、気が付けば境内に続く道の掃除は住んでいたり、私の仕事が気が付いたらもう終わっていたりしたっけな)」

 

 ただ言葉を待つ、それだけの時間が一分にも、一時間にも感じられた。

 多分、本当の時間は十秒にも一秒にも満たないのに、凄く長く感じられた。

 

「(一緒に暮らしている時間は、あんなに早く過ぎ去って行ったのに…)」

 

 楽しい時間だったから?

 それとも、ただ流れるように時が速かったから?

 

「(詩人になるつもりは無いけれど、今だけは言葉が浮かんでは消えるわ)」

 

 悩むまでも無い、楽しかった。

 苦しい事は無かった。楽しかった。

 

 楽しい、時間だった。

 

「でも理由がなくてもいいって言われて、一気に軽くなったんだ」

 

 その言葉を、

 

 その言葉を聞くのはとても辛いけれど、

 だけど、その言葉は彼が前に進む為の物だから、

 

 聞かない訳にはいかない。

 聞かなくてはいけない。

 

 彼の選択を、私のその先を、

 彼が、決めた事を。

 

「それで、決めたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は博麗神社を出て行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 覚悟はしていたはずなのに、その言葉は私に重くのしかかってきた

 どうしようもない、受け止めざるを得ない現実なのだと分かっていたのに、なのに、

 

 

 

 悲しかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第2章改訂作業終了

第3章は二週間後までには済ませたいけれどアデノウィルスに侵された私の身体がどこまで持つか。
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