東方剣創記   作:スペイン

27 / 44
装飾多い広い部屋、豪華なカーペットの敷かれたその場所に紫色のドレスウェアを身に着けた少女が魔法陣を前にしていた。

魔法陣は断続的に光を瞬いており、その輝きの中心には黒いドレスを身に着けたルーミアが横たわっている。

傍らにはどこから持ってきたのか玉座に腰掛けたレミリアが目を瞑っている。もちろん、その横には十六夜咲夜がいる。

「・・・ふふ、そう8回も遊ぶことが出来たのね・・・楽しそうじゃないの、フラン」

レミリヤが口からこぼした言葉に、咲夜は優しそうな笑みを称えた。

少し経ち、魔法陣の輝きが段々と薄れていく。

「パチェリー様、どうぞこちらを」

魔法陣の輝きが無くなり、パチェリーと呼ばれたその紫ドレスの少女は咲夜から差し出されたティーカップを受け取り、中にある紅色の液体を口に含むと一息ついてレミリアに向き直った。

「・・・これで終わり、レミィ、私は疲れたから地下に戻るわよ」

有言の後の即実行、パチェリーはレミリアの返事を待たずに両開きの扉の向こう側へと姿を消した。

「パチェってば、お礼の一言くらいは聞いていってもいいと思うのだけれど・・・まぁいいわ、咲夜、私にも紅茶をお願・・・い」

言い終わる頃には既にレミリアの手にはティーカップが、十六夜咲夜は満足そうな笑みでレミリアの軽く驚くさまを見守っている。

「ほんっと・・・お礼の一言くらい余裕を持って言わせて欲しいものね」

ぼやきながらも口元に運んだ紅茶は、いつもと変わらない美味しさを誇っていた。

口内に広がる柔らかな香りと舌を飽きさせない『()』の味を楽しんでいたレミリアは、横たえていたルーミアがその身を起こしていることに気がついた。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

「私の友達に貴女の記憶の中身を見させてもらったわ」

唐突に聞こえた声に、ルーミアは目を覚ました。

いや、あるいは目は最初から覚めていたのかもしれない、その実感がなかっただけで・・・

「面白い物を見せてもらったわ、まさか薄いとは言え博麗の巫女とつながりを持っているなんてね」

並べられている言葉を、ルーミアは理解できているのだろうか。

言葉を並べる(レミリア)の隣で十六夜咲夜は心配にも似た気持ちを抱いていた。

「私は明日、ある事件を起こすわ」

言葉を区切り、レミリアは口元にティーカップを運ぶ。

「ふふ、きっと博麗の巫女は私を止めに来るわ・・・そして、あの男も一緒にね」

『あの男』というキーワードに、ルーミアが確かな反応を見せた。

それまでは虚ろだった瞳が、確かな意思のある瞳へと変わる。

反応を見せたのはルーミアだけではなかった、レミリアの傍らに立つ咲夜もまた、身体の内から殺気を溢れ出させた。

過去の経験、『時間を操る』という十六夜咲夜が持つ必殺にも近い能力、それを物ともせず、なおかつ圧倒的な戦闘力を示した『あの男』。

「咲夜、景気づけに『あの男』にルーミアが紅魔館(うち)にいるってことを伝えてやりなさい、どちらにせよ『あの男』は私達の前に立ちふさがる運命にあるわ、なら速い段階で片付けてしまいましょう」

鋭い目元に宿った怪しげな光、レミリアはその目に楽しさを隠さずに映し出していた。

手を宙に掲げてレミリアは言う。

「せっかくの悲願の成就よ、どうせなら大きな障害を乗り越えたその先に掴み取りたいのよ・・・」

シャンデリアの光がレミリアの白く傷一つない美しい手を照らしていた。

「かしこまりました」

そう言って、咲夜がその部屋を去ろうとする所で、レミリアが待ったをかけた。

「慈悲よ、ルーミア、貴女にはこれからも私の妹の遊び相手になってもらう予定なの、何か衛宮士郎に伝言があるのなら今、そこにいる咲夜に言いなさい」

妹、という発言にルーミアはレミリアという少女(に見える女性)がフランの姉であると理解した。

「・・・質問、いい?」

それと同時に、もう一つ理解した。

もう、頭は冴えていない、きっと記憶も引き出すことはできない。

それでも、聞きたいことだけは覚えていた。

あの空間で、彼女(フラン)と相対した時からずっと疑問だった。

「ふむ、いいわよ、言ってみなさい」

何を考えてなのか、レミリアはその質問を促した。

「何故、彼女は・・・フランはあんな場所にいるの?」

フランとの遊戯(たたかい)の中で、何度も何度も出口を探した。

しかし、扉はあれども封印によって閉ざされ、そこから出ることは叶わなかった。

交わす視線と殺意の中で、フランに対してその事を問うてみたものの次の瞬間にはルーミアは気を失っていた。

だからこそ問いたい、その姉であるレミリアに。

「・・・あんな場所、とは言ってくれるじゃないの」

楽しげだった表情に陰りが差す。

レミリアは玉座から離れ、その足を地へと着けた。

両の手を広げ、(てのひら)に魔力の炎を灯す。

「ルーミア、貴女はフランのお気に入りみたいだし、特別に理由を教えてあげる」

一歩、レミリアは歩き、そこに止まった。

ルーミアの眼前だ。

「貴女にとって、怖いことって何かしら?」

歌うようにレミリアは続ける。

「暴力や恐喝、死の恐怖や孤独の恐怖、そういった物は持ち合わせて当然のもの、そして、世の中はそうした恐怖で満たされてるの・・・例えば私やフランは太陽の光や流れる水、鏡なんかはまさに忌むべき存在ね、太陽の光に至っては浴びるだけで激痛が走るわ・・・、でもそうね、私が最初に遭遇した恐怖は『暴力』だったわ、ある日のことよ、私とフランはその恐怖(ぼうりょく)に遭遇したわ、私はそこで、『暴力』を自らの武器とすることで『暴力』から身を守ったわ」

区切り、同時に掌に灯していた炎を握り潰す。

握った掌を開くと、灰が地面へと落ちていった。

「でも」

地面へと着地、灰へと変わったはずの炎が、また燃え上がる。

「フランは違ったわ、『暴力』に触れたフランはその恐怖(ちから)に・・・そうね、『酔った』とでも言うのかしらね、恐怖を与えることのできる『暴力』に触れてあの子は『狂気』に走ったわ」

炎がレミリアを、ルーミアを、咲夜を照らしていた。

「さて、次の質問よ、貴女は『狂気』と聞いて何を思い浮かべるかしら?」

その質問に、ルーミアの脳裏を不思議な光景がよぎった。

誰かが、人間を食べている光景だった。

光景・・・と表現したものの、ルーミアはその食べている誰かが分からなかった。

それもそのはず、ルーミアはその食べている誰かの視点だったからだ。

「・・・思い浮かべることが、出来たみたいね」

レミリアの目線がふと、優しくなった気がした。

「そう・・・貴女も『狂気』を知っているのね、なら話は早いわ、フランは壊したわ、『狂気』に満ちた瞳と気迫で周りの全てを」

語るレミリアは、懐かしそうに、しかし悲しそうに、それでも先程の優しさを称えた瞳のままだった。

「気がつけば、私はフランと殺し合いをしていたわ・・・どうしてそうなったのか、今になっても私には、いえ・・・おそらくだけど、当てられた(・・・・・)のね、フランの『狂気』に」

炎の勢いが段々と弱まっていく。

その様子を見ながら、ルーミアは分からなくなっていた。

何故だろうか、他人事の気がしないのだ。

しかし、分かることはある。

「その『狂気』が危険だから、あの子はあの場所にいるということ?」

「いいえ、危険なのは、その『狂気』の発現と同時にフランが宿した能力よ」

ルーミアは思い出す、フランがその身に宿していた莫大な魔力。

そして、時折見せた不思議な現象。

『わたし』の霧が唐突に消えるという不思議な現象。

消える・・・というよりもあれは・・・




「ありとあらゆる物を破壊する程度の能力」



『破壊』、消し去るのではなく、隠すわけでも、切断するわけでもない、『破壊』だ。

安全も、良心も、善悪さえも関係ない、『破壊』という絶対の概念。

「フランはその能力を未だにコントロール出来ていない、『狂気』に身を置いたあの子はその能力を使用するのにためらいも持たないわ、私が一番恐れているのは、その能力でフランが自分自身を壊してしまうこと・・・だから、あの子はあの部屋にいるの、あの部屋の周囲にはあの子の為だけに貼られた結界や封印が施されているの」

炎は消えていた。

レミリアは一度目を閉じると、再び口を開いた。

「・・・以上よ、これがフランがあの部屋にいる理由」

一通り聴き終えたルーミアは考えていた。

きっと、士郎はその事実を知ればフランでさえも助けようとする。

士郎の強さであれば、フランとさえも渡り合うことは可能かもしれない・・・

だけれども、だけれどもその結果に士郎が『破壊』されてしまったら・・・






「さぁルーミア、言いなさい、衛宮士郎に伝えたい伝言を」








第26話 ラミア④ ~残り1日~

音がした。

 

聞きなれた音だった。

 

――銃声。

 

単発、しかし侮ってはいけない、そこには人を殺しうる威力があるのだから。

 

『私を助けないで』

 

そう言った少女の笑顔が、泣き顔が、怒りに満ちた顔が、別れ際の顔が思い返される。

 

考えたくはないが、その可能性が一番高い。

 

考えたくはないから、その場から走り出した。

 

誰でもいい、誰かが撃たれたというのならば、その人を助けなくては・・・

 

同じ考えをもってか、それとも野次馬か、衛宮士郎の行く手に立ちはだかる人々。

 

掻い潜り、押しのけ、通り抜けてようやく最前列へと躍り出た。

 

人々が進もうとしない最前列から見えた光景、それはひとりの少女が横たわっている姿だった。

 

見間違えるはずがない、それは先程まで一緒にいた少女、紛れもなく・・・

 

「ラミア・・・」

 

撃たれたのは脚、膝を撃ち抜かれていた。

 

血が、約束のビルへと続く大通りを染めていた。

 

一体、どれほどの大口径の弾丸を使ったと言うんだ・・・何故、ラミアの脚が3本ある。

 

胴体から続く2本と、路上に放り出された1本。

 

何故、それでも、そんな目にあいながらも彼女(ラミア)は・・・!

 

なおも、這いずりながらもそのビルを目指しているのか・・・ッ!

 

しかし、非情な弾丸がそれすらも許さない。

 

人々がその光景を口々に言葉にして見せる中、ラミアが進む方向、ビルの方向から誰かが歩いてきた。

 

その人、その黒服の人間を見て、ラミアが動きを止めた。

 

手元に銃を持っている。

 

『助けないで』

 

「(まさか・・・この展開は予想されていたとでも言うのか・・・!?)」

 

走り出そうと、士郎は足に力を込めた。

 

しかし、その動作を止めた。

 

ラミアが、確かにこちらを見た。

 

何かを探すように逡巡した後に、野次馬のなか、確かに衛宮士郎を見つけた。

 

その表情は、穏やかで、安らかで、何故か、笑顔だった。

 

なんで、そんな表情が出来るんだ。

 

殺されるんだぞ、傷つくのとは意味ががう、完全にこの世から遮断されるんだ。

 

一歩目を踏み出し、二歩目で一気に近づけばまだ間に合う!

 

「(・・・ッ!今そっちに助けに!)」

 

ラミアと目があった。

 

身体から力が抜けていき、自らの人生を悟ったラミアは口を動かして、言葉を伝える。

 

 

 

『わたしを、たすけないで』

 

 

 

脚に込めていた力が、抜けて―――

 

 

 

 

 

――――――――――――――銃声。

 

 

 

 

人々の目線の先、そこにいるラミアの体が強く跳ねた。

 

血が飛び散り、人々はその凄惨な光景に目を覆った。

 

頭部を撃ち抜かれたラミアは動かない、そして、そのラミアの周りに人が集まってきた。

 

民衆ではない、そしてその人々は2種類に分類することができる。

 

片方はフランス軍、武装からしてそれは間違いない。

 

そしてもう片方は黒服の男達、先程はよく見えなかったが、今となればよく見える。

 

奴らが持っているのは『M9』、ベレッタM92の名称を持つアメリカ陸軍採用モデルだ。

 

「(アメリカ軍が・・・何故)」

 

怒りで頭が沸騰しそうになる中で、奴らの会話が聞こえてきた。

 

「これで、情報の漏洩は無い、確かに黒服との接触は確認されなかった。この件はこの少女の死をもって終わりだ」

 

フランス、アメリカの両者が見守る中で、ラミアは確実に息を引き取った。

 

「・・・俺達(フランス)はヘラートから退却するぜ、この後、スラム街の連中が暴れるだろうよ、さっき金を握らせておいたんだ。アメリカはそれを鎮圧して帰ればいい、そうすればなんら情報に差異はなくなる」

 

フランス側であろう人物はそう言うと黒服に対してアタッシュケースを渡した。

 

中にあるのはカードだ。

 

通貨こそどこのものかは分からないが、キャッシュカードが大量に詰まっている。

 

恐らくはドル換算にすればかなりの額になるだろう。

 

札束以上に金銭的価値は高くなる。

 

「貴方がたの国の情報が漏洩したという話、私達は聞き覚えもないですな・・・それにしても、親切な国もあるものだ。いきなりこんなアタッシュケースを渡してくれるとは」

 

アメリカ側、黒服の男も話を合わせるかのようにした。

 

「死体はこちらで回収しよう、何、確かめたいことがあるというのならこの場でこの少女にもう一発弾丸を食らわせても構わないですよ」

 

そう言いながら、黒服の男は『M9』をもう一度ラミアへと向けてその引き金(トリガー)を引いた。

 

胸元に穴が空く。

 

もちろん、そこからも血は溢れる。

 

フランスの男はその様子を観察し、ラミアの死体をまさぐると一枚のフロッピーディスクを取り出した。

 

「なるほど・・・確かに死体の回収はそちらでしたほうが良さそうだ」

 

次の瞬間にはフロッピーディスクは割れていた。

 

なんの情報が入っていたのだろうか、士郎には知る由もなかった。

 

次いで、フランス側の男の一人が再度ラミアの身体を漁った。

 

何も見つからないのか、その男は顔を上げることもないままに後方へと下がった。

 

しばらくするとフランス側の男の一人が口を開いた。

 

「ふむ、結構だ、死体の処理はそちらに任せよう」

 

そう言い、その場から去っていく男たち、黒服の男もまた、一度だけ垣根を作るかのように民衆からラミアを見えなくした。

 

その男たちが垣根を崩すころにはラミアはどこにもいなかった。

 

代わりに、麻袋だけが黒服の肩に担がれる形で出現した。

 

恐らくは、あの麻袋の中にラミアが・・・

 

そう考えてすぐに、士郎は気づいた。

 

何故、アメリカはラミアの死体を回収した。

 

何故、フランスはラミアの死体を回収しなかった。

 

何故、ラミアは殺された。

 

・・・これまでの経緯、そしてラミアにかかってきた電話と『たすけないで』という言葉に隠された本当の意味に、衛宮士郎は気づいた。

 

フランスは知らなかったのだ。盗まれた情報がデータチップの内にあるということを、だからこそのフロッピーディスクというわけだ。

 

恐らくはあの電話で伝えられたことは、『フランス軍の目の前で殺されろ』という指示、そうすることで情報漏洩の心配はないと思わせ、死体をアメリカが回収、死体からデータチップを抜き取れば情報は無事アメリカの元にたどり着く。

 

情報さえあれば、後はどうとでもなる。

 

フランス側の研究員からのリーク情報とでも言えばいい、後は実際に行われているかの確認ということで監査が入ってしまえばアウトだ。

 

今回のことで警戒を含めてフランスが研究施設を廃棄する・・・なんて可能性はとても薄い、フランスに建てられた工場の地下空間、それらは全て繋がっているとラミアの説明の中にあった。

 

一箇所を放棄したとしても他の研究所が残っている。

 

繋がりを断ったとしても核の開発だ。その場に残った化学物質の反応からそこで行われていたことが判明してしまう。

 

つまりは、監査に入る理由があるというだけでフランス側からすれば『詰み』なのだ。

 

「・・・ラミア、俺は」

 

このまま、その事の成り行きを見届けたとして、最終的に行き着く先は国と国、その大きさでのバランスの崩壊だ。

 

思わず、先ほどラミアから受け取ったドッグタグを手に握り締める。

 

・・・待て、待ておかしなことがある。

 

本当に死を偽装するのであれば、何故先ほどのタイミングで俺にドッグタグを渡した?

 

死を偽装するのであれば、兵士のドッグタグは回収するのが道理。

 

小さな疑問だったが、確認せずにはいられなかった。

 

何かメッセージがあるのではないかと、ドッグタグを入念に調べる。

 

ネームプレートの一部、すこしだけ、ほんの少しだけ他の部分よりも出っ張っている場所があった。

 

爪に引っ掛ければ獲れえそうだったので取り出してみる。

 

「・・・データ、チップ?」

 

以前、ラミアが自分の首のところについているのを見せてくれたとても小さなもの、それと同じだった。

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

「・・・それで、その後士郎はどうしたんだ?」

 

舞台は変わって幻想郷、あれから一度話を区切って食事と風呂を済ませ、今は二人でテーブルを挟んで対話している。

 

「アメリカとフランス、どちらも争わせるわけにはいかなかったからな、本国へと搬送されるラミアの死体を奪い取って土葬したよ」

 

慧音は知りたい部分と答えられた部分が違ったのか小さく首を傾げた。

 

「・・・実際、ラミアが何故俺にデータチップを残してくれたのかは分からずじまいだった。あいつにとっては任務が一番だと俺は思っていたし、俺も誰かの努力で世界の情勢が変わるのならば受け入れようと思っていた」

 

だけど、と言葉を濁しながらも続ける。

 

「結果は俺の手元にデータチップが残って、あいつの任務は失敗ってかたちで決着した。フランス側からすれば情報漏洩の心配はなくなった・・・で終わり、アメリカ側からすれば証拠が無いから現状のまま・・・って形だろうな、結局、あの後でフランスがその核の研究所を用いてなにかをやらかすってことも一切なかったし、アメリカがあの後で俺に対して干渉してくることも無かった」

 

つまるところ、ラミアがデータチップを士郎に残したことで事態は進まないまま、その後の何かが起きるということもなく全てにケリがついたということだ。

 

「たすけ、られなかったんだ・・・今でも時折思うよ、あの時、俺が足の力を抜かずにラミアを助けていたらどうなったんだろうって」

 

きっと、そうしたら全ての事の顛末は変わってくる。

 

ラミアは任務を失敗という形だがその後も生き続けることになる。

 

フランスからすれば情報漏洩の危険性があるのだから気の抜けないその後を過ごす。

 

アメリカもスパイが『スパイとして送り込まれた』という実績を持って行方知れずになったら捜索することになるだろう。

 

そして、そして俺は・・・

 

「・・・これが、そのアフガニスタンでの事件の事の顛末、助けていいのか、助けてはいけないのか、そうした選択肢が出てきたときに俺は迷ってしまったんだ。あの時の俺は・・・」

 

慧音はその様子を見ながら、その先が予想できたのだ折るか、口元に笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、今はどうなんだ?」

 

 

 

「迷わない、助ける」

 

 

 

「それが相手の迷惑になってしまったとしても?」

 

「その迷惑からも助ける。全てから助ける」

 

「そんなことが本当に可能だと?」

 

「・・・あの後さ、日本に帰ったらある人に言われたんだ」

 

『ほんっと~~にバカね!士郎、あんたもっと私を頼りなさい!は?巻き込んだら申し訳ない?何バカみたいなこと言ってるのよ!こちとら聖杯戦争(あのとき)からあんたの人生に巻き込まれてんのよ!今さら気にしてると四六時中ひっついて離れないわよ!』

 

「それは・・・なんというか情熱的なお姉さんだな」

 

少し引き気味の慧音に苦笑いを浮かべながらも士郎は続ける。

 

「だからさ、何かあったら巻き込んでいいか?俺はこっちの世界ではまだ頼れる相手も少ないし、人望だって無いような男だ・・・だから、慧音を巻き込んでもいいか?」

 

独力で100人を助けた。

 

独力で戦場を廻った。

 

独力で・・・

 

紅いアイツと戦場を廻った。

 

いつの間にか紫のあの子も加わってた。

 

紫のあの子を守る、紫のアイツも手伝ってくれたっけ。

 

魔術なんて使えないのに、悪友のアイツも、親友のアイツも手伝ってくれた。

 

気がつけば周りにいろんな人がいて、衝突することもあったけど、いつも後悔する結果にはならなくなってた。

 

 

 

「俺が、守るから」

 

 

話しはそれだけだ。

 

 

 

「あぁ、頼れ」

 

 

 

返事も、それだけだった。




次回、~残り1日~

みんながみんな、動き出します
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。