ここはどこだろうか?どこかの・・・地下?とても広い空間で、二人の男が対峙していた。
一人は紺色に身を包み、首から十字架のネックレスを下げている。袖にはいくつもの暗器が仕込まれており、まともな人間ではないことが見て取れる。
短く切り揃えられたその髪は清潔感こそあるものの、短さから表出したその双眸は希望を失った・・・というよりも、絶望を求めているかのように光を感じられなかった。
もう1人は黒のロングコートに身を包んでいた。懐・・・だけではない、袖にも、恐らくは見えないが腰にしたベルトにも銃を着けている。
頭頂部が跳ねているもの形は保っている。そんなギリギリを思わせる髪型だった。
こちらの双眸もまた、光を失っていた。
しかしその双眸は、希望を求める瞳だ。
ロクな会話もなく、二人の戦闘は始まった。
紺色の服を着た男は中国拳法と暗器を用いて戦っていた。術式兵装のようなものを取り出しているのも見えたことから、それなり・・・どころではなくかなり魔術に精通した者なのだと分かる。
一方の黒いコートの男は距離を保ちながらの火器による攻撃を行っていた。時折、体がブレたのかと思うと動きが早くなり紺色の男を驚かせていた。
紺色の男・・・いや、もう流石に気づいている。
あれは言峰だ。言峰綺礼、ふざけた神父で麻婆豆腐の飽くなき探求者、そして、第4次聖杯戦争の参加者だ。
そして、もう一人の黒いコートの男、間違いない、
生きていた頃に言峰から聞いた戦闘スタイルに酷似している。それに、短いあいだでこそあったが、俺が間違えるわけないんだ。
撃ち、刺し、抉れ、躱し、避け、苦しみ、苦しませ、痛み、痛ませる。
そんな戦い、瞬間に命が散ろうという、多くの言葉よりも、短い言葉で語った方がその情景が伝わりやすいのでは?そう思わせるほどに、命の火が燃え盛っていた。
しかし、そんな戦いに終が訪れた。
突如として瓦解した彼らの部屋の天井は黒い水をその空間に流し込んだ。
それに飲まれるようにして、二人の男の戦いはそのまま終へと向った。
黒い水に満ちた空間に言峰が倒れ伏していた。
目が覚めたようで、膝立ちの状態で周囲を確認した。
その背後、衛宮切嗣は立っていた。
既に狙いは後頭部へと定められている。
言峰は何かを呟き、諦めたようにその両の手を挙げた。
降伏の意思を示そうとも意味はない。
二人が行っていたのは殺し合い。
その終幕はやはり・・・
――銃声が鳴り響いた――
目が覚めた。
居間、そうか・・・確か昨日はあの後みんなで布団を並べて寝たんだ。
なるほど、だから俺の腕に霊夢がコアラしてるのか。
いつぞやに作ってやったパジャマを身に着けた霊夢はリボンもせずに美しい黒髪を惜しげもなく披露していた。
コアラしてるってどういうことだと聞かれても答えるつもりはない、明確な言葉にすればその分だけ殺意の量が増加する予感しかしないからだ。
さて、顔に当たったこの足は魔理沙のものか、足フェチでもなんでもないのだが綺麗な足をしているな・・・
それにしても、黒のネグリジェとはもう少し警戒してもらえないだろうか・・・女性がよく言うセリフなのだろうけれども、ここまで相手にされていないと男としての自信が無くなってしまう。
まぁいい、二人を起こして向かうとしよう。
上体を起こそうと力を入れる。
腕に力を込めると、その腕にコアラしている霊夢が小さく動いた。
「んゅ・・・」
元から起こすつもりだし、起こしてしまっても構わないだろうとそのまま上体を起こす。
「んが」
と品のない声を出す魔理沙。
同じ女性でありながら声の出し方にもこれほど違いがあるとはなぁ・・・
不思議だな人体、と思いながらもそのまま立ち上がり台所へと向かう。
湯を沸かしながら、考える。
「(さっきの夢・・・まるで聖杯戦争で見たセイバーの過去のようだった。あの戦いはもう終わって、俺は幻想郷で暮らし始めたのに、何故今になって過去の夢を・・・?)」
考えれども、答えは浮かばず。それでも、衛宮切嗣という男の姿を再び見ることができたことは嬉しかった。
「(セイバーの過去を見たのは、俺がマスターで、体に
間
「オエ・・・」
衛宮士郎、自滅である。
彼が何を考えたのか詳しくここに記すのはあまりにも毒な文章となるため控えさせていただこう。
そして今、彼は居間でお茶を嗜んでいた。
喉を通して胃へと暖かさが染み渡る。
口の中が潤った事で胃から逆流しようとしていた物を抑えることができた。
剣製で培った想像力が悪い方向に働いたことを嘆きながら、士郎は寝室からこちらへと近づいてくる足音に気がついた。
「士郎、貴方外は見たの?」
居間へと入ってきたのは霊夢だった。
見れば、既にパジャマから巫女服へと着替えており、その表情には鬼気迫るものがある。
「まだだ・・・魔理沙を起こして、早めに出よう」
「その必要はないぜ、私も準備万端だ」
見れば、霊夢の後ろから魔理沙が顔を覗かせており、既に服装まで整えてあった。
「それより士郎、これは早めに止めないとまずいぜ・・・軽く、幻想郷の危機とすら言えるレベルだ」
魔理沙の言葉を受け、玄関から外に出る。
鼻を劈くような血の匂い、目に染みるほどのその香りに思わず細める。
慣れてきたその刺激に目を開く。
「なんだ・・・これは」
視界を紅い霧が覆っていた。
「完全に陽の光を遮断している・・・それだけじゃない、空気に味、血の味が含まれているのか、確かにこの霧が長く続けば植物は枯れてしまうし、味覚に関しても異常をきたしてしまうな」
魔理沙の言うとおり、これは幻想郷の危機だ。
ルーミアを助けるつもりだったが、どうにも話はそれだけでは終わりそうもないらしい。
霊夢を見ると、苦虫を噛み潰したような表情をしながら口をもごもごとしている。
「最悪ね」
呟いた感想、
「士郎の料理の味が口の中から消えてしまいそうだわ」
そして本音。
魔理沙を見ると呆れたような表情をしながらもどこか納得をしているように見えた。
「それじゃあ、さっさと解決してしまいましょう」
言後即動、言うやいなや、霊夢はすぐさま宙へと浮かび紅魔館の方向へと向かっていった。
「うっし、行くか!」
そう言って、魔理沙も箒に跨って上空へと進んでいった。
・・・俺もある程度慣れてきたので飛行はできるが、彼女らと同じ速度はまだ出せないな。
「俺は地上から行こう、集合場所を決めておくか?」
提案するも、二人は振り向くでもなく同じことを言ってのけた。
「「この異変を止めたら集合よ(だぜ)」」
こうして、衛宮士郎と博麗霊夢、霧雨魔理沙は出発した。
一番最初に接敵するのは、
――博麗霊夢。
不思議なことに、霧の湖へと続く森の中には一切の敵がいなかった。
その代わりと言ってはなんだが、不思議な焼け跡や多くの武器が落ちていた。
途中、苦無の様なものを拾っておいたのだが、この世界にも忍者というやつはいるのだろうか?
士郎は疑問を解決しようにも手元にある情報では答えを出せるはずもなく、紅魔館への道を走り続けた。
途中、上空を見ると霊夢と魔理沙が空を飛んでいる姿を見かけた。
順調に行っているようだ・・・そう思った矢先の出来事だった。
霊夢と魔理沙が反発し合う磁石のように左右に分かれたのだ。
そして、分かれた二人のど真ん中、つまりは元いた場所を大きな氷塊が過ぎ去っていった。
霊夢が何かを叫び、魔理沙がそれに応じて行動に移そうとするが、魔理沙のすぐ目前に緑の髪をした妖精の少女が現れた。
二人の行動は完全に分断されてしまったようだ。
霊夢が、魔理沙が、持てる武器を取り出して戦闘へと移行する準備をする。
そして、空を彩る氷の舞踏が始まった。
少し駆け足気味ですが投稿です。