東方剣創記   作:スペイン

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以前、士郎との模擬戦で言われたことがあった。

『魔法に頼りすぎだ』

魔法使いなのだから魔法に頼って当たり前だろう。そう思った私だったが、本日うちに泊まりに来ていた友人であるアリスにそのことを話すと思いがけない意見を得ることができた。

「じゃあ魔理沙に聞くけど、魔法が使えなくなったらどうするのかしら?私の知っている場所でとても魔法の練りにくい場所があるわ、そこにいる生き物は全て身体のスペックだけで生き残ってきた種族だったわ、もしもそういう場所でそういった種族との戦闘になったとき、貴女は生き残れるかしら?」

なるほど、もっともな意見だ。

魔法使い・・・というよりも魔理沙は知識欲旺盛な蒐集家だ。その知識欲を満たすために様々な場所に出かけるし、それはこれからも変わらないことだろう。

これまでは魔法の森の中や、遠出をしても幽香の住んでいる太陽の畑までだった。しかし、この幻想鄕に多くある未開の地を探索しようとしたとき、未知の魔物に遭遇し、襲われることもあるだろう。そうした魔物に対して、スペルカードルールが意味を成すとは思えない、ゆえに今のうちから努力を重ねておくことで一人でも未知に対処できる能力を身につけておこうというのが魔理沙の考えだ。

表面上には、その理由付けでしばらくは頑張れる。

霧雨魔理沙の使用する魔法は派手だ。それゆえに広範囲を攻撃できる反面、使用する魔力量も洒落にならない攻撃もある。

魔法を使用するには周囲にただよう魔力(オド)を自分の体へと取り組み自分の使用する魔力に変換する必要がある。その変換の際に使用する器官には変換の限界量があり、その器官は筋肉に似た性質を持っていて、使用・・・つまりは変換をしすぎると痛みが走るものの、休ませることで変換の限界量が増加する。筋肉痛の後の超回復に似た効果が期待できるということだ。

それとは別に、魔力を蓄えておける貯蔵庫も人体には備わっている。こちらも筋肉に似た性質を持っているが、こちらを鍛えようとして限界量ギリギリまで魔力を溜める事はかなりの危険を要する。限界量を完全に超えた場合風船の様に破裂してしまうからだ。

それと同じように、自分の身体を強化する際にも注意が必要だ。魔力をまとうことによって強化を行うとはいえ、基礎のできていない体に魔力を纏ってしまうと魔力が体に対して掛ける圧に押しつぶされてしまう。そのためある程度の筋肉が必要となり、より強い強化をするためにはより強い肉体が必要となるということだ。

魔法に頼らない戦闘となると素手、もしくは何かしらの武具を使用した戦闘法を覚える必要がある。

「(私が得意な戦闘方法となると薬品を使った物・・・あとは箒を使うくらいか・・・)」

箒を剣に見立てて構えてみる。それは剣と呼ぶには刃もなく、重さもない、木刀のような硬さもない・・・改善点は多くあるが、言い換えてみれば改善することでより使い勝手が良くなるのだ。

薬品を使用した戦闘方法を開拓するために、アリスに意見を聞いてみた。

「そうね、あなたの薬品は多くがド派手な物だわ、だから相手の目を逸らしたりごまかしたり、潰したりするのに使用するのがいいかもね、フラスコやシリンダーなら割れた鋭い部分を突き刺したりって使用方法もあるわね」

思ったよりも物騒な意見に思わず聞いていて恐ろしさを感じたが大変参考になった。

ここで、魔理沙は自分の戦闘スタイルをもう一度考えた。

魔法を主体とするのは変えないが、そこに箒を使用した武術や、薬品を利用した戦闘方法・・・つまり、当面の修行はいつも通りの魔力量の上昇と、箒に合った武術の発見、戦闘で利用できる新型薬品の製造だ。

士郎に聞いてみたところ、まずはとにかく走れと言われた。走ることは肺活量、しいては運動の際に必要となってくる基礎体力の向上にもなるから大事であること、そして武術の基本である『踏み出し』に必要となる筋肉を鍛えることもできるという点からのアドバイスだという。

そういうわけで、今日の朝は博麗神社前の石段の下で士郎と待ち合わせて朝のランニングに出かける予定だ。もはや、士郎は魔理沙の師匠といっても過言ではない。それは魔理沙自身が感じていることでもあった。

「~♪」

私は士郎に縫い繕ってもらった『じゃーじ』と言う物に着替えて待ち合わせの場所に急いだ。白と黒のシンプルなカラーリングのこの『じゃーじ』という服装は軽く、通気性もそこそこに動きやすい作りになっている。

「結局、あなたは何のために修行をするの?」

一通りの質問に答えてもらったあとで、アリスがそう聞いてきた

悩んで出した答えはシンプル

「いつかこの修行が意味のあるものだったって思えたら、それで私の勝ちだぜ!」

何に勝つのよ、なんてアリスの言葉は置き去りだ。

求めるのは今ではなく未来に、努力は過去に結果を残さない、未来の結果を勝ち取るためにするものだから、だから今はただ努力を重ねる。

「いってらっしゃい」

そう言ってくれた友人に元気よく言葉を返して、私はドアを開ける。

「へへ、行ってきます!」

靴を深く履き込んで待ち合わせの場所に私は急いだ。


番外編2・霧雨魔理沙

霧雨魔理沙は努力家だ。

 

それがこの幻想郷に来てから衛宮士郎が抱いた彼女への感想だった。

 

彼女と模擬戦をしてから、朝と夜に彼女が自分の元を訪れることが多くなった。

 

聞かれることは技法や戦闘術、投影魔術を教えてくれとも言われたが流石にそれはお断りした。この世界の魔法の使用方法に慣れた魔理沙が唐突に雑音・・・とでも言うのだろうか、別の感覚を覚えてしまうと不具合が出てしまうかもしれない、そのため今彼女に魔術回路を通してしまうのは控えておいたほうが良いのだ。

 

とはいえ、自分も現在こちらの『強化』・・・つまりは魔力を纏う『強化』を身に付けようと努力している途中である。

 

やはり、魔術による強化との違いから色々と難しい点が多い

 

纏わせること自体は簡単だ。問題なのはその纏う魔力の密度と範囲、ただ纏うだけならば適当にできる。問題なのはそれをできる限り薄く纏うことで圧を減らすことと、薄くするのは魔力量を少なくするのではなく、密度を濃くするという点である。さらに、できる限り無駄な消費を抑えるために範囲を指定して行うことも大切だ。

 

こればかりは回数を重ねて努力をするしかないという。

 

努力という言葉に、自分の人生を思い返してみる。

 

大半は、生きるための努力だったようにも思える人生、生き抜き、生き抜くための術を学び、生き抜く場所を求めて各地をまわった。

 

生きているという実感を求めていたのかもしれない、切嗣(じいさん)が参加していたという聖杯戦争で起きた冬木の大災害で、自分は一度死んだも同然なのだから。

 

脳裏に消えない炎と、消えない苦しみ、消えない痛みが蘇ってくる。

 

今では、それすらも見つめることができる。

 

自分の人生なのだと。

 

自分の手を見つめてみる。そこには、剣を握りこんで出来たマメと、摩擦で剥けた厚い皮があった。指を見る。弓を射って擦り切れた傷がそこにはあった。

 

幻想郷(ここ)に来ても、変わらないものだなと士郎は自嘲気味に笑った。

 

修行に明け暮れる日々に終わりはないとかつて誰かが言っていた。

 

生前の衛宮士郎も、病床に伏す前日まで修行をしていた。

 

「(俺の人生か・・・)」

 

『剣に生きたわけではない、弓に生きたわけでもない、ただ正義のために生きた』

 

そんな男が、衛宮士郎だ。

 

『死の直前になって、ようやく正義を認められた』

 

そんな男が、衛宮士郎だ。

 

『死ぬ時、悔やまれ、感謝され、全てが報われた』

 

そんな男が、衛宮士郎だ。

 

そんな男を、

 

「お~い士郎、またせたな!」

 

師事してくれるというのならば、全力で応えよう。

 

「いや、俺も今来たところだ」

 

この世界に新たな生を受けたのだから、この世界に自分の生まれた意味を求めよう。

 

霧雨魔理沙の訪れに片手を挙げて答えてみせた士郎は、心の内で過去の世界と今の世界に明確な区別をつけることで、また一歩成長をした。

 

「じゃあ今日は、足に軽く強化を纏わせて走ってみるか」

 

「げっ、部分的強化か?私アレ苦手なんだぜ・・・」

 

「苦手が多いことはいいことだぞ?その分強くなれるんだからな、それに、俺だって纏わせる強化にはまだ慣れてないんだ。お互い頑張ろう。な!」

 

「う~い」

 

返事もそこそこに、朝焼けの道を二人は走り出す。

 

互いに何かの意味を求めながら。




左中指折れてた。ので、タイピングの遅さから次の更新は1週間後になります(ちょっと前に1週間後って言った気がするけど気のせいだと思います)
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