東方剣創記   作:スペイン

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ある日のこと、歩いて魔法の森で以前見かけた薬草を摘もうと考えていたところでアリスに出会った。

聞けば、アリスはこれから買い物に行くとのこと、しかしおかしなことにその足が向かう先は人里とは反対方向だ。

「一体どこに行こうと言うんだ?」

「そういえば、士郎はまだ香霖堂(こうりんどう)に行ったことがないんだっけ?」

こうりんどう?どういった漢字を書くのだろうかと疑問に思う士郎、先を進むアリスの後を付いていく。

「えっと、アリス?その香霖堂っていうのはお店・・・いや、何が売っているんだ?」

お店なのか?と聞こうとして、これから買い物と言った相手にその質問はあまりに馬鹿だろうと考え質問内容を変えた。

「えっと・・・骨董品とか、古書とか、拾ったものとか」

「・・・ま、まぁリサイクルセンター、なのか?」

進んでいく中で、それまでアリスが香霖堂でどういったものを購入したのかというのを聞いていた。

「そうね・・・藁人形、泥人形、マトリョシカ人形、ビスクドール、マリオネット、パペット、ギニョール、ジョージ」

今、何やらいくつか不思議なものが・・・あったのだが気にしないことにした。それにしても今聞いている限りだとかなりの種類の人形が多く売っているようだ。

「あ、他にも家具とか、ソファーとか洋箪笥(たんす)もあそこで買ったわ」

「ほんとにリサイクルセンターみたいだな・・・」

そのあとも会話をしながら歩いていると、魔法の森の片隅、一軒の古びた家屋が見えてきた。

古びていながらも土台がしっかりとしているその家屋は、比較的に魔法の森の外に近い位置にあり、場所さえ分かっていれば人里に住んでいる人でも買いに来れるぐらいの距離だった。

見れば、家屋の玄関、その横にこれまた古びた木の板が貼られており、そこには『香霖堂』と書かれている。

「ここか・・・いや、それにしても思ったよりも」

随分と、小さな店だ・・・。解析をしてみると、内部に地下へのはしご・・・?階段?下へと続く非常に急な角度の段差がある。地下空間はかなり広く、おそらくはそこがメインの商業スペースなのだろう。

「さて、着いたわね、ここが香霖堂よ」

何故か胸を張って自慢げなアリス、なぜ彼女が自慢げなのかは分からないが俄然興味は湧いてきた。

さっそく、士郎はその足を香霖堂の中へと進めた。
 


番外編3・魔法の森のある店主

「いらっしゃ・・・おや、初めてみる顔だね」

 

足を踏み入れた香霖堂は外観そのままに内部も古めかしい内装だった。基本的に木造である内装、そして、壁にかけられているのは不思議な仮面や昔懐かしいポスター等だ。

 

見れば、士郎がよく知る(ブレイド)の名を冠したバイク乗りの戦士の仮面や、鏡の世界で生き残るために戦い続ける龍の騎士の仮面も見受けられた。

 

声の方へと振り向けば、紺と黒の2色を備えた和服に紫の帯をしている銀髪の男性がいた。

 

眼鏡をかけた壮年のその男性は士郎の顔を見ると段々とその視線を身体の各所へと移していった。

 

「へぇ・・・なるほど、ふむふむ」

 

な、なんだ・・・視線が熱い、というよりも絡みつくように、何かを識ろうとするような視線だ。

 

「・・・?」

 

どうしたんだ・・・俺の肩のあたりを見て眼が変わった・・・?

 

「初めましての君、もしかして君は聖人と呼ばれる存在なのかい?」

 

言われ、目の前の男が見ていたものが自分の聖骸布であることに気付いた。

 

「あぁ、なるほどな、いや違うよ、俺はとても聖人なんてご大層な存在じゃない、俺は・・・」

 

そこで、士郎は口ごもる。理由は様々、それでも自分の人生を思い返して、迷いなく言葉にする。

 

いつかは、誰かの夢だった。

 

いつかは、自分の夢だった。

 

いつかは、アイツの夢だった。

 

今は、誰の夢でもない、

 

「俺は、正義の味方だ」

 

「へぇ、その台詞を堂々と言える辺り、君()なかなかの年月を生きてきたみたいだね」

 

「・・・なるほど、そっち()なかなかに()きてきたってわけか」

 

互いに、互いの腹をさぐるかのようであって、実質のところは互いに情報を開示している。我ながら面白いやり取りだと

 

「僕は森近(もりちか)森近(もりちか) 霖之助(りんのすけ)だ。みんなからは霖之助だったり、お店の名前から香霖(こうりん)って呼ぶ人もいるよ、君からは是非とも霖之助と呼んでもらいたいかな」

 

「俺は士郎、衛宮士郎だ。そうだな、じゃあ俺のことも士郎ってよんでくれ、霖之助」

 

「士郎・・・ふむ、どうやら君は僕と相性がいいらしいね、うん」

 

相性がいい、か、確かに少ししか話していないが話し相手として霖之助はとても良い、というのも、霖之助からすれば話し相手としての男性が少ないのだろう。そして、自分としては・・・いや、何故だろうな、なんだか理由などあまりなく彼が気に入っている。

 

「ちょ、ちょっと・・・士郎あなた。霖之助さんも何だか怖いわよ?」

 

アリスに言われ、それまでアリスの存在を忘れていたことを申し訳なく思う。

 

「あぁ、すまないねアリス、僕としても男性のお客さんは久しぶりだったから」

 

霖之助の言葉に「まったく・・・」と呆れながらも、アリスは何かめぼしいものが無いのかと店内、正確には店の地下へと進んでいった。

 

士郎がその様子を見ているのを、霖之助は観察しながら思った。

 

「(なるほど・・・地下があることにあまり驚いていないということは風の流れで地下の存在を知った・・・または地下の存在を知ることができる何かを士郎が持っているということかな・・・?)」

 

そんな観察を行われているとは露とも思わない士郎は、霖之助に自分も地下へと行ってもいいかと聞き、了承を得て地下へと進んだ。

 

「(どちらにせよ、面白い男だ・・・衛宮士郎、話し相手としても申し分ないし、何よりも彼が身につけているもの1つ1つがとても面白い・・・)」

 

そして霖之助は、彼は衛宮士郎に興味津津だった。その興味がある日興味では収まりの効かないものへと変わるのだがそれはまた別のお話だ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「へぇ・・・色々な物が置いてあるんだな」

 

地下へと進んだ士郎は、そのあまりにも統一性の無いラインナップを見て正直にそう漏らした。

 

まず目に飛び込んできたのは大量の壺だ。それも、全てが魔法道具(マジックアイテム)と呼べるほどに魔力が込められている。

 

壁は絵画で埋められ、その中には士郎のよく知るとある婦人の絵や、戦争のさなかにか描かれたという絵もあった。しかし、見覚えのある物よりもどこか完成度が低い・・・なんというか、下書きとでも言えばいいのだろうか、一度試しに書いてみた作品・・・という感想を得た。

 

「えぇ、ここには本当に色々な物があるわ、それというのも、このお店の経営スタイルがそうさせるんだけどね」

 

と、聞いてもいないのにアリス、

 

「ここにある多くの商品は霖之助さんのお手製、それか物々交換で手に入れたものになるわ、例えばあの人形、あれは私が作成して霖之助さんと交渉の末に鏡台と交換してもらったものよ」

 

指差され、そちらへと目を向ければ確かにアリスの家で見たような人形が置いてあった。出来は素晴らしく、商品として世に出ていても違和感は一切ない、そんな作品だった。

 

「他にも、幻想郷に辿りついた『忘れられた物』や『存在を認知されぬ物』がここには多くあるわ」

 

そういってアリスは移動していき、不思議な剣を手に取った。

 

「例えばコレね・・・霖之助さんからすればとんでもない剣らしいんだけど、これは私や霊夢、魔理沙が見てもただの剣となんら変わりないわ、まぁ、魔力・・・に似たものが通っている事くらいかしらね」

 

士郎も、アリスに習いその剣を手に取ってみる。すぐさま掛けた解析により、その剣の凄さが伝わってくる。

 

蓄積された年月を読み取ろうとした時、士郎の目に飛び込んできたのはいくつもの戦場だった。一人の男と、何頭にも首が別れた蛇、そして、輝かしき草原・・・

 

神秘性でいえば、神造兵器よりは劣るものの、星・・・ではなく大地、地上の息吹を感じさせる。

 

手に持っただけで伝わってくるのはそれだけではない、今なお、目覚めんとする『蛇』だ。『蛇』の意思だ。

 

意思は力の誘惑をもって、士郎を支配しようとしてきた。

 

アリスを見れば、何事かと心配そうにこちらを見ている。

 

アリスはこれをもっても何とも無かったのだろうか、だとしたら、自分は何故・・・

 

「がぁッ!」

 

咆哮、それに伴う気合いをもって剣からその手を離す。重たい金属音が地下の空間に響き渡るも、未だに走る痛みと苦しさでその場にうずくまる。

 

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

不思議な感覚だった。まるで『蛇』が腕に段々とからみついてくるような、そして、心臓を目指して登ってくるような・・・そんな恐怖を感じた。

 

見れば、浮き出た血管を黒い何かが走っている。なんだ・・・これは、しばらくすると、その黒い何かも溶けるかのように血管の内に消えていった。

 

「だ、大丈夫、士郎!?」

 

近寄るアリスに笑顔で大丈夫と告げて立ち上がる。

 

自らの手を見つめれば、植物が蔓を絡ませるかのように手首から肩にかけて蔦が絡みついていた。

 

「それは、草薙の剣だよ、士郎」

 

声に、霖之助だと気付きそちらへと向き直る。

 

「遥か昔、そう、僕が生まれるよりさらに前、スサノオという戦士が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の体内より見つけ出した剣だ」

 

言葉は続く。

 

「神に献上されたその剣は後に地上へと再び現れ、権力(チカラ)の象徴として代々受け継がれるようになった。そして、そのチカラが働くのは人間にだけ・・・」

 

「あぁ、なるほどね、道理で私が持っても何も起きなかったわけだわ」

 

と、アリスの弁だ。

 

「そう、だから士郎が持った時に『何か』が起きたんだ」

 

そう言いながらたのしそうな笑顔を浮かべる霖之助、良い性格をしている。

 

そのあとも、様々な物を見て回りながら霖之助とアリスとの会話を楽しんだ。

 

そして・・・

 

「この盾をちょっと調べてほしいんだ」

 

一つの盾の前で、霖之助はそう言った。会話の中で、彼の能力について聞いた。その能力は『道具の名前と用途が判る程度の能力』、その能力をもってしても分かることが一切なかったという。

 

そこで、本来ならば出来る限り自分のできることや特技は隠すのだが、相手も出来ることを明かしたのだから・・・ということで、士郎が自分の解析魔術の事を話してみたところ、是非とも調べてみてほしいと言われたのだ。

 

そして早速、

 

――解析開始(トレースオン)――

 

・・・な、なんだこれは、とてつもない歴史の量と、とてつもない武器?陣形?防具?

 

・・・そうか、これは

 

――概念武装、否

 

――伝説の武装化、近し

 

――ファランクスの武装化、是

 

なるほど・・・

 

「わかったぞ霖之助、これは・・・陣形だ」

 

我ながらなんと説明したものかと悩んだ後に、なんとか伝えられる言葉として出てきたのがそれだった。

 

「かつて、古代のギリシャで使用された陣形であるファランクス、それを武具としたのがこの盾だ」

 

「いや・・・えっと、すまない士郎、知識不足で申し訳ないんだが、そんなことがあり得るのか?君の話をそのまま言うと、物質で無いものが物質になった・・・無からの有ということだろう?」

 

あぁ、その切り口は当然の物だ。と士郎、しかし士郎自身にできることは、解析の結果をそのままに伝えることだ。

 

「えっと・・・だ、まずその質問に対してだが、こういうことはある。まぁ、作成できるのも使用できるのも元となったソレ(・・)をよく知る人間だけなんだけどな」

 

つまりは、ファランクスをよく知る『何か』が創りだしたのがこの盾だ。解析して分かったことなのだが、この盾、陣形に使用されたという幾百もの盾の性能を固めた・・・とでもいうのだろうか、百本のレーザー光線があったとして、それを一本のレーザーとして照射すれば威力、速度、太さが上昇するのと同じようなものとでも例をあげようか。

 

「なるほど・・・面白い、面白いな士郎!歳がいもなく興奮してきてしまったよ」

 

そういうと、続いて霖之助は不思議な形をした剣をもってきた。

 

「こ、これは?これはどういうものなんだい士郎?」

 

「め、珍しいわね、こんなに楽しそうな霖之助さん」

 

アリスが少し呆れながらも、確かな笑みを浮かべている。

 

かくいう自分も、普段は見ないような物が多くあるこの場所に少なからずの興奮を覚えている。

 

彼が提示してくる品は、珍しい、そしてそれだけではなく、彼自身がそれに興味があり、先ほどの現実味を帯びない解説にたいしても真摯に聞き届けてくれた。

 

「(なるほどな・・・俺は嬉しいんだ)」

 

自分の能力は、他の魔術師から言わせれば『へっぽこ』だったり、『異端』だったり、『役立たず』だったりするらしい、ところがどうだ。目の前にいるこの男はその自分の能力を心から望んでくれている。

 

こんなに嬉しいことは無い。

 

「あぁ、見ようじゃないか、存分に」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

その後も、黒漆大刀だったり、サモセクだったりと、珍しくも現代には既に存在しない剣をいくつも見ることができた。

 

少年に戻ったかのように、衛宮士郎も、森近霖之助も遊び、笑い、戯れた。

 

気がつけばアリスの姿はそこには無く、男二人が笑顔を引っさげてひたすらに愉しんでいた。

 

帰り際に霖之助に、

 

「もしよければ、今度は買い物客としてではなく友人として店に訪れてくれないか?」

 

と言われた。

 

バカめ、答えは簡単だ。

 

 

 

 

 

 

「親友じゃだめか?」

 

 

 

 

 

 




一週間後といったな、あれは嘘だ(by ノロウィルス患者)

あ、あとこれを書くきっかけを感想の部分で下さった某Nさん、ありがとうございました!
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