今からどれだけ昔だったかなんて覚えてない、ただ、あの時は皆が皆、詩を読んでいた。告白も詩、後悔も詩、喜びも詩、のんきなもんだ。
心の摩耗は時代のせいか、それとも過ごした環境のせいか、私は昔のことをしっかりとは覚えていない。
ただ、あの日、私はアイツと出会った。
今でも憎らしくて、顔を見たなら殴りたいくらいに毎日顔を合わせたい奴、何年も前からの知り合い、何年も前からの腐れ縁。
まぁ、あいつの話はいいんだ。
私はソイツの残した薬のせいで不老不死なんて存在になって、疎まれ、気味悪がられ、遠ざけられた。最初の300年は、とにかく怖かった。
外が怖くて、誰かに嫌われるのが怖くて、分からないのが怖くて、何よりも、
自分が怖かった。
でも、そんな怖いことばかりの日々の中で私は力をつけていった。
生きるための力を、怖いと思うものを全て燃やし尽くすような力を。
それからの300年はひたすらに血にまみれた。
妖怪退治なんて名目はあったけど、実際のところ、心の安定を図るために生物が死ぬっていう現実を再確認していたんだと思う。
その月日の中で、自分の体に傷ができて、血が流れたときは嬉しさを覚えた。
誰にも話したことはない、だってそうでしょう?話せるわけがない。
そのあとの300年は退屈だった。
妖怪も退治というよりも手を払えば死に絶えて、生きていることすら信じられなくなっていった。
時には私の身の上を理解してくれる人もいた。
ご飯もくれたし、お風呂も入れてくれた。一緒に寝てくれて、とても暖かかった。
でも、皆死んだ。
私が生きているうちに、皆死んでいく。
私は、生物の死が平等であることを証明するために、とにかく殺した。
気がつけば、私は
何の因果なのか、ここには私の大嫌いな大馬鹿もいた。
というよりも、あの大馬鹿・・・彼女も私と同じらしい。
不老不死、いや、別に同情なんか覚えない、ただ、本当に久しぶりに、見知った顔にあったという理由で、本当にそれだけの理由で、ちょっとだけ、嬉しかった。
喧嘩をする仲になって、あいつの周りにいる薬師とかその弟子みたいなやつとも会話をするようになった。
病院を兼ねているらしく、私が住んでいた竹林を通ってたどり着けるその場所への道案内なんかをするようになっていった。
でも、まぁ、今回は油断したよ。
私は風邪を引いた。
初めての経験だった。
体が重くて、力がうまく入らない。
そんな、こんな時に限って、妖怪に遭遇した。
本当に久しぶりに嬲られた。
体中ボロボロになって、それでもなんとか襲ってきた妖怪を対峙することに成功した。
だけど、この傷、痛すぎるし、風邪で思考もロクに働かない。
最近では、目が覚めてはまた眠るを繰り返している。
いつになったらこの繰り返しが終わるのか・・・風邪が治れば終わるのだろうか?
頭を揺さぶるような大きな痛みがきた。
あぁ、また気絶する。
薄れゆく意識の中で、私は紺色のドレスのような服を着た女性を視界に収めた。
「だ、れ・・・?」
口に出たその言葉が、その女性に届いたのかどうか、私は知らない。
その日は竹林の忍者達との定期集会のために私は迷いの竹林へと足を運んでいた。
とはいえ、集会自体は竹林の入口で行われるので私が迷う心配はない。
「ふむ、それではこれからも人里には久朗を、中間地点にある宿屋には
その日の話をまとめたのは忍者達の長、山根
倖梧楼は齢92という年月を感じさせない機敏な動き、そして年月の分だけ重ねてきた知識と経験から稀代の忍者として多くの者から尊敬されている。
その孫である久朗もまた実力者ではあるのだが、彼は倖梧楼と違い重ねてきた年月がない、そのため、同じ世代や若い衆からの尊敬は集められても、年上の人間たちからすれば彼の出来の良さはあまり面白くないようだ。
「鳥羽莉も伝術ばかり上達しおって、戦闘になるとからっきしな所は昔からとはいえ、努力の一つでもしてほしいところじゃ」
忍者達の中でも古参の人間が漏らした愚痴に多くの者が頷いた。
鳥羽莉と呼ばれた女性は宿屋の女将を兼任している。そのため、表の世界での顔も広く、忍者としての活動があまり出来ていない、しかしその一方で、人里での任務に当たる際はその宿に泊まることができたり、表の人間との繋がりをどうしても利用しなくてはいけない任務の際はとても頼りになる人物なのだ。
しかし、戦闘能力となると皆無に等しく、伝術と呼ばれる風遁・言葉送りや、火遁・煙柱といった誰かに物事を伝える事柄に関してのみ優秀なのだ。
「慧音殿・・・今回も足を運んでいただいて大変助かった。人里での大きな変化等は聞き込みや観察である程度は把握できるのだがそこに巣食う闇となると実際に住んでいる貴女の方が気付くものじゃからの」
慧音に対する礼を最後に、「これにて解散とする」の掛け声が響き、瞬きを1つしてみればそこに既に忍者達の姿は無かった。
竹林の一角、部屋を設けるわけでもなく行われたその会合は1ヶ月に1回、慧音の出席によって人里の問題を報告する場でもあった。
問題があれば忍者が動き、人里に巣食う闇を駆逐する。
相手が妖怪であれば博麗の巫女に頼めるのだが、相手が人間ともなると容易には頼めない、相手が妖怪を使役しているということであれば話は違ってくるのだが、今回慧音が報告したのはある児童の保護者が虐待をしていて、役所に捕まったはずなのに脱獄し、今もまだ人里の何処かに潜んでいると言われているのだ。
それを聞いた倖梧楼は「ふむ、その件は久朗に任せるとしよう」と軽く久朗の仕事を増やすことでその話をまとめた。
慧音の横に控えていた久朗の眉の角度が若干下がったのを慧音は見逃さなかった。
「(今度、甘いものでもおごってやろう・・・)」
そう考えながら、慧音はその竹林をあとにしようとしたのだが、そこで、ふと声が聞こえた。
「・・・う、ぁ」
弱々しい声だった。
慧音はその声がどこから聞こえてくるのか、耳を澄ませてみたのだが声はもう一度聞こえてくることはない。
気のせい?そう割り切ることは簡単だったが、慧音はそこで竹林へと足を踏み入れた。
迷う危険性もあったが、慧音はそれ以上に苦しそうにうめいたその声の主が心配だったのだ。
迷いの竹林の危険性は重々承知していた。
竹林の忍者たちから釘を刺されていたことはもちろんのこと、その忍者に憧れて人里の者が竹林へと足を踏み入れて戻ってこなかったという話もいくつか上がってきていた。
しかし、その危険性を考慮してでも、自分の目前に苦しんでいる人がいると考えると、慧音の足は勇気を持ってその竹林への歩みを早めた。
「だ、れ・・・?」
衛宮士郎が風見幽香の下へと出向いたその日、彼女たちは出会った。
断ノ話投稿しちゃった(。・ ω<)ゞてへぺろ♡