ゆっくりと休んでから、まずは、アンドレイのところに行くことにする。あんだけ騎士たちとやり合ったんだ、武器の修繕はしてもらいたい。ついでに、商人たちのところで、それぞれの投げナイフとかを補充しておいた。
「コイツはまた…」
アンドレイは、ややあきれの混じった声を出しつつ、装備一式を預かってくれた。
「そう言えば、あの通路の先行ったことないんだけど、何があるんだ?」
「ン? ああ……デーモンがいる」
なんとなく目についた通路を指差して質問したら、予想もしていなかった返答が返ってきた。
「デーモン?」
「バカが、試し斬りの為とか言ってな。あの部屋の特定の範囲からは出られないように結界で閉じ込めているそうだが、そのバカは、己を過信して返り討ちに遭った」
「ここに連れてきたんだろ? 何で負けたんだ?」
「連れてくる時は、仲間と一緒に協力して捕まえたそうだが、試し斬りの時は、一人だけ」
「なるほどね」
作業を続けつつ、話し相手になってくれるアンドレイとの会話を楽しんでいると、装備一式の修繕と、調整が完了した。
仮面ライダーの力に縋り気味な俺が、どこまでやれるか……試してみるか。
デーモンとやらがどんなのかを見たいという気持ちと、ここまで戦ってこれたけど、俺自身はどこまでやれるのかを、試してみたくて、行ってみることにした。
「無理すんなよ。フィールドの外に出れば、追ってこないからな」
「あいよ」
階段を降りていくといきなりの、魔法攻撃。躱して相手を見ると、杖を持った頭と片足のないデーモンがいた。
遠距離の魔法攻撃、中近距離の杖攻撃は、確かに厄介だが、頭がないのにどういう器官で、周囲を探知しているのかは分からないが、その狙いは甘く、容易く避けられたし、何より、これまでの敵に比べたら、弱かった。
デーモンを倒して、ふと見ると、中庭だか裏庭だかに続く戸があった。
行ってみると、植物にまみれた亡者、仮称モコイとしておこう。それが襲ってきた。
さして強くなく、アッサリと倒し先へ進むと、今度は、モコイにプラスして騎士が加わった。だが、この騎士、今までの騎士となんか違う。
一定の距離まで近づかないと、動き出さない。
攻撃のモーションが、どこかカクついているように感じる。攻撃してみると、中が空洞のような音が響いた。
……簡易量産型ゴーレムって感じだった。
そんな感じだったから、わりかし簡単に突破できた。
階段を上がると、城壁の上に出た。先に行こうとしたら、蝶というか蛾というか、そんな形の巨大クリーチャーが出てきてビームを撃ち始めた。
逃げて投げナイフと、錬成した岩の塊をぶつけていたら、空を飛ぶために、軽量化されていたのか、あっさりと落ちた。
それから近辺を探索して魚のエイを、混ぜたような毒々しい色のカエルを、倒したりしてから、なんか、門を発見した。何か開けるために、必要な様子だったので、錬金術で無理やり開けて進んでみると、襲われた。
亡者じゃない。不死者だが、亡者にまで堕ちてない。ただ、目が襲っている対象である俺を見ていない。獲物を見る目で襲いかかってきた。
やめるよう言って止まる状態ではなく、俺は向かってくる奴らを殺した。
その後も、森の中を彷徨ってたら、朽ちた建物を見つけて入ってみたら、ずんぐりむっくりしたデブい猫が話しかけてきた。
「ほう、あんた、新顔だね。あたしを見つけるなんて、やるじゃないか」
その辺で拾ったねこじゃらしを振ってみる。
「まあ、大方あんたも、騎士アルトリウスの噂を聞きつけてきたんだろう?」
視線が揺れるねこじゃらしを追いかけながらデブ猫は語る。
「誰それ?」
俺の返答にデブ猫はピシリ、と固まった。
「な、なんで知らないの!? 騎士の中の騎士! アルトリウスよ!?」
「いやぁ、ド田舎の農民だったもんでぇ……」
ついでにいうと、村では、そういう実在した騎士様の話よりも、俺の話す桃太郎とか金太郎とかシンデレラの方が人気でした。
「“深淵歩き”アルトリウス! グウィン王に仕える王の四騎士のうちの一人で、彼の象徴は狼。
ダークレイスの狩人であり、深淵の魔物と契約し、常人では生きることすらできない深淵を歩いたとされていて、強靭な意志により決して怯まず、大剣を振るえば、まさに無双であったと伝えられた偉大な騎士よ!」
「へぇ~」
テシテシと柔らかな肉球で殴られながら説明された。にゃんこの肉球は、太陽の香りとか言うけど、そんなことなかったよ。
「ここに来る奴らは、その騎士様の遺産狙いってことか?」
「まぁそうよ。でも、諦めるんだね。アルトリウスの伝承なんて、実際はなんでもありゃあしない。
ただのおとぎ話だよ……」
「さっきまで、そのおとぎ話、力説してませんでしたか? にゃんこさん」
「なによ、にゃんこさんって、あたしはアルヴィナよ。
で、礼ってものがあれば、そんなものの為に、英雄の墓を穢すこともない。そうだろう?」
「まぁ、そうですね」
「あんた面白いね」
「いやぁ、しゃべる猫よりは面白くないと思いますよ」
「揚げ足たるんじゃないよ! まったく……改めて、あたしは、黒い森のアルヴィナ。この森で墓を穢す侵入者を狩る狩猟団の長だよ。どうだい? あんた、あたしたちの仲間にならないかい?」
「う〜ん、にゃんこ軍団に入れてもらえるのかぁ……ありっちゃ有りかな」
「にゃんこ軍団じゃない! まぁいい、早速、契約を交わそうじゃないか」
「なんか知んないけど、俺って、不死の使命とやらで、色んなとこ行かなきゃなんないらしいんだけど、大丈夫?」
「そこまで、規律に厳しいわけじゃないよ」
「なら」
契約書とかなく、ソウルとソウルで結ぶ契約だそうです。
「この指輪を渡しとくよ。あんたがその指輪をしていれば、あたしはあんたを召喚できる。侵入者を感じたら、召喚するから、あとは好きなように戦って、そいつを追い返してもらえばいい。他にも何人か召喚するだろうから、協力するのもいいだろう。報酬もあるし、奪った物は全部自分の物にして構わない」
あれ? もしかして、さっき襲ってきた連中って、アルヴィナさんの狩猟団の方々だった?
「アルヴィナさんをモフる権利は?」
「ないよ、そんなもん!」
「ちっ」
旅に癒やしが欲しいです。あ、ケミーとは別腹で。
「……ただ一つ、掟がある。団は家族だ。裏切りは許さない。絶対にね」
「団は家族……つまり、アルヴィナさんと俺も家族、家族同士で抱き合うのは普通!」
「やったら、引っ掻くよ!」
フシャァって威嚇されました。
その後、団の実行部隊のリーダーを名乗る男と少しだけ話して探索をしていると、キノコに手足がついたクリーチャーがいた。害意はなく、ちっこいのがちょこちょこ歩く姿はなんだかほほ笑ましかった。デカいのもいて、手を振ったら、振り返してくれた。
ちょっとだけ癒やされた。
さらに奥に行くとデカい門があったので、サクッと錬金術で開けると、デカくて立派な墓があった。
フム、これがアルヴィナさんが言ってた騎士アルトリウスの墓ってやつか。
一応、俺も墓荒らしから守るための組織の一員になったんだし、挨拶くらいしといた方がいいか。
墓の前に行き、一礼して手を合わせる。
それから、墓の周囲を見ると、馬鹿デカい剣があった。
「こんなん振り回してたとか、マジか……ッ!?」
不意に殺気を感じて避けるとそこには、これまたデカい狼がいた。
「えっと、ついさっき狩猟団に入った者です。新人なもんで、ご挨拶に窺った次第ですぅッ!?」
指輪を見せながら、挨拶したけど、返答はデカい狼……フェンリルとでも呼ぶか…が口に咥えたあの馬鹿デカい剣の一閃だった。
アルヴィナさんとことは関係なさげなので、倒してもいいよね!
獣なだけあって身軽かつ、口に咥えた剣術も素人な俺よりも明らか上じゃね?
「行くぞ、スチームライナー!」
『スチーム…』
『デンジィ…』
ライデンジも力を貸してくれるらしい。
― STEAMLINER ―
― RAIDENJI ―
2枚のケミーカードを読み込ませて挿入する。両手を胸の前で合わせ、前に出しながら、両手の親指と人差し指で三角を作り、言葉を口にする。
「変身!」
こちらに向かってくるフェンリルを見据えながら、ネクベトヴォークを開いた。
― DREAD 電式 ―
直後、俺は狼の背後に立っていた。装甲が鋭利になり、サンダーパターンが、浮かんでいる。そして、めっちゃ速く動ける。
炎式のブースターによる攻撃の副次的加速とは違う。純粋に身体機能による加速。
避けられたフェンリルは、それの動きが見えなかったらしく、驚いているように見えた。
そして、ゆっくりと俺の動作一つ見逃さないように下がって腰を落とす。
俺は、両手を地面に付けてクラウチングスタートのポーズを取る。
「悪い、上手く制御できない」
スタート。
フェンリルが全く反応できていない中、腋へと駆け抜けて連撃を叩き込む。このデカさだ、狼の皮被ったクリーチャーの可能性もある為、普通の動物の弱点を突いて効果があるかは分からないが、攻める。攻撃が速く鋭くなったが、その分、攻撃力が下がっていると感じる。典型的なスピードフォームってことか。
ひたすら手数で攻める。大振りな剣を掻い潜り、足や鼻先に拳を打ち込み、距離を取った。
「……もう、決着は見えてるだろ? 俺は別に墓荒らしとかじゃない。本当に挨拶したかっただけなんだ。退いてくれ」
流石に何度も殴ってれば、クリーチャーか狼かくらい分かる。
機動力特化のフォームになっているとはいえ、一発ンtが当たり前なライダーのパンチを何度も食らったんだ。これ以上やれるのであれば、死ぬことくらい、分かるはずだ。
だが、狼は咆哮を上げると剣を構えた。
「そっか……」
狼が、体を大きく回転させて勢いを乗せた一閃を放つ。
俺は、それをギリギリまで引きつけて躱し、胸に拳を突き立てた。
拳を引き抜くと、どろりと血が流れ出る。ドサッと狼の巨体が倒れた。
「ごめん」
一ノ瀬宝太郎なら、この狼を殺さずに済んだのだろう。
いや、仮面ライダーの主人公たちなら皆そうできたんじゃないだろうか。
亡者を倒しても、罪悪感はなかった。
先ほど殺した連中も、襲ってくるから退けた。
この狼には、言いようのない罪悪感を覚えた。
変身を解除して排出されたケミーたちを労っていると、あの感覚があった。
篝火がある場所じゃないのにと思うも、エスト瓶を取り出し、錬成を開始する。
「万物はこれなる一者の改造として生まれうく」
エスト瓶と、狼が混ざり合ってケミーカードが誕生した。
『ヴァンフェン…』
ファンタスティックのナンバー4、ヴァンフェンリルでした。
ヴァンフェンリルになっても狼だった頃の記憶はあるらしく、ヴァンフェンリル曰く、主であったアルトリウスの名誉を守る為、あの墓を守り続けていたらしい。
不用意に近づいた俺が100%悪いな。土下座して謝った。
『ヴァンフェン…』
気にするなと慰められると、余計に軽率だった自分が情けなくなる。
墓に改めて謝罪した。
「ヴァンフェンリル、図々しい話だけど、力を貸してほしい。でも、お前がここにいたいのなら、ここにいてくれていい。どうする?」
『ヴァンフェン…』
ついてきてくれるそうです。
「ん?」
足元に指輪が転がっていた。
墓守のどれかの私物だろうか? 後でアルヴィナさんの所に持ってこうと思って回収する。ただ、今は疲れた。
一旦、ストーンサークルまで戻って、今後どうするか、考えることにしよう。
仮面ライダードレッド電式…
身長・211㎝ 体重・101.4㎏ パンチ力・13t キック力・15t ジャンプ力・60m 走力(100m)・0.9秒
腕に鋭利かしたブレードがあるも、他のフォームと違い特殊な能力はなく、スピード特化のフォーム。
外見イメージ…風魔の腕・ラビットラビットの脚。全身にサンダーパターン。