新学期が始まってから3日目。私は探索者仲間である相沢春香と模擬戦をしております。
いや、これは仕方ない。だってコンビでやろうって話になっちゃったからね。うん、仕方ない。
「朝倉くんって直属なの!?」
「あぁ、そうだッ!」
「まあ不思議じゃないよね!」
美兎ちゃんから……というよりも組織からもらった俺だけの特訓ルームにいるのは二人。俺と、相沢だ。
互いの実力を知るための模擬戦を行っているのだが、思っていたよりも相沢の実力が高い。魔力や肉体強度以外の
完全実体を持つ剣を自身のと合わせて計10本操っている。ただ操るだけなら俺でも出来るが、剣たちには一本一本魔法式が編み込まれている。
術式事態は普遍的なサポート魔法だが、密度が違う。緻密に作られた魔法は剣を強化し、俺の肉体さえも貫く。
アホ言ってんじゃねえぞ。常時魔力循環しているかつ、「竜性傑体」で竜鱗を顕現させてたんだぞ。なんつー火力をしてやがる。
「
「それ、便利だね。でも、万能じゃない。硬直に剣をぶつければ……」
空を蹴り、避けた先に迫る剣。きっとこのままだと避けれずに負ける。
_____だったら、全力で逸らせばいい
「
「光る……
彼女の表に浮かぶのは驚愕と警戒。どんなスキルかと怪しむ相沢にネタバラシをする。
「俺のこのスキル、
「ありがとね、情報ッ!」
周囲に飛来させていた9本の剣を消失させ、己に宿した一本の剣で迫る。意識が分散していない分、精度が底上げされてる。
まぁ……こっちの方が幾分かやりやすい!!ありがとうね、騙されてくれて!おかげで魔法が打てる…!
「
「当たってないよ!」
「当てようとしてないからな!
魔法式が上手く組み立てられない……いや、分かってる。「
あぁ、クソ。あそこまで緻密な剣を乗っ取るとそうなるよな……。
「はい、私の勝ち。ドミニネイトロードくんはどうしたの?」
「
「ブラフ?」
「このスキル、アホほど大変なんだよ。色々とルールがあってな?」
・一つ、掌握するためにはそれ相応の魔力を捧げなければならない
・一つ、掌握するには当人の情報処理能力、または意識を上回らなければならない
・一つ、掌握失敗の際には一定時間五感のどれか一つが消失する
・一つ、掌握する際に「成功する」と思い続けない限り成功しない
・一つ、「成功する」と思い続けても、心のどこかで「敗北」を想像してしまうと確定で失敗する
「いや……なにそれ?強いけど、ピーキー過ぎない?それ」
「だろ?こいつの強さは使用者の情報処理能力に任されてる。そして、俺の情報処理能力は実力よりも低い。ふっ、終わりだ」
「……そうかな、まだ探索者になったばっかりで私の剣を掌握できてるなら十分じゃない?」
「…そうか?」
浮かない表情をしているのが自分でもわかる。
相沢が言っていることは理解できる。情報処理能力には才能があると見えるんだと思う。
けど、俺の情報処理能力を支えているのは《ドライグ・パンサー》だ。こいつが本来そこまでだったはずの情報処理能力を底上げしてくれている。
こいつがなけりゃ俺は……っと、ダメだな!俺はまだまだ成長期!こんぐらいでへこたれてちゃ強くはなれねえ!
俺は美兎ちゃんに勝利を届けると誓った。なら、こんなところでくたばってる暇はない!!
「…元気になったようで何より。その調子で高め合って行きましょう」
「応!」
相手の実力は模擬戦で知れた。これならばコンビで戦っても大丈夫そうだな。
うし、暴れるぜ!
「……そういえば、朝倉くんを鍛えた人って誰なの?」
「南雲真也、神田美兎、飯田龍弥の三人かな」
「三王!?!?私三王のファンなんだよね!!どんな感じだったの!?」
……もしかしたら、きっと、メイビー。
そんな話をしつつ、来たのはEランクダンジョン『鳴神の遺産』だ。アンデット系の魔物がよく出るダンジョンで、結構稼ぎが良いことで有名だ。
「ゾンビかぁ……うぇえ。得意じゃねえんだよなぁ。
「ダメに決まってるでしょ。素直に戦ってよ」
「はーい」
ゾンビ……腐肉人間とも言われる魔物は、臭い。一回美兎ちゃんのスキルでゾンビと戦ったことあるが、臭いが最悪だ。
この世の汚物を全て詰め込んだかのような臭いがする。他の人よりも五感が鋭い分、より強く感じる。
あー、鼻摘みながら戦いてぇ。
配信義務のため、ドローンを起動させつつ、準備運動を行う。
「うん、行けるね。さぁて、イケイケドンドンで行こうか」
ゾンビが走る。コボルトよりかは速いが、余裕で反応できる範囲だ。
右腕に魔力が集まってるな……他への魔力集中はない。右からか。
…予想通り、右腕の大ぶり。当たったら痛むだろうな。臭いもつくだろうし、あまり受けたくはない。
【
体幹がブレ、前のめりにグラつくゾンビを見届けながら再度【
体勢を立て直しながらこちらに拳を向けようとしているゾンビくんには残念なことだが、次手はもう用意されてる。
「
腐肉を貫き、向かうは相沢。まあまあのスピードで迫る灼熱の煌矢を剣で飲み込み、炎と支援の特性を兼ね備えた武器となる。
「感謝してくれよ。
「うん、ありがとね。随分と熱い……さっすが朝倉くん」
「褒めても何も出ねえよ。
自分が使った擬似魔法なんだが、あまりの炎の強さにビビっちまうな。
魔力剣のスキルを持っているのが俺じゃないから、適用品ではないだろうが、少しは使えるだろ。
さぁ、煌めきを見せてくれ。
「煌剣一式・春風」
ただの袈裟斬りだが、剣に込められている【
結構威力が出ている。
俺と一緒にコンビで戦っている時用の武装なんだが、装着しているとインスピレーションが湧いてくるらしい。そりゃ良かった。
「煌剣三式・虚振」
音を消し去り、ソニックムーブとインパクトをお供に連れて繰り出す突きの一撃。
腐肉を抉るほどのパワーはゾンビを吹き飛ばす。体力はもう瀕死と言ってもいいほどに減っている。
もう少し魔力を込めればゾンビを倒すことも可能だったくせに、こっちによこした。
初めての共闘祝いに最初の敵はくれてやるってか?はっ!そのお気遣い、全力でいただくとしますかね。
「ブーストアップ」
「……じゃあな。
炎の矢はイイゾォ!