走り続けたナマモノの二周目 作:須々木三郎
クラスメイトが自殺しようとしている。
最初聞いたときは、そこまでの関心を持たなかった。
はっきり言って、
ただの死に損ないのヘタレである。
むしろ、そこまでの覚悟を固めた
純粋にスゴいと思ってしまったくらいだ。
ただ、そのための手段として車を使おうとしている。
そのことを聞いた瞬間、ウチのなかの何かがブチギレた。
「…おどれ今なんつった?
ウチの耳がおかしゅうなかったら、
なんかクルマに轢かれてくる、とかえらいフザケた
言葉が聞こえた気がすんねんけど…」
前世ですらほとんど出したことがない声が出ていた。
こんな口調で話されたら、普通すぐには反応出来ない。
ただ、違うのなら反論してくるはずだろう。
そう思って、少しだけ…待ってみたが何も聞こえない。
「どうやら聞き間違いではなさそうやな…
アホか!死ぬなら一人で頑張って死ね!
そんな他人任せの方法で、楽して逃げんじゃねぇ!
しかも、よりにもよってその辺のクルマ使うだと!?
オマエを轢いた運転手の気持ち、考えてみぃ!」
『そんなの…わかるわけないよ!
ボクはただ、父ちゃんと同じ道をたどるだけだ!
犯人は今も母ちゃんの前に姿を見せてない!
きっとボクを轢いた奴も、何も思わないだろうよ!』
…想定外の答えが帰ってきて、流石にウチも驚いた。
でも、それを認めてしまうと、前世の私の努力は何だったんだ、という話になってしまう。
うまいこと話が思いつかなかったウチは、親にすら話したことない秘密をバラすことにした。
何となく、コイツになら話してもいい気がしたからだ。
「…オマエ、前世とか魂とかの存在って信じるか?」
いきなり話が飛んだからか、しばらく無言だった。
返答なんて待ってられる余裕もなかったのでウチは更に話を続けた。
「別に、オマエが信じるかどうかはどうでもええ。
ただ、ウチには前世ってもんの記憶が少しあるんや。
ウチ、前世で人を轢き殺したことがある。
他のことはほとんど忘れてもうたけど、
それだけは、もう、魂に刻まれてて忘れられんのやわ…
わかるか?魂に刻まれるほどの罪なんやで?
一生どころか、来世になっても忘れられん罪やぞ?
そんな罪を、オマエが楽になりたい、って理由だけで
見ず知らずの他人に背負わせようとしとるんやで?
それがどんだけアホなことか、よう考えろ!」
…しばらく答えは帰ってこなかった。
『…わかった、そして、ごめん…。
オマエにそんな過去があったなんて、正直思わなかった』
…まぁ、普通は無理だろうな。
人を殺したことを覚えている中学生がいるなんて、
言われたところで信じるとも思えないし。
『死ぬのは諦めるよ。なんかボクのイジメなんて、
キミの話を聞いてたら、なんか些細なことに思えてきた。
…そういえば、キミもボクと同じでぼっちなんだよね?
だったら、せめてボクらは…その…
友だちにならないか?
別に…無理にとは言わないけど…』
今度はウチがフリーズしてしまっていたらしい。
後々聞いた話だと、風呂が沸いたことを伝えに来た
義母が部屋に入ってくるまで、ウチは気絶していたそうだ。
子機はもったまま。通話は…当然切れていた。