走り続けたナマモノの二周目 作:須々木三郎
母ちゃんが入った後のヌルいお風呂に入りながら、
さっきようやくちゃんと名前を覚えることが出来た
自己紹介も、今振り返ってみると相当なものだった。
「皆さま、
今年のはじめ辺りにこの町に引っ越してきたばかりで、
正直何もかもわからないし足りないウチですが、
どうかここに居させてくれると助かります」
そして、よろしくとも言わずにアイツは椅子に座った。
そのまま、彼女は机にもたれかかってしまった。
次の人の自己紹介が終わってもそのままだったアイツは、
ボクが自己紹介をする前に、先生に保健室に連れてかれた。
先生がいない教室で、数人のクラスメイトの雰囲気が変わったのを感じた。
その中には、ボクがいた小学校で、誰か覚えていないクラスメイトをいじめていた、既に制服をきっちり着ることを諦めてしまった男子や女子もいた。
今振り返れば、その時点でアイツはいじめの「
次の日。アイツの机には菊の花が活かれた花瓶があった。
流石にそれはどうかと思って、ボクは片付けようとした。
そしたら、既に髪を金髪にしていた男子に
「じゃあオマエが
…その時は怖くて、ボクは自分の席に座り直した。
アイツがクラスの扉を開けた。
机を見たアイツは、全く表情を変えなかった。
そして、花瓶を机の左上に、右手だけで慎重に移動させ、
そのまま席に座った…半分呆れているようにもみえた。
朝礼の時間になり、担任が教室に入ってきた。
先生はアイツの机を見るなり、こう言った。
『あー、お前がどれだけ花好きかは知らないが、
花瓶は勉強の邪魔になるので机には置かないように』
…えーと、他に言うことがあるようにも思えるんだけど。
イジメられてることが明らかなのに…それでいいのか?
「申し訳ございません。ですがウチでは手が足りません。
先生でも誰でもいいので、この花瓶を
どこかに移動させていただけると助かるんですが…
あ、菊の花はもったいないので持って帰ります」
…それについてのアイツの返答も、全く理解できなかった。
確かに、右手一本で花瓶をどこかに持っていくのは難しいのは理解できる。
だが、「死ね」というメッセージが込められた菊の花を、どうして持って帰るなんて発想が出てくるんだ!?
わけがわからないよ。それがアイツ以外の全員の感想だったのがしれない。
結局、先生もクラスの誰も花瓶に触れようとしなかったので、ボクが教室の後方にあるロッカーの上に移動させた。
そして放課後、アイツは約束通り、一本だけの右手で
その菊の花を大事そうに持って、帰っていった…
…本当にアイツは何者なんだ?
何か人間の価値観が通用しないようなナマモノなのか?
…今振り返ってみると、
なんか、気づいたらノルマクリアしてたので、
キリもいいので今日はこの辺で失礼します。