走り続けたナマモノの二周目 作:須々木三郎
『もしもし、聞こえますか?』
夢?の中で突然誰かの声が聞こえた。
というか、これを夢と言っていいのかよくわからない。
いつものように映像を見せられるだけじゃない。
ちゃんと考えることも出来るし、話すことも出来そうだ。
「はい、聞こえます…
『あーよかった。
オッサンの声が明らかに安堵した。
ていうか、数百年後の未来?なんで現代の担当じゃなくてそんなのがわざわざ
そんなことを考えていると、あっちから話を切り出してきた。
『まず、あなたには一つ残酷な話をしなければなりません。覚悟は出来てますか?』
…死ぬってこと?永遠の無が迎えに来るってこと?
そんなことならとっくに覚悟が出来てるよ。
『…大丈夫そうですね。ならお伝えします。
あなたは、まだ死ぬことが出来ません。』
…え?私、この人生をまだ続けなくちゃならないの?
『そういうことになりますね…
あ、失礼。勝手に思考を読み取らせていただきました。
ちなみに、このままだと翌朝すぐに髭もじゃの男…
誰かまではよく分かりませんが、彼に見つかります。
そしてあなたは…通常ならそのまま病院行きです。
そして、左手を切断されたうえで生き永らえます。』
…は?この左手、もう使い物にならないの?
そんな重症なのに、普通に人生続いちゃうの?
…そんなことなら死んだほうがよっぽどマシなんだけど。
『あなたもある程度分かっているとは思いますが、
そこまでこの世の中って甘く出来てないんです。
…
…え?てことはあなたは私のこの運命を変えてくれるの?
『左様でございます。あなたは
仮にこの場で自殺した場合、あなたは親よりも先に自らの意思で命を絶ったという大罪で地獄行きです。
賽の河原…ってご存知ですか?そこで延々と石積みです。』
…えーと。それならまだ生きてたほうがマシな気がするけど。
『いえいえ。そこさえ抜きにすればあなたは罪なき魂です。
ただ…一つだけ受け入れてほしい条件があるんです。』
…条件?それは…内容にもよるけど。
『条件というのは、あなたが抜けた後のその肉体に、
ある男の魂を入れさせて欲しいんです。
あなたがいる時代からそう遠くない未来に
彼は死んだらしいんですが、その魂が、
あろうことか数百年間放置されてたんですよね…
本当なら魂を破壊してしまって、
化石燃料の使い過ぎとかいう
とてつもないエネルギーを蓄えてて、
例えるなら核兵器みたいな状態になってるんですよ…
そんな魂破壊したらどうなるか、想像出来ますよね?』
…えーと。そんなもん
『ご安心ください。ちゃんと適切に処理はします。
現代のあなたの魂と、
それを交換、もしくは現代に彼を連れてくるだけでも
それなりにエネルギーを消費することが出来ます。』
…そんなもんなんだ。被害がないなら別にいいけど。
『あなたは前向きに考えてくださってるみたいですね。
ではあなたの今後の処遇について考えていきましょう。
まずはあなたの次の人生…本来なら転生先に
人間を指定することは出来ないんですが、
そのときに、今の記憶を持ち越して、
強くてニューゲーム…みたいな状態にすることも
一応可能ではあるんですが…どうしたいですか?」
…
『かしこまりました。生まれ変わる時代についてですが、
この時代がいいですか?それとも未来がいいですか?
後は、異世界への転生なんてのも最近流行ってますが…』
…未来とか異世界は少し怖いから、可能ならこの時代で。
『了解しました。後は…転生時点での環境についても
ある程度融通がきくみたいですね。
何か希望みたいなものはありますか?』
…出来れば一人っ子か、いても兄弟姉妹は二人まで。
後は…せめて今よりはもう少し都会に産まれたいかな。
『…今まで話を聞いてきた方々とは随分違いますね。
もしその条件だと…エネルギーの消費量が少なすぎます。
チートとかスキルとか…何か欲しいものないですか?』
…チート?スキル?そもそも何を言ってるかわからない。
でも…そうね…健康に過ごせて、どこに行っても困らない。
それくらいの何かは欲しい気がする。
後、言い忘れてたけど日本人として産まれたいな。
『かしこまりました。それでは病気に対する強い耐性、
それと話せる言葉なら何でも扱える能力をつけときます。
後は…魂が持ってる幸運値が低すぎる気がするので、
少しラッキーなくらいまで幸運値を底上げして…
って、流石にここまでやると今度は消費量が多すぎるか…』
いやいや、流石にそこまでしていただかなくても…
『いえいえ、折角ですからあなたには幸せになって欲しいんです。どちらかと言うと
だったら足りないエネルギーは…そうですね…
あなたの身体に入る予定の
…え?それって大丈夫なの?その人苦労したりしない?
『ご安心を。この人を先ほど裁判してみた結果、
まずは、あなたと同じく親より先に死んだ罪、
というか、それが霞んで見えるくらいの大罪を、
なんと2度も犯したなかなかの極悪人です。
普通に地獄行きです。というかそれでも生温いです。
それに、この人の性格的に、幸運な生活よりも
不幸な、ハンデのある生活のほうがいいみたいです。
だから何も気にしなくていいんです。』
…だからってその人が苦労してもいいことにはならないよ?
『いいんですよ。本来ならこの魂、その場で破壊されて、それこそあなたが一番恐れていた
そんな魂に、やり直しの機会を与えてあげるんです。きっと感謝されると思いますよ?
だからいいんです。
あなたは、幸せな日本人として生まれ変わる。
少なくとも、我々は幸せな未来が待っています。
不幸なんて、全部アレに押し付けちゃいましょう。
幸いにも、彼が生きてた時の扱いはナマモノレベルです。
それに比べたら、人権があるだけまだマシだと思います。』
それなら…うーん…いいのかな?
『了承していただけたみたいですね。では開始します。
これからあなたの意識をシャットダウンします。
次に意識が戻るのが…胎内なのか産まれたときか。
そこまではわかりませんが、幸せな未来は間違いないです。』
いや、まだあまり納得はしてないんだけど…
ちょっと、勝手に話を進めないで…
流石にその人可哀想過ぎるよ…
とか考えているうちに、ウチの意識はシャットダウンされた。
何か今回は異様に長くなっちゃいました。
普段なら1000字をひねり出すのも苦労するのに…