走り続けたナマモノの二周目   作:須々木三郎

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昨日、間違えて書き溜めの一部を投稿してしまいました。
お騒がせして本当に申し訳無い。
…改めて見直してみると、書き足したいエピソードがどんどん出てくるんです。
今後もこういう間違いをすることがちょこちょこあるかもしれませんが、
33-4、じゃなくて3時34分に投稿された分以外は間違えて投稿した可能性が高いので気にしないでもらえると助かります。


右と左の区別もつかない
起きたら色々とれていた


頬に走った痛みで、突然私の意識は復活した。

 

「おい、(はじめ)!無事か!?」

髭もじゃの男が私に向かって語りかけてくる。

正直誰かわからない。そんな感じで答えようとすると、いきなり左手に激痛が走る。

顔を動かす元気もない。正直わけがわからない状態だった。

少なくとも私は(はじめ)なんて名前ではないはずだし、

そもそも私の父親…にあたる人間は四半世紀前に死んでいる。

 

「左手がつぶされてやがる…とにかく救急車は呼んだ。

 もう少しの辛抱だ。気を強くもて。」

左手が何か重たいもので潰されている…そりゃ痛いはずだ。

話をする気力はなかったが、幸いにも意識が飛びそうな感じではなかったのと、この人がなんだか憎めなさそうに見えたので少し安心した。

しばらくして救急車とレスキュー隊が到着し、私は無事に救助されて救急車の中に入れられた。

そこで緊張の糸が切れたのか、私は意識を手放した。

 

 

次に目を覚ましたとき、私は病院の個室にいた。

とりあえず右手にナースコールが握らされていたので、

押したらすぐに医師と看護師がやってきた。

 

それから直ぐに簡単な診察と、術後の経過観察が行われた。

つぶされてた左腕は、もう肩からごっそりなくなってた。

記憶喪失とも認定され、近いうちに精密検査もやるらしい。

 

そして深夜。なぜかそこにはさっきの髭もじゃがいた。

彼は、おもむろにズボンとパンツをおろした。

先日まで見慣れていたものが見える…すごい小さいけど。

そして、彼は私を使()()()

どう表現していいか最初は思いつかなかったが、

どうやらこの身体の持ち主は、こう呼んでいたらしい。

 

でも、私からしてみたら、そんな言葉も使いたくない。

彼は、私を使って()()()()()

それくらいにしか思えない、自分本位な行為だった。

受け入れる側は…刑務所の中でなら経験したこともあるし、

突っ込む側も…ちゃんと異性での経験がある…はず。

それくらいの浅い経験しかない私でもわかった。

コイツは…私を()()()()()奴らと一緒だ。

自分が気持ちよくなることしか考えてない。

相手を生体パーツか何かとして扱っている。

 

いくらコイツが前の身体の持ち主(かのじょ)の父親で、私の命の恩人だとしても、こんな奴野放しにしておくわけにはいかない。

その後どうなるか、なんて考えることもなく、私はナースコールを押した。

愚かな選択だったかもしれないが、後悔はしていない。

 

最終的に、髭もじゃは警察に連れていかれた。

これで万々歳…となればよかったのかもしれないが、こんな奴でも、この身体の母親にあたる人物は愛してたらしい。

そんな夫を刑務所に放り込む原因を作った私を、

彼女はこれ以上育てることを拒否してしまった。

…そんなこと今の日本で出来るかは正確には知らない。

でも、なぜか生家を出ていくことになってしまった私。

児童養護施設に入ることも少しは覚悟していたが、

最終的には、意識が戻った場所から遥か南にある、

遠い親戚の家に引き取られることになった。

 

元々この身体についていた苗字なんて覚えてないが、

引き取られた私は田上(たがみ)一と名乗ることになった。

新しい家に引っ越した私は、四月から新入生として

近くの中学校に通うことになるらしい。

 

ただ、そこでの生活がうまく行きそうかと言われると…

正直言ってかなり難しそう、というのが私の感想だ。

まずは左腕がない。これだけで嫌でも目立つ。

コミュニケーションでカバー出来ればいいのだろうが、

記憶喪失の前後で精神的特性も変わってしまったらしい。

言語を操る能力や、相手の感情を感じる能力。

そういったものが恐ろしいほどに低下してしまったようだ。

そんな説明を医師から受けたとき、

義理の母はすごく泣きそうな顔をしていたのを覚えている。

…でも、前世の私も正直似たような特性を持っていた。

悪いところはしっかりと引き継いで、

良かったはずのところは今のところ出てきていない。

引き継いでないのか、そもそも持ち合わせていないのか。そこまでは正直わからない。

 

それでも、ポジティブに考えられるだけの要素は十分ある。

まずは12歳という年齢。学ぶ環境も時間もあるし

挽回しようと思えばまだまだ間に合うはずだ。

そして、女という性別。普通の人間がどう思うかは

正直私にはわからないが、私としては最高である。

料理や洗濯といった家事もちゃんと教えてくれるはず。

普段の育児すら放棄気味で、全くそういうことを

学ぶ機会がなかった前世が特殊すぎただけかもしれんが。

 

ちゃんとソプラノの音域が出せるのも魅力的である。

前世では、どちらかというと女性が歌う曲が好きだったが、

テノールすら満足に出せなかった私は満足に歌えなかった。

これから流行るであろうアニソンとかも完璧に歌える。

それだけで私は、少しワクワクしてしまっている。

 

少なくとも、847だか864だか1107だか覚えていないが、

運転中にラジオを聴くことが唯一の楽しみだった、

走り続け償い続ける前世よりはマシだろう。

 

その時の私は…それくらい明るく考えていた。

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