走り続けたナマモノの二周目 作:須々木三郎
それに合わせて、他の話も少しばかり修正を加えてます。
暇があったら読んでみていただけると助かります。
どうやら、母が仕事を終えて帰宅したらしい。
何となく出迎えたほうがいい気がしたので、玄関に向かう。
そしたら、母は靴を脱ごうとしたのをやめて、逆にウチに靴を履くよう促した。
わけがわからないので聞いてみると、どうやら買い物に付き合ってほしいらしい。
右手しかないウチが何の役に立つのかわからないが、とりあえず何の疑問も持たずに、この前納車されたばかりの軽自動車の助手席に座った。
行き先は、隣の市にあるショッピングモールらしい。
正直この辺の土地勘はまだ全くわかってなくて、
買い物が出来る場所…と聞いて思いつくのは学校の近所にある総合スーパーくらい。
いつもならその辺に自転車で買い物に行く母が、今日に限ってウチを連れて、どこかの占い師みたいな名前のショッピングモールに行くことにしたのか。
聞いてみたところ、どうやらこの家では3台目になる母専用の軽自動車の試運転も兼ねている、とのことらしい。
いくら軽自動車だからとはいえ、家族がそれぞれクルマを持つことが当たり前のように話しているのを聞くと、ウチが意識を取り戻した場所程ではないが、この町が相当な田舎なのを改めて実感した。
母は目的地をカーナビにセットしている…のだが、その手つきは明らかに使い慣れている人のものではない。
となると…母はペーパードライバーの可能性が高い。
せめて安全運転をしてくれ…そう思いながらウチはシートベルトを締めながら祈った。
家の近くの生活道路ではまだマシな運転だった。
しかし、中央線がちゃんとひかれた道路に出た途端、母の運転は一変してしまった。
助手席からスピードメーターはあまり良く視えないが、少なくとも道路標識が指定している制限速度より恐ろしく速い。
それでいて、前車との車間距離が詰まっているわけではなく、むしろ時々広がっていく。
となると、これがこの辺りの「安全速度」なのだろう。
…祈る手に更に力が入った。
嫌な予感は、赤信号の交差点で的中してしまった。
信号が赤になったのを確認した母は、まず強いブレーキをかけて速度を一気に落としに行く。
仮にそのまま停車すると、前のクルマとの間には、それこそ大型トラック数台分の車間距離が空いてしまう。
それを防ぐために一旦ブレーキから足を放した母は、あろうことかアクセルを踏んで加速した。
その後、先ほどよりも更に強くブレーキを踏んで、標準的な車間距離で停車した…
この運転…ウチは「イナズマ運転」なんて仮称をつけたが、こんなブレーキングが赤信号の度に繰り返されるのだ。
道のりが半分を過ぎる頃には、軽い乗り物酔いを起こしていた…ウチが特別弱いわけではないと思いたい。
終盤、片側2車線の国道に出た後は、状況が更に悪化した。
スピードが更に上がった。信号がある一般道のはずなのに、相変わらずよく見えないメーターは、80よりも更に上の数字のところにあるようにしか見えない。
しかも、それでもってこのクルマが特別に速いわけではない。むしろガンガン抜かされていく。信じられん。
そして、大きな川を渡りきった辺りで、信号が赤になった。
当然のように、母はイナズマ運転でもって停車した。
減速度は半端ない。もし後部座席で油断していたら、ウチは前席に思いっきり頭をぶつけていただろう。
それがトドメになったのか。私は猛烈な吐き気を覚えた。
近くにあった空のレジ袋をひったくるように手に取って…その後の数秒間に何があったかは…正直思い出したくない。
出すものがなくなった辺りで、また母はイナズマ運転をした。
そして、ウチの意識は刈り取られた。
この話はあくまでフィクション…ですが、
イナズマ運転については、似たようなことをしていた知り合いが過去にいたような気がします。
記憶違いであってほしいし、なんでその人がゴールド免許をもっていたのか不思議でならないけど…