走り続けたナマモノの二周目 作:須々木三郎
この話から投稿時間を18時ちょうどに変更します。
そのため、本日に限って2話投稿しております。
意識を刈られた
郵便配達の赤いバイクの目の前で、階段から足を滑らせて右手をついて痛がる男の姿が見えた。
今度は、すごい薄いゲーム機か何かを、運転しながら使っていた男が運転する車。
最早走る凶器としか思えない車に轢かれた誰かの無念と痛みが伝わってきた。
その次は、稼ぐ手段を奪われた男が、ホームで力尽き、貨物列車が近づく線路へと落ちていく光景が見えた…
いつの間にか目が覚めたウチは、なぜか義母の車のトランクに敷かれた長座布団の上に寝かされていた。
買い物は既に終わっていた。というかもう家に戻っていた。
いくら横向きに寝かせたとはいえ、義理の娘を放置して買い物に行って、そのまま運転して帰って来るとは…なかなかである。
これだけ気絶?していたウチが無事だったか…というと、当然ながら無事なわけがなかった。
まず、前世の私の記憶は殆どが消え去っていた。
思い出せるのは、危険運転で以て無実の人を轢き殺したこと。
いくら不可抗力とはいえ、誰かに自分を殺させたこと。
そして、殺した罪を償いきることなく力尽きたこと。
…流石にこれだけの業は、魂に刻まれてしまっていたらしい。
後は、この身体に関する情報も、ほぼ引き出せない。
実の母親がどんな人物だったか、名前すらも思い出せない。
自分が長女だったことは覚えているが、弟や妹が何人いたかは思い出せない。
今お世話になっている
唯一思い出せる人物は、命の恩人ではあるが、それ以前に人間として赦すことが出来ない、あの
そのことを正直に伝えたら、なぜか義母の運転で近所のボロい総合病院に連れて行かれることになった。
ついさっき気絶したばかりなので、ウチは全力で拒否したが、歩いていくには微妙に遠いらしく、仕方なくウチは軽自動車の助手席に座った。
精密検査の結果、普通の生活を送る分に必要な記憶は残っていたし、学力も小学校を卒業した女子としては通常らしい。
ただ、逆に言えば、国立大学に現役合格出来た前世の私が持っていた、それ以上の知識は全て忘れてしまっていた。
ついでに、計算速度も人並み…ではあるのだが、今までに比べたら遥かに遅くなってしまった。
少しばかり絶望しながらウチらは家に向かっていた。
片側1車線の中央線が引かれた道路。
義母はいつものように「安全速度」で走っていた。
…それが一般道の法定速度すら超えていたように見えたのは、悪い冗談だと思いたい。
ふと、目の前を何かがゆっくりと横切るのが見えた。
前世と違ってまとも過ぎる視力を有していたウチは、
とっさに「にゃんこ!」と叫んでしまった。
…それがいけなかったのだろう。
義母は、焦って全力でブレーキを踏んでしまった。
全力で前に引っ張られたウチは、また意識を刈り取られた。
…もうやだこの義母。今からでもチェンジ出来ますか?