人生2回目でパン屋開いたら客に泣かれた   作:ねこねこにゃごにゃご

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ペット視点

 

 

 ___バキベキ、ボコッッ……。

 

 

 嫌な音の先を見れば怪異はそこにある。

 なぜ、ここに転生した。

 

 生まれた瞬間に自我を持った俺は人間ではない。

 そして今現在、これまでにない危機に瀕している。

 握られた瞬間にありえない方向に曲がった玩具が可哀想でならない。

 それも小さい女の子が握ってだぞ?

 

 悲報。転生先が呪術廻戦という漫画で、さらに知らない女の子の家だった件について。

 あれか。死ぬ時に色んな負の感情が生まれたからか。いや分かんねーよ。

 怪力娘はこれ以降トラウマに……なった…………。

 

 

*

 

 

 時間が経てば慣れちゃいけないものも慣れる。

 

 少女は呪霊の俺をペットだと思っているらしい。いやいや待てよ親が見えてないんだぞ!

 それに俺は呪いだ。少女になど屈し____。

 

 「ふふ、可愛いね」

 「……」

 

 少女はふわりと微笑み、俺の呪力に触れながらも、俺の頭をヨシヨシと撫で続けた。その久しぶりの温かさに何やら目頭が熱くなる。

 呪霊として生を受けて初めての出来事に心がじんわりと温かくなった。

 

 ……そうとも。開始1時間で屈した。

 決して絆されやすいとかそんな訳では無い。無いと思いたい。

 仕方ないから契約してやるよ。そんなサービス精神で、やり方なんぞよく分からないけど主従関係を結んだ。

 

 

 

 が、それがまさかの出来事を呼ぶとは思うまい。

 

 

 

 少女は米が苦手で、パンが大好きだ。

 山菜を採りに行こうとして、田舎特有の足が悲鳴をあげる道を通った。香りと身体に良いものを採取したいらしい。

 そこである時村に辿り着いた。閑散、というよりは立て籠ってこちらを伺うに近い。しかも村人達全員の目が狂ったように鋭い視線を浴びせてきた。

 まさかのミミナナの村に入っていた件について。もう俺はもう何も言うまい……。

 俺はどうやら少女限定で、触れられると一般人に見えてしまうらしい。

 つまり呪霊が見えてしまった村人Aが騒ぎ出してだな。そのあと村人Bがやってきて、村人C、D、E、F、Gと増えていって大事になった。

 村全体に騒ぎが響き渡ったようで、村人は俺と少女に刃を向け始めた。

 思わずチベスナ顔になって無言と化した。

 いや元々喋らないけれど。

 呪霊が見えるなんて気持ち悪いだの、気味悪い現象はこの子達のせいだの。そう言われて悲しい仕打ちを受けてきた女の子2人が村に居ることを俺は知っている。

 …………そしてその女の子2人が、少女のおかげで助かったのも進行形で悟った。

 気味悪さは俺達のせいにされ、逆に女の子達は『誤解されていた』という形で今までの不憫な生活から解放されるらしい。良かった。

 原作改変なんて俺がいる時点で狂ってるからいいんだよ。助かることは悪いことじゃない。

 だけどな。助けた方法がなんか思ってたんと違う。高望みしてないけど村人混乱させるってどゆこと。

 泣いた。少女が村人達に「お前が今までの原因か!!」と叩かれてて「山菜知ってますか?」とスルースキル高めてるのも泣いた。

 すぐに間に入って助けたけど。

 なんか、思ってたんと違う。

 

 

 少女は今度はミミナナ達に囲まれていた。

 ボロボロの服を着て、薄い傷跡が酷いこと何年続いていたのかが伺える。

 そして少女は電話番号を教えていた。

 やめろぉぉぉ!!! これ絶対あの前髪さんが来る奴だろぉぉぉ!!! 

 

 「乗せて欲しいって。行こう?」

 

 こてん、と首を傾げた少女に溜飲を下げる。

 フラグ建築士な少女なもので目が離せない。本当に、仕方ないな。

 仕方無しにミミナナを背中に乗せて高速散歩した。

 

 

 

 帰り道に虫みたいに小さい呪霊が居たもので、口の中に入った。

 そしたら呪力アップしたんだけど。

 転生特典が無駄に凄かった。

 

*

 

 少女はパンが大好きである。

 だからパン屋を開きたくなったのも頷ける。

 でもな。

 

 ナナミーーーーーンんんんん。

 きっちりとネクタイを締めたスーツ姿で、背筋を伸ばした綺麗な歩き方で入ってくるナナミンが眩しいッ!!

 ファンとしては会いたいキャラではあるが、今世は呪霊。

 つまりは祓われる側であるのだ。

 俺はまた地獄を見たくないので足が震え始める。

 

 けれどやっぱり生ナナミンを見たい訳で。

 体をビクつかせながら、閉じられたドアの窓から覗く。するとナナミンらしきサラリーマンと目がばっちり合った。

 そして着火したようにナナミンの右手に呪力が込められる。

 ぎゃぁぁぁぁ待って!?待って!? ちょ、ナナミン、それ呪力!! 呪力右手にこめちゃダメだから!!! 

 俺!! 死んじゃう!!

 

 「あ、アレですか。私のペットなんです」

 

 そう言った彼女のおかげで助かったが、俺ってばやっぱりペットだったのね。トホホ。悲しんでいると、またナナミンと目が合う。

 しかしすぐに目を逸らされ、今度は驚いた表情を見せた。

 彼女とポツリポツリと喋っているナナミンは、コロコロと表情が変わって感情豊かに見えた。

 にしても、あまり声が聞き取りづらいのが憎い。

 じっと見ていると、ナナミンは顔を手で覆い始めた。

 

 これは?

 もしかして??

 

 そっと彼女がお高いティッシュ箱を置いたのが見える。あれは……、セレブなティッシュ……!!

 そしてナナミンが泣いた……?

 

 そんなに彼女に酷いこと言われたのか??

 トラウマは分かるぞ……。俺は小さくナナミンに合掌した。

 

 

 

 

*

 

 

 「七海ー! オススメのパン屋ってここ?」

 

 目ん玉飛び出そうになった。

 見た事のある自他ともに認めるナイスガイの五条悟に目が釘付けになる。長い足で「グッモーーニーーング!」と入ってくる五条悟が困惑と絶望の涙を促す。

 待って。1級以上の呪術師が2人居るんだが……!!

 五条悟は俺を見るや否や、人差し指と中指が合わせようとするのがスローモーションで見えてきた。

 ガクガクブルブルと震えていると、またもや彼女が説明?っぽいことをしてくれる。よくやった主!!!

 五条悟の俺に向けていた冷たい視線がフッと消えた。

 怖いっ!! 死ぬかと思った。

 

 そんな五条悟も彼女に酷いことを言われたらしい。

 あの時のナナミンみたく、天を仰いでいる。目隠しでよく分からないけれど微かに頬が赤くなっているような。

 あ、お土産貰ってる。もしかして賄賂か。

 本当に何を言ったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 呪術師は会うだけで俺に絶望を与えてくるが、その実、姿が見えないと逆に不安になる。

 それは『原作を知っている』からこそで、主にとってはまた別のフィルターが掛かっているのだろう。

 

 「お客さん、最近来ないね……」

 

 そう言った彼女は、俺が原作を知っていることを知らない。

 言っちゃいけないんだ。

 ナナミンが今戦っていることを。

 

 先程分けられたパンをぱくりと食べてみる。

 味も心もしょっぱかった。

 

 「寂しいね……」

 

 ポツリと呟いた彼女の横顔は寂しさに染まっていて。

 そんな時、柄にもなく香箱座りしていた足がふらりと立つ。後ろに引き下がってばかりの俺だったがこの時は何となくだった。

 言っちゃいけなくても、行動に出すのは悪くは無いんじゃないだろうか。

 

 悲しそうな顔でパンを食べる彼女なんて見ていられなかった。

 理由はナナミンじゃないのは、ナナミンに悪いけどな。

 

 幸いにも、1級術師ことナナミン直々に「特級」と言われたことがある。

 だから力には自信がある。

 渋谷にはうじゃうじゃと呪霊が居ることだろう。

 そんな場所には彼女を連れて行けず、___1匹で店を飛び出してきた。

 

 

 置いていった風に見えたのか、彼女を悲しい顔をさせてしまった。

 そんな罪悪感が足を速める。

 痺れる足に鞭を打って、それでも渋谷へと向かった。

 

 

 確か原作で言っていた4枚の帳の中に『呪霊』の指定は無かったはず。

 渋谷駅に走っていくと、すぐに主人公こと虎杖悠仁の背中が見えてきた。虎杖悠仁はこちらを振り向いて、すぐに戦闘態勢になって怖い顔をしてくる。

 ……のだが、俺が「乗れ!!」と叫んだことでポカンと呆けた顔が見れた。

 1寸でもタイムロスは無い方がいい。呆然としている虎杖をしっぽで巻くとそのまま背中に載せる。

 渋谷駅に入って、気配を探りながらまた走った。

 

 中では原作通りに呪霊が沢山いた。感情を無にして、呪霊じゃないモノも食いちぎって片付ける。

 そうして道をがむしゃらに作っていった先、今にも壊れそうなナナミンの後ろ姿が見えた。

 なぁ、ナナミン。

 泣かせないでくれよ。

 

 ____やり甲斐なんて曖昧な理由。

 原作のナナミンの言葉が脳内で再生された。

 

 「やり甲斐なんてのは作ってくもんだろ!!!」

 

 ナナミンの前で、呪霊の姿で、初めて声を出した。

 びくりと跳ねた半壊の身体がゆっくりとこちらを振り向く。

 

 真人が俺を見て「特級!?」と目をかっ開きながら叫んだ。背中に乗せていた虎杖は言うまでもなく真人の方へと走っていく。

 俺はと言うと、ナナミンを咥えて、真人を完全無視して、改造人間を蹴散らしていった。

 本当は家入さんの所に真っ直ぐに行くべきだけど、足は自然と彼女の方向に向かっていた。

 渋谷は危険だが、彼女を連れたのならば家入さんの所を拠点にして守ればいい。

 

 今は、一刻も早く___。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……喋れたんですね」

 「黙ってナナミン」

 「…………呼ぶな」

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

硝子side

 

 

「なんだアレは……」

 

 見つけられたのは、遠くから走ってくる未確認の獣型呪霊。触れるだけでもおぞましい姿の呪霊に、何やら人が乗っているのが見えた。

 

 次の瞬間、一瞬にして目の前に現れた先程の呪霊に緊急態勢を取る。

 が、背中から降りた女と見覚えのある男が居たことに気が緩んだ。

 

 女は言った。

 

 「あ、これペットです」と。

 

 ペットって何だっけ。

 

 

 

 

 




もしも、のペット視点()です。
本編と捉えるかは別で。





ペット()
 かっこの中は想像にお任せする。
 前世はほどほどに働いてほどほどに楽しんでた男。今世は『ほどほど』が消えて毎日がパーリナァァイ。最近嫌だったことは軍隊堅麺麭(トンカチで割って食べないと歯が死ぬパン)が机に蜜柑と共に置かれてあったので間違って食べてしまったこと。歯は折れなかったが、人間さを失ったことを痛感して心が折れた。
 好きなキャラは野薔薇ちゃんとか、真希さんっぽそう。
 タイプ話したら東堂に好かれそうなペット()
 夢主()になんだかんだ絆されてたなぁ。面倒見てやるか、っていう妹を見てる感覚。
 トラウマは夢主の幼い頃の力()と、五条の冷たい視線と、七海の死にかけの姿。





夢主
 お客さんんんんんん。
 七海と五条に酷いこと()をしている人、らしい。
 玩具を壊せたのは単に玩具が脆かっただけなんだが、ペットは硬い玩具だと誤解。その誤解という奇跡が主従関係を生ませた。
 フランスパンで応戦できないか考えてペットの背中に乗っている。





ナナミン
 意識が朦朧としながらも夢主に出会えたことに感謝している。





五条
 (五条)








続きのプロットが何故か『ペット』の3文字しか入力されてない。
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