今年度初の特別試験である無人島サバイバル試験もすでに三日目に終わろうとしていた。まあ私達Cクラスは一部を除いて二日目にリタイアしているため船の上で待機してるだけなのだけど。そんな事を考えながら船のデッキの柵にもたれかかりながら無人島を眺めている私に足音が近づいてくる。
「浮かない顔をしてますね。龍園君の作戦に不満がおありですか?」
そう言いながら椎名さんも私の横の柵にもたれかかる。後ろから石崎と西野さんもこちらに歩いて来ている。
「不満、とまではいかないけどまあちょっと嫌だったかも。」
そう言うと石崎が私の発言に不満があるのか噛み付いてくる。
「なんだよ嫌って。龍園さんの作戦だぜ?何も問題ないだろ!」
「そう。問題ないの。だから嫌なの。」
「は?お前何言ってんだ?わけわかんねえぞ。」
「ふふっ、なるほど。そう言う事ですね。」
椎名さんがそう言うと石崎は意味がわからんと言う顔をしている。一応説明しておくか。
「無人島で装備もろくにない状態で五日も過ごすなんて無茶もいいとこでしょ?でも多分何とか出来るって思ってる。龍園も私も。だから止めても無駄。まあどのみち私に何か言われて辞めるような男じゃないんだけど。」
「??おい、西野、つまりどう言う事だよ。」
「あー、つまり心配だから止めたかったけど龍園は止めても無駄だし何とかなるのはが分かってるから止めなかったって事。でもたとえ心配なかったとしても心配するでしょ。そういう事よ。」
「??なんかよくわかんねけどよ、月下ってやっぱ龍園さんのことまだ好きなん うっ!」
「余計なこと言わない!」
「イッテェな!殴ることねえだろうが!」
私の話が終わると今度は石崎と西野さんが言い合いを始めてしまった。そろそろあの誤解も解いておいた方がいいか。
「石崎、私と龍園の事ちゃんと説明したいの。だから聞いてくれる?」
「え?いやそれはいいけどよ、別に無理に話さなくてもいいんだぜ?いやまあ俺が余計な事言ったせいなんだけどよ。」
「ううん、話したいの。出来れば椎名さんと西野さんにも聞いてほしい。いいかな?」
そう言って二人を見ると頷いてくれたので私は話し始める。
「私と龍園が知り合ったのは中学の頃なんだけど…」
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中学二年 十一月
私はお弁当を持って校舎裏へ向かう。肌寒い季節にわざわざ教室を出て外で食べるのは友達がいないからというのもあるがもう一つ理由がある。
「金持ってこいって言っただろが!」
そう言って金髪の男子達がメガネをかけた男子を蹴る。私はいつも止められずにそれを眺めてる。私に出来るのはせいぜいいじめの現場を撮影しておくことくらいだ。私が助けに向かう、もしくは教師に報告すればいじめは止められるかもしれない。でも女子の私が彼を助けるのは彼のプライドを傷つけてしまうかもしれない。だから私は彼が教師に訴える際の証拠になるように撮影をしておく。いやこれは体のいい言い訳だ。私に力があれば彼のプライドを傷つけず上手く助けられた。私はあの頃から何も変わってない。そんな事を考えているとなにやらいつもと彼らの様子が違う。物陰から覗いてみると彼らの前に一人の男が現れる。この学校で一番の有名人。龍園翔だ。
「随分面白い遊びをしてるな。だが目障りだとっとと失せろ。」
その一言だけでさっきまでさあんなにイキっていた金髪の男達が蜘蛛の子を散らすように去っていった。荒れた私達の中学の中でも頭ひとつ抜けてる男。この学校で彼に逆らう人間などいないだろう。用は済んだし私も教室へ戻ろう。そう思っていたら後ろから声をかけられた。
「おい、そこで覗いてるお前。何をしている。」
姿は見られてないはずなので走って逃げようかとも思ったがバレていたら後が怖いので私は大人しく龍園君の元に向かった。
「それで?こんなところで何をしていた?」
「その、いつもここでメガネの子が暴力を振るわれてるからその撮影を…」
「ほう?止めもせずに撮影してたのか?いい趣味してるな?」
「ち、違う!証拠のために撮ってただけで別に広めたりなんかする気はないよ!」
「あ?そいつを助ける気があるならその映像持って教師にでもチクればいいだろ。」
「…虐められてる子にだってプライドはあるよ。自分から言うならともかく私から先生に言ったら傷つけちゃうかもしれないでしょ?」
「はっ、まあそうかもなぁ。俺には理解できねえが。」
「…強い龍園君にはわからないよ。」
そこで会話が終わり龍園君も私に興味が失せたのかスマホを触りながらコンビニで買ったと思われるパンを食べ始めた。私も教室へ戻ろう。
「…俺に頼まないのか?」
「え?」
「メガネが虐められてるのを助けたいんだろ?暴力で人を屈服させてる人間には同じように暴力に屈服させるのが手っ取り早い。俺なら簡単に出来る。」
「…私が頼んだら助けてくれるの?」
「いや、そんな面倒な事する気はねえな。」
「??どういうこと?」
「我を通すには強くなきゃならない。だが強さってのは何も自分自身だけじゃない。自分の力だけでメガネを助けられないなら周りを利用してみろ。」
「…どうしてそんなアドバイスしてくれるの?」
「あ?深い意味はねえよ。ただの退屈凌ぎだ。」
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龍園君と話してから数日が経った。いつものように物陰から彼らのいじめを撮影してたのだけれど龍園君に言われたことが頭を離れない。しかしそれが不味かった。雑念が入った状態で撮影していたせいで彼らがこちらを見てることに私は気づいていなかった。
「おい、俺らがメガネを蹴ってるとこ撮られてるぞ。どうすんだよ。」
「とりあえずスマホ壊すか?」
「バックアップくらい取ってんだろ。意味ねえよ。」
「じゃあどうすんだよ。」
私を囲みながら彼らはそんな会話をしている。交渉するなら今しかない。
「その、誰にも言いません。だからこういうことはもうやめてください。」
「…だってよ。で?どーするよ。チクられても面倒だしもうやめるか?」
「やめてもこいつがチクらない保証はねえだろ。」
「じゃあどうすんだよ。」
「…そうだ!こいつの恥ずかしい写真撮ればいいんじゃね?それならこいつもチクれねえだろ。」
「なるほど。いいじゃん!それならこいつからも金引っ張れるし一石二鳥だし!」
「なっ、ちょっ、やめ
そう言い切る前に私は口を塞がれ壁に押し付けられる。必死に手足を動かすも男子の力には敵わない。どうしよう…怖い…誰か…
「随分楽しそうな遊びをしてるな。」
一斉に声の方を向くと龍園君がいた。マズイ現場を見られたと彼らはひどく動揺している。
「なんで龍園がこんなとこにいるんだよ!」
「あ?俺がどこにいようが俺の勝手だろうが。」
龍園君の威圧的な態度に怯えているのか私を拘束する手が緩む。
「だ、だとしてもお前には関係ないだろ。どっか行けよ!」
「あ?だがまあ確かに関
「関係あります!」
私は口を塞いでる手を振り払いそう叫ぶ。
「そ、その、わ、私達、つ、付き合ってますから!」
私がそういうと皆が一斉に龍園君に視線を向ける。龍園君だけは少し驚いたような顔をしたがすぐにいつもの顔に戻った。
「クク、なるほどな。まさか俺を利用するとは思わなかった。」
そう言うと龍園は私の腕を掴んでる男子に近づきそのままハイキックをお見舞いする。ものの数分で全員倒して私を助けてくれた。
「その、は、話を合わせてくれてありがとう。」
「あ?タダで助けたわけじゃねえ。貸しだ。いつか返してもらうぞ。」
「…その、私あんまりお金なくて…」
「別に金になんて困ってねえよ。いつか利用してやるから役に立つ女になれ。それまでは付き合ってる事にしておいてやる。」
そう言い残して龍園君はその場から立ち去った。龍園君と付き合ってるという噂はすぐに広まりコソコソ影で何かを言われる事は増えたけどそのおかげで虐められてる子がいたら助けられるようにはなった。それに合わせて少しでも自分を大きく見せるために髪を切り化粧を覚えピアスを開けた。(軟骨に開けたから痛すぎてその日は寝れなかったけど)けれどその日以来、中学を卒業するまで龍園君と話す機会は訪れなかった。だからまさか高育で再会するなんて…あの素行でどうやって国が支援してる高校に受かるのよ…
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「て事だから付き合ってたって言っても別に何もないから。」
「なるほどな。でもなんでそんな話を俺達に話してくれたんだ?」
「まぁ、誤解を解きたかったってのもあるけど、なんていうのかな。龍園って乱暴で強引で時々最低な下ネタ言ったりするけどさ。約束は守る奴だから。私達をAクラスで卒業させるって言ってたのは本当だと思う。だから石崎。これからもアイツのことを助けてあげて欲しい。」
そう言って私は石崎に頭を下げる。私はアイツと違って大して役に立つ人間にはなれなかった。だからこんな事くらいしかできない。
「月下に言われるまでもねえよ。俺は龍園さんに着いてくって決めてんだよ。だから心配すんなよ。な!」
そう言って私の肩を叩く。力加減をミスってたせいで痛かったけどその痛みさえも私は…心強いと思ってしまっていた。