境界記録帯(ゴーストライナー)×ストーンワールド 作:ターミナル カフェ
・本作品は『Fate/Grand Order』×『Dr.STONE』のクロスオーバー二次創作です。
・原作には存在しないオリジナルキャラクター、オリジナル設定が登場します。
・原作キャラクターの設定や関係性に、独自解釈・改変があります。
・原作とは異なる歴史、展開、世界観が存在します。
・読みやすさや文章表現の統一を目的として、既存話の文章・構成を一部改稿しています。そのため、以前公開していた内容と表現や描写が異なる場合があります。
・今後の展開によっては、複数のFateシリーズ作品および関連作品の設定を扱う予定です。
以上の点をご了承いただいた上で、お楽しみください。
【記録――同期開始】
『西暦、2015年――』
ザザッ――。
『魔術が、まだ■■していた……最後の、時代』
映像が揺れる。
白い部屋。巨大な観測装置。忙しなく行き交う白衣の人々。
だが、誰一人として顔が見えない。
そこだけ黒い砂嵐のようなノイズが覆い、目を凝らそうとするたび映像そのものが歪んでいく。
『社会は、人間の手によって――ザザッ――構築されていた』
『しかし、その裏側で■■■■■を追い続けていた者たちがいた』
魔術。
科学。
その二つの言葉だけが、不自然なほど鮮明に耳へ残った。
『魔術師は、科学では届かない■■■■■を扱い――』
ブツッ。
『科学者は、魔術では辿り着けない■■■■■を積み上げる』
また、音が途切れる。
二つの道。
本来なら交わるはずのない学問。
けれど――。
『目的は、同じだった』
『■■■を、より長く――』
ザザザザザザッ――!
「っ……!」
耳を塞ぎたくなるほどのノイズ。
それでも声は続く。
『――人類史を、守る』
一瞬だけ、映像が鮮明になった。
巨大な地下施設。
中央に浮かぶ、青く輝く地球。
『人理継続保障機関――』
ブツン。
『――■■■■』
「……聞こえない」
俺は無意識に呟いていた。
名前が聞こえない。
確かに何かを言った。
しかも、その言葉を俺は知っている気がする。
なのに、耳へ届く直前で音そのものが削り取られる。
『魔術のみでは観測できない領域』
『科学だけでは測定できない領域』
『その両方を用い、人類に訪れる■■■■■■を観測する』
画面が切り替わる。
『西暦1950年』
『事象記録――■■■・ラプラス』
ザッ。
『成功』
『西暦1990年』
『疑似地球環境モデル――■■■■■』
巨大な青い球体が映し出される。
その名前だけが、真っ黒に塗り潰された。
『完成』
『西暦1999年』
『近未来観測レンズ――シ■』
ジジッ――。
『完成』
『西暦2004年』
『守護英霊召喚システム――■■■■』
その言葉に、胸の奥が強く脈打った。
「……英霊?」
映像の向こう側に、人影が並ぶ。
剣を持った者。
槍を持つ者。
杖を構える者。
黄金色の鎧。
赤い外套。
白い髪。
けれど――。
顔だけがない。
どれだけ見ようとしても、そこには激しいノイズしか映らなかった。
『西暦2015年』
『霊子演算装置――トリス■■■■■』
ザザッ。
『完成』
『数々の成果によって、■■■■は人類史の未来を観測し――』
『今後、百年間の存続を――』
そこで。
映像が停止した。
次の瞬間。
青く輝いていた未来の表示が、一斉に消える。
『――だが』
『西暦2015年』
『予兆なし』
『原因――不明』
『未来観測領域――消失』
警報。
赤い光。
走り回る研究員たち。
誰かが何かを叫んでいる。
『なぜだ!?』
『■■の数値を確認しろ!』
『未来が……見えない!』
『再計算! もう一度だ!』
そして。
機械音声だけが、異様なほど鮮明に響いた。
『計算終了』
『人類史――』
ザザザザザザザザッ!!
『西暦2017年をもって――■■■■』
途切れる。
だが。
聞こえなかったはずなのに、その言葉が何を意味していたのかだけは分かった。
「……滅びる?」
誰も答えない。
映像はさらに進む。
『原因不明』
『手段不明』
『実行者不明』
『しかし、新たな異常領域を確認』
日本地図。
西暦2004年。
ある地方都市が赤く点滅する。
『観測不能領域――発生』
『これを、人類史■■の原因候補として設定』
『第六実験への移行を承認』
画面が暗転する。
『実験内容』
『過去への――』
ザッ。
『時間■■』
白い人影が、光へ分解されていく。
『術者を霊子化』
『過去へ転送』
『歴史上に発生した異常点へ介入』
『■■■を探索』
『原因を解明し――』
ノイズ。
『必要ならば、破壊する』
「……過去に、人を送る?」
身体の奥がざわついた。
その技術を。
俺は。
知っている?
『禁断の儀式』
『その名は――』
ザザザザザザザザザザザザザザッ!!
今までで最も激しいノイズが走った。
音だけではない。
映像そのものが砕ける。
施設。
人々。
地球。
英霊。
すべてが一瞬で黒い砂嵐に飲み込まれていく。
『聖杯、探――』
ブツッ。
『――グ■■■・オ■■■』
「待て!」
俺は思わず叫んだ。
「今、何て言った!?」
返事はない。
代わりに、無数の声だけがノイズの向こうから重なった。
『これは、■■■を守るための――』
『我々の――』
『君たちの――』
『最後の――』
ザザッ。
『――■■■■■■』
そして最後に。
誰のものか分からない声が、耳元で囁いた。
『ようこそ――■■■■へ』
そこで記録は完全に途切れた。
【達人side】
そして気がつくと、俺は灰色に染まった謎の通路に立っていた。
壁も床も天井も、まるで色だけを抜き取られたみたいに無機質で、どこまで続いているのか分からない。人の気配も、足音も、風の音すらない。まるで、この場所だけ時間そのものが止まってしまったみたいだった。
「フォウ? ■■■■■■? ……誰もいないのか?」
声が通路の奥へ響き、そのまま虚しく返ってくる。
「……ん?」
今、俺は何と言った?
フォウの次に、あの胡散臭いカリオストロの名前を呼ぼうとしたはずだ。なのに、口から出た音は途中で潰れ、自分の耳にすらまともに届かなかった。
「■■■■■■……?」
もう一度口にしてみる。
ザザッ――。
「……やっぱ駄目だ」
大事なことを思い出そうとすると、決まってノイズが走る。誰かの名前。場所の名前。俺が知るべき何か。思い出そうとした瞬間に音も映像も崩れて、自分が何を言おうとしたのかすら分からなくなる。
『そうだろうぜ』
「――っ!」
背後から声がした。
『なんせ、お前は思い出すことを嫌っている』
「後ろ――!」
反射的に振り返る。
そして、俺は固まった。
「……え?」
そこにいたのは、小さな子供だった。
今よりずっと幼い。けれど、その髪も、その顔も、その立ち方も、見間違えるはずがない。
「……俺?」
目の前にいたのは、幼い頃の俺自身だった。
「どういう意味だよ」
俺はすぐに詰め寄った。
「俺が思い出すのを嫌ってるって、なんでだ。何を知ってる。何を忘れたんだよ」
幼い俺は何も答えない。
「おい!」
返事はない。
ただ、じっと俺を見ている。
その時だった。
「お兄ちゃん!」
「……涼音?」
後ろから聞こえた声に、俺は振り返った。
そこには、小さな涼音が立っていた。
まだ今よりずっと幼くて、無邪気にこちらへ駆け寄ってくる。その姿だけは、不思議なくらいはっきり見えた。
幼い俺が、初めて口を開いた。
『お前は、涼音に一生をかけて懺悔し、後悔して生きなくてはならない』
「……は?」
意味が分からない。
「どういうことだよ」
幼い俺は何も答えない。
「俺が涼音に何をしたんだ」
それでも沈黙したまま。
「答えろよ!」
問い詰めても、幼い俺はただ涼音の手を取った。
「お兄ちゃん、行こ」
幼い涼音が笑う。
そのまま二人は、俺を置いて通路の奥へ歩き出した。
「待て!」
俺はすぐに二人を追いかける。
すると、歩くたびに灰色だった世界へ少しずつ色が戻り始めた。
白い壁。
床を照らす明かり。
遠くを行き交う人影。
施設らしき景色が、ぼんやりと輪郭を取り戻していく。
けれど。
そこにいる人たちの顔だけは、やはり見えなかった。
目も、口も、表情も。
顔の部分だけに激しい砂嵐が走っている。
『■■、そっちは――ザザッ――』
『次の■■■■■までに――』
『おい、■■!』
「……何言ってるのか全然分からねぇ」
会話も同じだった。
人の声は聞こえる。
なのに、大事そうな部分に入った瞬間だけ、耳障りなノイズがすべてを塗り潰す。
それでも。
前を歩く幼い俺と、幼い涼音の姿だけは見失わなかった。
「待てって言ってるだろ!」
二人は振り返らない。
俺はただ、その背中を追い続ける。
自分が何を忘れたのか。
なぜ、あの幼い俺があんなことを言ったのか。
その答えが、この先にあるような気がした。
だから俺は、色を取り戻していく記憶の奥へと、二人を追いかけていった。
【涼音side】
気がつくと、私は見覚えのない部屋に立っていた。
……いや。
見覚えがない、はずなのに。
「ここ……知ってる?」
胸の奥だけが、そう訴えている。
目の前には何人もの人影がいた。
ひとりは、小柄な少女の姿をした万能の天才。
ひとりは、静かな目をした錬金術師。
ひとりは、雷を纏うような発明家。
その隣には、妙に存在感の強い、もうひとりの発明王。
少し離れた場所では、すべてを見通しているような探偵がこちらを観察し、そのさらに奥で、雅な衣装の女性が静かに本を閉じていた。
「……知ってる」
名前は出てこない。
でも。
この人たちは、知っている。
『■■。またこんなところで――ザザッ――』
『君の■■■■は、少々無茶が――』
『フッ! 進歩とはすなわち――ザザザザッ――!』
『ちょっと待ちたまえ! それは私の――■■■■――だろう!』
『なるほど。つまり君は、まだ■■を――』
『どうか、ご無理だけは――ザッ――』
「……聞こえない」
どの声も途中で潰れる。
名前を呼ばれているはずなのに、その部分だけ消える。
大切なことを言われているはずなのに、核心へ近づいた瞬間に砂嵐が走る。
顔も同じだった。
輪郭も髪も服も分かる。
けれど、表情を見ようとすると、そこだけ映像が乱れる。
「でも……分かる」
私は胸元を押さえた。
「この人たち、英霊だ」
フォウくんから教わった言葉。
人類史に刻まれた英雄たち。
サーヴァント。
その説明と、目の前にいる人たちの存在が、なぜかぴたりと重なった。
知らないはずなのに、懐かしい。
初めて見るはずなのに、胸が締めつけられる。
『涼音』
誰かが、そう呼んだ気がした。
「……!」
今度はノイズが入らなかった。
名前だけ。
私の名前だけは、はっきり聞こえた。
「私、この人たちと……何をしてたの?」
答えは返ってこない。
代わりに景色が揺れ、次の記憶が始まろうとしていた。
怖い。
正直、逃げたい。
でも。
「……駄目」
私は一歩、前へ出た。
「これ、自分で思い出さなきゃ」
誰かに答えを教えてもらうんじゃない。
壊れた記憶の中でも、自分の足で追いかける。
「私の記憶なんだから」
そう決めた瞬間。
周囲の景色が一気に色を取り戻し始めた。
そして私は、自分自身の過去を追体験するため、その記憶の中へ踏み込んでいった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は「境界記録帯(ゴーストライナー)×ストーンワールド」第15話でした。
少しずつ物語の核心に近づいてきていますが、まだ明かされていないことも多く残っています。達人と涼音が何を思い出し、何を選んでいくのか、引き続き見守っていただければ嬉しいです。
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それでは、次回もよろしくお願いします。