『あぁ~…暇、寝ようかな。寝るか』
『寝たらぶん殴るからね』
この日も、俺は七星の部屋でゴロゴロしていた
『はい、今回のご褒美。この指輪に力を込めれば、盾が出てくるわ。魔力が無いアンタや私でも使える代物よ』
『ほえ~サンキュー』
感謝しながら、俺は指輪をはめてみる
ちょっと試してみたいな
力を込めると、思っていたより大きい盾が飛び出してきた
どうやら向きも調整できるらしい…
ドガシャァン!
向きを間違えてしまい、思い切り本棚をぶち壊してしまった
『そうだ。アンタも来る?』
『あ、え?何の話?』
ばれないように、黙って本棚を直しながら俺は答える
たぶんばれてる
『だからさ、ペルギウスの所に行く話。言ってなかったよね?』
『まぁ言われてないけど。ペルギウスって何?どのペルギウス?そういう名前の人?』
『甲龍王』
『え?』
甲龍王ってあの甲龍王か?
ラプラスを封印したあの?
甲龍歴の名の元となったあの?
『甲龍王…?』
『うん、甲龍王』
行けるってどういうことだ
ていうか行けるのか
なんか貰えたりするのかな
『…行く』
『分かった、皆にも伝えとくね』
『うん…行く』
当日、アリエル様達と一緒に、七星に着いて行った
どこだか知らないが、遺跡のようだ
「スコット城塞の跡ですね。ラプラス戦役の時に人族が建築したもので、魔族侵攻の際に数千の人族が立てこもって抵抗したそうです。最後には力及ばず、攻め落とされてしまったとか」
アリエル様が豆知識を話した
彼女はルーデウスの方を向いている
たぶん彼に話しかけたのだろうが…
彼は答えるべきか迷っているようだ
まぁ王族に対して、どんな返答をすればいいのか分からないのだろう
仕方ないな
「…流石の博識です…アリエル様…」
「ふふん、えぇそうでしょう!」
サポートしてやったぞ
お前は安心して歩いていけ、ルーデウス
「ここですかね…?」
「彼女の様子を見る限り、ここで間違いないでしょうな。師匠、足元に気を付けて」
俺は周りのメンツを見渡す
七星、アリエル様、シルフィ、ルーク、ルーデウス、ロキシー、ザノバ、クリフ、エリナリーゼ
そして俺
十人か
俺の家には決して呼べない人数だな
ザノバ、クリフ、エリナリーゼ、ロキシー、シルフィはルーデウスの友人ということで招待を受けた
アリエル様、ルークは俺が一緒に来るかと聞いたところ、ぜひ行きたいと申し出た
そのことを七星に伝えたところ、嫌そうな顔をされたが、許可が下りた
シルフィとルーデウスもアリエル様が来れるよう頼んでくれたようだ
「その…意外と…大所帯になったが…大丈夫なのか…七星…」
「まぁ大丈夫でしょ。あそこ広いし」
「そういうもの…なのか…」
そんなことを考えていると、七星が笛を吹いた
音が鳴っていないけど聞こえるものなのかな
すると、いきなり空から光が降ってきた
光の中から出てきたのは、仮面の男だった
赤…くはない
黄色だ
センチュリーではないよな
「光輝のアルマンフィ。参上」
カ~ッコいい
俺もそういうのやってみたい
「…多いな。ずいぶんと」
そうですよね
いきなり家に十人押しかけたら嫌だよね
「ええ、まぁね。でも問題ないでしょう?12人まではいいって言ってたし」
「人数はかまわぬ、だが…」
アルマンフィはそこまで言うと、ロキシーを見た
「魔族はダメだ」
「えっ、な、なんでですか?」
え?
ロキシーって魔族だったのか?
まぁ、そんなことを言うのは絶対に場違いだと分かっているので、俺はお口チャックを貫く
「ペルギウス様は寛大なお方ではあるが、魔族はお嫌いだ」
あらら、結構そういうこと言っちゃう感じなのね
うなだれたロキシーをルーデウスが慰めている
まぁ、俺が口を挟む問題じゃないがね
帰ったらどんな感じか教えてあげよう
すると、さっきのアル何とかが、俺に棒を渡してきた
「持っているだけでいい。ペルギウス様が転移魔術で空中城塞に呼び寄せる」
へ~
便利な物だなあ
こういうの売ったりすれば、儲かりそうなものなのに
「全員持ったか? きちんと素手で握りしめているように」
は~い
俺は彼の真似をして、クールに佇む
「待たれよ。しばし」
そう言って、彼は消えてしまった
上から引っ張り上げたりしてくれるのだろうか
そんなことを考えていると、棒が熱を帯びだした
「おぉ…すごいですね…アリエル…様…?」
見渡すと、俺とルーデウス以外の姿が消えていた
『あれ?これ壊れてんじゃ…』
そう言いかけた瞬間、俺の意識は棒の中に吸い込まれた
『すげぇー!』
俺は少々興奮気味に飛ばされていった
真っ白の空間の中を、俺は引っ張られていく
上の方に飛んでいる皆が見える
前方に魔法陣が見え、そこに向かって突っ込んでいく
目を開けると、巨大な城がそびえたっていた
背後には、眼下に雲が浮いていた
「すごいですよ…アリエル様…俺ら…空にいますよ…!」
「え、えぇ…」
「そ、そうだな…」
何だよ二人とも
これを見て興奮しないとは
高いところが怖いのかな
『すごいな七星!見ろよ。たけ~、俺、かなり興奮してるよ!』
『はいはい落ち着いて、行くわよ』
「空中城塞ケィオスブレイカーからの風景は、お気に召していただけたでしょうか」
うわビックリした
急に後ろから女の人の声がした
背中に羽があり、顔にも鳥の仮面を被っていた
「天人族……?」
ルーデウスがそう言った
そういう種の人なのかな
あんまり勉強してないせいで分からない
「わたくしはペルギウス様の第一の僕、空虚のシルヴァリルと申します。皆様を空中城塞ケィオスブレイカーへと、ご案内させていただきます」
「自分はこちらにおわすアスラ王国第二王女の騎士、ルーク・ノトス・グレイラットと申します。ご丁寧な挨拶痛み入ります。よしなに」
おぉ
ルークが一番に言うとは思っていなかった
ていうか、一人で大興奮している俺のことを、この人は黙ってみてたのか
ちょっと性格悪いな
いや、逆かな
触れないで置いてくれたのかな
そう考えると良い人だ
「アスラ王国第二王女、アリエル・アネモイ・アスラでございます」
アリエル様もお辞儀をした
ここは、次に俺がやっておかないといけない流れだろう
「…同じく…アリエル様の騎士…スモーク…レンと…申します…」
今更だが、俺って騎士なのか?
でもライトセーバーってどちらかというと
俺魔力無いしな
「それでは、こちらへどうぞ」
歩き出した彼女に着いて行く
庭を通り、門をくぐる
どうしてもキョロキョロしてしまう
細部まで作りこまれているデザインや、近づくにつれて細部まで見えてくる城の外観が、俺の中の中学二年生を刺激する
「おや?」
シルヴァリルが突然、俺、ルーデウス、シルフィを見る
どうしたのだろう
「さしたる問題ではないのですが…あなた方、ヒトガミという名に心当たりはありますか?」
「…え…ない…なんだ…それは?」
俺は即答する
そんなもの知らないし、聞いたこともない
「僕もありません」
シルフィが答え、ルーデウスも首を振る
シルヴァリルは、ほんの少しだけ考えるように沈黙した
「そうですか…ならいいのですが」
城内を進んでいくと、とても無視できそうもない芸術品の数々が並んでいた
博識なザノバと、ミリしらの俺は、たびたび皆に置いていかれてしまった
「この彫刻!もしやあの…!」
「…カッコいいぞ…ザノバ…!」
「見てください!ここの作りこみを…」
「…カッコいいな…ザノバ…!」
「カッコいいですね~!」
「…カッコいいぜ…ザノバ…!」
「あの…お二方、こちらが謁見の間でございます」
「…あ…はい…すいません」
「おや…失礼。余としたことが」
「ペルギウス様は既にお待ちです。用意が出来たらお入りください」
そう言って、シルヴァリルは部屋の中に入り、扉を閉めてしまった
シルフィとルークがアリエル様の身支度を手伝っている
俺もそういうザ・付き人みたいなのをやってみたい
だが、戦闘面で大いに役に立っているのだから、このような雑用はやらせられないとのことだ
俺もやりたいと伝えると、アリエル様から「あなたにはアスラ王国の騎士としての威厳が足りない」などと、少々説教めいたことを言われてしまった
別にいいのにね
クリフやザノバも服を着替えたりしている
七星とルーデウスは特に服装に頓着がないらしい
俺と同じのようだ
一応フードだけ取っておくか
「お待たせしました」
「では、こちらへ」
アリエル様の様子が少し変だ
緊張しすぎじゃないか
そりゃあ甲龍王を自陣に加えたいのは分かる
だが、そんなに緊張していては、上手くいくものもいかなくなってしまう
「スゥ―…ハァー…」
顔が引きつってしまっている
「アリエル様…リラックスです…」
「…スモーク…普段鈍感なあなたにも分かってしまうとは、相当顔に出ていたんですね…」
そりゃあもう
こちらが不安になる程だ
「手に…人という字を書いて…飲むといいですよ…」
「え?それはどういう?」
「俺の国の…おまじないです…緊張が…薄れますよ…」
「ほぉ…」
アリエル様は、手のひらに指で「人」の字を書いた後に、パクっと食べてしまった
なんてかわいいんだ
「これで…いいですか?」
「…最高です…」
「え?」
アリエル様は、一瞬固まったあと、笑い出した
「フフッ。貴方が相変わらずで、拍子抜けしてしまいました」
良かった
少し緊張がほぐれたかな