プラネットウィズハッピーシュガーライフ、松坂さとうは愛の進化の極北 作:低品質くろわあ
原作:ハッピーシュガーライフ
タグ:R-15 転生 クロスオーバー AI本文利用 プラネットウィズ ハッピーシュガーライフ メカ化 松坂さとう 飛騨しょうこ カレルレン
私、飛騨しょうこは死んだ。
はっきり覚えている。松坂さとうに刺されたあの瞬間を。冷たい感触と、熱い血と、そして何より、「あなたのことは嫌いじゃなかった」なんて言われたこと。
嫌いじゃなかったってなんだ。違う、そうじゃない。私はもっと、あなたに——
と思ったところで意識が途切れたのだから、私は間違いなく死んだのだ。
なのに。
「飛騨しょうこ。君には選択肢がある」
暗闇のなかで声がした。しかも目の前に、青白い光を放つ犬が浮かんでいる。犬が喋った。
「私の名はカレルレン。ネヴュラの閣下だワン。君は非業の死を遂げた。我々ネヴュラの科学力をもってすれば、君をメカとして復活させることも可能だワン。ただし条件がある。君にはネヴュラの会議で『愛の正常な進化』について証言してもらうワン」
……意味がわからない。愛? 会議? 犬?
でもひとつだけ、ものすごくクリアにわかったことがある。
「それって、さとうに会えますか」
「むしろ君の証言次第で、松坂さとうにはそれなりの処遇を——」
「乗ります」
即答だった。復讐とか、仕返しとか、そんな言葉はまだ頭に浮かんでいなかった。ただもう一度、さとうと話がしたかった。そしたら今度は、ちゃんと言える気がした。好きとか嫌いとかじゃなく、もっとちゃんとした言葉を。
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そして私は、全身が光沢ある金属でできた身体を与えられた。関節ひとつひとつがスムーズに動き、人間だった頃よりずっと軽い。手のひらを見つめて握ったり開いたりしていると、閣下がふんぞり返って言った。
「よし、これで会議の準備をするワン」
ネヴュラの会議場は、白くて清潔で、やたらと高い天井のせいで声が響いた。ずらりと並ぶいかめしい顔ぶれのなかで、閣下は犬のくせに一番偉そうな席に座っている。
「では飛騨しょうこ、証言するワン。松坂さとうとは、どのような存在だ?」
私は迷わなかった。この一週間、メカの身体で考え抜いた答えだ。
「あの人は、愛の進化の極北です」
会議場がざわついた。
「誰よりも純粋に、誰よりも真っ直ぐに愛を貫く人です。だからこそ、普通の人間には理解できない。でも、あの人の愛が「異常」なら、私はそれを異常だと思った自分こそが間違ってたんだって、今は思います」
閣下は少しだけ黙って、それから「ふむ」と唸った。
「極めて興味深い証言だワン。ならばその愛の在り方を、実際に検分する必要があるワンな」
「というと?」
「君はあとで、私を松坂さとうの部屋に連れていくワン。潜入任務だワン」
私は心のなかでガッツポーズをした。
「でも閣下、ひとつだけアドバイスがあります」
「なんだワン?」
「さとうさんは、嫌な話をされるとすぐ刺してくるんで、気をつけてくださいね」
さすがにちょっと言い過ぎたかもしれない。さとうが刺すのは多分、本当に嫌な話をされた時だけだ。でも、部屋に連れて行くためには、閣下にちょっと使命感を持ってもらわないと。
閣下の耳が一瞬ピンと立ったように見えたのは、気のせいではないはずだ。
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翌日。私はさとうの部屋の前に立っていた。
見覚えのあるドア。あの日もこんなふうに訪ねたっけ。でもあの時と違って、私の心臓は鳴らない。だってメカだから。そのことが、なぜかすごく気楽だった。
コンコン。
「……どなた?」
ドアが開く。さとうがあの日と変わらない、人形みたいに整った顔で現れる。そして私を見て、微かに目を見開いた。
「しょ……うこ……ちゃん?」
「久しぶり、さとう。今日はどうしても紹介したい人がいるの」
私は半ば強引にドアを開けて、後ろにいた閣下を押し出した。
「ネヴュラの偉い犬、カレルレン閣下」
「待たせたワン」
さとうの表情が、驚きから警戒に変わる。でも、刺してこない。むしろ、何かを測るように閣下を見下ろした。
「……それで、何のご用?」
「君の愛の在り方を検分しに来たワン。君はどうやら、愛の進化の極北らしいワンな」
さとうがちらりと私を見る。私は肩をすくめた。うん、そう言ったのは私です。
その後のことは、正直予想外だった。
閣下は部屋の隅で縮こまっている神戸しおを見つけると、すたすた歩み寄ってじっと見つめた。しおちゃんは怯えてさとうの背中に隠れる。
「なるほど、この子は親の愛を得られなかった子供だワンな」
その一言に、さとうの空気が変わった。
「……何がわかるの」
「わかるワン。そして君がこの子を愛することは、単なる恋愛ではない。親の愛すら埋め合わせ、この子の存立基盤そのものになるということだワン」
沈黙。空気が震えるような数秒のあと、さとうがふっと笑った。
「そこまではっきり考えたことはなかったけど……そう、それだ。私はこの子のすべてになる。親も、恋人も、友達も、世界も、全部」
「なかなか言えることじゃないワンよ。重すぎるワン」
「そう? 私にとっては光栄で喜ばしい役目だわ」
閣下はゆっくりと尻尾を振った。
「うむ。それでこそ愛の極北だと認めるワン」
……あれ。
ちょっと待って。
私、この展開に何か期待してたんだっけ。たしか仕返し? 多少困らせる?
でも今、閣下は完全にさとうとわかりあってるし、さとうは晴れやかな顔をしている。なにこれ。
でも——
「しょうこちゃん」
さとうがこっちを見ていた。
「なに?」
「あなた、死んだはずよね。なんで生きてるの。それにその身体」
「ああ、これね。ネヴュラの科学力でメカになったの。だから正直、もう刺されてもびくともしないわよ」
さとうは少しだけ眉を動かした。刺したことを覚えているというサインだ。
そして私は言った。これが一番言いたかった。
「それに私、死んだことになってるから行く場所もないのよね。だから、責任取りなさい」
「……責任」
「私を刺したのはあんたなんだから」
一瞬の沈黙。それからさとうは、小さくため息をついて、でもどこか笑っているような声で言った。
「……勝手にすれば」
私はこの日から、さとうの部屋に入り浸っている。
そしたら、なんだかんだ、親友が大仕事をするところを見守る気分になってきた。
私はソファに座り、しおちゃんにお茶を出してもらい、閣下に「お前もたまには来い」と連絡する。
さとうはそんな私を横目で見ながらも、追い出さない。
「これも愛の一形態かしらね」
そんなことをつぶやくから、私は笑ってしまった。
「さあね。でも悪くはないでしょ」
メカの身体は心臓が鳴らないけれど、それでも胸のあたりがあったかい気がするのは、多分、気のせいじゃない。
そういうことにしておこう。
私は今日も、最高の親友と、小さな女の子と、たまに来る偉い犬と一緒に、砂糖菓子みたいに甘くて変な日々を過ごしている。
おわり