刀使ノ巫女の本編を見て、特別刀剣類管理局がヘリコプターを数多く積極的に運用していたことと、OH-1ヘリコプターの試作機の初飛行が1996年、量産1号機の納入が2000年であり、評価試験時期と相模湾岸大災厄の時期が被っていたため、「刀使ノ巫女世界では、陸上自衛隊だけでなく特別刀剣類管理局にもOH-1ヘリコプターが売り込まれており、評価試験も行われていたのではないか」と考えたため、Chatgptに作らせました。この作品は、pixivにも掲載しております。

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相模湾岸大災厄 前日譚 ――飛ぶことを知らなかった翼

1998年9月――特別刀剣類管理局本部

 

 鎌倉。

 

 特別刀剣類管理局本部の駐機場に、一機の見慣れないヘリコプターが置かれていた。

 

 細身の機体。

 

 大きなキャノピー。

 

 従来のOH-6とは明らかに異なる、洗練された外観。

 

 機体には、正式採用機を示す番号ではなく、試験機であることを示す識別が記されている。

 

 XOH-1。

 

 川崎重工が開発を進めている、新型観測ヘリコプターの試作機だった。

 

「これが……川崎さんが持ってきた機体ですか」

 

 藤原美奈都が機体を見上げた。

 

「はい」

 

 川崎重工の技術担当者が答える。

 

「まだ防衛庁での試験段階にある機体ですが、今回は特別にこちらへ持ち込ませていただきました」

 

 柊篝が首を傾げる。

 

「特別に?」

 

「ええ」

 

 技術担当者は少し緊張した様子で説明を続ける。

 

「我々としては、ぜひ特別刀剣類管理局にも、この機体を評価していただきたいと考えております」

 

「管理局に売り込みに来た、ということですか?」

 

 相模雪那が率直に尋ねた。

 

「……そういう言い方もできます」

 

 技術担当者は苦笑した。

 

「もちろん、正式採用については防衛庁側の判断になります。ただ、管理局は荒魂対策の最前線に立つ組織です。将来的に刀使と連携する観測ヘリとして使っていただけるのであれば、我々としても大きな実績になります」

 

 つまり、この機体は単なる見学用ではない。

 

 川崎重工にとっては、管理局という特殊な組織にXOH-1の価値を認めてもらうための営業活動でもあった。

 

 それを聞いていた伏見結月が機体を見る。

 

「刀使との共同運用を想定しているんですか?」

 

「はい。まだ具体的な仕様として決まっているわけではありませんが、管理局から実際の運用上の要望をいただければ、今後の改良にも反映できると考えています」

 

「なるほど」

 

 新見紗南も頷いた。

 

「つまり、今日は川崎重工にとっても重要な試験なんですね」

 

「はい」

 

 技術担当者は素直に答えた。

 

「我々としても、ぜひ良い評価をいただきたいと思っています」

 

――特務隊と折神姉妹

 

 その場に集められていたのは、特務隊の八人だった。

 

 折神紫。

 

 藤原美奈都。

 

 柊篝。

 

 相模雪那。

 

 伏見結月。

 

 吉野いろは。

 

 鏡島江麻。

 

 新見紗南。

 

 そして、紫の妹である折神朱音。

 

「どうして私まで呼ばれたんでしょう?」

 

 朱音が尋ねる。

 

「あなたも将来、管理局に関わることになるでしょう?」

 

 紫が答えた。

 

「それに、今回は新型装備の見学だから。」

 

「なるほど」

 

 朱音はXOH-1を見る。

 

「でも、どうして特務隊の皆さんも?」

 

「川崎側からの要望もあったのよ」

 

 紗南が答えた。

 

「実際に荒魂と戦う刀使に見てもらったほうが、今後の参考になるからって」

 

「そうなんですね」

 

 美奈都が笑う。

 

「それに、紫が『せっかくなら特務隊の全員に見せてあげてください』って頼んだんでしょ?」

 

 紫が少しだけ苦笑した。

 

「……それもあるわ」

 

「やっぱり」

 

 篝が笑った。

 

――XOH-1

 

「それでは、簡単に説明させていただきます」

 

 川崎重工の担当者が機体の前に立った。

 

「この機体は、従来の観測ヘリよりも高い機動性と観測能力を目指して開発されています」

 

 OH-6とは異なる細身の機体。

 

 その姿を、九人は興味深そうに眺めていた。

 

「実際に乗ってみることはできますか?」

 

 朱音が尋ねる。

 

「駐機状態でしたら可能です」

 

「本当ですか?」

 

「ただし、計器には触れないでください」

 

「分かりました!」

 

 朱音が嬉しそうに頷く。

 

 紫が先にコクピットへ乗り込む。

 

「……思ったより狭いわね」

 

「姉様、私もいい?」

 

「ええ」

 

 朱音も乗り込む。

 

 続いて美奈都、篝、雪那、結月、いろは、江麻、紗南も順番にコクピットを見学していく。

 

「ここから操縦するんですね」

 

 美奈都が言う。

 

「はい」

 

「すごいですね」

 

 篝が計器を眺める。

 

「これがまだ試験機なんですか」

 

「はい。ですから、皆さんからいただく意見も非常に重要なんです」

 

――試験飛行

 

 やがてエンジンが始動した。

 

 ローターが回転を始める。

 

 風が駐機場を吹き抜ける。

 

「おお……」

 

 朱音が思わず声を上げる。

 

 XOH-1がゆっくりと浮上した。

 

 数メートル。

 

 その場で静止する。

 

 そして、ゆっくりと旋回する。

 

「……すごい」

 

 紫が呟いた。

 

 技術担当者が隣で説明する。

 

「今回の飛行試験は、機動性と安定性を中心に確認しています」

 

「将来的には、これが荒魂の観測にも使われるんですね」

 

「その可能性を期待しています」

 

 担当者は空を見上げる。

 

「ですから、管理局の皆さんに評価していただきたいんです」

 

 XOH-1はそのまま飛行を続けた。

 

 その姿を九人は見上げていた。

 

 誰もが、新しい時代の到来を感じていた。

 

――夕方

 

 試験飛行を終えたXOH-1が駐機場へ戻ってくる。

 

「本日はありがとうございました」

 

 川崎重工の担当者が紫たちに頭を下げた。

 

「こちらこそ」

 

 紫も頭を下げる。

 

「大変参考になりました」

 

「もし正式採用について前向きに検討していただけるのであれば、我々としても――」

 

 担当者が言いかける。

 

「分かっています」

 

 紫が微笑む。

 

「管理局としても、新しい装備を必要としていますから」

 

「ありがとうございます」

 

 担当者は嬉しそうに笑った。

 

 その時だった。

 

「明日も試験を行う予定です」

 

「明日も?」

 

 朱音が尋ねる。

 

「はい。もう少し本格的な飛行試験を行います」

 

「楽しみですね」

 

「ええ」

 

 紫が頷いた。

 

「明日も見せていただきます」

 

――その夜

 

 鎌倉から遠く離れた海上。

 

 暗い海を、一隻のタンカーが進んでいた。

 

 その船が何を運んでいるのか。

 

 その航海が何を意味するのか。

 

 この時点では、まだ多くの人間が知らなかった。

 

 そして――。

 

 深夜。

 

 相模湾沖。

 

 突然、異常事態が発生した。

 

「船が……!」

 

 操船室から声が上がる。

 

 警報が鳴り響く。

 

 船体に大きな衝撃が走った。

 

 タンカーが座礁する。

 

 海上に、異変が広がっていく。

 

 それが何を引き起こすのか。

 

 まだ誰にも分からない。

 

――翌朝・鎌倉

 

「……何だ?」

 

 管理局本部の職員が顔を上げる。

 

 警報。

 

 通信。

 

 次々と入ってくる緊急報告。

 

「相模湾で異常事態です!」

 

「規模は?」

 

「現在確認中!」

 

「荒魂反応は?」

 

「通常の発生規模ではありません!」

 

 昨日まで静かだった駐機場にも、人が集まり始める。

 

 その中央に、昨日と同じXOH-1があった。

 

 川崎重工の担当者が青ざめた顔で機体を見る。

 

「まさか……」

 

「何か?」

 

 管理局職員が尋ねる。

 

「この機体は、まだ試験機です」

 

「分かっています」

 

「実戦投入なんて想定していません」

 

 職員は答えた。

 

「ですが、今は一機でも多くの観測機が必要です」

 

 技術担当者は黙った。

 

 そして、昨日まで営業のために持ち込んだ試作機を見る。

 

「……飛ばせるか?」

 

「飛ばせます」

 

「なら、お願いします」

 

――同じ頃

 

 紫は特務隊の仲間たちとともに、出動準備を進めていた。

 

 藤原美奈都。

 

 柊篝。

 

 相模雪那。

 

 伏見結月。

 

 吉野いろは。

 

 鏡島江麻。

 

 新見紗南。

 

 そして折神朱音。

 

 昨日、XOH-1のコクピットで笑っていた九人。

 

 その姿はもうなかった。

 

「姉様」

 

 朱音が紫を見る。

 

「これ……大丈夫なんでしょうか」

 

 紫は少しだけ沈黙した。

 

「分からないわ」

 

 そして御刀を手に取る。

 

「でも、私たちが行かなければならない」

 

「はい」

 

 九人が歩き出す。

 

 その頭上。

 

 昨日まで「管理局への売り込みのための試験機」だったXOH-1が、初めて実戦の空へ上がっていく。

 

 まだ正式採用もされていない。

 

 まだ名前すら正式には決まっていない。

 

 それでも今は――。

 

 空から荒魂を探すための、貴重な一機だった。

 

 そして鎌倉の空に、そのローター音が響き始める。

 

 相模湾岸大災厄。

 

 四日間に及ぶ、戦後日本最大の実戦の幕が――

 

 今、開こうとしていた。


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