うわん、うわん。と赤子の声が聞こえた。
母親を求めて泣いているようで、心を締め付けられる。
でも、周りを見ても視界は真っ白で赤子などは何処にも見当たらない。けれども確かにその声はどこか近くから聞こえる。
「(何処に居るんだろう、そしてなぜ私はこんなにも悲しいの)」
ユラは己の手を見る
ツルツルスベスベの、何も握っていない赤子の手
わんわん声を上げ泣いていたのは、自分だった。
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どがん、という音で目が覚める。痛みと共に目を開ければ無機質な鉄の床が視界に広がっていた。
「んべっ!?いっったぁ〜〜…!」
『おはようございます、オーナー。今日も八時間睡眠ですね、素晴らしい事です。はなまるスタンプを差し上げましょう』
壁に立て掛けてあるブレードの鞘に取り付けられた、デバイスのモニターに華やかなはなまるマークが浮かび上がる。ギシギシと揺れるベッドを見るに…どうやら自分は寝ぼけて落ちたらしい。痛む体を起こすとキッチンへ歩いて向かい、冷蔵庫を開けて水のボトルを開けて半分飲み干した。
「ぷはー、何だったんだろさっきの夢」
『気になりますか?…夢占いを実行中…』
「もう、からかわないでってば!エレ!」
『オーナーの感情の昂りを確認。落ち着くことを推奨』
「全く…」
水を冷蔵庫に戻し入れると、ぐぐぐっと伸びをして息を吸って吐き出す。寝間着のタンクトップを脱いで壁に掛け、普段着へと袖を通した。電子カレンダーを確認して今日の日付を見る。
「今日は確かサガタおじさんが来る…はず」
「おぉーい、朝だぞユラ!起きろぉ〜」
「!はーい、今行く!」
パスワード式の横開き扉に数字を入力し、シャッと言う音と共に扉が開く。扉の前には大きな荷物を強化外骨格の補助を使い、後ろに背負っているサガタが立っていた。その褐色の肌は太陽光に照らされて輝いている。蒸せるような暑さを感じさせる。
「うへー、今日も中々暑いねえ…40℃もあるんだぁ」
「ほら、そろそろ時間になる。行くぞユラ」
ユラもブレードを腰に装着するとドアを抜けて外に出た。そうして二人はボロボロのアパートのような場所からエレベーターを使用して降りていく事に。錆びついた起動音とちょっと息苦しい空気の中、気を紛らわそうとユラはサガタに話しかける。
「あー、その…キャラバンズとメトロポリスの架け橋になる仕事は大変じゃないの?サガタおじさん」
「大変で済むもんか。…めちゃくちゃ大変だぞ?キャラバンズの皆の話も聞いてやらなきゃならんし、メトロポリスの上役の方の話も聞いて折衷案を考えないといけないからな」
「うへー、ヤーラだけで解決できる様な悩みならいいのにね」
「ユラ、お金が幾らあっても解決できない問題は多くあってな
。例えば食料とか…おっと。いかんいかん。また悪い癖が出る所だった」
「お勉強の時間じゃないもんね〜!それで、サガタおじさん今日は私に用事があるって言ってたけど、どんな用事?」
「実はな、今日俺の弟子が此処のメトロポリスに初めて来るんだ。キャラバンズに加入して間もない奴でな…右も左も知らないんだ。護衛も兼ねてここを案内してやってくれないか?次の商品は少し融通を利かせよう。…例えばユラが好きな合成肉のビーフジャーキーとかをな」
『オーナー、ここは私の材料となる電子部品を推奨─』
「乗った!スウェイラーとしてその依頼、受け持つよ!」
『…』
がしぃっ、とサガタと握手を交わしたユラ。
丁度エレベーターも下降を止め、ゲートが開いた。
「さあ、とりあえず南門まで歩くぞ。恐らくゲート前でアイツが待っているに違いない」
「あれ、そうなの?キャラバンズのいるジャンクヤードに居るんじゃなくて?」
「実は…まだアイツにはまだキャラバンズの証を渡してなくてな、入れるようにはしていないんだ。だからちょっと急ぐぞ!ついてこい!遅れるな〜!」
「ええっ!?ちょっ、それを早く…!」
外骨格のサポートモードを全開にし、軽々としたフットワークで南門まで駆けていくサガタを急いで追いかけるユラ。
ようやく南門が見えてきた所で、ゲートキーパーに足止めされている男性…いや少年のようなものが見えてきた。
「だ!か!ら!僕はキャラバンズの所属で!サガタさんという人に会いに来たんです!」
【認証不可。メトロポリスの管轄部門に連絡を…】
「あーもう!また同じ事ばっか!もー早く来てよサガタさんってば!…ん?」
オレンジ色の短い髪を揺らし、だんだんと地団駄しながらゲートキーパーへ何か物申しているようだがシステムボイスに弾かれているようでかなり激怒している。サガタが扉の向こうに声をかけると、相手の声が明らかに怒気を含んだものになった。
「すまん!待たせたカーチ!今日がオマエの初デビューだと気づかずにキャラバンズの証を渡すのを忘れて─」
「おっっっそい!!サガタさん遅いです!!!おバカ!この褐色肌!傷面!グラサン!」
「ま、まあまあそう言うなって。ほら、あいつを通してくれ」
【認証開始。…キャラバンズの証を確認。ようこそ、メトロポリスへ】
威圧に気圧されたサガタがキャラバンズの証をゲートキーパーに掲げると、それを読み込み終わり門が開いていく。
門の向こうには仏頂面の少年が腕を組んでダンダンと地面を蹴っていた。まるでウサギのように。
「全く。ほら早くキャラバンズの証を渡してください!それが無いとどこのメトロポリスにも行けないんですから!…ん?もしかして、この人がサガタさんの話してたスウェイラー…今回此処を案内してくれる傭兵さんですか?」
「へ?」
『同意します。私はエレ。そしてこちらが私のオーナーであるユラです。私は素晴らしい機能を有しております』
勝手に喋り始めたエレをぺしん、と叩くユラ。
「あー、エレの事はあんまり真に受けなくていいから…!私はユラ。どこにでもいるスウェイラーだよ。よろしくね」
「よろしくお願いします。僕はカーチです。まだまだ見習いのキャラバンズですけど、どうかよろしくお願いします!」
手首に取引用の小型端末を付け、電子ゴーグルを頭に付けたラフな格好の男の子…カーチは笑顔で答えた。
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ユラにカーチを預けたサガタは、取引先に向かうと言い残しその場から逃げるようにして去っていった。後ろ姿を見送りながらカーチは
「ああやっていつも忙しそうにしてるんですよ。ボクに教えることが沢山あるって言うのに」
とブーブー口を尖らせて悪態をついていた。
「っと…いけないいけない。ではユラさん、案内をお願いしても構いませんか?ボク、メトロポリスに来るのは初めてで…右も左も分からない、とまでは行きませんが。知っておくことが多くて」
「じゃあ、ヤーラについては知ってるの?カーチくん」
「はい。ヤーラについては大災害以降にこの世界の共通電子通貨となった貨幣ですね。現在純粋な紙や金属はとても高価なものになってますから、それらを作るよりも統一された電子通貨…昔 は電子マネーなんて呼ばれてましたけど、それを参考にしたと聞いてます」
二人はジャンクヤード通りを歩きながら、のんびりとメトロポリスを探検していた。道中暇にならないように、ユラが改めてこの世界における常識をクイズとして出題していた。
「大正解!沢山あっても嵩張らないから便利だよねー。大昔はお金にも沢山種類があって、紙のやつだったり丸っこい金属だったりしたらしいから、沢山持つの大変だったんだろうなぁ」
『調べた結果、当時は都市に銀行なるものがあったようで。そこに所有する貨幣や紙幣をすべて預けて必要なときに引き出していたようです。不便なものですね』
「へぇー…。あ、じゃあ次はカーチくん、スウェイラーについては知ってる?」
「スウェイラー、えっと…一般的には傭兵と呼ばれる者たちですね?」
スウェイラー。漂流する者達。
この世界で最も多い職業の一つともされている。
いわゆるフリーランスの何でも屋であり、機械構造体や機械生命体から剥ぎ取ったジャンクを市場に売ることでメトロポリスの共通電子通貨である"ヤーラ"へと変換して日々を生きている者達。
彼等は依頼を受けて時に傭兵、時に漁り屋、時に強盗として働くことでその日その日をなんとかして生きている。大半のスウェイラーはジャンクを売り飛ばして生計を立てており、何者かに継続的に、又は半永久的に雇われたりされる事は非常に稀である。それこそ余程腕の立つ者でなければ選ばれることは愚か、眼中にすら含まれない。
「そう。何でも屋の中でも腕っぷしの強い奴らがスウェイラーになるのが多いかな。まあ大半は侵食地域とか封鎖区域に冒険しちゃって死んじゃうのも多いけど…ん?」
身なりの小汚い大柄な男が一人、ジャンクヤードの市場にて店員の男と言い争いをしている。どうやら店の商品に文句を言いたいようだ。
「なあなあ、キャラバンズのおっちゃんよ!今日は遺物とか並んでねえのか!?あぁん?たらふくヤーラ持ってきたんだぜ?」
「悪いけどなぁ、今日は遺物持ってきて無いんだよ。あんなもんホイホイと持ってこれるようなもんじゃないんだから」
遺物、キャラバンズ。その単語を聞いたエレが起動し、電子音を挟みながら簡単な説明を始めた。
『キャラバンズは、言うなれば運送会社であり、遺物というものは禁断の力を秘めたパワーアップアイテム、ですね』
「うわっ、勝手に喋り始めてどうしたの!?」
エレの説明曰く、メトロポリスの物資は"キャラバンズ"と呼ばれる大規模な商人専門の団体が運び込んでおり、時折物珍しいものを持ってくる事がある。大体は水や缶詰、味は二の次で栄養価が高く携行に向いたペースト食料等が品物として並ぶが…極稀に、装着した者に何らかの代償と引き換えに超人的な力を獲得する事の出来る"遺物"が紛れ込んでいる場合がある。
「ありえねーだろ!遺物買って俺のクソみたいな人生逆転させるために今まで頑張ってきたんだぜ!?伝説のスウェイラーみてーにバックパック無しで空飛んだりとかしたかったのによー!」
「お前さん、あの遺物を何か変身でも出来る便利なもんと間違って認識したりしてないかい?いいかい?遺物ってのはな…どれもこれも有用な効果ばっかりあるもんじゃないんだよ」
その話を聞いていたカーチは、顎に手を置いて険しい表情を見せた。まるで遺物という単語に反応したように。
「遺物は、本当に危険なものなんですよ」
遺物の形はどれもすべて、指輪の形を取っており
とある遺物は持ち主に超人的な脚力を手に入れる代わりに、代償として人語が話せなくなったと言われている。
また別の遺物は、銃弾を弾くほど強力な皮膚を手に入れる代償として服を着てしまうと皮膚の防弾効果が消えてしまう物だったり。兎に角変わったものが多く、しかし装着しなければ害はないため物珍しい為かコレクターも多い。一説では大地に点々と存在する爆心地周りのフォクスが突然変異したもの…と噂されているがその正体は定かではない。
「はぁ!?遺物ってそんなやべーもんなのかよ!最悪死んだほうがマシなんじゃねーかって奴ばっかじゃねーか!」
「そうだよ、これでちょっとは賢くなっただろ?ほら他に買ったりしないんだったら行った行った!見世物じゃねーぞ!」
「チッ……」
商人はしっしっ、と手を払って男を遠ざけるとユラたちの方へ顔を向けた後、気さくに手を振った。
「やあやあ、そこのお二人さん!どうだい、見ていかないかい?今日は携帯食料と水がお買い得だよ!」
「あの、先程の方は?」
気になったユラは、商人に向けて質問を投げかける。
聞きたいのは先程の男に対しての事だった。
声のトーンを落として周りに聞こえないように伺う。
「…遺物の事について何ですけど、本当にキャラバンズの品揃えに載ることってあるんですか?」
商人の男は眉を顰めて、同じく小声で返した。
「ああ。とは言ってもそこまで強い効果のある代物は無い。名のあるスウェイラー達が持ってるおとぎ話みたいなもんは…そもそも相当爆心地に近づかねえと手に入らねえ代物だ。俺たちが時々持ってくる遺物はあくまで爆心地から離れた場所。そこまでの力は秘めてないって事だ」
「ふんふん、なるほど分かりました」
獣耳と尻尾を立ててユラは頷くと、商人から離れる。
「全く。それこそ強力な遺物はそもそも強力な代償が伴うもんだ。好きで付けてる奴らも居るらしいが、俺にとったらそいつ等は化け物と変わらんよ。求める気が知れないね」
「…そんなに恐ろしいものなんですか、遺物って」
カーチが恐る恐る聞くと、商人は頷いた。
「中には装着しただけで死ぬ、なんて噂のある遺物もあるくらいだ。見たことは無いが…東のメトロポリスで発見されたと聞いたことがあるな。本当かどうかは分からんが、噂話も今じゃ情報源のひとつだ。馬鹿には出来んなぁ」
「そう、ですか…」
「あっ、商人さん私この電磁パルス投射機を二つ欲しい!」
「あいよ!こいつはコルテミ社のブツだから高いぜ、一つ4000ヤーラだが…買うかい?」
「む、っむむむ…えーい、二つ買った!」
「よしきた!」
カーチが話している他所で、ユラは別の商人から何かガジェットのようなものを購入していた。
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「ユラさん、先程は何を買ったんです?」
「ん?ああ、ちょっと…次のハンティングに使う予定のガジェットを買ってたの。これはまあ今は関係ない物だから気にしないで!さあさあ、他に聞きたいことはある?」
ジャンクヤード市場から離れた街のような場所で、歩きながら二人は会話している。どん、と胸を張って尻尾を振り自信満々なユラを見たカーチは、その特異な見た目に対しての質問を投げかけた。
「ユラさんのその耳と尻尾は、何なのですか?他の人に生えてるのを見たこと無いというか、遺物の代償でもなさそうですし…もしよかったら、お話をお聞かせてもらえませんか?」
「っ」
ぴたり、とユラの歩きが止まる。
先程まで何でも聞いていいよ、と言っていた彼女の明るい顔がこの時ばかりは何故か暗いものに見えたが一瞬で元に戻る。まるでその質問が来ることを予想していなかったようで。
「えっ、と〜。それはこの、私の耳と尻尾についてなんだよね?答えてあげたいのは山々なんだけど、実は私もこれが何で生えてるのかは分かんないの」
「そうなんですか…!?」
「うん。サガタおじさんの調べでどうやら後天的に着けられた生体部品じゃない事は分かってるんだけど…でもどうやったらこんなもの生えてるんだろうなーって。まるでおとぎ話に出てくる狼男みたいだよね」
『失礼ですが、オーナーの場合狼女になるのではないでしょうか』
「ああもう、今は別にいいでしょエレ!…とりあえず、そういう事なの。ごめんね?」
手を合わせて謝るユラに、カーチは逆に頭を下げた。
「いえ、そんな謝らなくても!…ん?どうしたんでしょう、あそこで誰かが揉めてるような声が聞こえますけど、何かあったのかな」
「うん?…あー、多分アレはスウェイラー同士のいざこざだね。あんまり関わらないほうがいいよ。碌なことにならないから」
二人の視線の先には言い争う男と女が居た。
どうやら依頼の取り分で争っているようで、外だというのに大声でまくし立てるような口喧嘩をしていたのだ。
「アタシの取り分が少ないじゃないか!アンタだけ多めに掻っ攫おうってんじゃないよね!?」
「うるっせえ!大体オマエが生きて帰れたのはオレのサポートがあったからこそだろ!もうちょっと謙虚になれねえのか!?」
ユラとカーチは言い争いをしている二人からは離れており、特に気にせず通過しようとした。別に珍しいものではないとスルーを決め込むユラと、やや不安そうにしているカーチ。というのも段々と罵倒の言葉がエスカレートし始めたからだ。
人の耳には聞こえない可聴範囲の中、プラズマ火器の独特なチャージ音がユラの獣耳に入って来た。
「!(嘘、こんな街中でぶっ放すつもり!?)ごめんカーチ君、ちょっとここで待ってて」
「え?あ、ユラさん!?」
脚にグン、と力を込めて凡そ15mの距離を助走もなしに詰めると言い争いをする男女の間に割って入る。
「ねえ、アナタ達がどれだけ口喧嘩しようと構わないけど…街中でぶっ放すつもりなら辞めといたほうが良いよ」
「なんだテメェ!?口出ししてんじゃねぇぞ!」
「ほら見なさいよ!アンタのせいで周りの人に迷惑かかってるじゃない!」
「オマエが譲らねえから、こんな事になってるんだろうが!」
怒りに身を任せた男が、女へ向けてハンドガンを抜いて向けた。だがしかし、引き金に指が掛かるよりも早くユラの手が動きハンドガンを奪い取ると肘鉄に肩の当身をぶつけて吹き飛ばす。
大の男がざっと10mほど遠くに飛び、気絶したようにがくりと力なくうつ伏せになった。相方の女性はハッとしたような顔になり、ユラの方を見つめている。
「あ、アンタ…まさか最近噂になってるスウェイラーの"人喰い狼"かい!?」
その異名のような何かを女が発した途端、野次馬がざわざわとどよめき始めた。耳にしたユラも苦い顔をしている。
「人喰い狼?あ〜いや、あれは誤解ですよ。とりあえずあそこでのびちゃった男の人、仕事仲間なんですよね?邪魔になってるので背負って持ち帰って貰えますか?」
「あ、ああ…悪いね。ほらアンタ!帰るよ!」
ズルズルと引きずられて帰る二人を見送ると、ユラは溜息を吐いた後に駆け足でカーチに近寄り小脇に抱えた。
「あのユラさん、人喰い狼って何で──うわっ!?」
「ちょっとその話は後でね…!人が多くなってきたから場所を変えよう」
そう言うやいなや、ユラは凄まじいスピードで群衆の中をすり抜けながら駆けていった。あっという間に先程まで歩いていたジャンクヤード通りにまで帰ると、ベンチに二人とも腰掛ける。
「ふぅ。ここならまだ静かで良いと思う」
「…それで、人喰い狼とは何なのですかユラさん。まさか本当に人間を食べたりしてるんです?」
「いや、その、あの、えーっと…何て言ったら良いか…」
しどろもどろしていると、ユラのブレードが電子音を発した。
『オーナーが返答に困っているので私が代わりに対応します。オーナーはその昔、ヤーラ不足に困り果てていました。一番手っ取り早い方法としてゴロツキの排除を優先した結果、人喰いの名を得たという説があります』
「もう、エレ!…つまりその、昔は依頼も関係なく街の目立つゴロツキをギッタンギッタンにしてヤーラを奪い取ってたの。今思えばヤンチャしてた時代だね」
「なるほど、それで人喰い狼と。本当に人を食べてたのかと思いましたよ…」
合点がいったようで頷くカーチ。
自分のヤンチャな過去を言ったことでやや照れているユラ。
微妙な空気が流れる中、仕事を終えたサガタが二人の元へやってきた。
「おう、ユラも案内ご苦労様だ。カーチ、とりあえずヤーラとスウェイラー、あと基本的なことは大体分かったな?」
「はい。他のメトロポリスと相違無いことも分かりましたし、恐らく上層も似たような感じなのでしょう」
うんうん、とサガタは腕を組んで頷いている。
「じゃあ、明日は仕入れも兼ねて…俺とユラ、カーチの三人で封鎖区域へ向かうぞ!運が良ければ遺物も手に入るかもしんないからな!」
「え?」「へっ?」
素っ頓狂な声をあげた二人はサガタを見つめる。
サガタは首を傾げており、不思議そうに見つめ返した。
「あれ、俺言ってなかったっけか?…まあとりあえずよろしくな!明日またここに集まるぞ!」
「「言ってない(ません)よ!!」」
息ぴったりなユラとカーチの怒声が、ジャンクヤードに木霊した。