人狼は武器です。素材です。それでも俺は人間として生きてみたい。 作:藤原 峯
クラスメイトに一人、不思議な男の子がいる。
誰とも話さず、人を寄せ付けない雰囲気を纏うのに、みんなの輪を、いつも羨ましそうに横目で見ていた。
後ろの席に座る私からは、彼の視線がよく見えて、どうして話しかけないのかと気になっていた。
……もしかして。話すのが苦手なのだろうか。
そう思って話しかけてみると、不器用ながらも真摯に受け答えをする彼が面白くて、ついつい絡むようになった。
ある日、部室として開放されている音楽室から、階段で食事をする彼が見えた。
お弁当を持参していることが意外で、家族に愛されているのかなと考えていたら、匂いを確認してから食べ始めた。
その所作が面白くて、湧き上がる衝動を抑えられずに彼の元へ行き、声をかける。
周囲に誰もいないからなのか、教室で話していた時とは少し雰囲気の違う彼は、幾分か楽しそうに見えたし、私も楽しかった。
その日以降。都合が合えばお昼を一緒に食べるようになったし、この前はカラオケにも二人で行った。
選曲は古めだけど、力強い歌声でギャップがあって驚いたし、見かけに寄らず喧嘩も強いのだと知る。
近づけば近づくほど、新しい発見がある彼はあの日以降、学校に来ていない。
前に休んだ時は怪我をしていたし、私の前では取り繕っていただけで、実は大怪我をしていたのではないか?
そう思い、担任へ聞いても体調不良の一点張り。
そこまで動いてようやく気付く。
「私は大上君の連絡先を知らない」
彼は相槌とたまに自分の考えを話すだけで、昔のことは何も話していなかった。
どこに住んでいるのかも、中学は何部だったのかも。
仲良くなれたと思っていたのに、蓋を開ければ当たり障りのない情報しか持っていない。
相手を知っているから、自分を曝け出しているから友達なのだろうか。
「いや、情報持ってるから友達って……なにそれ」
楽しかったのは、私だけなのだろうか。
彼は優しいから、合わせてくれていただけなのだろうか。
聞きたいことはあるのに、彼は今日も学校に来ない。
悩んでばかりのせいで練習に身も入らず、合奏では顧問や先輩に怒られてばかりだ。
パート練習では、無理を言って個人練習にさせてもらった。
「ウジウジ悩むのはらしくない!」
頬を叩き、ネガティブな思考を振るい落とす。
「次会ったら。絶対に、連絡先聞いてやるんだから」
決意を新たに、胸の中に渦巻いている気持ちを乗せ、楽器を演奏する。
この音が、ここに居ない彼に届いてくれればいいなと願って。