遅くなって申し訳ありません。
いつもより少し長めになりましたが、感想、作品評価、推薦もしていただけると大変励みになります!(強欲)
それでは第三話どうぞ!
静寂の朝は突如、コミュニティの鐘の音により破られた。「襲撃ーー!襲撃ーー!C地区だー!襲撃ーー!」フジキドはフートンから飛び起き、外を見上げる。鉄パイプの見張り台の上から、吊るされたフライパンを叩いているオートマタが叫んでいるのを見た。「ゲンダー=サン。これは一体?」「ここスラムだからな、領地の争いはよくあることだ」ボロボロのショルダーホルスターを身に着けたゲンダーが答える。
ゲンダーはフジキドの方に向き直す。「モリタ、銃は?」「銃?持ってませんよ」ゲンダーはひどく驚いた様子だ。ここキヴォトスにおいて銃は必需品。無いということは、全裸で外を歩くようなものである。「予備だ、持っていけ。じゃなきゃ死ぬぞ」ゲンダーは部屋の隅にある木箱からもう一丁の銃を出してフジキドに手渡す。チャカ・ガンだ。
銃声のする方へと向かう。襲撃された場所はマッポーめいている。破壊された家や壁、家具などが散乱している。それらをバリケードにしてコミュニティの住人が応戦している。マスクをした女子高生くらいの者、赤いオートマタ、獣人など様々な種族が集団で家々を破壊している。「ここいらはウチら〈カイザーグループ〉のシマだ!死にたくなけりゃショバ代払いな!」集団のリーダーだろうか、サングラスをした女子高生が拡声器で叫んでいる。
「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」「アッコラー!」「アンジャルワレッケラー! 」住人たちはバリケード越しに銃弾を浴びせ、食い止めている。その口からはアイサツもない暴力的なヤクザスラングが発せられている。「モリタ、俺たちも加わるぞ!」「ハイ!」二人は近くにあったバリケードに身を潜めた。ゲンダーは慣れた手つきで、フジキドは持ち前の器用さで銃を扱い、応戦する。だが、襲撃側の人数が上回っており、何人かにバリケードを突破される。
フジキドが近づいてくる獣人の腹に一発銃弾を撃ち込み、肉薄する。「イヤーッ!」少し威力を加減したカラテが鳩尾にめり込む。「あんま肉弾戦はやるなよ、モリタ。俺たちと違って致命傷になりかねない」その言葉に、フジキドは先ほど撃った相手の腹を見る。血は出ておらず痣になっているくらいである。どうやら手加減しなくてもよさそうだ。
「イヤーッ!」「ゴバァー!」「イヤーッ!」「ゴバァー!」「イヤーッ!」「ゴバァー!」拳銃で足止めしその隙にカラテで制圧する。ノーカラテ・ノーキヴォトス。「ぶん殴って戦う奴が居やがる!?イカレてんのか!?」フジキドのカラテ制圧力とコミュニティの反撃が勢いを増していくことに襲撃者のリーダーは焦っている。
「てったーい!撤退!撤退!」勝ち目がないと判断したのか、リーダーを始めとして一目散に逃げ、先ほどの喧騒が嘘だったように静かになった。「引きやがったか、モリタ。ケガはないか?」銃をホルスターに仕舞ったゲンダーが尋ねる。「いえ、大丈夫です。ゲンダー=サンも無事ですか?」お互いが無事であることを確認する。
襲撃によってC地区の一部の住居が破壊されたが、けが人は軽傷の数人程度だった。「なんだよ、まったく。気持ちよく寝てたってのに」「最近の若いもんは…」「うわ、塗り直した壁が…」張り詰めた感じは一気に解け、いつものように住人同士が話し合っている。銃社会のキヴォトスにおいて、銃撃戦はチャメシ・インシデントらしい。
けが人と損害の確認が終わり、C地区の住人総出で簡単な修復作業が始まった。「あんま肉体労働に向いてねぇんだけどな」ゲンダーが小声で不満を洩らし段ボールで壁を補強している。一方、フジキドは瓦礫を運んでいる。「ゲンダー=サン。そんなに襲撃はしょっちゅうあるのですか?」「まあ、そうだな。モリタがやったB地区の補修も別件だけど襲撃のせいだな」作業が一段落し、昼飯のオニギリを食べている。
「廃棄回収の奴、いいセンスしてるな」昆布のオニギリを食べているゲンダーが嬉しそうに頬張っている。「あのヨタモノ達はカイザーと名乗ってましたが、この辺では有名なのですか?」先ほどの襲撃が気になっているフジキドが質問する。「有名も何もクソ企業だよ。ぶっ殺してやりてぇくらいだ」近くで食べていた住人が悪態混じりに言う。
「利息ゼロって言ってた癖に、暴利を吹っ掛けて破産させやがった」「知らない契約書が突然出てきたよ、俺の場合は」「警察に行ったか?」「行っても揉み消されたよ、絶対癒着してるよ」フジキドの発言をきっかけに波紋のように広がり、次々にカイザーへの怒りが出てくる。
並々ならぬ恨みを持つ者から、大して被害がない者まで、温度差は違えど悪徳企業としてカイザーは認識されていた。「モリタさんも気をつけろよ。カイザーは私兵持ってるって聞くからな」「捕まったら死ぬまで働かされてゴミの様に捨てるらしいぜ」悪態大会も程々に、日没まで作業は続いた。
「キヴォトス…油断ならない街だ」風呂から上がりテントに戻ったフジキド、手には朝に渡されたチャカ・ガンが握られていた。「おう、モリタ。俺疲れたから寝るわ」交代で風呂に入ってきたゲンダーが肩を回しながら戻る。フジキドが握っている銃を一瞥する。「それやるよ、ここじゃ必要だ。んじゃ、おやすみ」「おやすみなさい、ゲンダー=サン」安定しない電灯を消してフートンで眠りについた。
深夜未明、フジキドは鋭い嗅覚によって異臭を感じ取った。何かが焦げるような臭いだ。「おい!火だ!火!水だ水!」外から助けを求める絶叫が聞こえる。「家が、家が!子供がいるんだ!」「ああ、俺の家が…」「人手が足りない!もっと来てくれ!」ゲンダーを叩き起こし、テントの外に出る。コミュニティはアビ・インフェルノめいた凄惨な状況だった。密集している家からは火の手が上がり、昼に直したところも破壊されている。
人影が見え、火の元へ目を凝らす。そこに居たのは、今朝、襲撃してきた集団だ。家に火をつけ、逃げ場のないコミュニティの住人に攻撃している。その様子は中世のウイッチ・ハントめいている。「アハハハハ!<カイザー>に逆らうからこうなるんだよ!」襲撃のリーダーがまるでゲームを楽しむように住人を襲っている。「卑怯な、ふざけんじゃねぇぞ!」コミュニティ側からも攻撃するが、統制もままならない。簡単に押し返され制圧される。
「おい、モリタ。逃げるぞ!」いずれ火が来る。そう判断したゲンダーは的確かつ冷静な判断を下した。ナムサン!判断が良くても遅かったようだ。まだ安全地点のテントに襲撃者が投げ込んだ手榴弾が近くで爆発する。KABOOOON!「グワッ!」テントが盾となり致命傷は免れたがフジキドは足に、ゲンダーは右腹に、それぞれ手榴弾の破片が刺さった。おお、ブッダよ寝ておられるのですか。この様な惨劇に目を瞑るのですか。
祈り虚しく襲撃者達が近づいてくる。朝の反省を踏まえてどうやら集団で移動しているようだ。「リーダー!こいつ、朝のカラテ野郎じゃないですか?」リーダーと呼ばれた女子高生が、倒れたフジキドの首を持ち上げてのぞき込む。「ホントじゃねえか。おい、カラテ野郎。朝は散々やってくれたな、礼をしてやるよ」力の入らないフジキドに無情にも腹にパンチがめり込む「グワーッ!」鈍器で殴られたような痛み。肋骨が折れたような感じがする。
「弱ぇな!カラテ野郎、まだ足りねえぞ!」腹にパンチがめり込む「グワーッ!」めり込む「グワーッ!」めり込む!「グワーッ!」「やめろ!」何とか立ち上がったゲンダーがホルスターから銃を取り出そうとするが、一斉射撃、出す前に制圧された。「ア、アバッ…」ゲンダーが気を失う。「ゲンダー=サン!グワッ!」心配したフジキドの首に力が加わる。「人の心配してる場合か?カラテ野郎」さらに力が加わる。「安心しろよ、同じ所に送ってやるからよ」襲撃者の顔には痛ぶるのを楽しむかのような笑みが浮かんでいる。
フジキドの意識が遠退いていく。ソーマトウか。今まで見てきた情景が、フジキドのニューロンに浮かんでは消えていく。
ゲンダー=サン……キダ=サン……コミュニティのリーダー達……
「おら!どうした!手も出ないってか?」指が首にめり込んでいく
殺したニンジャ……ゲンドーソー=センセイ……
「死ぬんだぞ!じせーの句でも詠めよ!」血流が止まっていくような感覚がする
フユコ……トチノキ……あの時、ああしていれば……
「死にやがれ!」顔が、頭が寒く感じる
マルノウチスゴイタカイビル……ニンジャ……
そうだ…ニンジャ……俺は、ニンジャを殺す…殺す…殺すのだ…!
「…せ」微かにフジキドの口が動く。「ああ!?何だって?聞こえねぇな!」「…殺せ」「もっとはっきり喋れよ!カラテ野郎!」「…殺すべし」「聞こえねぇって言ってんだろ!」「ニンジャ殺すべし!」フジキドの目が見開かれ襲撃者を見据えた。
瞬間、フジキドの右手が首を掴んでいる腕をマンリキめいた力で握り、へし折った!
「ガァァァァァァアァ!」へし折られた腕に力は入らず、フジキドは解放され前傾姿勢で立った。
フジキドから汗のように血が流れていき、まとわりつくように体全体を覆う。血は凝固し、体はニンジャ装束へと変化し顔には「忍」「殺」と書かれたメンポ(面頬)が作られる。その異様な光景に襲撃者は戦慄している。「ドーモ、はじめまして。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはオジギした。
しかし、ここはキヴォトス。アイサツの文化は無いが、先ほど腕を折られた襲撃者のリーダーが折れていない方の手で祈るようにアイサツしたのだ。「ド、ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。アララギです」圧倒的ニンジャ・アトモスフィア、オジギせざるを得ない。
「撃て、撃てェーっ!」襲撃者の一人が声を上げた。
ダダダダダダ!ダダダダダダ!ダダダダダダ!ダダダダダダ!
ゲンダーの時とは比べ物にならないほどの弾丸が浴びせられる。死んだ、誰もが思った。しかし、ニンジャスレイヤーはニンジャ視力で見切った弾丸を全て自身の小手と足技によって弾き返していた。
息を整えるかのように、赤黒いメンポから蒸気が噴き出す。「何なんだよ!お前は!つーか、私たち忍者じゃないだろ!」恐怖で震えるリーダーが精いっぱいの虚勢を張って叫ぶ。「その通り、オヌシらはニンジャではない。だが殺す!」「ナンデ!?」「オヌシらがカイザーだからだ」インガオホー。襲撃者達には先ほどの勢いは消え、殺される恐怖に震える。
「クソオオオオ!」多数の襲撃者とそのリーダーがインファイトを仕掛ける。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは冷静に飛び込んできた相手の拳を回し受けで払う。バランスを失った襲撃者にカラテが飛び、首と胴が分かれる。
「リーダーを援護しろ!」「おい、あれだ!アレ持ってこい!」焦った何人かの襲撃者が取り出したのはなんとロケットランチャーである。いくらニンジャと言えどただでは済まない。ロケットの弾頭が装填され、複数を相手しているニンジャスレイヤーに発射された。ナムアミダブツ!もはやここまでか。
「WASSHOI!!」当たる直前、ニンジャスレイヤーは襲撃者リーダーの頭をつかんでロケットの盾にした。「アバーッ!」直撃したリーダーの体からは肉の焼けた臭いがする。「どこ狙ってるんだ!」さらに焦りが加速する襲撃者、もう一発弾頭が装填される。ニンジャスレイヤーは発射された弾頭を今度は体を捻って避け、射手の胸を貫く。
「アバッ、アバババ…」血塗られた大地、避けられる弾丸、そして容赦も慈悲もない攻撃にリーダーは失禁した。もはや味方は残っておらず、リーダーだけとなった。「ハイクを詠め、アララギ=サン」死刑宣告が下されたアララギは何も言うことができないまま、そのまま首を切られ絶命した。
「終わったか……グッ…!」緊張が解けたニンジャスレイヤーはかつてない疲労感により膝をついた。下を向く、そこには砕けたガラス片が散らばり、ニンジャスレイヤーを映しているはずだった。そのガラス片には、黒く薄い人影だけが映り込み、煙の様に消えた。「…ナラク、なのか…?」深く考えることもできないままフジキドの意識は闇の中へ沈んでいった。
第三話をお読みいただきありがとうございます。
再度書きますが。感想、作品評価、推薦もしていただけると大変励みになります!(強欲)
それと、これからの連載ですが大体2週間に1話ペースで進む予定です。これからも楽しくお読み頂けたら幸いです。
今後もよろしくお願いします。合掌!