話になっています。
都市伝説解体センター再びGRなし(HAPPYEND確定)(長編)
が、ゲームに存在しないグッドエンドルート。
都市伝説解体センター再びGRあり(HAPPYEND確定)(長編)
が、ゲームの最後から続くトゥルーエンド。
pixivに投稿したこれらの後日談になっています。
が、ゲームの最後から続くトゥルーエンド。
という解釈で書きました。
ちまたで言われる「鬱ゲー」では終わらせない、彼らへの愛情を込めて
います。
pixivに投稿した上記の後日談になります。
都市伝説解体センター再びGRあり(夏祭り)(後日談)
福来あざみのカバンの中にはメモ帳がある。
あの日、センター長に渡された。
彼女の記憶と、時には廻屋渉の言葉が混じる物。
「自分自身の思い出」として、今も大事に使っている。
「お祭り行こっか。」
キッチンで素麺を茹でながら聞いてみた。
「そう言えば今日でしたね。」
隣でキュウリとハムを切っていた渉が答える。
相変わらず面倒なのか、ヒラヒラの半袖のままだ。
ワンピースの裾から、細くて白い足が覗いている。
あたしと違って鍛えてないから折れそうだ。
「行きたいです!」
あざみーが元気良く手を上げる。
振り上げた包丁をちょいと下がって避ける。
「浴衣なら駅でレンタルしてるわね。」
歩も乗り気らしい。
「二人ともちゃんと調べてるじゃん。」
素麺をすすりながら、
「浴衣、ジャスミンさんに選んで欲しいです。」
あざみーはあたしが2つ年上と知ってから、
妹のように甘えてくる事がある。悪い気はしない。
「よし、あたしに任せなさい。」
とん、と胸を叩く。
「私もジャスミンにお任せしますよ。」
「ふむ。いいよ。」
「一緒に選んで。色々見たいわ。」
「オッケー。楽しみだね。」
歩にはどんなのが似合うだろう。
浴衣のレンタル会場。
「あたしはこれにしよう。」
紺色に大きな白い百合が咲いたやつにした。
「どお?」
「いいですね!」
あざみーが手を叩いて褒めてくれる。
彼女が着ているのは、朝顔が散らされた物。
薄いピンクの生地によく映える。
「あざみーも可愛いよ。」
思わず頭を撫でてしまう。
「いいわね。」
歩は紺色の生地に、花火が咲いている物。
「似合うね。ちょっと大人びてていい。」
渉には黒色のシンプルな物にした。
「なかなかに渋いですねえ。」
「ビギナーにはオススメの柄らしいよ。」
「黒っていうのが、センター長らしくていい。」
にやりと笑うと、
人聞きが悪いですね、と溜め息などついている。
「んじゃ、向かいますか。」
向かう車の中。
「お祭りって賑やかなんですよね。
ネットで色々調べてきました。」
はしゃぐあざみー。生まれて初めてのお祭りにウキウキだ。
「私としては神社と、それ関連に興味がありますねえ。」
渉は何時も通りといったところか。
「私は変わった屋台でも探そうかしら。」
歩も楽しそうだ。
「あのさ。人混み大丈夫なの? きつくない?」
心配はある。
「ある程度対策はしてるわ。自分でいるのは少しにしておくし。」
「そっか。エスコートは任せて。」
と、
「そうそう、祭りと言えばその起源は・・・。」
ーああ、始まったよ、渉の語りが。
適当に聞き流しとこ。
「と言うように、民俗学的な面からも、興味深いものがあるのですよ。」
どの位時間が経ったのか、やっと終わったところで、
「渉さんはいいですよねー。」
と、羨ましそうな声が聞こえた。
「あざみー?」
「ジャスミンさん、私、何も知らずに、調査してたじゃないですか?」
「うんうん。」
「あの頃、脳内センター長さんが、自分と同じ人間だって知らなくて」
「だからやり取りも、全部自分の考えだと思ってたんですよ。」
「でも、本当は何でも知ってる渉さんが、私にアドバイスしてくれてたって
分かって」
「それで?」
「どうして私だけ、頭良くないんでしょう?」
「へ?」
「お二人の会話について行けない事があるんですよ、私だけ。」
「同じ人間なのにー。」
「あ、ああ。なるほどね。」
渉の蘊蓄(うんちく)を聞いて羨ましくなったのか。
「そんな慰め、要りません!」
脳内で渉が何か言ったらしく、涙目で反論している。
何て言えばいいのかなあ、この場合。
「はい、お仕舞い!」
両手をパンと合わせて、歩が一言。
「・・・どうなったわけ?」
脳内の二人はどういう状態なんだろうか。
「取り敢えず、あざみには忘れてもらったわ。
この話題は封印ね。」
流石、主人格。
強権を発動させたらしい。
「あ、そろそろ着くよ。」
ちょうど、会場が見えて来た。
夏祭り会場。
車椅子はバンの後ろに乗せてきた。
あまり目立ちたくはないけど、あたしのバイクじゃ浴衣は危ないし、
何より渉が動き回れない。
「順番決めてね。」
脳内会議する彼らを横目に、花火の時間を確認する。
「あ、わたあめだー。」
「タコスー。」
「育ち盛りか。」
無邪気にはしゃぐ姿に苦笑する。
これ以上、身長伸びないよ、ね?
「チョコシュガー、一口下さいっ!」
チュロスの味違いに興味津々のあざみー。
「じゃあ、あたしも、もらおうかな。」
食べさせつつ、メイプルバニラシュガーを齧る。
「甘っ。」
「あざみー、どれが欲しい?」
射的を見つけて声を掛けると、何やら賞品を凝視している。
「ジャスミンさん、あれ、微妙に似てませんか?」
指の先には造りの粗いぬいぐるみ。
「んー、はあ?」
「トシカイくん?」
マルシェでテントに使っていたマスコットキャラに・・・
似てなくもない。
「あれにしませんか?」
あざみーの目は真剣だ。
「よっしゃ!」
腕の見せ所! ーぬいぐるみがころりと落ちた。
交代した歩と回る。
あざみーじゃないってバレるかなあ。
こういう時は、あたしのこのお団子が目立つのは困る。
かといって、下ろした所でねえ。
「飲みましょ。」
そんな事を考えていると、地ビールの屋台に誘われる。
「あ、いいね。」
あたしは普段、外ではあまり飲まない。
職務上、何時、召集が掛かるか分からないからだ。
でも、今ならいいかな、と。
セーフティハウスでも、皆で飲み会を開いている。
ビールとかワインとかチューハイとか。
ただあまり飲ませると、絡み酒なんだよねえ、この子。
「この苦味、悪くないわ。」
「スタウトか。黒ビールだね。
あたしはピルスナー。味見する?」
「じゃ、交換。」
つまみのソーセージ片手に、口元に泡をつけてご機嫌だ。
「ついてるって。」
拭ってやるとくすぐったそうに笑う。
「渉は何、食べる?」
黒の浴衣姿に聞いてみると、
「私はとくには。あざみさんと歩さんが結構食べましたからね。」
お腹を触って笑う。
その頬は、歩の飲んだビールでほんのり赤い。
「確かに。」
「それより、神社の方に興味があります。
一人でも行けますので、りんご飴を一つお願い出来ますか?」
「りんご飴?」
「ええ。一度食べてみたくて。」
「わかった。」
他の二人が歩いていた時にチェックしていたのか、上手く人混みを避けて、
器用に車椅子を操る後ろ姿を見送る。
神社に着くと、関係者らしき人間を捕まえて、何やら熱心に聞いていた。
「お待たせしました。」
満足そうにこちらに戻って来る。
「なんかひそひそしてるけど?」
「気にしないで下さい。
ちょっと世間話をしただけですよ。」
涼しい顔をしてりんご飴を一口。
「美味しいですよ。」
あたしも自分のを齧る。
「そちらは青林檎、なんですね。」
「うん、色違いだね。」
「味見しても?」
「いいけど。同じ味だと思うよ。」
少し屈めば一口齧る。
「成る程。確かに変わりませんね。」
「そうゆうこと。」
「戻りましょうか。花火の時間が近い。
あざみさんに代わります。」
「いいの?」
「ええ。私と歩さんは彼女を通して見られますから。」
ドーン。と夜空に華が咲く。
「たまやー。」「かぎやー。」
と、あざみーと一緒に声を上げる。
ー懐かしいわね。
歩が呟く。
ーええ。小さな歩さんが見えます。
渉が答える。
ー来年もこうだといいわね。
ーええ、きっと。
セーフティハウスの裏。
「綺麗。」
手持ち花火に目を輝かせるあざみー。
「やー!」
今度はネズミ花火から逃げ回っている。
見てて飽きないなあ。
さて、バケツに花火の残骸を浸してー。
「あ!」
歩がロケット花火に火をつけている。
止める間もなく、派手な音と共に色とりどりの花が咲く。
いや、セットに入ってたけどさ。
「大丈夫よ。別の所であげた事にしておくから。」
振り返ってにやりと笑う。
いや、情報操作する気満々かよ。
「よし、もう一個。」
ハッカーらしい台詞に頭を痛めているうちに、
もう一つ、夜空を染め上げた。
「線香花火にはこんな怪談があるんですよ。」
チリチリと燃える火花に、その顔が浮かび上がる。
「渉さん、やめてくださいよ。後でトイレに行けなくなります!」
あざみーが止めに入る。
「あたしが代わりに行ってあげるわよ。」
「そういう問題ではないです!」
「私が怖がりなの、歩さんのせいじゃないですかー。」
ああ、泣かした。
「あ、あのさ。そろそろ中でスイカ食べない?」
収集がつかなくなりそうなので、ここは話題を変える。
「冷やしてあるよ。」
「食べます!」
主導権を握ったあざみーが叫ぶ。
危機回避能力が上がってきてるな。
機会を潰された渉が、残念そうに首を振ってるのが目に浮かぶ。
セーフティハウス裏、縁側。
スイカの食べ方も人それぞれ。
種ごと食べてる一人、種を除きながら食べる一人、種を外に飛ばしてるの一人。
いやあ、見てるとおもしろっ。
「ーで、あれどうすんの?」
あたしの視線の先には、ひしゃげたぬいぐるみが置かれている。
「そうですね。ちょっと利用させて貰いましょうか。」
渉が唇に指を当てて笑みを浮かべる。悪そうだなあ。
夜。
ネットには嘆きの声があふれている。
ー「夏祭り」でセンター職員見つけたんだけど、また撮影データ消えた!
ーこっちも。こっそり撮ったのに何で!?
ー前にもこうゆうのなかった?
ー何か、センター自体が怪異現象じみてきている。
彼らを見掛ける事は出来ても、それを映像として残せない。
まるで誰かがそれを許さないかのように。
翌日。
お土産のチュロスを齧る渉。
パンプキン味とコーヒー。
「苦くないんですか?」
ブラックのそれをすする姿に、疑問符を浮かべるあざみー。
「コーヒーは探偵の飲み物ですからね。」
涼しい顔で答えている。
「そういえば、センターって怪異探偵事務所のような所、でしたね。」
「苦っ!!」
言いながら、ついコーヒーに口をつけてしまった、あざみーが叫ぶ。
ああ、引っ込んじゃったよ。
「あざみさんにはまだ早いようですね。」
渉がくすりと笑う。
「あざみ、泣いてるわよ。まったく。」
歩が現れて平然とすする。
「歩さん、これは私の分です。」
「少しくらいいいじゃない。」
と、目の前で揉め始める。
「もう一杯、淹れてあげるから争わない、こと。」
以前は眠気覚ましの道具でしかなかったコーヒーを、味わってくれる。
それだけであたしは幸せになる。
後日。
「さて、季節柄、我々も先日夏祭りへと繰り出したの
ですがー」
渉が配信動画の中で微笑んでいる。
半袖のシャツの上に、いわゆるサマーカーディガンを羽織っているのは、
勿論、体のラインを隠す為だ。
コメント欄に、「見たー。」「あのお団子、やっぱりジャス姉か。」
といったコメントが踊る。
「画像消えたー。」「撮影許可くれっ!!」
どうやらマルシェの時と同じように、勝手に撮影した奴がいたらしい。
「おやおや、無断撮影をしていた方がいたようですね。」
「我々はあくまで都市伝説を調査する身です。
そういう行為はお控え下さい。」
涼しい顔でそう答えると、
「今日は、お祭りで手に入れた、あるぬいぐるみについての話題です。」
「どなたかが作って、ネット販売しているようなのですがー。」
動画をチェックするあたしの前で、渉がそれらしい話をしている。
エンタメ風のそれに、耳を傾ける常連達。
許可無しにぬいぐるみを作っている奴が、それを知ってどんな顔をしたかは
知らないが、あの後それなりに売れたらしい。
動画の効果はなかなかだったようだ。
「で、これが結果、と。」
頬杖をついて眺める画面では、センターへの依頼が踊っている。
「都市伝説解体センター」が受ける依頼、その内容をチェックするのも
あたしの仕事の一つだ。
「ええ。双方に悪い話ではないでしょう?」
依頼が増えて渉は嬉しそうだ。
「変な依頼は『千里眼』で弾けばいいわけだ。」
ふふと楽しそうな声が聞こえる。
真偽を見極める渉のチカラは実際に存在する。
その能力は本物だしね。
とある場所。
「富入警視監、彼らの精神は安定しているようですね。」
「ええ。止木さんのおかげもあって、問題は起こっていないみたい。」
「一度、セーフティハウスにもお邪魔したけど、三人とも普段通り
という印象だったわ。」
「・・・そうですか。」
「何か悩んでいるようね。」
コーヒーを一口、友人の精神科医は心の中で苦笑する。
まさか自分が、誰かに悩みを打ち明ける事になろうとは。
「私は医師の立場から、一つの肉体には一つの精神が宿るべき、と
考えています。」
「ーですが、彼らの話を聞いていると、果たしてそれが正しい答えなのか。」
彼は富入警視監から、定期的にセーフティハウスの様子、監視カメラや
盗聴機からの情報を提供されている。
それらからは、彼らが個々に存在し、語り合い、助け合う姿が見える。
「難しい問題ね。」
数日後のバスタブ。
「メールが来てたみたいね?」
何時ものように湯に浸かりながら、歩が小首を傾げる。
監視も盗聴もされない此処は、聞かれたくない話題に向いている。
「ああ、気づいてた? さすが。」
思わず苦笑してしまう。
「夏祭りの様子を聞いた連中がさ、帰省したいとか、有給とりたいとか
言い出してるんだって。」
「まあ、それはいいんだけど・・・。」
「私達の影響、というのが問題だと?」
続く言葉を渉が繋ぐ。
「そういう事。変な影響を与えないで欲しいって、苦言を呈された。」
「失礼ね。」
歩が口を尖らせる。
「まあ、富入警視監に面と向かって言えないから、あたしにそれとなく言って
来てるんだけどー。」
「読まなかった事にして、削除しておいた。」
「あら、いいの?」
「正式な申し入れなら、上司を通せって話だからね。」
「ふうん。あ、そうそう。」
歩があたしの金髪を指差す。
「髪、ちゃんと乾かすのよ。長いからって面倒がっちゃ駄目。」
「ドライヤーしてあげるから。」
「ありがと。」
一緒に暮らし始めて、「綺麗なのに勿体無い」と、歩があたしの髪を
やってくれるようになった。
助かってるし、何だか嬉しい。
自室。
部屋の片隅にトシカイ君もどきが飾ってある。
「おやおや、あざみさん、
またお祭りの情報を見てますね。」
「梯子でもするつもりかしら?」
あざみは鼻唄混じりに、ご機嫌でネットを見ている。
時折、カップルの画像に行き当たって、頬を赤らめたりしながら。
「ーこの子の夏は長くなりそうね。」
「夏祭り」をテーマに、オリジナルエピソードを盛り込みました。
きっと彼らの夏は幸せに満ちています。