ダークディケイドの力持ってゼンゼロの世界に転生出来たけどカメンライドできる種類が酷すぎる。 作:そらまめまめま
クソッ クソッ!
どうすれば…このままじゃ、バリアが破られるより先に僕の体が限界を迎える。
「ぬぅ…!」
後ろを振り返る余裕すらない。だが、アキラがどれほど苦しい思いをしているかは、嫌というほど伝わってきた。
「通りすがり……!」
「わかってる! 今考えてるところだ、お前はとにかく雅を呼べ!」
「わ、わかった……星見さん! 星見さん!」
考えろ、考えろ!
大体が原作通りなら雅はアキラの声で意識を取り戻すはずだ。
でも仮に意識を取り戻したとして、その先はどうする?
暴走するエネルギーを抑え込みながら、刀を鞘に収める。言うのは簡単だ。だが、今の雅を相手に、そんな真似ができるのか。
無理やり刀を奪うわけにもいかない。あれは彼女にとって、大切な刀だ。
傷つけるなんてもってのほか。
これしかないか。
「一か八か……プロキシ、お前…俺に賭けるか?」
「え?」
「今からすることは完全な運だ。最悪、大怪我をする可能性がある」
一瞬の沈黙。
そりゃそうか、そんなすぐ判断できるわけ──
「わかった」
前言撤回……アキラって、こういう時は即答するから人たらしなんだろうな。
いや、今はいい。
余計なことを考えている暇はない。
「それじゃあ説明するぞ……」
僕は、自分の考えを手短に伝えた。
雅が意識を取り戻すこと。そして、暴走するエネルギーを押さえ込みながら、刀を鞘へと導くこと。
もちろん、成功する保証なんてない。
それでも、他に方法が思いつかなかった。
「……よし、準備はいいな?」
「あぁ、いつでも…」
ここから先は、文字通りの賭けだ。
「……行くぞ!」
僕はバリアを維持したまま、足を踏み出した。
一歩。さらに一歩。
全身にかかる負荷が、先ほどよりも増していく。
「星見さん! 聞こえますか! 星見さん!」
アキラが必死に呼びかけるが、雅は反応しない。
「……っ、駄目か……!」
まさか、原作と違って呼びかけが届かないのか?
いや、まだだ。
まだ、諦めるには早い。
僕は大きく息を吸い込んだ。
そして。
「──雅ッ!!」
「…っ!」
腹の底から、今出せる全力で彼女の名前を叫んだ。
どうやら効果があったらしい、
「刀を!」
「 うっ……くっ……持っていろ!」
雅が、ゆっくりと刀をこちらへ向ける。
その手は震え、動きはひどく緩慢だった。それでも、少しずつ、確実に距離が縮まっていく。
僕は1歩前へ出て伸ばされた彼女の手を掴んだ。
刀から放たれるエネルギー波動を、至近距離でまともに浴びた。
だが、離さない……絶対に!
「今だ、プロキシ!!」
「わかった!」
アキラが鞘を構える。
僕は雅の手を押さえ込み、アキラと呼吸を合わせるようにして、刀の切っ先を鞘へと導いた。
わずかでも手元が狂えば、すべてが台無しになる。
それでも、やるしかない。
「うおおおおっ!!!」
全身の力を振り絞り、僕は刀を鞘へと押し込んだ。
そしてついに、僕たちはついに刀を鞘へと収めることに成功した。
その瞬間、あれほど荒れ狂っていたエネルギーが、嘘のように静まり始める。
「……やっと、終わった……?」
呆然と呟きながら、僕はようやく張り詰めていた緊張を緩めた。
……いや、無理だ。もう一歩も動けない。
ベルトからブレイブのカードを取り出し、ダークディケイドの姿へと戻ると、全身にかかっていた負荷から解放された。
その安堵と同時に、張り詰めていた糸がぷつりと切れてしまい、僕はそのまま仰向けに倒れ込んだ。
「つっかれた……」
いや、まっじで疲れた。
体中が痛い。
腕も足も、もう自分のものじゃないみたいだ。
できることなら、このまましばらく動かずにいたい。
……いや、できることならじゃない。絶対に動きたくない。
てか度々、素の口調が出始めていた気がする。
けどさぁ、今の僕にんなことを気にかける余裕なんてあるわけない。
格好をつけるのも、余裕のあるふりをするのも、もう限界だ。
本当に死ぬかと思った。
ひとまず、全員無事……だよな?
首すらも動かせない。
…お願いだから、もう一波乱なんて起きないで…いや、本当にやめてください
ここからはすいすい原作通り進んで欲しい。いやダメか。
そんなことを考えていた、そのときだった。
「通りすがり、ちょっといいかい?」
そう言って大の字に倒れている僕に耳打ちし、こっそりと僕に何か教える。
──え、僕が言うの?
僕が何を言われたのか、今からわかると思う。
「星見さん、毛先が燃えてチリチリになってしまっているけれど、大丈夫かい?」
「……星見家は代々くせ毛なのだ。私の心配は無用だ。この程度、比にならない修羅場を幾度も潜ってきた。」
「なら、刀から火花が出ているのは俺の幻覚か?」
「なに──!?」
思わず目を見開いた雅が、慌てて自分の刀へと視線を落とす。
その反応を見た瞬間、僕はつい口元を緩めてしまった。
「フッ…すまん、嘘だ」
「笑えないな、これは至って正常な反応だ!」
やばい。
原作通りで言ってみただけだけど、こうしてその場に居合わせてやるとちょっとおもろい。
「すまんな、俺はただ…雅、体から狐火が出ているぞ。」
「どこだ――!?」
もちろんないよ。
狐火が出ていないことに気付いた雅は、再度こちらを睨んできた。
「……今のも嘘だ。やっぱり、さっきの出来事が相当堪えているんだろう。」
「……貴様! 私を幾度も愚弄して、どういうつもりだ!」
いやぁ、いい反応だ。
……なんて、口に出したら本気で斬られそうなので、心の中だけに留めておく。
「ごめん、僕がお願いしたんだ。星見家の人間は、同じ間違いは三度犯さないと言っていただろう?……さっきので三度目だ。つまり、それほど事態は深刻ということだろう。」
よくそんなこと思いつくねアキラ。
原作通りとはいえ普通に性格悪くない?
「先ほど刀が制御を失った時、お前達は何故狐火の中へ飛び込んだ?出口が見えていたのなら、私を置いて逃げることもできたはずだ。」
そうそう、ここでアキラが雅に対して
『僕が君のプロキシだから』
と状況によっては口説き文句としか読み取れるヤベーイシーンだ。
いやぁ、まさか生で見られるとは。
さっきまで死にかけていた苦労も、少しは報われるというものだ。
さあ、言え!
ここは決めるところだぞ、アキラ!
「それは、彼のおかげだ。」
…ん?
「彼がいなきゃ、僕はあの中に入ることすら出来なかった。僕はただ、鞘を持って彼の指示に従っただけさ。」
"ッッッッッッッ!!*1
アキラさん?
セリフ、違くないっすか?
え、まさか僕が本来2人になるシーンに割り込んだから変わった?
ウソォン…
「では通りすがり、答えろ。何故あの時私を斬らなかった」
「いや、えと……」
やべぇ、セリフ考えてなかったから何も浮かばない。
こんな時、門矢士ならなんて言うのだろうか…
「た、ただ生きていてほしい……それに理由なんかあるのか?」
「──っ!」
雅が息を呑む。
その瞳が、ほんのわずかに揺れた。
……いや、そんな反応されても。
僕だって、別に気の利いた台詞を用意していたわけじゃないんだ。
ただ、どう答えればいいのか分からなくて。
何か言わなきゃと思って。
それで、思ったことをそのまま口にしただけだった。
どんな過去があったのか、僕は知っている。
彼女が背負ってきたものも、ある程度は理解しているつもりだ。
……けれど。
彼女が本当は何を思っているのかなんて、僕には分からない。
過去を知っているからといって、その人の心まで分かった気になっていいわけじゃない。
だから、僕は僕なりに思ったことを伝えるしかなかった。
「虚狩りだからって、誰かを頼っちゃいけないとか……そんなんないだろ?」
自分で言っておいてなんだけど、我ながら随分と偉そうなことを言っている気がする。
そもそも、雅には六課の人たちがいる。
彼女を支えてくれる仲間だって、ちゃんといるはずだ。
だから、僕がこんなことを言う必要なんてなかったのかもしれない。
……いや。
それでも、だ。
誰かを頼ることに、資格なんて必要ないだろう。
強いから、弱いからとか。
虚狩りだからとか、そうじゃないとか。
そんなものは関係ない。
誰だって、苦しい時には誰かの手を借りたっていい。
……なんて。
僕自身、そんなことを胸を張って言えるほど立派な人間じゃないんだけどさ。
「えと……それじゃ、ダメか?」
最後は、ついそんな言葉で締めくくってしまった。
なんだか急に自信がなくなってきた
「……通りすがり、君は案外…優しいんだな」
「…………」
まずい。
なんだか急に恥ずかしくなってきた。
いや、だってさ!
今の僕、完全に素の口調だったじゃん!
普段なら、もう少しこう……門矢士っぽく、余裕たっぷりに、格好つけて言うつもりだったのに!
「とりあえず!!」
わかりやすいくらいデカイ声を出してしまった
「ホロウから脱出するぞ!データは十分なんだろ?」
「脱出したいのは山々なんだけど…ちょっと、僕これ以上動けそうにないというか。」
ああ、そうだった。
アキラも、もう限界なんだった。
さっきの戦闘で、体力なんてほとんど残っていない。
僕はオーロラカーテンを開き、一台のバイクを取り出す。
初めてのバイクだからね。
ちゃんと取っておいたのさ。
……え?
それで脱出しないのかって?
……いや、あんだけ苦労して、ようやくここまでたどり着いたんだぞ?
そんな僕が今さら、
『実はこれで脱出できるよ!』
言えるわけないやんけ
原作通り進めた理由言った気がするけど後に雅の覚醒の重要な部分になると思ったからしたのと、
僕が万が一、途中で介入できなくなった時のためになるべく原作通りに進めようとしていただけだ。
あくまで保険。
保険だったんだよ。
……ただし。
それを知らない人間からすれば、普通にふざけんな案件だ。
「乗れ。」
アキラを乗せて引いていこうとしたら、雅が乗ってきた。
「何してんだ?」
「私も少々疲れがな。何を呆然としている、お前も早く乗れ。」
「いや、3人乗りは違法──」
「秩序、乱すべからず……だが、ここはホロウの中だ。新エリー都の交通法規など、今は適用されん。エーテリアスに囲まれる前に、速やかにここを脱出するぞ。」
それっぽいこと言ってるけど、あんたそれ一番言っちゃいけない立場の人だろ。
治安を守る側の人間が、法を無視するような発言を堂々としないでほしい。
もうちょっとこう……あるだろ。
ツッコミを入れたい気持ちは山ほどあった。
だが、今はそれよりも、一刻も早くここから脱出する方が先だ。
「……はぁ。落ちても知らないからな」
「問題ない」
僕は諦めてハンドルを握り直し、エーテリアスが寄ってくる前に、この場から退散するべくバイクを走らせた。
あ、刀の事話してもらってない…やべぇ!!!!