『孤高のリヴァイアサン』 ~~人生をやり直したい偉人たちと、自分の人生を取り戻したい女子高生の異能戦争~~ 作:大和ユキ
「大和、その槍をどう出した」
「知らないわよ。また
「違う。さっき具体的に、何をどう考え、どう念じたら出てきたと聞いてる」
「も、もっと遠くを攻撃したい……みたいな」
「なるほどな……次は大岩を砕くようなイメージを浮かべてみろ、大和」
須藤はそうとだけ言い残し、再生を追いつかせまいと刀を手にしてまたもや黒太子のもとへと駆け寄っていく。
「砕く……砕く……」
そんなイメージを必死に脳内で唱えると、再び
さっきよりも長い間の閃光の後、姿を現したのは、メロン大の鉄球を備えた
——もしかしてだけど、イメージを具現化してくれるってこと?
だとしても砕くってそういう感じ?
もっとハンマーとかメイスとか、扱いやすいものを出してくれても。
ただ確実なのは、長槍ほどの射程はなくって、近付かなければいけないこと。
再び水を勢いよく切りながら、エドワードの元へと踏み込む。
「ハッ……! 奇っ怪なものを持ち出してきおって!」
持ち手を手に大きくスイングするけど、鉄球は虚しく虚空を横切る。
生じた私の隙に攻撃を叩き込もうとしてくるエドワード、その隙を埋めるように須藤が前に出て攻撃を弾いた。
その止まったエドワードの頭へ、ルイが更に光線で目潰しを与える。
「大和、肩を軸にしながら振るうんだ!」
「肩を、軸に……」
ルイの助言を反復しながら、肩を軸にしながら鉄球を振るう。
阿吽の呼吸で鉄球を回避する須藤、エドワードの外殻がまるで飴細工みたいにぼろぼろと崩れ落ち、その腕が顕になった。
「私の鎧が……!」
骨にも応えたのか、苦しそうな息を上げるエドワード。
そうだ、私たちが欲しかったのはこれだ!
エドワードの血塊を打ち砕く、手堅い一撃!
これだとまだ剥がしただけ、浅い。
間髪入れない追撃を。
それに呼応するようにフレイルは
狼狽するエドワードへ駆け、その一閃を腕目掛けて浴びせた。
「ガアアアッッッ……!」
けれど、真に目を見開いたのはその次の瞬間で。
まるで刀身が幻だったかのように、ただただその腕へ
にも関わらず絶叫を上げるエドワード。
右腕を抑えながら、その場に初めて両膝を突く。
彼の荒げる吐息が、この川辺一帯に響き渡る。
何が起こったのかは分からない。
エドワードの腕からも血が一切出ていない。
激しい痛みを抑えるように蹲るエドワードへ、次の一撃を————入れさせてはくれない。
左腕を振るい追撃を退け、そして初めて自分から後ろへと下がっていった。
「
「……知らないわよ、そんなの」
相変わらずこの剣に執着を見せるエドワード。
そんなに欲しいなら檻にぶち込んだあとにくれてやりたいけど、私の手から離れると消えるもんだからそうもいかない。
でも……これじゃ足りない。
今こうしてる間にも、日本中でエドワードへの恐怖が積み重なっている。
「地道」じゃいけない。
たった一撃で、この戦いを終わらせる一撃を……!
その願いに呼応するように輝く
鎖鉄球であんなに長かったんだ、きっとこれはもっと長い時間がかかる。
「……須藤。お願いがある。時間を稼いでほしい」
彼の息は、既に危険域に達しているのが分かる。
呼吸にすら全身を使っていて、肩が休まず動いている。
でも須藤ならやってくれる。
今に至るまで、前に出続けてくれた彼なら。
「分かった」
短く返事をし、水底を蹴る須藤。
近付く夜明け、彼が向かうエドワードの背にそびえ立つ山の向こうから明光が差す。
エドワードの方もただやられているだけじゃない。
須藤が傷つけた傷から血を取り出し、それを更に全身へと纏わせる。
荘厳な獅子の意匠をしていた前腕部も、今となっては象徴も美しさも全てかなぐり捨てた、ただの棘の付き棍棒に成り下がっていた。
更に分厚くなる敵の装甲……鈍重なあの戦車をもっと強く、激しく、一撃で打ち砕くようなイメージ。
「エドワードの鎧を全て打ち破り、この戦いを終わらせる武器…………!」
私の役割を確かめ、輝く
前衛の須藤、後衛のルイ、切り札を用意する私。
これは怠慢なんかじゃない、役割の差。
前に出る須藤も限界が近い、苛烈が弱りに弱まる。
最悪の場合を想定してか、ルイもこの戦いで初めて武器を抜き右手に剣を手にしていた。
長い、長い変形時間。
秒針が一周するほど待ったのにまだ終わらない。
そして——長い鍔迫り合いを経て疲れを溜めていた須藤が、刀で攻撃を受けつつもエドワードの一撃で跳ね飛ばされる。
「ッ……!」
瞬間、私の方へギロリと白い眼光が突き刺さる。
厄介な前衛を潰した、だから秘策を準備している奴を殺す。
当たり前の動きなのに、この状況で的確な動きをしてくるのが歯がゆい。
けれど……彼じゃダメだ。
あのジャンに対しても劣勢だった彼を私は見てしまってる。
彼も今回ばかりは大丈夫とは言わず、奥歯を震わせながら剣をエドワードの方へと向けている。
光球をいくつも並べ、エドワードの胸の外殻に火を着けるも。
身を焦がしたまま燃え盛る外殻を纏い、一歩、また一歩と歩みを進めるエドワード。
————燃え盛る悪魔。
そうとさえ喩えられてしまうような風格。