『孤高のリヴァイアサン』 ~~人生をやり直したい偉人たちと、自分の人生を取り戻したい女子高生の異能戦争~~ 作:大和ユキ
二〇二五年七月十四日。
あの萩での戦いから一ヶ月以上の月日が流れた。
ここ愛知ではアブラゼミとクマゼミの聞き飽きたほど単純な鳴き声が街を支配するようになり、教室は既に夏休みの話題で持ちきりになっている。
そんな季節に私の方はと言うと、もはや日常となりつつあった軍との訓練へと励んでいた。
場所は名古屋の郊外、愛知のうち三河に一歩入ったぐらいの場所にある屋外の射撃訓練場。
春日井の軍基地から町田さんの繰るジープに乗って、遥々ここまでやってきたのにはわけがあった。
それは——。
「よし、それじゃめぐみちゃん。構えて」
「はいっ!」
金色の柄にバターナイフのように丸い鋒が特徴の剣、
目の前に置かれているのは、古着や布で造られた三体のカカシ。
ただ私に斬られるために作られた憐れな存在が、汗の一つもかかずに日の熱を浴びていた。
「すーっ……はあ」
イメージするのはあのカカシを一刀両断する武器……じゃなく、柄頭から切っ先まで腰丈ぐらいはある反り型。
使い道じゃなくて、取り違えのない実物の明確なイメージを。
手にかかる重量感は時間を追うごとに増え、十を数える頃には華奢な戴冠用宝具は私の身長よりも大きな一本の大太刀へと変わっていた。
「これでいいですか」
「うん、問題ないわ。それじゃあ言った通りにやってちょうだい」
町田さんの指示に従い、大太刀の金色の柄を握り込みながら人形へと近付く。
そのまま大太刀を横方向に大きく振りかぶると——胴体のあたりで、三体の人形全てがものの見事に一刀両断された。
「うん、お見事。良い太刀筋よ」
「へへっ、前回は三体目の人形が首の皮一枚で繋がっちゃいましたからね」
そう。ここ「みよし射撃訓練場」で行っているのは、
様々な制約を受けつつもあらゆる武器へ変形し、原型では強烈な痛みだけを与える。
これらの変化をまとめ、戦術へ適用させるための性能試験。
「うん、今のところ大型の武器だとこの大太刀が一番よく扱えてるわね。剣から離れるほど変形に時間がかかるし、使いやすさ・変形時間・威力の面で一番バランスがいいんじゃないかしら?」
大太刀の性能が気に入ったのか、町田さんは木製のボード片手にこちらへ上機嫌そうに歩み寄ってくる。
確かに刀は須藤武蔵っていう最高峰の先生がいるわけだし、これから積む鍛錬のことも考えると最適……かもしれないけれど、実を言うと私はあまりこの大太刀は気に入っていない。
「……ちょっと殺傷力が高すぎる気がするんですけどね」
元の
けれどこの大太刀は重く、それでいて扱いづらい。
こんなものを常用していてると、そう遠くない内に相手を殺してしまうことは想像に難くなかった。
「別にそれをずっと使えとは言わないわ。たくさんの数を相手しなきゃいけない時……例えば霊兵の掃討戦とかで使えばいいだけだから」
そう言われてひと月前の萩での戦いを思い出す。
住民を恐怖させ、自らの威信に変えるための大虐殺————破滅の戦略。
霊兵の武器は弓槍剣など古いものばかりで、身体能力も素の人間。
異能者は愚か、銃を持った軍人にすら戦闘力で敵わない。
けれど一番の脅威はその数と、一般人よりも大きな戦闘能力。
霊兵を処理する速度が重要なのはこのあいだの戦いで重々分かった。
結局道具は使い方次第、人間相手には