『孤高のリヴァイアサン』 ~~人生をやり直したい偉人たちと、自分の人生を取り戻したい女子高生の異能戦争~~ 作:大和ユキ
「うわ……蒸れやっば」
訓練場での拳銃の取り違えから二日あと、学校の昼休み。
相変わらず残ったままのロムルスの刻印、それを隠すために着けていたアームカバーを巻き取るように外す。
汗で色が濃くなってやけにしっとりしているのが気持ち悪いし、このままリュックにツッコむと教科書がダメになる。
ビニール袋に入れてリュックのポケットへしまい、その流れで自分の机の上を片付けた。
午後の授業じゃなくってお弁当の準備、最近はあの半地下の教室だけじゃなくて教室でお弁当を……しかも私の席で食べるようになった。
片付けの終わったすぐあと、二人の女子がお弁当袋を持ちながら私の席へとやって来る。
「めぐちゃん、お待たせ」
一人はブロンドの髪をしたおっとり系少女。親友・鈴原香蓮。
いつも通り二人分のご飯が入った特大のお弁当袋を持ちながら私の方へ歩み寄ってくる。
けれど、最近になって変わったのはそのもう一人の女子。
小麦色の肌に直毛の黒髪を後頭部で結ったヘアースタイルが特徴の八重歯系女子、
若菜は香蓮の後ろから顔を出すと「よっす、めぐみちゃん! 今日も席借りちゃって悪いねー」なんて悪びれもなく言う。
けれど本当にかわいそうなのは私の前の席の男子の方、不在なのを良いことに勝手に椅子を奪って私と向かい合うように座る。
……いっつも思うけど、許可ぐらい取ってやりなよ。
だなんて、ちょっと悪い子風に言ってみたけれど全然そんなことはない。
ただちょっとだけ住んでる世界が違う教室カースト上位の女子ってだけで、普段から香蓮と仲良くしてくれる普通の女の子。
じゃあなんで私がそんな子とお昼をするように……って理由もびっくりするぐらい単純。
二人で食べようって約束した弁当をルイが課題の再提出でブッチした日に、若菜ちゃんからお昼を誘われていた香蓮が彼女を連れてきた。
ただそれだけ。
最初こそ「孤高ちゃん」なんて、私のあだ名をいじるような呼び方をしてきたけれど、今となってはちゃんと名前で呼んでくれる。
それに、どっちかと言えばカースト下側……ってかその外側にいる私にも話を合わせてくれる良い子。
まあ香蓮の友達なわけだし、それも当たり前か。
「にしてもめぐみちゃん、そんなに食べるのによく体型維持できるねえ。こないだプールの時にめぐみちゃんの腹筋見て目ん玉飛び出そうになったじゃんか」
「は、はは……」
けれど、そんな彼女にはまだ私の正体……って言ったらいいのかな。それは明かせていない。
私の筋肉の付いた身体も剣道を習ってるからってことになっているし、このアームカバーも美意識の現れだと思われている。
その理由も若菜ちゃんのことを信頼できないというよりも、この異能っていう災いになるべく巻き込みたくないって方が大きい。
……でも、少し前のことを思えば。
巻き込みたくない、信頼できないで無条件で突っぱねていたことを思うとこれも成長なのかな。
言ったら言ったで「痩せたままいられるのが羨ましい」ぐらいのことは言ってきそうな気がするけど。
「めぐみちゃん、急に黙ってどしたん?」
「えっ? んーん、何にもないよ!」
ああダメだダメだ、内側に集中してて何にも聞いてなかった。
「ごめんね、もう一回言ってもらってもいいかな」って聞き返すと、若菜は口を窄みながら再び問いを口にした。
「だーかーら、六組の本田くんとどえらい仲良さそうにしとるじゃんって聞いとるんだけど」