ソシャゲのネタ一般人キャラが超有能過ぎる! 作:あらあら
神殿内に入ったが……広いなぁ。
すごく広い空間で、中は草やツタに塗れていた。
全員が警戒しながら進んでいて、私だけはぼけっと観光気分で周りを眺める。
進んで、進んで、半壊した扉の先へと進む。
そうして、狭くなった通路を進んでいき……ありゃ?
「……分かれ道だ。レント、どう思う?」
「……どちらも問題は無いように思いますが……し、茂雄さんはどう思いますか?」
「ん? 私? いやぁ、特に……まぁ個人的には右が良いんじゃないかな?」
「――皆、右に進むよ」
「「「……」」」
即答であり、右へと向かってサシャちゃんは進んでいった。
私たちもついていくが、何とも言えない視線を背後から感じる。
ちらりと見れば、和装ちゃんが私の事を睨んでいた。
「何? 腹の調子でも悪いのかな? 胃薬ならあるよ」
「いりません……チッ」
「そう? 顔色がめっちゃ悪そうだけど……ま、無理はしないようにね」
「……! この私に対して無理をするななんて……大きく出ましたね。おじさん」
「……? うん」
よく分からないが笑っていた。
気分が戻ったのならそれでいいと前を向く。
すると、何事も無く通路を進めていて――
・
「ここまで無事に辿り着けたね……やっぱり、茂雄さんを連れてきて正解でした」
「茂雄さん! 流石です! 僕、貴方の事を見くびっていました。こんなに優秀な冒険者だったなんて」
「え? いや、そんなに褒められても何も出ないよぉ? 偶々だよ。まぐれまぐれ! はは!」
「……いや、でも実際にすげぇ助かったよな。適当に言ってるようにしか聞こえねぇのに、的確過ぎる言い方だしよ。すげぇなおっさん」
「……こんなおじさんが、私よりも……認めない」
サシャちゃんやレント君からキラキラとした目を向けれる。
此処に来るまでに多くの仕掛けがあったが。
サシャちゃんは「こんなのデータに無い」なんて言って少し取り乱していた。
全員で頭を揃えて考えようとしていたので、ちょっと触ってもいいかと聞いて色々と弄ってみれば。
扉は開いてトラップも解除できた。
他にも、何か嫌な感じがした通路があって、何と無しに先にけんけんぱの要領で進んでみた。
進み終えればかちりと音がし、通路の壁がズレて新しいルートが出現した。
後は奇妙な人形が無数にある空間があったが。
違和感があったので適当な人形の頭を外してみた。
そして、首のない人形に差し込んでみれば急にどこかに飛ばされて――目的も場所らしいところについていた。
中心に玉座のようなものがあった。
そこには全身鎧姿で王冠を被った何かが座っていた。
天井からは光が差し込んでいて、神殿の中というよりは玉座の間のようだった。
玉座の後ろにはガラス細工のような巨大な女神の像が置かれている。
何とも幻想的だと思いつつ、やっぱり見覚えがあるような気がして……あぁ、そっか。
「あれ――襲って来る奴だな」
「「「……っ!」」」
指をぱちりと鳴らし思い出したと呟く。
瞬間、座っていた鎧がカタカタと揺れ始める。
そうして、光を吸収するように全身から淡い白い光を発して――雷と共に傍らに身の丈ほどある剣が出現した。
「アレは神殿守護者――雷将のバルトゥス」
「神殿守護者、あれがですか……途轍もない魔力の波動ですね」
「へっ、強い気配がびんびんじゃねぇか。燃えるなぁ!」
「今までの鬱憤を――晴らさせてもらいましょうか」
全員が本やら剣やらを取り出す。
戦闘する気満々で私はぼろぼりとケツを掻く。
「……お? 戦うの? おじさんにはきついけど……まぁ頑張ります」
「茂雄さんはサポートをお願いします! 皆――戦闘開始!!」
「「「了ッ!!」」」
全身鎧が剣を掴んだと同時にサシャちゃんと私以外が動き出す。
女性たちは剣に魔力を纏わせて振りかぶり、レント君は詠唱を始めた。
私はサシャちゃんから少し離れて――踊る。
全身鎧は目を光らせて目にも留まらぬ速さで剣を振るう。
そうして、二人を弾き飛ばしレント君へと迫る。
が、レント君は既に詠唱を終えていて――巨大な炎の精霊が出現した。
「イフリート!! 焼き尽くせッ!!」
「――――ッ!!」
全身鎧へと襲い掛かるイフリート。
全身鎧は剣を振ってイフリートへと斬撃を放つ。
が、傷つけられた部位は一瞬で元に戻り、イフリートはそのまま炎のブレスを放つ。
全身鎧は真面に炎を浴びたが、そのまま炎を突破しレント君へと向かう。
「くっ!」
「レント!」
防御の術式を展開する。
が、アレでは完全に防げない。
そう判断したからこそ――サポートする。
「ほい!」
パンと手を叩く。
瞬間、全身鎧の振りが甘くなり――甲高い音が響く。
「……! 弾けろ!!!」
「――!」
レント君は指を鳴らし、敵の攻撃を反射する。
そのまま全身鎧は後方へと転がり――女性たちが一瞬で迫り斬撃を放つ。
「オラァ!!!」
「雷切ッ!!!」
炎と雷の斬撃だ。
それを真面に受けた全身鎧はガタガタと震えて――まずいな。
危険な感じがした。
だからこそ、ポケットから魔法の粉を出し――息で吹く。
飛んでいった魔法の粉は一瞬で空気に浸透する。
そうして、少し遅れて全身鎧が――周囲に凄まじい電撃を放った。
「うが!?」
「ぐぁ!?」
「くっ!」
「皆! すぐに治療を! ヒーリング!!」
吹き飛ばされた女性陣。
が、動けるほどには軽傷だ。
サシャちゃんの回復支援もあって全快で――全身鎧が此方を見て来た。
「お? 来る?」
「おっさん!」
「茂雄さん!!」
大剣ちゃんとレント君が叫ぶ。
一瞬で間合いを詰められて、剣がすぐそこに迫り――轟音。
パラパラと残骸が舞い――鎧に触れる。
「惜しいねぇ」
「「「……!?」」」
鎧は剣を横に振る。
私は風のままに体勢を変えて避けた。
鎧は何度も何度も剣を振るが、私は特に力を加える事無く剣戟を避け続ける。
適度に敵の体に触れては、身体能力を下げていく。
おじさんは戦闘なんてからっきしだが。
逃げる事と避ける事。そして――誰かを助ける事は大の得意なんだよねぇ。
ひょいひょいと避けながら、少しずつ身体能力を下げていく。
すると、明らかに敵の動きが遅くなっていた。
私はチラリと戦闘が得意な人たちに目を向ける。
「おじさんは戦えないからねぇ。任せたよぉ」
「……! お、おぅ!!」
「くぅ、あんなおじさんが、おじさんが……負けるものか!!」
「茂雄さん!! 今行きます!!」
「……やっぱり生茂雄は堪らないなぁ。ふへへ」
敵が危険な攻撃を放とうとする。
その瞬間に、相手の体に両手で触れた。
パリンという音が響き、相手の術式が砕け散った。
一瞬の隙であるが、歴戦の戦士たちが見逃す筈もなく――私は大きく後ろへと飛んだ。
「煉獄斬り!!!」
「千雷刃ッ!!!」
「フレイムバーンッ!!!」
全員がかっこいい技名を叫び――閃光が迸る。
眩いばかりの光と爆発音。
激しく風が吹き乱れて――光が収まる。
そこには全身をボロボロにした全身鎧が辛うじて立っていた。
彼は私の方へと手を向けてきて……パラパラと砂になって消えた。
「……必殺技ってやつかな? 良いなぁ。おじさんも欲しいな、うん」
顎を撫でながら羨ましがる。
すると、全員が呼吸を乱しながら私の方へと歩み寄って来た。
「し、茂雄さん。もしかして、今まで……僕たちの支援を?」
「絶対に致命傷だと思ったのによ。思った以上に軽い攻撃だと思った瞬間とかあったけど……アンタだろ?」
「……助かりました。悔しいですが……貴方は私以上の実力者のようです」
「そんなに一遍に話さないでよぉ。ちょこちょこお節介を焼いただけですって。大したことはしとらんですよ」
「……いえ、茂雄さんのお陰です。私からもお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」
「お? そんな改まって言われると。なんか照れるねぇ……うん、どうもね!」
片手を上げて感謝を受け取る。
すると、女神の像から光の玉ようなものが発生していた。
それは一点に集まり、大きな光の塊になった。
サシャちゃんは錫杖を鳴らして何かの呪文を詠唱し始める。
「――――」
「……ほぉ」
光の塊から触手のようなものが伸びて来た。
サシャちゃんはもう一度錫杖を鳴らし、目の前に分厚い本を出現させた。
本はパラパラと開き白紙のページを広げる。
光の触手はそのページに、白紙のページに見た事も無いような文字を記していった。
私は邪魔してはいけないと暫くその光景を見つめていた。
時間にして数分で儀式のようなそれは終わり――サシャちゃんは目を開く。
「これで第一神殿での記録回収が完了しました……皆、お疲れ様!」
「……ふっ、当然の結果ですね……でも、茂雄さんがいなければ危うかったですね」
「だな。今回のMVPは間違いなくおっさんだぜ!」
「……今回は譲ります。ですが、次は負けません」
「ほぇ、何かよく分からないけど……どうもね!」
パチパチと拍手される中。
初めての大仕事を達成できて良かったと思う一方で。
この先はこれ以上に大変だと思って……もう少し、準備しておこうかなぁ。