ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
日本が共産主義国家になった程度のことなんて。
ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
ヨーロッパがおかしくなったフランスに破壊し尽くされた程度のことなんて。
ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
ロシアが紀元前の謎の遊牧民族に憧れて荒廃し尽くした程度のことなんて。
ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
アメリカが侵略されて砕け散った程度のことなんて。
ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
ちっとも狂気の果てなんかじゃない、
これから起きる神の裁きに比べれば……。
夢見がちな楽観主義者は「この世界は狂気の果てだ」と今の現状を語った。
そしてリアリストな悲観論者は「そんなことはない、もっと酷くなれる」と無慈悲に真実を述べた。
本作は匿名掲示板『めぶきちゃんねる』と『Discord』のとあるサーバーで投稿した作品を、作者自身がハーメルンに転載したものとなります。
また、この作品はhoi4のModである、「Judgment_Day」の二次創作です
。
ある2人の日本人の男女が海を眺めながらポツポツと会話をしていた。
彼らは夢みがちな楽観主義者と悲観的なリアリストだった。
「この世界は狂っている、狂気の果ての世界だ……」
片方の日本人の男がつぶやいた時、もう片方の女が訂正した
「いいや、この世界はちっとも狂気の果てなんかじゃないわ」
「……君は本当にそう思うのか?
日露戦争で日本が敗北してから、酷いことがたくさんあった。
旧帝国政府はその敗北を誤魔化す為に第一次世界大戦の混乱に乗じて、アジア侵略戦争を繰り返した。
そしてついに限界が訪れてあの内戦が……いや、革命が起こり日本は共産主義国家になってしまった。」
「でも、まだ日本は平和を保っている。
北の『大スキタイ』や西の『活仏領』
との戦争になんか陥っていない。」
「ハハハ、でも考えてみてくれ!
あんな国々が存在していることのこそが、この世界が狂気の果てである証明じゃないか?
『大スキタイ』……ロシア人達は長すぎた戦争の果てに完全に狂った。
あいつらは紀元前に存在していた謎だらけの遊牧民を自称して、ほとんど原始時代みたいな暮らしをしてる!
目を見張るものといえば、農民達が使用しているトラクター群だけらしいじゃないか!」
続けて男は唾を飛ばしながら、早口で捲し立てる。
「それに『活仏領』!知ってるか?あそこの指導者の経歴を!
オーストリア生まれのドイツ貴族で、元ロシア軍人の仏教徒であり、モンゴルと中国の一部を支配する独裁者で、挙げ句の果てに神の生まれ変わりを自称している!
こんなふざけた話があると思うのか!?
あいつが本当は何者なのか、俺にはわからない……。
ただ、あいつがとんでもない嘘つきだってことだけはわかるぜ!」
そして日本人の男は手に持った酒瓶を口につけて、少し飲んでから続きを言った。
「そもそもヨーロッパの惨状はどう説明する?
ドイツからの亡命者達の話じゃ、フランスは気が狂ってヨーロッパを滅茶苦茶にした!
内戦介入よるイタリア加速政権!
悪名高いドイツ人轢き殺しレース!
そして英米に対して行われた原爆投下と侵略行為!
これでも世界は狂気の果てじゃないんだな!すごいな!」
男は酒瓶の中身を全て飲み干し、空になった器を海に投げ捨てた。
「アメリカは地獄だ!東海岸をフランスに占領され、気狂いども達に分割されて支配されてる!
中央部や西海岸も軍閥が跋扈して殺し合いをしている!
………じゃあ教えてくれよ、これより酷いものがなんなのか?
」
問いかけられた女は、静かに投げ捨てられた瓶を眺めてつぶやいた。
「……世界にはまだ…希望が残ってるわ。
カナダには……イギリスの王室と民主主義が残っているわ。
そして中国の奥地……うちの『日本労働者連合』と『活仏領』の合間を縫うように、そこにも民主主義政府が残存している。
そして南アフリカ……かつて大英帝国の宝石だった場所。そこで人々は懸命に自由と民主主義という輝かしき遺産を守り続けている。
そして貴方が地獄と呼んだアメリカ……。
そこには民主主義を掲げるもの達もいるわ。
たしかに、彼らは規模は小さくて、吹けば飛んでしまうかもしれないような存在。
でも、彼らが再びアメリカを取り戻す可能性は十分ありえる……」
男は黙って、静かに言った。
「つまり……君は、わずかな可能性を信じているのか?」
その男の問いに女は大きく笑った。
「
アハハハハハ!
カナダはフランスに、『非現実国』に東海岸を奪われたわ!
あんな搾りカスの連中なんて世界は気にしない!
中国の奥地にはわずかな民主主義の軍閥があるわ!
でも、『大スキタイ』と『活仏領』と
『日本労働者連合』、これらが殺し合いを始めたら、きっと巻き込まれて死んでしまう!
南アフリカは今も民主主義という宝石を守っている!
でもすぐ近くには宇宙人とUFOを信仰する狂ったドイツ人と、レオポルド・ラープ王の末裔であるベルギー人が残酷な支配を繰り広げ、今にも戦火が開かれつつある!
その戦火が南アフリカに飛び火したらどうなるでしょうね?
そしてアメリカの軍閥!
狂気と暴力が吹き荒れる暗黒の大地で、彼らが理想と生命を保ち続けれれるかしら?」
女はおかしくて仕方がないという口調で笑いながら言う。
呆気に取られた男は、自分が海に投げた酒瓶がカラスの足で空高く持ち上げられたことに気が付かなかった。
女は構わずに言葉を続ける。
「今、フランスで……『非現実国』では独裁者が寿命で死にかけてる!彼が死ねば、フランスは崩壊して最悪の内戦になる!
『大スキタイ』と『日本労働者連合』のアジアでの対立はどんどん高まっている!
なのに日本は兵站が疎かなまで戦争に突入しようとしているわ!
『大スキタイ』に至っては、第一次世界大戦の飛行機しか持ってない!
そうそう、貴方は『大スキタイ』が農民にトラクターを配ってるだなんて言ったけど、あれはデマよ。
『大スキタイ』は文明を嫌ってて、車どころかまともな医療すら存在しないわ」
男は震えながら言った。
「だ…だが、『大スキタイ』の出生率は10に届くほど高いと……」
「ええ!そうよ!『大スキタイ』には娯楽なんてないし、彼らは子沢山だからね!
でも……その10人の子供のうち、何人が成人になれるか貴方は知ってるの?」
男はただ沈黙するしかなかった。
男が黙り続けているので、代わりに女が喋った。
「この世界はちっとも狂気の果てなんかじゃ無いわ……。
もっとっと、さらに酷くなれるの……。
」
そしてカラスは持ち上げた瓶の重さに耐えきれず、空から墜落した。
男が投げ捨てた酒瓶は海から突き出る、岩礁にぶち当たり砕けた。
そして波は、砕けた酒瓶と黒いカラスの死体を攫い……
岩礁には赤い血がへばり付いていた。
こうして、2人の夢みがちな楽観主義者の男と悲観的なリアリストの女が始めた会話は……。
2人の悲観的なリアリストの男女の会話になって終わりを迎えた。