貞操逆転魔法少女世界×堅物天然軍人(異世界産) 作:とっとこ馬鹿野郎ッ!!
刃・遥花・葵の三人は、魔法少女協会の会長……
「会長、彼が例の人物です」
「そう……よく連れて来てくれたわね、スピア」
赤縁の眼鏡を身につけた、スーツ姿の女性が葵を労う。
この女性こそが、魔法少女協会の現トップにして、元最強の魔法少女であった。
「お初にお目にかかります、会長殿。俺……失礼、私は久遠刃と申します」
「………ふふっ、そんなに堅苦しい話し方しなくてもいいのよ?」
「では、お言葉に甘えて。俺、久遠刃は……魔法少女協会の協力者になりたいと考えている。
俺は貴女たちの、己が身を危険に晒ししてでも、民草の安寧を守らんとする姿勢に感銘を受けた。是非、俺にも貴女方と共に剣を振るう栄誉を頂きたい」
そう言って頭を下げる。
「我々としては、願ってもないことね。でも、それで貴方に何の利益があるのかしら?」
「人々の笑顔を、幸福を、未来を守れる。それこそが、この身にとっての最上の利なれば」
「そう……分かりました。我々、魔法少女協会は久遠刃……貴方を歓迎致します」
「! 感謝する」
「しかし、どういった立場での加入にするのですか?」
葵が、疑問を呈する。
それに対し、会長は――――――――
「どうしましょうね?」
疑問で返した。
「(ズコッ―――)か、考えてなかったんですか!?」
「だって……あんまりにも現実離れした話だったんだもん♡」
「可愛くないですよ………」
あんまりにもあんまりな返答に、葵も困惑する。
だが、それも致し方無いことであった。
この世界では、男性の数が少ない上、魔力は女性のみが持つもの。
魔法少女と共に戦う男などという存在は、前代未聞であったのだから。
そして、久遠刃という人物を世に公表すれば、それがどんな波紋を呼ぶか…………。
少なくとも、世間にとって凄まじい衝撃となるのは想像に難くない。
――――――――というのが、表向きの理由。
怪人の連続出現と同時に現れた、魔法を扱える男。
それを、魔法少女協会が警戒しないはずがない。
未だ正体不明である久遠刃という人物の扱いを、軽率に決めることが出来ないというのが本当の理由だ。
「俺はどの様な立場であっても構わない」
「そう………それなら、この話は慎重に議論させて貰うわ。世間への公表は、ひとまずなしで。
今は、協会内のみの話としましょう」
「承知」
「それじゃ、葵以外の二人は退室して頂戴」
「あれ、先輩はまだ何か………?」
「この前の怪人の件で、気になったことがあったの。ちょっとしたことだから、心配しなくていいわ。……私たちが話してる間に、翠は刃に協会を案内してあげて」
「わかりました!!」
(やった! 協会デート(?)だ!)
「では、失礼する」
鼻歌を歌い始めそうなくらいに上機嫌な翠が退室し、それについて行くように刃も去っていった。
会長室に残った二人は、先程とは一転して深刻な面持ちで会話を続ける。
「それで―――怪人の件ね」
「はい、先程私たちが戦闘を行った怪人。奴らは、5体とも外見だけでなく魔力まで酷似していました。恐らく――――――」
「分身の能力持ち、或いは―――――1体の怪人から召喚されたもの」
「はい。その可能性が高いと考えています」
「前者であり、かつ既に全てが倒されているのなら、特段問題はないわね。けれど、後者だった場合は…………」
「最低でも一級。最悪、それを超える特一級の怪人かと」
「………ふぅ、考えたくないわね」
一級以上の怪人。それが確認されたのは、3回のみ。
30年前、12年前、そして………3年前。
何れの場合も、多大なる被害者を出しており、それは………魔法少女も例外ではない。
直近の事例では、一等星が4名・二等星が16名・三等星が26名死亡している。
「近年、貴女たちが担当している墨絵町の怪人出現率は、異常なほどに上昇しているわ。まるで、特一級怪人が現れる前兆かのように」
「はい。私もそう感じています」
「………嵐が来るわね」
(そして、その中心となるのは恐らく、あの二人。史上最高峰の才能の持ち主、翠遥花。自称異世界からの漂流者、正体不明の人物……久遠刃)
夕陽が室内を赤く照らし、観葉植物の葉に滴る水滴が、その光を反射する。
静まり返った室内で、会長は予感していた。
これから訪れる―――――未曾有の厄災を。
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後日、美咲の喫茶店にて。
「今日、協会から魔法少女が来るわ」
「え!? 何でですか!?」
「増援よ。ここ最近、この街での怪人出現が多くなっているから」
翠はカフェオレを、葵はコーヒーを飲みながら、ショートケーキを食べる。
そんなブレイクタイムの中で、葵は話題を切り出した。
「それで、誰が来るんですか?」
「それは私にも分からない。―――――あと、話は変わるのだけれど………貴方、まだここで働いているの?」
「ああ。これは、美咲さんへの恩返しでもある。職に困ることは無くなったとはいえ、辞めるつもりはない」
協会に所属することとなった刃には、給料も支払われることとなっているが、それでもバイトを辞めることは無いらしい。
「それに、バイトというのは初めてなんだ。結構楽しいし、しばらく続けたい」
「あ、そう」
(なんか………結構ズレてるわね、こいつ。元から変な男だとは思っていたけど)
「あの………追加の魔法少女の方々は何時来るんです?」
「今日。この場所を集合にしたから、もうすぐ来ると思うんだけど―――――」
「来たわよ! あおちゃ!!」
喫茶店の扉が開き、そんな声が響く。
その声を聞いて、葵は露骨に嫌そうな顔をして、手を顔にあてる。
「はぁ………まさか、貴女だとは」
「ふふん、私だけじゃないわよ! 今回は私たち
そう言った愛香の後ろから、二人の少女が現れる。
「どうも~………わー、本当にイケメン君じゃーん」
白髪、小柄な少女が刃に近づく。
物珍しいものを見るように、刃を舐め回すように観察し――――――――
「ん、眼福ー。良かったら、私の彼氏になんない?」
ガタッ!*1
「光栄な申し出ではあるが、未だ互いのことを知らぬ仲。将来を誓い合う関係となるのは、お互いによく相手のことを知ってからにすべきことだろう」
「振られちゃった。玲ちゃん慰めてー」
「はいはい、残念だったね。でも、出会っていきなり告白は飛ばしすぎだと思うよ?」
頭を撫でながら、そう慰めつつツッコミを入れる。
「改めて、自己紹介をしようか。僕は、
「小っちゃい言うな。………私は、
「そんで、あーしが伊井子愛香! そこの性悪スレンダーガールの同期だよ!」
(うわぁ………キャラが濃い)
遥花は、三人(主にウサギの)キャラの濃さに圧倒されていた。
三人は、魔法少女グループ「トライ・アングル」
全員が一等星の魔法少女であり、協会でも屈指の実力者集団。
また、魔法少女協会の広告塔としても有名である。
ちなみに、リーダーはウサギ。
「久遠刃だ。よろしく頼む」
「わお、ド丁寧。そこの冷徹女にも見習わせたいね」
「どういう意味かしら? 伊井子?」
「ふーん、冷徹な自覚あるんだー。あいちゃは愛想が足りないもんねー?」
この二人に共闘なんて出来るのか?
刃は早々にそんな不安で包まれた。
「愛香……いい加減にしな。これから協力しようって言うのに、喧嘩腰になってどうするんだ」
「はーい……あっ! あーし、あおちゃとは仲良くする気ないけど、二人とは仲良くしたいから!
よろしくね♡ 特に、刃君……やいちゃって呼んでいい? 君とはとっても仲良くしたいかなー」
「好きなように呼んでくれ」
「やったー! やいちゃノリいいじゃーん!」
そう言って刃に抱きつく愛香。
それを、冷たい目で見つめる葵。
「もうちょっと距離感を考えた方が良いのではないかしら?」
「えー、やいちゃは別に嫌がってないしいいでしょー? それとも……羨ましいのかにゃー?」
「………! 別にそんなこと――――――――」
「済まないが――――」
体にひっついていた愛香の肩を優しく押して、引き離す。
「目の前で喧嘩されるのは、少し困る。仲良くしろとは言わないが……」
「…………はーい。やいちゃに言われたら、流石に反省するしかないにゃー」
流石に懲りたようで、大人しく引き下がる愛香。
ひとまずはなんとかなったが………これから上手くやっていけるだろうか…………。
バチバチに睨み合う二人を見て、そんなことを考える刃であった。