100カノにTS転生幼馴染(運命の人ではない)を加えてみた話 作:クリーンクローン
花園さんと裏庭に向かうと、そこには裏庭から走り去る院田さんと、缶ジュース片手にそれに手を伸ばす恋太郎の姿があった。
呆然とする恋太郎の背中に、花園さんが声を掛ける。
「愛城君、本当に来てくれてたんですね」
「あ、花園さん。二人ともずっと四葉探してたから...のど乾いてないかなと思って。って『本当に』?」
恋太郎は花園さんの言葉に引っ掛かりを覚えて聞き返す。
「あ、恋太郎君の幼馴染だっていう人に教えてもらったんです。恋太郎君が裏庭に向かって行ったって」
「友が?」
「友...。はい、そうなんです。それで、今一緒に...あれ?」
彼女が振り返った場所には誰もいなかった。
俺は裏庭から走り去っていってしまった院田さんを追いかけていた。
院田さんが走り去ってからすぐに追いかけたつもりだったが、院田さんの足が速く見失ってしまった。
とりあえず今は院田さんが走り去っていった方向に向けて追いかけているところである。
そもそも俺がなぜ院田さんを追いかけているのか。
それは、院田さんに恋太郎への思いを確認したかったからである。
花園さん曰く、院田さんも恋太郎のことが好きらしい。幼馴染として、それは確認しないとなるまい。
それに、花園さんにだけ後押しをして院田さんには後押しをしない、というのは不公平だろう。
そうして院田さんを追いかけていると、自動販売機の前で何やら悩んでいる院田さんを見つけた。
「あいつの好みなんて...いっそもう全部...」
院田さんが呟いている内容を聞くに、恋太郎へ飲み物を買いたいが、好みがわからずに困っているらしい。
これはチャンス、と思い声を掛けることにした。
「あの」
「うひゃぁ!」
声を掛けると飛び上がって驚かれた。随分と飲み物選びに集中していたらしい。ここまで驚かれるとは思わなかった。
「な、何よ!驚かせないでよね!」
「ご、ごめんね。そんなに集中してるとは思わなくて...」
「って、あんたは...」
院田さんは驚かされたことに怒りながらこちらを振り向いたが、俺の顔を見た瞬間何かに気づいたように口を噤んだ。
「あんた、教室で恋太郎と仲良さそうに話してた奴よね...」
「あ、うん。そうだよ」
院田さんは覚悟を決めたような顔をして口を開く。
この流れさっきやったな。
「あんた、恋太郎と付き合ってるの?」
だよね。
顔を緊張と少しの恐怖に染めながら聞いてくる。
彼女がどれだけの勇気を持ってこの質問をしてきたのかを思うと、そんな勘違いをさせてしまったことに申し訳なさを覚える。
まあ、彼女が恋太郎のことを好きなのは確定した。これで気兼ねなく彼女にアドバイスすることができる。
「ううん、付き合ってないよ。恋太郎と私はただの幼馴染」
そう言うと、彼女はホッと一息吐き肩の力を抜いた。
にしても、花園さんも院田さんも健気なものだ。特に院田さんなんて少し話しただけで素直じゃない性格が伝わってくるのに、出会ってすぐにこんな勇気のいる質問をしてくるなんて。
本当に恋太郎のことが好きなんだろうな。
「そう、なら悪かったわね、えっと...」
「あ、自己紹介がまだだったね。私は幼馴友、恋太郎の幼馴染だよ」
「私は院田唐音よ。悪かったわね幼馴」
「いいよいいよ」
院田さんは素直じゃない性格ではあるが、自分の非はしっかりと認められる人らしい。そういうところは好感が持てる。
「ところで、私になんか用?」
「あ、うん。実は花園さんに院田さんのことを聞いてね。それで院田さんに興味を持って話し掛けたの」
「あいつが?あいつ、私のことなんて言ったのよ。なんか変なこと言ったんじゃないでしょうね...」
「いやいや。そんな陰口みたいなことは言ってないよ」
「じゃあなんて言ったのよ」
「院田さんも恋太郎のことを好きらしい、ってこと」
そう俺が言うと、院田さんの顔はボッ、と一瞬にして赤く染まりわかりやすく動揺した。
「なっななななななななな」
彼女は素直じゃなさすぎるがあまり逆にわかりやすい。彼女のことが少しずつ分かってきた。
「わ、わわ私は愛城のことす、好きなんかじゃ」
そんなわけなさすぎる。ボロが出すぎである。
顔を真っ赤にして必死に否定する彼女を見て俺はこれは大変だなと思った。
この性格の院田さんを恋太郎に告白させようと思ったらどれだけの時間がかかることやら。
後押しが必要なのは花園さんではなく院田さんの方だったか。
「院田さん、恋太郎の幼馴染の私からアドバイス。恋太郎のことが好きなら早めに告白した方が良いよ」
「い、いやだから恋太郎のことなんか好きじゃ...」
「まあ聞いてよ。聞いてくれたら恋太郎の好きな飲み物教えてあげるからさ」
そう言うと、院田さんは少し悩んだ後、聞く姿勢を作ってくれた。
「ふ、ふん!しょうがないから聞いてあげる!でも私は恋太郎のこと好きなんかじゃないんだからね!」
「うんうん。わかったわかった」
この期に及んで無理な否定をする院田さんの言葉を適当に流し、アドバイスを再開する。
「まず分かっといてほしいのは、恋太郎はモテるってこと。」
花園さんにしたアドバイスと同じものをすることにする。
院田さんの性格的に恋太郎の好きなものとか教えても上手く活用出来なさそうだしね。
「恋太郎はイケメンで誰にでも優しくて困ってたらすぐに助けてくれてあとちょっと天然で可愛いからすごくモテる」
「あんたたち、本当に付き合ってないのよね...?」
「?うん、そう言ったでしょ?」
なんで花園さんも院田さんも疑うんだ。違うって言ってるのに。
「恋太郎はモテるから、恋太郎を狙ってる人他にもいる」
これは嘘だったが、ついさっき嘘ではなくなった。
「それは...」
「院田さんも知ってるでしょ?花園さんのことだよ」
そう言うと、院田さんは俯く。
やはり院田さんも花園さんのことは気づいていたらしい。
「花園さんは多分告白することをためらったりしないだろうし、先を越されたくなかったら早めに告白するべきだよ」
「わかってるわよ、そんなこと...」
「ま、まあそんな焦らなくても大丈夫。いくら花園さんでも今すぐ告白したりしないだろうし」
院田さんが落ち込んだように声の調子を落とすのを聞いて慌ててフォローする。
院田さん本人も自分の性格には苦労してるみたいだし、そんな指摘必要なかったかもな。
「私からのアドバイスはそんな感じ。余計なお世話だと思ったら無視してくれていいから」
「ふ、ふん。私は恋太郎のことは好きなんかじゃないけど参考にはなったわ。あ、ありがとね」
院田さんはツンデレ風に感謝してくれた。
「喜んでくれたなら嬉しいよ」
「ていうか、聞いたんだから愛城の好きな飲み物教えなさいよ」
「え?ああ。多分院田さんからもらった物なら出汁でも喜ぶと思うし、何でもいいんじゃない?」
「ふざけてんの!?」
「冗談冗談」
飲み物を片手に持った院田さんと共に裏庭に向かうと、花園さんと恋太郎がラブロマンスの雰囲気を纏って向き合っていた。
おや、これは...マズいのでは?
花園さんは恋太郎の手を握り、熱に浮かされたように赤く染まった顔で恋太郎を見つめる。
一度、キュッと唇を結び口を紡ぐが、再び覚悟を決め潤んだ瞳を見開き、再び口を開く。
「愛城君......っ」
「す......好きです......!私と......付き合ってください......!」
それは、学生の告白と表現するには余りにも大きすぎる
まだ1話の半分ぐらいしか終わってないってマジ?