マスター、このままだとメス堕ちキャンセラーが壊れちゃいますよ~ 作:メスキャン界隈
温くなった風が肌を撫でていく。
「焼き鳥売ってまーす!」
「こっち、羅生門喫茶やってまーす!」
「お化け屋敷、ハードモード中でーす!」
喧騒が辺りを包み込んでいった。
待て、なんだ羅生門喫茶って。下人でも出てくるのか?
周囲には学生ばかりで、場違いな感じがすごい。いやまあ、ここは学校だから仕方ないんだけどな。
この前、ナギに文化祭のことを聞いたのでなんとなく来てみたわけだが、まあ意外と生徒以外もいるな。
――ふと、視界を何かが横切る。白っぽい何かが通り抜けていった気がする。
それに向けて視線を追うと、やけに肌の白い少女がいた。……何か、見たことがある気がするな。
あれじゃないか、この前の喫茶店にいたやつ。聞き間違いじゃなければ拳がメリィさんだった気がするけど。あんまり関わりたくはないな。これ以上意味わからんものを増やしたくない。
さて、ナギはどこら辺でやってんのかな。ゲーミング因習村の発表をしてるだとか言っていたが。
正直、少し気になるよな。どんな内容をやってるんだろうか。
まあ、だいたいの内容はわかったから、それで十分かもしれないが。
「あっ、マスターじゃん。よっす」
軽快な声が鼓膜を震わした。振り向くと、小柄な少女がいる。
ナギやアオイたちと比べると、少し小さい。
あどけなさがまだ抜けていない、幼い顔立ちは見覚えがあった。喫茶店にたまに来る、ナギの知り合いのうちの一人。
「久しぶりだな、ミズキ」
「マスターも、おひさ。どしたん?こんなとこ来てさー」
ばしばし、と肩を叩きながら、みっちゃんこと――姫野ミズキはニッと笑う。元気なやつ。
「ナギが文化祭があるって言ってたからな」
「ほーん。んじゃ、案内してやろっか?」
ぐいっ、と手首を掴まれる。ナギもそこそこ距離感が近い方だと思ってるんだが、こいつも大概バグってるな。
強引すぎるし。
「急に引っ張るな」
「なんだよ、別にいーじゃん。来なよ、羅生門喫茶」
不満そうに頬を膨らませた。いや、お前のところかよ。羅生門喫茶って。
「犬の散歩じゃないんだから、やめてくれよ」
「そんなこと思ってねーってば」
「むしろお前が犬っぽいよな」
「あんだとー!」
軽く笑って、胸元を軽くパシパシと叩かれる。元気なやつだ。
「にしても、こんなとこ来るなんて今日は店閉めてんだ」
「そうだな、あんまり客は来ないし」
「自分で言うんかい」
ミズキに連れられて、校舎の中を歩いていく。たまに妙な格好をしたやつともすれ違うけど、マスコット的な感じか?
にしても、羅生門喫茶か。気になるな。最後は服を剥ぎ取られんのかな。
「……ナギはさ、どんな感じなん?」
不意に、ミズキが何か考え込んだ後、そう尋ねてきた。
「ナギは別に普通だよ。元気だし、変なことずっと言ってるからな」
「はは、そっか。それはよかった」
「っていうか、お前もTSしてるってことでいいのか?」
「ぶっ!!けほっ、けほっ……」
気になったことを聞いてみたら、急に咳き込む始めた。
「急に何聞いてくるんだよ」
「いや、気になったから。ナギの言い分だと、お前らはそんな感じっぽいだろ」
「ナギから聞いたのかよ。まっ、そうだけど。世の中には、そんなやつもたまにいんの」
憂いを帯びたような顔で、遠くを見つめている。何か、触れてはいけない気がして「そうか」とだけ答えた。
「私たちはさ、たぶん治んないから。このままやっていくしかねーんだろうけどな」
諦めたように、そっと目を伏せた。
「治らないって、そういうものなのか?」
「んー、例えばさ。病気とか、呪いとか。デバフみたいなもんだったら剥がせそうだけど。バフ扱いだと厳しそーじゃん?そんだけだよ」
「そうか」
吐き捨てるように言うものだから、あまり触れてはいけない気がして。それ以上追求することをやめた。
「そういえば、お前は最近喫茶店には来ないけど。何かあったのか?」
「なんで、来るのが普通みたいに言ってんだよ。……まあその、マスターのコーヒーはさ、飲んでるとなんか嫌なことを自覚させてくる気がして」
えっ、俺のコーヒーってそういうものだと思われてるのか?
いや待て、確かナギがメス堕ちコーヒーとか言ってなかったか?
……つまり、そういうことか?
「それはなんというか、悪かったな。コーヒー以外でよければ用意するが」
「あー、確かにそれだといいかも。っていうか――」
「――マスター!」
ふわり、と甘い香りがした。
「うわっ」
後ろから、急に何かが……っていうかナギだなこれ。ナギが抱きついてくる。本当に犬みたいなやつはこっちだったか。
「来てくれたんですね?マスター」
ぐるり、と回り込んで強引にミズキとの間に入ってくる。
「まあな。ゲーミング因習村の発表してるとか言ってたし」
「あれあれ、マスターも気になっちゃいますか。この前はあんまり興味なさそうだったのに」
「気が変わったんだよ」
そもそも、学校でのナギの様子も少し気になったというのもあるけど。
その時、視界の端にあるものを捉えた。
透明なガラスケースの中に入っている、とある機械。
様々なメーターがついていて、何を計測しているかはわからないけど見覚えがある。
これ、メス堕ちキャンセラーじゃないか?
あの時見たやつと形状が同じだし。というか、複数個あるものなのか?
いやいや、待て待て。気のせいだろ、さすがに。
そう思いながらも、ちょっと気になる。
「もー、マスター。余所見しないでくださいっ」
「ああ、悪い」
ぐいっ、と強引に顔の向きをナギの方へと変更される。まあいいか、メス堕ちキャンセラーぐらい。
いやでも、副次的な効果で怪異を防いでるからよくはないのか?
「ってかさマスターも誘ったんだけど、ナギも羅生門喫茶来ない?」
「えっ、なにその変なの」
「ゲーミング因習村の発表してるところに言われたくないけどな~?」
「もー、みっちゃんうざい」
「ごめんって」
けらけら、と笑いながら二人がじゃれてる。やっぱりこいつら、仲いいんだな。同じ境遇だから、とかなのか?
「ほら、マスター」
ぎゅっ、と手首を握られた。
「はぐれたくないので、一緒に行きましょう」
気付けば、ミズキのやつはいなくなってる。どこ行ったんだ、あいつ。
そんな俺の心を読んだように、ナギがそれに答える。
「みっちゃんは、クラスの方を手伝うからって行きました」
「そうか、羅生門喫茶か。何やるんだろうな」
「そんなことよりも、ゲーミング因習村のこと知りたいんじゃないですか?」
「それは前に、概要一応聞いただろ」
「もー、いいじゃないですか。……私がマスターと一緒に文化祭回りたいし」
ぽつり、と最後に何かを言っている気がしたがうまく聞き取れなかった。まあいいか、たぶん大したことじゃないし。
「にしても、みっちゃんで思ったんですけどマスターのところのお客さんってもしかして。コヨミさん以外私関係しか来てなくないですか?」
そう言われて、最近の客を思い出してみる。推定拳がメリィさんとコヨミとアオイぐらいか。それより前に遡ると、確かにナギの知り合い以外ほぼ来てないな。
「言われてみればそうか」
「やっぱり、お客さん来なさすぎますね。ここら辺で宣伝しときます?」
「そこまで騒がしくなってほしいわけでもないからな」
これは、本心だ。別にこの赤字の仕事も、趣味みたいなものだしな。
「もー、そんなんでいいんですか?マスター、このままだとお店潰れちゃいますよ~」
いつもの言葉を聞きながら、ナギと一緒に文化祭を回ることにした。
ちなみに、ゲーミング因習村の話は、ある程度知っていても意外と面白かった。
まるでストーリーがちゃんとあるみたいな雰囲気を出していますが、今後も別にただただへんてこワード出していくだけだったり
ガチで個人的な話なのですが、足の小指に怪我してめちゃくちゃ痛いので更新遅くなったら、痛すぎてアイデア消えていったんだなと察してください