次元の旅人プリキュア-ジェネレーションワールド- 作:UNIMITES
第二話です。
ガタルスとの戦闘を終えて、唯や未羅との待ち合わせの公園に到着する。
「唯、未羅。ごめーん遅くなった!」
「もうー遅いよ、京。危うく2人で行っちゃうところだったんだから」
「ごめんごめん。いろいろあってさー」
手を合わせて謝罪する。
実際いろいろあったのは本当だ。
ゲイツにあったり、プリキュアになったり、クワガタの怪物と戦闘をしたりしたのだから。
「唯、こう言ってるけど、もう少し待とうって何度も言ってたよ」
「ちょ、未羅!」
唯は頬を赤くして声を上げていた。
「本当?もう唯大好きー」
彼女を包容して感謝を口にする。
「グラムいくらの愛よ、それ」
唯はため息交じりに、やれやれと口にしていた。
「ほら、行くよ!店閉まっちゃう!」
「うん!チョコミントのフラペチーノ楽しみだもんねー」
「うん。そうだね」
3人でナックに向かう。
店の席に着き一息ついた頃、
「それで、軽音部の話どうだったの?」
「ん?あー、その話ねー。とりあえずメンバー足りないから集めて来いって言われちゃった」
「そうなるよね。部活って最低3人は必要だって話だし」
「もうー、私はただバンドやりたいだけなのに―」
頭を抱える。
そんな様子に未羅はくすっと笑う。
「どうするの?私と未羅は……やってあげたいけどテニスとソフトボールあるし」
「そうだね」
「運動部と掛け持ちも一応できるから名前だけでも書く?」
唯はこちらの表情を伺い、首を傾げた。
たまにツントゲしているが、やはり彼女は優しいのだ。
提案そのものはうれしい。
だが、そこまで頼るのは自分も気が引けた。
「さ、さすがにそれは悪いよ。自分でなんとか頑張ってみる!」
「そう?なんかあったら言ってね」
「いつでも頼っていいからね京」
「ありがとう、2人とも!」
とはいえ、このままいけば軽音部として活動できるようになるのはいつになるやら……。
チョコミントのフラペチーノを飲み、そのすっきりした甘さに頬を緩ませる。
「京、大丈夫かな?」
「唯は心配しすぎだよ。京なら大丈夫だよ」
心配そうにしている唯に未羅は優しく笑いかけていた。
日が沈みかけた頃、唯たちと別れて自宅に帰宅する。
「ただいまー」
こちらの声に反応するように、リビングのほうから母親が顔を出した。
「おかえり、京。ごはんもうすぐできるから先に着替えてきなさい」
「うん」
2階の自室に行き、荷物を置いた。
制服を脱いで、部屋着に着替えるとギターバッグからギターを取り出す。
「……♪」
鼻歌混じりにピックでギターを弾く。
室内にギター音と共に静かな歌声が響いていた。
歌は「涙そうそう」。自分が一番最初に覚えた歌だ。
「……ふう」
1曲歌い終えて一息つくと、
「なかなかうまいじゃん」
拍手音と共に讃頌する声が耳に入る。
「お姉ちゃん!帰ってたの?」
「今帰ったところ。ドア開けても気づかないなんて集中してたんだね」
姉である楓は隣に座り優しく声をかける。
「軽音部、作れそう?」
「うーん。まだ先になりそうかな、ははは」
作り笑いと共に乾いた笑いを漏らした。
「そっか。でも、京ならやれると思うよ。頑張って!」
「うん!いつか、私もバンド組んでお姉ちゃんに聞いてもらいたいからね」
なんてことない姉妹の会話をしていた。
姉である楓は自分と4つ年の離れており、すでに社会人として働いている。
いつでも優しく接してくれる姉が自分は大好きだった。
「2人ともごはんよー」
「行こっか」
「うん」
階段を下りてダイニングに向かう。
父、母、祖母、姉、そして自分の5人で夕食を食べる。
「会社でこんなことあってさー」
「へーそうなんだ」
姉の会社での話や自分の学校での話をして、食卓は盛り上がっていた。
そんな中、家のチャイムが鳴った。
「あら、誰かしら」
「私出てくるよ」
楓が席を立ち玄関へと向かっていく。
ご飯を口に運んで飲み込んだ。
「京ー。お客さんよ」
「私に?」
席を立ち玄関のほうへと向かう。
「隅に置けないわね、あなたも」
すれ違いざまに楓はそう口にしていた。
どういう意味だろう。
そんな疑問を抱き、玄関に出る。
「はい……どちら、様?」
扉を開けて立っていたのは見覚えのない男の子だった。
銀髪に黒曜石のような瞳、なにより整った顔立ちをしている。
だが、自分の記憶にはない顔であった。
「ゲイツだ」
「ゲイツ……え?ゲイツ君?!」
彼の口にした名前に驚きを隠せなかった。
さきほど自分があったのはまるでぬいぐるみのような犬とも猫とも言えない姿をしていたからだ。
なのに今は普通の人間の男の子である。
「探すのに結構かかったぞ」
「どうしたの?」
「さっき話の途中だったのに逃げるから……」
「そうだっけ?ごめんね」
呆れた表情を見せる彼に謝罪して頭を下げる。
「まあいいや。そんなことより――」
言葉さえぎるように彼のおなかが鳴った。
「もしかして、おなかすいてる?」
「う……」
「ちょうど、ご飯食べてたから一緒に食べよ。話はそのあとに聞くから」
「悪いな、助かる」
ダイニングに彼を案内すると父や祖母は驚き、姉も面白いものを見たようににやにやと笑う。
「友達のゲイツ君。ちょっと家出中なんだって」
「へー、やっぱり隅に置けないわね」
「あらボーイフレンドじゃないー」
母も姉と同じような反応を見せている。
「ど、どうも」
「はい。おにぎり」
握ったおにぎりをゲイツの前に出す。
そして、自分のおかずの生姜焼きときゃべつの千切りを小皿にとりわけ隣に置いた。
「それは京のおかずだろ?」
「いいのいいの!それじゃ改めていただきまーす」
6人で食卓を囲む。
「おいしいでしょー」
「お口に合うかしら」
「はい!とってもおいしいです!」
お世辞ではなく本当にそう思っているのだろう。
彼の迷いのない口振りがそれを物語っている。
それから食事を終えて母と食器の後片付けをする。
「それで、京とどういう関係?」
「どうって?」
楓からの質問にゲイツは首を傾げる。
「とぼけちゃってー、いつから仲良くなったの?お姉さんに教えてほしいなー」
「お姉ちゃん。そういうのじゃないから……少し部屋で話するから。行くよゲイツ君」
「……」
こちらの言葉に促されるまま、ゲイツも後を追う。
母と楓はその背中を見送り、また笑みをこぼしていた。
自室のベッドに座ると、彼も床に腰を下ろした。
「それで、話っていうのは?」
「京。君はプリキュアになったって自覚あるのか?」
「そのプリキュアってなんなの?あの変なクワガタ男もよくわからないし」
彼の質問に質問で返してしまう。
プリキュア。そんな存在聞いたことがないし。
強いて言えば、魔法少女が近いのだろうか。
「プリキュアっていうのは、悪と戦う戦士だ」
「……やっぱりスーパーヒーローじゃん」
「んーそういうのじゃないんだよなー」
ゲイツは否定しつつもどこか否定しきれないという、なんとも言えない表情を浮かべる。
「とにかく、君には俺と一緒に戦ってほしいんだ。ジェネレーションシステムを取り戻すために、オルタネイムと」
「……私、今バンド組むので忙しいから」
「バンド?ギターとかベースとかでやる音楽のことか?」
「イグザクトリー!って、ゲイツ君楽器やるの?ベース?キーボード?もしかしてドラムやってたりする!?」
さっきとは打って変わって距離を詰める。
目を輝かせ、彼を見つめる。
「……いや、やってないけど」
「なんだー、残念!」
脱力するように肩を落とす。
「興味はあるけど……」
「本当!?」
再び顔を上げ、目を輝かせる。
「だが俺には目的がある。そのために君のプリキュアの力が必要なんだ」
「それってとても大切なことなの?」
「ああ、俺のかつての相棒との約束だからな」
ゲイツは真剣な表情を浮かべていた。
その顔から嘘は言っていないことは容易に想像できる。
「わかった。いいよ。プリキュアの力必要なんでしょ。私も手伝ってあげる」
「いいのか?」
「そのかわりーゲイツ君には一緒にバンド、してもらおうかなー」
「はー?」
「ふふ。冗談冗談、だよー」
彼には私の助けが必要なのかもしれない。
それにさきほど戦ったような敵がまた、彼を襲いに来ないという確証もない。
「ところで、ゲイツ君。泊るところとかあるの?」
「ない……」
「はぁ。君、どうやって生活していくつもりだったの?」
「金は工面できるが、寝床はどうしようもないんだよ」
「ふーん。そこもどうにかするよ。ウチ広いし、これからよろしくねゲイツ君」
笑みを浮かべるとゲイツは一瞬だけドキリとするのだった。
翌日。
学校へ登校する準備を終えた京はダイニングでトーストを食べていた。
「今日も1日晴れだってー、天気がいいと気持ちいいねー」
「京。さっさと朝食食べちゃいなさい。私も仕事行かなきゃなんだから」
「はいはーい。ゲイツ君は留守番ね。来週には父さんたちが学園の手続きしてくれるから」
「悪いな。何から何まで」
「いいっていいってー」
朝食をたべ終え、学校に登校する。
普段通り、授業を受けて昼休みを迎えていた。
「京ーお昼食べよ」
「うん」
唯、未羅とお弁当を食べようとした時だった。
「京ーいるかー」
「だれ、あの男子?」
「初めて見る顔だね」
2人は首を傾げている。
呼ばれた本人である自分も視線を向ける。
「ん?ゲイツ君!?」
教室の入り口にいたのは制服姿をしたゲイツだった。
「知り合い?」
「うん。ちょっと今日のお昼パス!」
弁当を手にゲイツの元に向かう。
「なんで学校にいるの?」
「いたいた。ちょっと話があってな」
「もう、ここは目立つから場所変えよ」
彼の手を引き、中庭のテラス席に出た。
お弁当を広げ、昼食を取りながら話に耳を傾ける。
「それで一体どうしたの?それにウチの制服どうやって手に入れたの?」
「アナザーワールドが観測されたんだ」
「アナザー、ワールド?」
卵焼きを口に運び食べながら首を傾げる。
パラレルワールドのことだろうか。
有名な青い猫型ロボットがタイムマシンで未来を変えるとパラレルワールドができるなんて話を聞いたことがあるけど。
「アナザーワールドってのは、本来存在しないはずの世界のことだ」
ゲイツはポケットからスマートフォンのような端末を取り出し操作する。
「おそらくオルタネイムの力で作り出されたものだろう」
「それでそのアナザーワールドってのができるとどうなるの?」
ミートボールやブロッコリー、白米を食べ進めていく。
「……そのまま放置していると、元になった世界と競合して消滅してしまう」
「消滅?!どういうこと?!」
耳を疑う言葉に身を乗り出す。
思っていたよりも重要な話なのかもしれない。
「アナザーワールドは外的要因でできた世界だからな。本来存在しないから通常の世界を少しずつ蝕むんだ。そこに世界の修正力が加わると、世界同士が拒絶しあい、消滅するってわけだ」
「超やばいじゃん!」
お弁当を片付け、紙パックの野菜ジュースを飲み干す。
「だから、急ぎで動く必要あるんだよ。つーわけで行くぞ。キュアリングとドレスボックスは持っているな?」
「ううん。教室の鞄だけど」
こちらの返答にゲイツはため息をつく。
「なんで常に身に着けてないんだ……」
「
「ったく」
ゲイツは端末の画面に視線を落とす。
10分ほどでテラス席に戻る。
「さあ行くよ。ゲイツ君」
「……よし。キュアリングを指につけろ」
昨日の戦闘時同様に右手の中指にキュアリングを装着する。
「これから次元を渡るためのゲートを開く」
「ねえ、その前に1つ」
気になっていたことを質問する。
これからのことについてだ。
「そのアナザーワールドに行けたとして、私はどうすればいいの?」
「アナザーワールドにはできた原因となる存在がいる。その存在を倒すことができれば世界をあるべき姿にすることができる」
「それってつまり、昨日みたいに戦うってこと?」
「早い話がそうだ」
こちらの言葉を肯定するように頷く。
昨日みたいに戦うことになる、ということか。
程なくして、ゲイツがゲートを開く。
「次元を超えるぞ」
「次元、か。私たちは次元の旅人ってやつになるのかな」
「次元の旅人……そうなのかもな」
2人はゲートをくぐり、次元を超えるのだった。
一瞬だったかもしれない。
はたまた1時間ほど経ったのだろうか。
次に瞼を開くと広がっていたのは、なんてことない街の風景だった。
「ここがアナザーワールド……?」
「そうだ。第1のアナザーワールド、『ソラシド市』だ」
ひろがる青空と、その街を見つめ、ゲイツが口にする。
「ソラシド市……」
自分もその名を口にすのだった。
読んでいただきありがとうございます。
これにて序章.オーバーワールドは終了となります。
次回からはⅡ章.京の旅々-ワールドツアー-となります。