転生したら終末装置だった件   作:fsje543

1 / 1
転生したら終末装置だった件

俺は何の変哲もない高校生だった。

 

つい先程までは。

 

学校ではそれなりに真面目に勉強して、塾にも通っている。

その帰り道のこと。

 

真夏でもすっかり暗くなった頃、時刻は 20時をまわっていただろう。

 

自然豊かな帰路に眩しい一対の光。蛍なんかとは比にならない。

 

車だ。

 

街灯のない道のりを突っ走る法定速度ガン無視の塊。

警察もいないような田舎だ。そうやって羽目と法律遵守意識を外す奴もそれなりにいる。

 

そう思って視線を外そうとしたとき、その異常に気づいた。

なぜヘッドライトが2つも、こんなにもはっきりと見えるのだろうか! 俺は道の端を歩いているのに!

 

その理由に思いたる頃には、身体全身に強烈な衝撃が走り、道路沿いの雑木林の中に吹き飛ばされていた。

 

痛い。

 

あまりにも痛いのに声も出ない。

 

《確認しました。痛覚無効獲得・・・成功しました》

 

遠くから女の声が聞こえる。

どうやら幻聴も始まったらしい。

 

霞んだ視界に走り去っていく車が見える。

……あの野郎逃げやがって……!後で絶対に訴えてやるからな…!

 

《確認しました。ユニークスキル『告訴者』を獲得・・・成功しました》

 

何がユニークスキル『告訴者』だ、ふざけてんのか。

だがそれよりも、とりあえずこの雑木林の外へ這い出なければ。

ここは、咽せ返るような血の匂いと湿った土の匂いが混ざって気持ちが悪い。付け加えるなら耳鳴りの外で絶えず何かの羽音がする。

 

だからこそ力一杯手を前へ突き出して……気づいた。

 

最早、俺の腕は1センチたりとも微動だにしないことに。

 

ああ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか。

 

 

俺はここで死ぬしかないんだな。

 

 

そう思ってどれほどしただろうか。

 

足に気持ちが悪い感覚が伝う。

ヌルヌルと独特のぬめりを持つ何かが胴の方に上っていくような。

ナメクジか、ムカデか、ヤスデか。

 

いや、気にしないように、考えないようにしていただけだ。

そうでなければ耐えられないと分かっていたから。

羽虫が鼻先に留まる。蛾の翅が肌に触れる。蟻が列になって頬を上る。

 

蝿がもはや閉じることもできない眼球に留まった。

 

集るな。

 

気味の悪い複眼が俺を見つめているようだった。

 

集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな。

 

蟻が短い牙を皮膚に突き立てる。蛾が寄ってたかって傷口を埋める。

 

そうして、生きながらにして、細分化されていく俺。

 

集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな集るな。

 

『随分と見覚えのある光景だと思ってきてみたら』

 

薄笑いの男の声が聞こえる。

もちろん、跳ね飛ばされた自分に誰かが気づいてくれたわけではない。これもただの幻聴だった。

 

どうして死に際に見知らぬ男女の声が聞こえるんだ?!

どうかしてるだろ!

 

『うるさかったかい?それは悪いことをしたね!それならきみが死ぬまでの数時間、俺は黙っていてあげようじゃないか』

 

待て、数時間?

俺は数時間もここで虫に噛まれ続けるって?!

 

『……そうだとも。全身打撲で即死しなかったら、後は時間をかけてゆっくり弱っていくしかないじゃないか!』

 

そんな…

 

そんなことは、嫌だ。

ずっと自分が細かく分けられていく様を、それを目を逸らさずに見ていることは、たまらなく嫌だ。

あらゆる虫にたかられる気持ちが悪い感覚がいつになっても消えないのも、苦しくて堪らない。

 

『それなら俺が助けてやろうか?』

 

囁くように、男の声が甘い提案を告げる。

 

助ける……?

 

『苦しくてとても耐えられないんだろう?だから俺が眠らせてあげよう。2度と醒めない眠りにね』

 

……。

 

『俺がなにか企んでるって?俺に目的があってもなくても、どっちにしろきみはここで終わりだろ。この先なんかないから、後先なんて考えるだけ無駄だ』

 

…………。

 

『……決められないなら俺が』

 

やめてくれ。

 

『それは感心だなぁ!このすてきな光景をできるだけ見ていたいって?』

 

……もしかしたら、これから俺を見つけてくれる誰かがいるかもしれないだろ。

 

『…………』

 

ここで諦めたら、そんな可能性すらゼロになる。

 

『そりゃそうだ、でもきみだって生き残れるだなんて思ってないくせに』

 

やっぱり、俺は、死にたくないから。

 

『そんなに頑張る理由はないはずだろ、世界の命運を背負っているわけでも、なによりも叶なきゃならない使命があるわけでもない。』

 

それは……─────────────────────────から。

 

『……へぇ、そう。なるほどきみは虫に集られ続けて、醜く生き続けることが趣味って訳だ!全く恐れ入ったよ!それなら俺からささやかなプレゼントを贈ってあげよう。

…………こんな力だけど、まぁ、少しは愉快に生きられるんじゃない』

 

男がそう言った瞬間、自らの動かない体に何か異物が入り込む妙な感覚を感じた。一部の入る余地のない場所に割り入るナニカ。

 

《確認しました。究極能力『悪虫之王』(ヴォーティガーン)獲得・・・成功しました》

 

お前の、名前は……?

 

『俺の名は────』

 

そんな言葉が、最期に聞こえた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

HASAN×HUNTER(作者:ガチャの破産)(原作:HUNTER×HUNTER)

グランドシスベシフォーウ‼︎のせいで"山の翁”の一生を垣間見ちゃって脳を焼いた少女が、狩人の世界に舞い降りるお話。▼脳みそはウェルダンでこんがりされたので、しっかり狂信者の模様。▼11周年でアズライール実装されたから供養も兼ねて初投稿。


総合評価:931/評価:9.08/連載:1話/更新日時:2026年08月14日(金) 20:00 小説情報

偽の偽典ソロモンによる魔法革命(作者:こくとうまんじゅう)(原作:転生したらスライムだった件)

転すらにソロモン(転生者憑依)させる話▼転すらに魔法特化のキャラがいなかったなと思った。その時を私はFGO二部終章をプレイしていた。あとは分かるでしょ?そういうことだ。▼「誰がひとりで戦うと言った?」▼「魔術師が最強である必要はない。最強の存在を従えていればいい――」▼「では見せてやろう。我が冠位。我が結論。我が、最強の英霊をな!」▼★重要 読者の皆様へのお…


総合評価:181/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年08月03日(月) 23:35 小説情報

個性”黄金裔”が紡ぐ叙事詩(作者:白豆男爵)(原作:僕のヒーローアカデミア)

ある英雄譚を夢に見た少女が、ヒーローを目指して物語を紡いでいくの♪▼どう?とてもロマンチックだと思わない?▼※ヒロアカと崩壊スターレイルのクロスオーバーです。主人公はキュレネに似てるだけの別人です。▼※スタレのオンパロス編のネタバレが含まれます。▼※スタレ知らなくても分かるように頑張る所存です。▼8/27追記:タグ編集しました。


総合評価:604/評価:9/連載:5話/更新日時:2026年09月01日(火) 07:00 小説情報

世界を救うとかダルすぎる(作者:ギリギリニート)(原作:Fate/)

▼なので原作主人公の幼馴染の後ろでサボっていようと思う▼主人公は混沌・悪でサボり魔▼※この小説には『Fate/Grand Order』のネタバレを多く含みます


総合評価:1000/評価:7.82/連載:3話/更新日時:2026年08月20日(木) 00:19 小説情報

グロキシニア転生者が行くHUNTER×HUNTER(作者:霊槍って、良いよね)(原作:HUNTER×HUNTER)

 七つの大罪の世界でグロキシニアとして転生し、チャンドラーと相打ちになるという大金星を上げた主人公が気付けばHUNTER×HUNTER世界の暗黒大陸の世界樹の元にいた……というところから始まる話。▼ 


総合評価:7056/評価:8.33/連載:15話/更新日時:2026年08月22日(土) 23:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>