『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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はじめまして。

この作品『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』を読んでいただき、ありがとうございます。

本作は『鬼滅の刃』を原作とした二次創作作品です。

主人公は、原作では鬼となり、最後には我妻善逸によって討たれることになる人物――獪岳。

しかし、本作の獪岳は原作の彼とは少し違います。

その身体に宿ったのは、前世で「朝比奈珀空亜」という人生を送った人物。

『鬼滅の刃』の物語を知っている彼は、自分がどんな未来を辿ることになるのかを知っています。

寺の子供たちが殺されること。

悲鳴嶼行冥が深い誤解を背負うこと。

自分が桑島慈悟郎の弟子となること。

我妻善逸と兄弟弟子になること。

そして――最後には鬼へ堕ち、善逸と刃を交えること。

さらにその先には、胡蝶カナエの死、胡蝶しのぶの復讐、そして原作で描かれた数々の悲劇が待っています。

だからこそ、彼は決意します。

「そんな最悪のバッドエンド、絶対に御免だ」

原作通りの未来を受け入れるのではなく、自分の知識と力で運命そのものを変えていく。

たとえ泥をすすってでも。

たとえ誰かに嫌われても。

たとえ自分自身が傷ついても。

「誰も死なせない」

それが、この物語における獪岳の信念です。

本作では、原作の獪岳が持っていた傲慢さや負けず嫌いな性格を完全になくすことはしません。

口は悪い。

態度も悪い。

褒めるのも苦手。

素直になるのも苦手。

それでも、仲間が傷つけば誰より先に助けに行く。

弟弟子である善逸には厳しく接しながらも、誰よりもその才能を認めて面倒を見る。

悲鳴嶼行冥とは幼少期の悲劇を乗り越え、やがて実の親子のような信頼関係を築いていく。

そして、復讐の炎を抱えた胡蝶しのぶとは、互いの心の奥にある傷を知ることで、少しずつ特別な関係へと変わっていきます。

特にしのぶについては、本作における大きなテーマの一つです。

いつも笑顔。

誰に対しても丁寧。

しかし、その笑顔の奥には姉を奪った鬼への憎悪がある。

自分自身も命を捨てる覚悟で復讐を果たそうとしている。

そんな彼女の本心を、獪岳は見抜きます。

「無理して笑うな」

「お前が死んだら俺が泣く」

原作では救われなかった心を、今度こそ救う。

そして、しのぶ自身にも「生きたい」と思ってもらう。

それが獪岳の新しい戦いになります。

もちろん、しのぶだけではありません。

胡蝶カナエ。

栗花落カナヲ。

我妻善逸。

悲鳴嶼行冥。

桑島慈悟郎。

不死川実弥。

伊黒小芭内。

粂野匡近。

竈門炭治郎。

嘴平伊之助。

村田をはじめとする隊士たち。

原作で悲劇に巻き込まれた人々。

そして、名無しの隊士たち。

彼ら一人ひとりとの出会いや交流も、この物語では大切に描いていきます。

特に獪岳・実弥・しのぶ・伊黒・匡近の五人は「ほぼ同期組」として、任務だけではなく、時にはくだらない会話を交わしながら鬼殺隊で共に成長していきます。

シリアスな戦闘だけではなく、仲間たちとの日常やコメディも描いていく予定です。

そのため、本編の各話の最後には可能な限り「大正コソコソ噂話」を入れていきます。

本編では描かれなかった小さな出来事。

胡蝶姉妹の秘密。

カナヲの意外な一面。

善逸と獪岳の兄弟弟子としての日常。

悲鳴嶼と獪岳の親子のようなやり取り。

桑島慈悟郎の師匠としての苦労。

炭治郎や伊之助との交流。

村田や名無しの隊士たちから見た鳴柱・獪岳。

そして、獪岳としのぶが恋人になった後の、二人きりの時だけ見せる甘い一面など。

時には「名無しの隊士たちの掲示板【スレッド】」という形で、鬼殺隊内の噂話を描くこともあります。

本編が重い展開になった時には、少し肩の力を抜いて読んでいただければと思います。

また、本作における獪岳の「雷の呼吸」も重要な要素です。

壱ノ型を含めた全ての型を修得し、さらに独自の修練によって派生技を生み出していきます。

そして獪岳が辿り着く独自の漆ノ型。

「雷の呼吸 漆ノ型・帝釈天(たいしゃくてん)」

雷神・帝釈天の名を冠した、獪岳だけの奥義です。

発動時には青白い雷が東洋龍、九頭龍を思わせる蛇型の龍となって奔り、敵を多方向から包囲して斬り伏せます。

一方、弟弟子である善逸にも独自の漆ノ型があります。

「雷の呼吸 漆ノ型・火雷神(ほのいかづちのかみ)」

一点突破の極限速度を誇る善逸の奥義。

「帝釈天」と「火雷神」。

同じ雷の呼吸から生まれながら、全く異なる道を進んだ二人の兄弟弟子。

二人が並び立つ時、そこには本作ならではの雷の呼吸の完成形が生まれることになります。

物語の最終的な目標は、単純な「原作改変」ではありません。

獪岳自身が、自分の未来を受け入れず、自分の手で選び取っていくこと。

誰かに与えられた運命ではなく。

誰かが決めた結末でもなく。

自分たち自身の手で未来を掴み取ること。

そして最終的には、原作で失われた多くの命を救い、獪岳自身も鬼にならず、善逸やしのぶ、仲間たちと共に笑って生きられる未来を目指します。

タイトルの「霹靂」は、獪岳が振るう雷。

運命を叩き割る雷鳴を意味します。

そして「慈雨」は、獪岳が仲間たちから受け取る優しさと、彼自身が大切な人たちへ与える救いを意味します。

激しい雷だけでは、人は救えない。

優しい雨だけでも、運命は変えられない。

雷のように強く。

雨のように優しく。

泥の中から這い上がった少年が、大切な人たちと共に光の道を進んでいく。

これは――。

悪役になるはずだった少年が、英雄へと変わっていく物語。

「俺は鬼にならねぇ」

「誰も死なせねぇ」

「――最悪の未来なら、俺が全部ぶっ壊してやる」

そんな獪岳の二度目の人生を、どうか最後まで見届けてください。

なお、本作には原作とは異なる設定・展開・人物関係が多数存在します。

原作では成立しない人物関係や独自解釈、オリジナル技、救済展開などを含みますので、「原作とは別の可能性の一つ」として楽しんでいただければ幸いです。

それでは。

雷鳴と慈雨が交わる、この世界へ。

――ようこそ。

『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』

開幕です。



第一章 転生――悪役になるはずだった少年 第1話 目覚めたら、獪岳だった

# 第一章 転生――悪役になるはずだった少年

 

## 第1話 目覚めたら、獪岳だった

 

――最初に感じたのは、寒さだった。

 

「……寒い」

 

自分の声が、妙に幼い。

 

朝比奈珀空亜は、ぼんやりと目を開いた。

 

薄暗い天井。

 

見慣れない木造の部屋。

 

鼻をくすぐる線香の匂い。

 

身体の下には、硬く粗末な布団。

 

「…………ここ、どこだ?」

 

上半身を起こす。

 

その瞬間、頭の奥に鋭い痛みが走った。

 

「っ……!」

 

知らない記憶が、濁流のように流れ込んでくる。

 

寺。

 

子供たち。

 

一人の盲目の僧侶。

 

厳しい修行。

 

そして――鬼。

 

「…………」

 

珀空亜は息を止めた。

 

記憶の断片が、一本の線に繋がっていく。

 

鬼殺隊。

 

雷の呼吸。

 

我妻善逸。

 

桑島慈悟郎。

 

そして――。

 

「……獪岳?」

 

口から、その名前が漏れた。

 

心臓が大きく跳ねる。

 

「…………は?」

 

慌てて立ち上がる。

 

だが、足元がおぼつかない。

 

身体が軽い。

 

手も小さい。

 

「嘘だろ……」

 

部屋の隅に置かれていた水桶へ駆け寄る。

 

水面を覗き込む。

 

そこに映っていたのは――。

 

黒髪。

 

険しい目。

 

まだ幼い少年の顔。

 

見覚えがある。

 

何度も見た顔だ。

 

『鬼滅の刃』に登場する、あの男。

 

後に鬼となり。

 

最後には善逸に討たれる少年。

 

「…………獪岳」

 

もう一度、名前を呟く。

 

否定したかった。

 

夢だと思いたかった。

 

しかし。

 

頬をつねる。

 

「痛ぇ」

 

夢じゃない。

 

水を触る。

 

冷たい。

 

畳を踏む。

 

感触がある。

 

匂いもする。

 

「……マジかよ」

 

頭を抱える。

 

「俺、本当に転生したのか?」

 

朝比奈珀空亜。

 

ごく普通の青年だった。

 

少なくとも、死ぬ直前までは。

 

しかし今、その魂は。

 

一人の少年の身体に宿っている。

 

しかも。

 

よりにもよって――獪岳。

 

「いや……待て」

 

珀空亜は必死に記憶を整理する。

 

獪岳。

 

寺育ち。

 

悲鳴嶼行冥と共に暮らしていた子供。

 

我妻善逸の兄弟子。

 

雷の呼吸の使い手。

 

才能に恵まれながらも、強烈な劣等感と傲慢さを抱えていた男。

 

そして――。

 

寺の金を盗む。

 

鬼を寺に招き入れる。

 

子供たちが殺される。

 

悲鳴嶼が疑われる。

 

やがて鬼殺隊へ入り。

 

善逸と対立し。

 

上弦の鬼となった黒死牟から鬼になることを誘われ――。

 

「…………」

 

背中に冷たい汗が流れた。

 

「最悪じゃねぇか」

 

よりにもよって。

 

未来を知っているからこそ分かる。

 

このまま原作通りに進めば、自分は間違いなく破滅する。

 

「いやいやいや……」

 

珀空亜は首を振った。

 

「待て。俺は原作の獪岳じゃない」

 

中身は朝比奈珀空亜だ。

 

前世の記憶がある。

 

物語の未来も知っている。

 

だったら。

 

「……変えられる」

 

そう呟いた。

 

声が震えていた。

 

怖い。

 

当然だ。

 

鬼なんて、戦ったこともない。

 

剣術の経験すらない。

 

今の自分は、ただの子供だ。

 

それでも。

 

未来を知っている。

 

それなら。

 

「変えるしかねぇだろ」

 

珀空亜は拳を握った。

 

原作の獪岳が辿った未来。

 

あんな結末は嫌だ。

 

鬼になるなんて冗談じゃない。

 

善逸に殺されるなんて、もっと嫌だ。

 

何より――。

 

「この寺の子供たちを……死なせるわけにはいかねぇ」

 

その瞬間。

 

脳裏に一つの記憶が浮かんだ。

 

夜。

 

鬼。

 

そして――。

 

悲鳴嶼行冥。

 

「……そうだ」

 

珀空亜は顔を上げた。

 

まだ間に合う。

 

原作で寺の悲劇が起こる前なら。

 

悲鳴嶼に警告すればいい。

 

鬼が来ることを伝える。

 

子供たちを守る。

 

そうすれば。

 

「悲鳴嶼さんも……救える」

 

原作では、悲鳴嶼は子供たちを殺したと疑われる。

 

だが、そんな未来にする必要はない。

 

全部変える。

 

寺の悲劇を。

 

自分の鬼化を。

 

善逸との決裂を。

 

そして――。

 

「しのぶさんの未来も」

 

その名前を思い浮かべた瞬間。

 

胸の奥がズキリと痛んだ。

 

胡蝶しのぶ。

 

姉を殺された少女。

 

笑顔の仮面を被りながら、鬼への復讐だけを胸に生きる少女。

 

そして原作では――。

 

「……童磨」

 

獪岳は歯を食いしばった。

 

カナエも。

 

しのぶも。

 

カナヲも。

 

救えるかもしれない。

 

いや。

 

「救う」

 

それは願いではない。

 

決意だ。

 

「絶対に救う」

 

その時だった。

 

「獪岳?」

 

「!」

 

背後から声がした。

 

振り返る。

 

そこには寺の子供が立っていた。

 

「どうしたの? 怖い夢でも見た?」

 

「…………」

 

獪岳は言葉を失った。

 

目の前にいる。

 

生きている。

 

原作では死ぬはずの子供。

 

「……おい」

 

「なに?」

 

「お前……」

 

名前が出てこない。

 

記憶の中では、この子も。

 

あの子も。

 

その子も。

 

みんな――。

 

「…………」

 

獪岳は拳を握りしめた。

 

「何でもねぇ」

 

「?」

 

「……今夜、俺の言うことを聞け」

 

「どうして?」

 

「いいからだ」

 

自分でも驚くほど強い声だった。

 

子供が目を丸くする。

 

「絶対に、寺の外へ出るな」

 

「う、うん……」

 

「誰かに呼ばれてもだ」

 

「うん」

 

「絶対だぞ」

 

念を押す。

 

子供が頷く。

 

「分かった」

 

その姿を見送った。

 

獪岳は再び水桶を見る。

 

水面に映るのは、幼い獪岳の顔。

 

だが、その瞳だけは。

 

もう別人だった。

 

「……獪岳」

 

自分自身に言い聞かせる。

 

「お前の未来は、俺が変える」

 

そして。

 

「俺は鬼にならねぇ」

 

一歩。

 

踏み出す。

 

「誰も死なせねぇ」

 

もう一歩。

 

「善逸も」

 

さらに一歩。

 

「悲鳴嶼さんも」

 

そして。

 

「しのぶも」

 

拳を強く握る。

 

「全員、生き残らせる」

 

――その日。

 

本来ならば悪役として破滅するはずだった少年が。

 

運命に抗うことを決めた。

 

まだ刀も持っていない。

 

呼吸も使えない。

 

鬼と戦う力もない。

 

それでも。

 

未来を知っている。

 

だからこそ――。

 

「……上等だ」

 

少年は、不敵に笑った。

 

「最悪の未来ってんなら――」

 

「俺が全部、ぶっ壊してやる」

 

こうして。

 

獪岳の二度目の人生が始まった。

 

そして数時間後。

 

この寺を襲う鬼と。

 

その先に待つ悲劇を。

 

彼はまだ知らない。

 

いや――。

 

知っている。

 

だからこそ。

 

今度は。

 

逃げない。

 

【大正コソコソ噂話】

 

転生直後の獪岳は、まだ自分の新しい身体に慣れていない。

 

特に困ったのが身長。

 

前世の感覚で歩こうとして、何度も足を引っかけている。

 

本人曰く、

 

「……身体が小さすぎんだよ!」

 

とのこと。

 

なお、寺の子供たちからは、

 

「獪岳、今日はなんだか変」

 

と思われていた。

 

――大正コソコソ噂話・終。

 

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