『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第101話 迅雷・閃々

白銀の雪原。

 

吹き荒れる吹雪の中、獪岳と童磨は互いを見据えていた。

 

「……」

 

獪岳の肩から血が流れている。

 

対する童磨も、全身に無数の斬傷を負っていた。

 

だが――。

 

「ふふ」

 

童磨の傷は、みるみる塞がっていく。

 

「やっぱり君、強いね」

 

「……」

 

獪岳は刀を握り直した。

 

「褒められて喜ぶと思うな」

 

「そう?」

 

「俺は、お前を斬る」

 

「怖いなぁ」

 

童磨は笑う。

 

「でも――」

 

扇を開く。

 

「僕も君を殺すつもりだよ」

 

冷気が一気に膨れ上がった。

 

「血鬼術――散り蓮華!」

 

無数の氷の花弁が、吹雪と共に襲いかかる。

 

「……!」

 

獪岳は目を細めた。

 

一枚。

 

二枚。

 

三枚。

 

氷の花弁が四方八方から迫る。

 

普通なら、避けるだけで精一杯だ。

 

だが。

 

「――遅い」

 

獪岳の足元で、雷が弾けた。

 

「雷の呼吸――」

 

刀を低く構える。

 

「迅雷・閃々」

 

――轟ッ!!

 

一瞬。

 

獪岳の姿が消えた。

 

「……!」

 

童磨の目が見開かれる。

 

「どこに――」

 

背後。

 

「ここだ」

 

「――ッ!」

 

斬撃。

 

童磨の背中が深く斬り裂かれる。

 

「速い!」

 

童磨が振り返る。

 

しかし、そこにはもう獪岳はいない。

 

「こっちだ」

 

右。

 

「――!」

 

斬撃。

 

左。

 

「こっちだ」

 

斬撃。

 

正面。

 

「――ッ!」

 

また斬撃。

 

「……!」

 

童磨は扇を振り回す。

 

だが、獪岳を捉えられない。

 

「これは……!」

 

雷鳴だけが雪原を駆け巡る。

 

「速すぎる……!」

 

童磨が初めて焦りを見せた。

 

「迅雷・閃々――」

 

遠くから獪岳の声。

 

「雷の如く、閃け」

 

雷光。

 

「――!」

 

童磨の眼前に獪岳が現れる。

 

「終わりだ」

 

「――!」

 

刀が振り下ろされる。

 

童磨は咄嗟に扇を交差させる。

 

――ガキィィィン!!

 

衝撃。

 

童磨の身体が大きく吹き飛ぶ。

 

「ぐっ……!」

 

雪原を転がる。

 

獪岳は追撃する。

 

「まだだ!」

 

雷光が走る。

 

「迅雷・閃々!」

 

再び姿が消える。

 

「……!」

 

童磨は周囲を見回す。

 

右。

 

いない。

 

左。

 

いない。

 

上。

 

「――!」

 

頭上。

 

獪岳が刀を振り下ろしていた。

 

「雷鳴――!」

 

「しまった!」

 

童磨が扇を構える。

 

――ザンッ!

 

肩から胸にかけて、大きな斬傷。

 

童磨が吹き飛ばされる。

 

「……!」

 

遠くで見ていたカナエが息を呑む。

 

「獪岳さん……」

 

あまりにも速い。

 

視線で追うことすら難しい。

 

「これが……」

 

カナエは呟く。

 

「鳴柱の速度……」

 

獪岳は着地する。

 

「……」

 

肩で息をする。

 

迅雷・閃々。

 

その速さは凄まじい。

 

だが。

 

肉体への負担も大きい。

 

「はぁ……」

 

呼吸が乱れる。

 

「……」

 

カナエが心配そうに近づく。

 

「獪岳さん」

 

「来るな」

 

「でも――」

 

「まだ終わってない」

 

その言葉と同時に。

 

「……あはは」

 

童磨の声。

 

獪岳が振り返る。

 

「……!」

 

童磨が立ち上がる。

 

身体は深く斬られている。

 

それでも。

 

「凄いねぇ」

 

笑っていた。

 

「本当に凄い」

 

傷が再生していく。

 

「僕の目でも追えない速度なんて、初めてだよ」

 

「……」

 

「でもね」

 

童磨の笑顔が消える。

 

「速いだけじゃ、僕は倒せない」

 

冷気が膨れ上がる。

 

「血鬼術――霧氷・睡蓮菩薩」

 

巨大な氷の仏像が現れる。

 

「……!」

 

カナエが息を呑む。

 

「獪岳さん!」

 

「分かっている」

 

巨大な掌が迫る。

 

「――!」

 

獪岳は刀を構える。

 

「迅雷・閃々!」

 

再び雷光。

 

巨大な掌をすり抜ける。

 

「――そこ!」

 

童磨へ接近。

 

「……!」

 

童磨が扇を振る。

 

獪岳は紙一重で避ける。

 

「まだだ!」

 

二撃。

 

三撃。

 

四撃。

 

雷光が連続する。

 

童磨は防ぎきれない。

 

「ぐっ……!」

 

「これで――!」

 

獪岳の刀が童磨の首へ迫る。

 

「終わりだ!」

 

――ガキィィン!

 

しかし。

 

寸前。

 

二本の扇が刀を挟み込んだ。

 

「……!」

 

童磨が笑う。

 

「捕まえた」

 

獪岳の目が見開かれる。

 

「――!」

 

「君の速さは凄い」

 

童磨の顔が近づく。

 

「でも――」

 

冷気が噴き出す。

 

「止まった瞬間は、僕の勝ちだ」

 

「……!」

 

獪岳は刀を引こうとする。

 

だが。

 

動かない。

 

「獪岳さん!」

 

カナエが叫ぶ。

 

「離れて!」

 

獪岳は歯を食いしばる。

 

「……まだだ」

 

「え?」

 

「俺の雷は――」

 

獪岳の身体から雷光が爆発する。

 

「止まらない!」

 

――バチィィィン!!

 

雷撃が童磨を吹き飛ばす。

 

扇が離れる。

 

獪岳は一気に後退。

 

「……!」

 

童磨の身体が焼け焦げる。

 

「へぇ……」

 

童磨は焼けた腕を見つめる。

 

「そういうこともできるんだ」

 

獪岳は刀を構える。

 

「俺の迅雷は――」

 

雷光が再び刀身を包む。

 

「一度走り出したら、止まるまでが技だ」

 

童磨が笑う。

 

「面白いなぁ」

 

「次は――」

 

獪岳が踏み込む。

 

「お前の首を斬る」

 

「やってみなよ」

 

童磨も扇を構える。

 

二人の間に。

 

再び雷鳴が轟いた。

 

――迅雷・閃々。

 

それはただ速いだけの技ではない。

 

敵の認識を置き去りにし。

 

一瞬の隙すら与えず。

 

雷鳴の如く、何度でも敵を斬り裂く。

 

鳴柱・獪岳の誇る、最速の剣。

 

そして。

 

その雷は――。

 

上弦の弐・童磨さえも、追い詰め始めていた。

 

 

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