『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第102話 帝釈天・九頭龍

白銀の雪原。

 

吹雪の向こうで、童磨が静かに立っていた。

 

その身体には、獪岳の「迅雷・閃々」による無数の傷が刻まれている。

 

しかし――。

 

「……ふふ」

 

傷は、すでに塞がり始めていた。

 

「惜しかったねぇ」

 

童磨が扇を開く。

 

「あと少しだったのに」

 

獪岳は刀を構えたまま、荒い呼吸を整える。

 

「……あと少し?」

 

「うん」

 

童磨は笑う。

 

「僕の首を斬るには、もう少しだけ力が必要かな」

 

「なら――」

 

獪岳の刀身に雷光が集まる。

 

「その力を見せてやる」

 

カナエが息を呑んだ。

 

「獪岳さん……?」

 

「下がっていろ」

 

「ですが――」

 

「今から使う技は、巻き込まれる」

 

獪岳の足元から、激しい雷が走る。

 

「分かりました」

 

カナエは距離を取った。

 

「気をつけてください」

 

「ああ」

 

獪岳は童磨だけを見据える。

 

「帝釈天――」

 

雷鳴が轟いた。

 

童磨の笑顔が僅かに引きつる。

 

「……何?」

 

獪岳の周囲に雷が集まり始める。

 

天から雲が集まり。

 

雪を吹き飛ばし。

 

大地が震える。

 

「雷の呼吸・改――」

 

刀を天へ掲げる。

 

「帝釈天!」

 

――ドォォォォン!!

 

轟音と共に、巨大な雷が天から落ちた。

 

「――ッ!」

 

童磨が咄嗟に氷壁を展開する。

 

しかし。

 

雷は氷壁を真正面から貫いた。

 

「なっ……!」

 

氷が一瞬で蒸発する。

 

雷撃はそのまま童磨へ直撃。

 

「ぐあっ!」

 

童磨の身体が地面へ叩きつけられる。

 

――ドゴォォォン!!

 

雪煙が舞い上がる。

 

「……!」

 

カナエが目を見開く。

 

「凄い……」

 

獪岳は刀を下ろす。

 

だが。

 

「……まだだ」

 

その声と共に。

 

雪煙の中から、童磨が立ち上がった。

 

「……あはは」

 

身体は焼け焦げている。

 

しかし。

 

「凄いなぁ……!」

 

童磨の傷が急速に再生する。

 

「天から雷を落とすなんて!」

 

獪岳は眉をひそめる。

 

「チッ……」

 

「でも――」

 

童磨の扇が開く。

 

「これならどうかな?」

 

冷気が一気に広がる。

 

「血鬼術――凍て曇!」

 

巨大な氷の渦が発生する。

 

獪岳の雷が吹雪と激突する。

 

「ぐっ……!」

 

押し返される。

 

「獪岳さん!」

 

カナエが叫ぶ。

 

「来るな!」

 

獪岳は踏ん張る。

 

「……まだだ」

 

雷がさらに強くなる。

 

「俺の雷は――」

 

刀を握り直す。

 

「こんなもんじゃない!」

 

雷鳴が連続して轟く。

 

そして。

 

獪岳の背後に――。

 

巨大な雷の龍が現れた。

 

「……!」

 

童磨の目が見開かれる。

 

「これは……!」

 

獪岳が刀を振り抜く。

 

「九頭龍――!」

 

九本の雷撃が一斉に放たれる。

 

「雷!」

 

――轟轟轟轟轟轟轟轟轟!!

 

九本の雷龍が雪原を駆け抜ける。

 

童磨は氷の壁を次々と展開する。

 

一枚。

 

二枚。

 

三枚。

 

しかし。

 

「無駄だ!」

 

雷龍が氷壁を貫く。

 

「――ッ!」

 

童磨の身体が九方向から同時に斬り裂かれる。

 

「ぐっ……!」

 

さらに。

 

九本の雷撃が一つに集束する。

 

「――終われ!」

 

獪岳が刀を振り下ろす。

 

巨大な雷柱が童磨を包み込んだ。

 

――ドォォォォン!!

 

雪原が真昼のように輝く。

 

山そのものが震えた。

 

カナエは思わず腕で顔を庇う。

 

「……!」

 

しばらくして。

 

雷鳴が消えた。

 

白い雪がゆっくりと落ちてくる。

 

「……」

 

獪岳は童磨がいた場所を見る。

 

そこには。

 

大きく抉れた大地。

 

焼け焦げた氷。

 

そして――。

 

「……」

 

童磨の姿はなかった。

 

「やった……?」

 

カナエが呟く。

 

獪岳は刀を下ろさない。

 

「……まだだ」

 

「え?」

 

「鬼の気配が消えていない」

 

その瞬間。

 

「正解」

 

背後。

 

「――!」

 

童磨が立っていた。

 

「……!」

 

カナエが振り返る。

 

童磨は身体の半分ほどが焼け落ちていた。

 

だが。

 

それすらも。

 

「……ふふ」

 

再生している。

 

「いやぁ……危なかった」

 

獪岳の表情が険しくなる。

 

「帝釈天と九頭龍をまともに受けて、まだ立つか……」

 

「凄い技だったよ」

 

童磨は嬉しそうに笑う。

 

「本当に死ぬかと思った」

 

「なら、もう一度やる」

 

獪岳が刀を構える。

 

だが。

 

「待ってください!」

 

カナエが止めた。

 

「獪岳さん!」

 

「何だ」

 

「これ以上、同じ技を使えば――」

 

カナエは獪岳の身体を見る。

 

腕が震えている。

 

呼吸も乱れている。

 

「あなたの身体が持ちません」

 

「……」

 

「帝釈天も九頭龍も、今まで以上に負担が大きいのでしょう?」

 

獪岳は答えない。

 

それが答えだった。

 

童磨は二人を見ながら笑う。

 

「なるほどね」

 

「……」

 

「強力な技には、それだけ代償がある」

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「お前には関係ない」

 

「いやぁ、関係あるよ」

 

童磨は扇を開く。

 

「だって――」

 

冷気が再び吹き荒れる。

 

「君を殺すために、知っておきたいからね」

 

獪岳は刀を握り締める。

 

「……上等だ」

 

カナエも刀を構える。

 

「今度は、私も戦います」

 

「無理するな」

 

「獪岳さんだけに負担を背負わせるわけにはいきません」

 

「……」

 

カナエは微笑む。

 

「二人なら、もっと戦えます」

 

獪岳は一瞬だけ黙った。

 

そして。

 

「ああ」

 

二人が並び立つ。

 

「なら――」

 

獪岳の刀に再び雷が集まる。

 

「次は二人で斬る」

 

カナエも刀を構える。

 

「はい」

 

童磨は楽しそうに笑った。

 

「いいねぇ」

 

吹雪が激しくなる。

 

「二人とも、もっと見せてよ」

 

雷と花。

 

その二つの呼吸が、再び雪原を駆け抜ける。

 

そして――。

 

上弦の弐との死闘は、さらなる激戦へと突入していった。

 

 

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