『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第110話 我妻善逸、炭治郎と出会う

蝶屋敷。

 

竈門炭治郎が運び込まれてから、数日が経っていた。

 

「はぁ……」

 

縁側で、炭治郎が深く息を吐く。

 

「身体が全然動かない……」

 

「無茶をしたんでしょうね」

 

隣で薬を整理していたしのぶが微笑む。

 

「しばらく安静にしてください」

 

「はい……」

 

炭治郎は素直に頷いた。

 

その時。

 

「――いやぁぁぁぁぁ!!」

 

屋敷の外から、凄まじい叫び声が響いた。

 

「……?」

 

炭治郎が振り返る。

 

「何ですか、今の?」

 

しのぶはため息をついた。

 

「また来たんでしょうね」

 

「また?」

 

「最近、よく来る患者さんです」

 

「患者……?」

 

次の瞬間。

 

「死にたくないぃぃぃ!!」

 

廊下を、一人の少年が猛スピードで走ってきた。

 

金髪。

 

大きな声。

 

そして――泣いている。

 

「女の子がいるぅぅぅ!!」

 

「……」

 

炭治郎が固まる。

 

少年はしのぶを見つけた瞬間、勢いよく立ち止まった。

 

「美人!」

 

「……」

 

しのぶの笑顔が少し引きつる。

 

「あなた、病人ですよね?」

 

「はい!」

 

「なら、静かにしてください」

 

「はいぃ!」

 

即答。

 

炭治郎は思わず目を丸くする。

 

「……」

 

この人は一体何なんだ。

 

その時。

 

少年が炭治郎を見る。

 

「……?」

 

「君……」

 

「はい?」

 

「君も男か」

 

「そうだけど」

 

「よかったぁぁぁ!」

 

突然、少年が炭治郎へ駆け寄る。

 

「仲間だぁぁぁ!」

 

「え?」

 

「ここ、女の子ばっかりで怖かったんだよ!」

 

「蝶屋敷だからな……」

 

「そうなの!?」

 

炭治郎は困惑した。

 

「俺は竈門炭治郎」

 

「俺は我妻善逸!」

 

少年――我妻善逸は胸を張った。

 

「よろしく!」

 

「よろしく」

 

二人は握手する。

 

だが。

 

善逸は炭治郎の顔をじっと見た。

 

「……君」

 

「?」

 

「なんか変な匂いする」

 

「匂い?」

 

「うん」

 

善逸は鼻を動かす。

 

「傷薬と血と……」

 

そして。

 

「鬼の匂い」

 

炭治郎の表情が変わる。

 

「……!」

 

「やっぱり」

 

善逸が指差す。

 

「君、鬼と一緒にいるだろ!」

 

「……」

 

「まさか――」

 

善逸の顔が青ざめる。

 

「鬼を連れてるの!?」

 

「落ち着け!」

 

炭治郎が慌てて説明する。

 

「禰豆子は俺の妹だ!」

 

「妹!?」

 

「鬼になったんだ!」

 

「鬼になった妹ぉぉぉ!?」

 

善逸が絶叫する。

 

「なんでそんな重要なことを普通の顔で言えるの!?」

 

「普通の顔じゃない!」

 

「いや普通だよ!」

 

「……」

 

二人のやり取りを見ていたしのぶが、思わず口元を押さえる。

 

「ふふ……」

 

「しのぶさん、笑わないでください!」

 

「すみません」

 

その時。

 

「何を騒いでいる」

 

低い声が響いた。

 

「……!」

 

二人が振り返る。

 

廊下の向こうから。

 

獪岳が歩いてくる。

 

「獪岳さん」

 

炭治郎が頭を下げる。

 

「我妻善逸です!」

 

善逸も慌てて頭を下げる。

 

「よろしくお願いします!」

 

獪岳は善逸を見る。

 

「……我妻善逸」

 

「は、はい!」

 

「お前も雷の呼吸を使うそうだな」

 

「……!」

 

善逸の顔が引きつる。

 

「な、なんで知ってるんですか?」

 

「元雷の呼吸の使い手だからだ」

 

「えっ!?」

 

善逸の目が大きくなる。

 

「じゃあ……」

 

獪岳は淡々と言う。

 

「お前の師――桑島慈悟郎の弟子だった」

 

「……!」

 

善逸は驚きのあまり固まった。

 

「じゃあ……俺と兄弟弟子……?」

 

「ああ」

 

「……」

 

善逸の身体が震える。

 

そして。

 

「――うわぁぁぁぁぁん!」

 

突然泣き出した。

 

「えぇ!?」

 

炭治郎が驚く。

 

「どうした!?」

 

「俺、絶対怒られると思ってたぁぁぁ!」

 

「なぜだ」

 

「だって兄弟子って怖いじゃん!」

 

「……」

 

獪岳は眉間に皺を寄せる。

 

「誰が怖いだ」

 

「あなたです!」

 

即答。

 

「……」

 

獪岳の額に青筋が浮かぶ。

 

「善逸」

 

「はい!」

 

「一つ聞く」

 

「はい……」

 

「お前は雷の呼吸を何型まで使える?」

 

「……壱ノ型だけです」

 

「そうか」

 

獪岳は少し考える。

 

「なら、それを極めろ」

 

「……え?」

 

善逸が顔を上げる。

 

「無理に他の型を覚える必要はない」

 

「でも……」

 

「壱ノ型しか使えないなら――」

 

獪岳は善逸を見る。

 

「壱ノ型を誰にも負けないほど極めればいい」

 

「……!」

 

善逸は目を見開く。

 

「それで……いいんですか?」

 

「ああ」

 

「でも俺……弱くて……」

 

「弱い?」

 

獪岳が一歩近づく。

 

「なら強くなれ」

 

「……」

 

「泣いている暇があるなら、鍛錬しろ」

 

「……はい」

 

善逸は小さく頷く。

 

その様子を見ていた炭治郎が口を開く。

 

「獪岳さん」

 

「何だ」

 

「善逸は、俺と一緒に戦えると思いますか?」

 

「……」

 

獪岳は二人を見る。

 

炭治郎。

 

善逸。

 

水と雷。

 

性格も戦い方も正反対。

 

だが。

 

「悪くない」

 

「本当ですか!?」

 

善逸が顔を上げる。

 

「ただし――」

 

獪岳は二人を指差す。

 

「互いに足を引っ張るな」

 

「はい!」

 

「はいぃ!」

 

二人が同時に返事をする。

 

「それから」

 

獪岳は善逸を見る。

 

「俺を兄弟子と呼ぶなら、恥ずかしくない剣士になれ」

 

「……!」

 

善逸の表情が変わる。

 

「……分かりました」

 

「おう」

 

その時。

 

炭治郎が笑った。

 

「よろしくな、善逸」

 

「……」

 

善逸は炭治郎を見る。

 

少しだけ不安そうな顔。

 

しかし。

 

「……うん」

 

「一緒に頑張ろう」

 

「うん!」

 

二人は拳を軽く合わせる。

 

その様子を見ていたしのぶが微笑む。

 

「なんだか、いい友達になりそうですね」

 

「そうだな」

 

獪岳も小さく頷く。

 

そして。

 

「竈門」

 

「はい」

 

「我妻」

 

「はい!」

 

「お前たちは、これから強くなる」

 

二人が獪岳を見る。

 

「そのために――」

 

獪岳の口元が僅かに緩む。

 

「まずは怪我を治せ」

 

「……はい!」

 

「はいぃ!」

 

こうして。

 

水の呼吸を使う少年。

 

竈門炭治郎。

 

雷の呼吸を使う少年。

 

我妻善逸。

 

二人の出会いが始まった。

 

そしてその二人を導くのは――。

 

鳴柱となった兄弟子、獪岳。

 

本来ならば交わることのなかった三人の運命は。

 

この日。

 

蝶屋敷で、大きく動き始めた。

 

 

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