『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第118話 獪岳と善逸、並び立つ雷

――山奥の道場。

 

夕暮れの空に、二つの雷鳴が響いていた。

 

「――雷の呼吸!」

 

善逸が地面を蹴る。

 

「壱ノ型・霹靂一閃!」

 

――バァンッ!!

 

一瞬で距離を詰める。

 

その先で待っていた獪岳が、刀を構える。

 

「遅い!」

 

「えっ!?」

 

獪岳の姿が消えた。

 

次の瞬間。

 

「雷の呼吸・壱ノ型――極!」

 

――轟ッ!!

 

二つの雷光が交差する。

 

善逸は寸前で身を翻した。

 

「うわっ!」

 

「今の判断は悪くない」

 

獪岳が振り返る。

 

「ありがとうございます!」

 

善逸が息を整える。

 

「でも兄貴、速すぎるよ……」

 

「柱と比べれば、まだまだだ」

 

「それでも俺には見えないよ!」

 

「なら見えるようになれ」

 

「無茶言うなぁ!」

 

獪岳は少し笑った。

 

「昔のお前なら、そこで諦めていただろうな」

 

「……」

 

善逸の表情が変わる。

 

「そうだね」

 

以前の自分。

 

自分には何もできないと思っていた。

 

雷の呼吸を使っても、壱ノ型しか使えない。

 

才能がない。

 

弱い。

 

怖い。

 

いつもそう思っていた。

 

だが。

 

今は違う。

 

「俺、もう逃げたくない」

 

善逸が刀を握り直す。

 

「兄貴に教えてもらったから」

 

「……」

 

「壱ノ型しか使えないなら」

 

善逸は構える。

 

「壱ノ型を極めればいい」

 

獪岳の目が細くなる。

 

「そうだ」

 

「だから――」

 

善逸が笑う。

 

「俺の霹靂一閃を見てよ」

 

「……いいだろう」

 

獪岳も構える。

 

「来い」

 

二人の間に静寂が落ちる。

 

風が止まる。

 

鳥の声さえ遠ざかる。

 

そして――。

 

「「雷の呼吸――」」

 

同時に踏み込む。

 

「壱ノ型!」

 

「壱ノ型・極!」

 

――轟音。

 

二人の雷が正面から衝突した。

 

バァァァン!!

 

地面が震える。

 

砂埃が舞う。

 

やがて。

 

「……!」

 

善逸が膝をついた。

 

獪岳は立っている。

 

だが。

 

「……」

 

獪岳の刀もまた、善逸の刀を真正面から受け止めていた。

 

善逸は息を切らしながら笑う。

 

「……やっぱり、勝てないか」

 

「まだな」

 

「え?」

 

獪岳は善逸を見る。

 

「だが、以前より遥かに強くなった」

 

「……!」

 

「お前の霹靂一閃は、お前だけの技になりつつある」

 

善逸は目を見開く。

 

「俺だけの……」

 

「ああ」

 

獪岳は刀を収める。

 

「俺の雷を真似する必要はない」

 

「……」

 

「俺は俺の雷を極める」

 

「お前は――」

 

獪岳は善逸の肩を叩く。

 

「お前の雷を極めろ」

 

善逸はしばらく黙っていた。

 

そして。

 

「兄貴」

 

「何だ」

 

「いつか――」

 

善逸は真っ直ぐに獪岳を見る。

 

「絶対に追いつく」

 

獪岳は笑った。

 

「楽しみにしている」

 

 

その様子を、道場の縁側から見ている人物がいた。

 

桑島慈悟郎だった。

 

「……」

 

師は静かに二人を見つめる。

 

かつて。

 

獪岳と善逸は、同じ場所で鍛錬していた。

 

だが。

 

二人の心は、決して同じ方向を向いていなかった。

 

獪岳は強さを求め。

 

善逸は自分の弱さに怯えていた。

 

それが今。

 

「並んで……雷を放っている」

 

慈悟郎の目が潤む。

 

「……」

 

二人の雷は違う。

 

獪岳の雷は鋭く、重い。

 

極限まで磨き上げられた雷。

 

善逸の雷は速い。

 

一瞬に全てを懸ける雷。

 

それでも。

 

「どちらも……儂の弟子の雷じゃ」

 

慈悟郎は嬉しそうに微笑んだ。

 

 

その夜。

 

三人で夕食を囲む。

 

「兄貴」

 

「何だ?」

 

善逸が箸を止める。

 

「俺さ」

 

「うん」

 

「前は兄貴のこと、怖かった」

 

「知っている」

 

「でも今は……」

 

善逸は笑った。

 

「兄貴が兄弟子でよかったと思ってる」

 

獪岳の手が止まる。

 

「……そうか」

 

「うん」

 

「なら、これからもそう思えるようにしてやる」

 

「え?」

 

「俺がもっと強くなる」

 

善逸は笑う。

 

「俺ももっと強くなる!」

 

慈悟郎が二人を見る。

 

「ふふ……」

 

「何だよ、爺さん」

 

「いや」

 

慈悟郎は目を細める。

 

「良いものを見せてもらったと思ってな」

 

「……」

 

「二人の雷が、ようやく同じ空に並んだ」

 

獪岳は黙っていた。

 

善逸は照れくさそうに笑う。

 

外では。

 

遠くで雷鳴が響いている。

 

それはまるで。

 

二人の剣士を祝福するようだった。

 

 

翌朝。

 

獪岳と善逸は、再び道場に立っていた。

 

「行くぞ、善逸」

 

「うん!」

 

二人が刀を構える。

 

「「雷の呼吸――」」

 

――バチッ。

 

二人の刀から、同時に雷光が走る。

 

獪岳の雷。

 

善逸の雷。

 

兄弟弟子として、別々の道を歩みながら。

 

それでも。

 

同じ師から受け継いだ一つの呼吸を胸に。

 

二人は並び立つ。

 

そして――。

 

「行くぞ!」

 

「うん!」

 

二つの雷鳴が、山々に轟いた。

 

 

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