『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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最終章 霹靂、そして慈雨 第122話 無限城

第122話 無限城

 

――その夜。

 

鬼殺隊本部。

 

静寂に包まれた屋敷の中で、獪岳はふと目を覚ました。

 

「……」

 

妙な気配。

 

空気が変わっている。

 

鳥の声もない。

 

虫の音すら聞こえない。

 

獪岳は布団から起き上がり、腰の刀に手を伸ばす。

 

「……何だ?」

 

その瞬間――。

 

――ドクン。

 

地面が揺れた。

 

「!」

 

次の瞬間。

 

視界が反転する。

 

天井が消えた。

 

床が崩れた。

 

「なっ……!」

 

獪岳の身体が、暗闇へと落下していく。

 

「獪岳さん!」

 

遠くから、しのぶの声。

 

「しのぶ!」

 

手を伸ばす。

 

しかし――届かない。

 

「くっ……!」

 

獪岳の身体は、そのまま闇の底へ飲み込まれた。

 

 

――ドンッ!

 

「……!」

 

獪岳が着地する。

 

刀を抜き、周囲を見渡す。

 

「ここは……」

 

そこには。

 

上下左右すら分からない、異様な空間が広がっていた。

 

巨大な階段。

 

宙に浮かぶ廊下。

 

逆さまになった部屋。

 

遠くには無数の扉。

 

そして。

 

どこからともなく響く、琵琶の音。

 

――ベン。

 

「……無限城」

 

獪岳は呟いた。

 

鬼舞辻無惨。

 

ついに奴が動いた。

 

「そういうことか……」

 

獪岳は刀を握り締める。

 

その瞬間。

 

「獪岳!」

 

声が響く。

 

「!」

 

振り返ると。

 

炭治郎が立っていた。

 

「炭治郎!」

 

「獪岳さん!」

 

さらに。

 

「兄貴!」

 

善逸。

 

「おい雷男!」

 

伊之助。

 

そして。

 

「獪岳さん……!」

 

しのぶ。

 

カナエ。

 

他の柱たち。

 

次々と隊士たちが集まってくる。

 

「全員……」

 

獪岳は目を見開く。

 

「無限城に落とされたのか」

 

「ああ」

 

悲鳴嶼が答える。

 

「鬼舞辻無惨が、我々をここへ招き入れたのだろう」

 

悲鳴嶼は数珠を握る。

 

「南無阿弥陀仏……」

 

その声に。

 

獪岳は周囲を見る。

 

これまで共に戦ってきた仲間たち。

 

自分が守ると決めた者たち。

 

そして。

 

自分の隣に立つ善逸。

 

「兄貴」

 

「ああ」

 

善逸が刀を抜く。

 

「来たね」

 

「ああ」

 

獪岳も刀を構える。

 

「最後の戦いだ」

 

善逸の手が震える。

 

だが。

 

もう逃げない。

 

「うん」

 

炭治郎も構える。

 

「みんなで帰りましょう」

 

伊之助が二刀を構える。

 

「鬼舞辻をぶっ倒して、地上に戻るぞ!」

 

しのぶは静かに刀を抜いた。

 

「ええ」

 

カナエも微笑む。

 

「必ず帰りましょう」

 

獪岳は二人を見る。

 

「……ああ」

 

その瞬間。

 

――ベン。

 

再び琵琶が鳴る。

 

空間が大きく動いた。

 

「!」

 

床が傾く。

 

壁が迫る。

 

廊下が伸びる。

 

仲間たちが次々と別々の方向へ飛ばされていく。

 

「炭治郎!」

 

「獪岳さん!」

 

「善逸!」

 

「兄貴!」

 

獪岳は手を伸ばす。

 

しかし。

 

「くっ……!」

 

無限城は、まるで生き物のように姿を変え続ける。

 

そして。

 

獪岳の前に、一つの扉が現れた。

 

扉の向こう。

 

そこから漂ってくるのは――。

 

凄まじい鬼の気配。

 

獪岳の目が鋭くなる。

 

「……来るか」

 

刀を握り直す。

 

雷が刃に走る。

 

「今まで積み重ねてきた全てを――」

 

バチッ。

 

「ここで終わらせる」

 

その時。

 

背後から声がした。

 

「兄貴!」

 

善逸だった。

 

「……!」

 

獪岳が振り返る。

 

善逸は息を切らしながら立っている。

 

「また一緒だね」

 

「……ああ」

 

獪岳は笑う。

 

「兄弟弟子だからな」

 

善逸も笑った。

 

「うん!」

 

二人は並んで立つ。

 

「兄貴」

 

「何だ」

 

「俺、怖いよ」

 

「……」

 

「でも」

 

善逸は刀を強く握る。

 

「もう逃げない」

 

獪岳は頷く。

 

「それでいい」

 

「兄貴も――」

 

善逸が獪岳を見る。

 

「一人で全部背負わないでね」

 

「……」

 

その言葉に。

 

獪岳は少しだけ目を伏せた。

 

昔の自分なら。

 

「余計なことを言うな」

 

そう返していただろう。

 

だが。

 

今は違う。

 

「分かった」

 

獪岳は答えた。

 

「お前も俺を頼れ」

 

「うん」

 

「そして俺も、お前を頼る」

 

「……!」

 

善逸が嬉しそうに笑う。

 

二人の刀に、同時に雷光が走った。

 

「雷の呼吸――」

 

「雷の呼吸――」

 

――バチバチッ!

 

「帝釈天!」

 

「火雷神!」

 

二つの雷が呼応する。

 

その瞬間。

 

遠くから、巨大な咆哮が響いた。

 

――グォォォォッ!!

 

無限城全体が震える。

 

獪岳の表情が変わる。

 

「……来たな」

 

鬼の群れ。

 

そして。

 

その遥か先にいる、最悪の存在。

 

鬼舞辻無惨。

 

「行くぞ、善逸」

 

「ああ!」

 

二人が走り出す。

 

だが。

 

その前に。

 

獪岳は一度だけ振り返った。

 

「しのぶ……」

 

姿は見えない。

 

それでも。

 

必ず会える。

 

必ず守る。

 

そして。

 

必ず生きて帰る。

 

「……待っていろ」

 

獪岳は前を向いた。

 

「俺は帰る」

 

――愛する者たちのいる場所へ。

 

 

一方。

 

無限城の別の場所。

 

「……獪岳さん」

 

しのぶもまた、刀を握っていた。

 

隣にはカナエ。

 

「大丈夫よ、しのぶ」

 

「……はい」

 

カナエは微笑む。

 

「獪岳さんなら、きっと来てくれるわ」

 

「ええ」

 

しのぶも笑う。

 

「私も、彼のところへ行きます」

 

その瞳には。

 

もう迷いはなかった。

 

「今度は――」

 

しのぶが刀を構える。

 

「私が彼を支える番です」

 

 

さらに別の場所。

 

悲鳴嶼は静かに目を閉じていた。

 

「……南無阿弥陀仏」

 

手にした武器を構える。

 

「この戦いを終わらせる」

 

悲鳴嶼の背後に、炭治郎たちの気配がある。

 

若い剣士たち。

 

守るべき命。

 

「もう二度と――」

 

数珠が鳴る。

 

「失わせぬ」

 

 

そして。

 

無限城最深部。

 

玉座に座る男が、ゆっくりと目を開く。

 

鬼舞辻無惨。

 

「……」

 

琵琶の音が響く。

 

「柱が揃ったか」

 

無惨の口元が歪む。

 

「ならば――」

 

赤い瞳が輝く。

 

「今宵、全てを終わらせよう」

 

――無限城、開戦。

 

鬼殺隊と鬼の最終決戦が始まった。

 

その戦場の中心で。

 

二つの雷が走る。

 

一つは、全てを切り裂く雷。

 

――帝釈天。

 

もう一つは、一瞬に全てを懸ける雷。

 

――火雷神。

 

そして。

 

その二つを繋ぐのは。

 

兄弟弟子という絆。

 

獪岳は刀を握り締める。

 

「――行くぞ」

 

善逸が隣に並ぶ。

 

「ああ!」

 

二人の雷鳴が。

 

無限城の闇を、轟然と駆け抜けた。

 

 

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