『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第123話 鬼舞辻無惨

――無限城。

 

琵琶の音が響くたび、空間そのものが歪む。

 

階段が宙へ伸び、廊下がねじれ、無数の部屋が生まれては消えていく。

 

その最深部。

 

静寂に包まれた広間に、一人の男が立っていた。

 

「……」

 

鬼舞辻無惨。

 

鬼という存在の頂点に立つ男。

 

赤い瞳が、ゆっくりと細められる。

 

「随分と集まったものだ」

 

無惨の声は静かだった。

 

しかし。

 

その声を聞いただけで、空気が凍りつく。

 

「柱……」

 

無惨は呟く。

 

「そして、竈門炭治郎」

 

さらに。

 

「鳴柱・獪岳」

 

その名を口にした瞬間。

 

無惨の表情が僅かに変わった。

 

「……」

 

かつてなら。

 

ただの一隊士に過ぎなかった男。

 

しかし今は違う。

 

「雷の呼吸を極め、柱にまで上り詰めたか」

 

無惨の口元に、冷たい笑みが浮かぶ。

 

「人間とは……実に奇妙な生き物だ」

 

 

その頃。

 

無限城の一角。

 

獪岳と善逸は鬼の群れを斬り伏せていた。

 

「――帝釈天!」

 

――轟ッ!!

 

無数の雷撃が走る。

 

鬼たちが一瞬で消し飛ぶ。

 

「兄貴!」

 

善逸が叫ぶ。

 

「右!」

 

「分かっている!」

 

獪岳が振り返る。

 

善逸が一体の鬼を斬る。

 

「火雷神!」

 

――バァンッ!!

 

閃光。

 

鬼の首が落ちる。

 

「……」

 

獪岳は善逸を見る。

 

「息が合ってきたな」

 

「兄貴と一緒に鍛えてきたからね!」

 

善逸が笑う。

 

「このまま無惨のところまで行こう!」

 

「ああ」

 

獪岳が頷いた。

 

だが。

 

次の瞬間。

 

――ドクン。

 

空気が変わった。

 

「……!」

 

獪岳が立ち止まる。

 

善逸も感じ取る。

 

「何……この気配」

 

遠くから。

 

圧倒的な鬼の気配が近づいてくる。

 

「……無惨だ」

 

獪岳が呟く。

 

 

無惨は歩いていた。

 

一歩。

 

また一歩。

 

ただそれだけ。

 

それなのに。

 

周囲の鬼たちが恐怖に震える。

 

「無惨様……」

 

「近づいている……」

 

「柱がいる場所へ……」

 

無惨は鬼たちを見向きもしない。

 

「邪魔だ」

 

腕を振る。

 

――ズンッ!!

 

鬼の身体が壁に叩きつけられ、消滅する。

 

「……」

 

無惨にとって。

 

配下の鬼すら、使い捨ての道具に過ぎない。

 

そして。

 

その先に。

 

一人の男が立っていた。

 

「……」

 

獪岳。

 

無惨と獪岳。

 

二人の視線が交差する。

 

善逸が息を呑む。

 

「兄貴……」

 

「下がっていろ」

 

「え?」

 

「こいつは――」

 

獪岳が刀を抜く。

 

「俺が斬る」

 

無惨は獪岳を見つめる。

 

「お前が鳴柱か」

 

「ああ」

 

「随分と自信があるようだな」

 

「自信じゃない」

 

獪岳の刀に雷が走る。

 

「覚悟だ」

 

無惨の目が細くなる。

 

「……面白い」

 

無惨の腕が変形する。

 

無数の触手が伸びる。

 

「ならば、その覚悟ごと――」

 

――ドンッ!!

 

獪岳が消えた。

 

「斬り捨ててやろう」

 

 

――轟ッ!!

 

雷光と黒い触手が激突する。

 

獪岳は一撃を斬り払い、さらに踏み込む。

 

「雷の呼吸・改!」

 

「ほう」

 

無惨の触手が増える。

 

左右。

 

上下。

 

死角。

 

あらゆる方向から襲いかかる。

 

「速いな」

 

獪岳は紙一重で避ける。

 

「だが――」

 

雷光が走る。

 

「俺の方が速い!」

 

「……!」

 

無惨の頬に一筋の傷が入る。

 

赤い血が流れた。

 

「……」

 

無惨が止まる。

 

「私に傷をつけたか」

 

獪岳は刀を構える。

 

「これからもっとつける」

 

無惨の表情から笑みが消える。

 

「身の程を知れ」

 

その瞬間。

 

無惨の身体から、凄まじい殺気が噴き出した。

 

「兄貴!」

 

善逸が叫ぶ。

 

「来る!」

 

獪岳は叫び返す。

 

「善逸!」

 

「うん!」

 

二人が同時に構える。

 

「「雷の呼吸――」」

 

無惨の触手が一斉に襲いかかる。

 

「帝釈天!」

 

「火雷神!」

 

――轟轟轟轟ッ!!

 

二つの雷が無惨の攻撃を切り裂く。

 

しかし。

 

無惨の傷は瞬時に再生していく。

 

「……!」

 

善逸が驚く。

 

「再生が……速すぎる!」

 

「当然だ」

 

無惨が笑う。

 

「私は鬼の始祖だ」

 

傷が完全に消える。

 

「お前たち人間とは、存在そのものが違う」

 

獪岳は刀を構えたまま答える。

 

「それでも――」

 

「何?」

 

「俺たちは、お前を倒す」

 

無惨の瞳が赤く輝く。

 

「愚かな」

 

「愚かでもいい」

 

獪岳の背後に。

 

善逸が立つ。

 

さらに。

 

無限城の別の場所から、仲間たちの気配が近づいてくる。

 

「俺一人じゃない」

 

獪岳が言う。

 

「鬼殺隊全員で、お前を終わらせる」

 

その言葉に。

 

無惨は初めて。

 

僅かに眉を動かした。

 

「……鬼殺隊」

 

「そうだ」

 

「人間ごときが、私に勝てると?」

 

獪岳は笑った。

 

「勝てるさ」

 

そして。

 

刀を握り直す。

 

「俺たちは――」

 

雷光が爆ぜる。

 

「一人じゃないからな」

 

 

遠く。

 

無限城の別の場所。

 

しのぶが足を止める。

 

「……獪岳さん」

 

カナエが微笑む。

 

「感じた?」

 

「はい」

 

二人は走り出す。

 

 

悲鳴嶼もまた。

 

無惨の気配を感じ取っていた。

 

「……来たか」

 

「悲鳴嶼さん!」

 

炭治郎が叫ぶ。

 

「ああ」

 

悲鳴嶼は武器を構える。

 

「行こう」

 

 

無限城最深部。

 

無惨と獪岳。

 

二人の間に。

 

再び静寂が落ちる。

 

「……鳴柱」

 

「何だ」

 

「お前のその目」

 

無惨が言う。

 

「随分と人間らしい目をしている」

 

「当たり前だ」

 

獪岳は即答した。

 

「俺は人間だからな」

 

「……」

 

「鬼になって永遠に生きるより――」

 

獪岳の瞳に、強い意志が宿る。

 

「限られた時間で、大切な奴らを守る」

 

無惨は鼻で笑う。

 

「くだらん」

 

「そう思うなら――」

 

獪岳が刀を構える。

 

「そのくだらない人間に、負けてみろ」

 

――バチィッ!!

 

雷鳴。

 

無惨もまた、全身から殺気を放つ。

 

「いいだろう」

 

「ならば――」

 

「この夜が終わる前に、どちらが正しいか証明してやろう」

 

そして。

 

二人が同時に踏み込んだ。

 

――最終決戦。

 

鬼舞辻無惨と鳴柱・獪岳。

 

その戦いの幕が、今。

 

本格的に上がった。

 

 

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