『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第124話 最後の雷鳴

――無限城。

 

「雷の呼吸・改――」

 

獪岳が踏み込む。

 

「帝釈天!」

 

――轟ォォォン!!

 

幾筋もの雷が、無惨へ殺到する。

 

しかし。

 

「無駄だ」

 

無惨の肉塊が巨大な鞭のようにしなり、雷撃を次々と弾き飛ばす。

 

「……!」

 

獪岳は後方へ跳ぶ。

 

着地した瞬間、床が砕けた。

 

「兄貴!」

 

「来るな、善逸!」

 

「でも!」

 

「まだお前の出番じゃない!」

 

獪岳の視線は、無惨から一瞬たりとも離れない。

 

目の前にいる鬼は、これまで戦ってきたどの鬼とも違う。

 

速い。

 

強い。

 

そして――しぶとい。

 

斬っても。

 

焼いても。

 

砕いても。

 

瞬く間に再生する。

 

「……化け物め」

 

「今さら気づいたか」

 

無惨が嗤う。

 

「人間が私に勝てると思うな」

 

無数の触手が一斉に伸びる。

 

「――!」

 

獪岳が跳ぶ。

 

右。

 

左。

 

上。

 

背後。

 

あらゆる方向から迫る攻撃を、雷の如き動きでかわしていく。

 

しかし。

 

「ぐっ……!」

 

一本が肩を掠めた。

 

血が飛ぶ。

 

「兄貴!」

 

「来るな!」

 

獪岳は傷口を押さえながら立ち上がる。

 

「俺が道を作る」

 

「……!」

 

「お前は、その道を走れ」

 

善逸は拳を握る。

 

「……分かった!」

 

 

その瞬間。

 

「獪岳!」

 

聞き慣れた声。

 

「!」

 

無限城の奥から、しのぶが駆けてくる。

 

「しのぶ……!」

 

「無茶をしすぎです!」

 

しのぶが獪岳の傷を見る。

 

「大丈夫だ」

 

「大丈夫な人は、そんなに血を流しません」

 

「……悪い」

 

しのぶは小さく息を吐く。

 

「私も戦います」

 

「危険だ」

 

「あなた一人に背負わせるつもりはありません」

 

しのぶは刀を構える。

 

「私も柱ですから」

 

獪岳は一瞬だけ目を細める。

 

そして。

 

「……分かった」

 

二人が並ぶ。

 

「行きましょう」

 

「ああ」

 

その時。

 

遠くから地響きが聞こえた。

 

――ドンッ!!

 

「来た!」

 

炭治郎の声。

 

悲鳴嶼。

 

カナエ。

 

そして他の柱たち。

 

鬼殺隊が集結する。

 

無惨はそれを見て、目を細めた。

 

「……鬱陶しい」

 

無惨の肉体が大きく膨れ上がる。

 

「ならば、まとめて消してやる」

 

凄まじい殺気。

 

「散開!」

 

悲鳴嶼の声が響く。

 

全員が一斉に動いた。

 

 

「火雷神!」

 

――バァン!!

 

善逸が無惨の懐へ飛び込む。

 

「!」

 

無惨が触手を振る。

 

しかし。

 

「させない!」

 

獪岳が割り込む。

 

「雷の呼吸・改――帝釈天!」

 

――轟ッ!!

 

雷撃が触手を切り裂く。

 

その隙に善逸が走り抜ける。

 

「今だ!」

 

炭治郎が続く。

 

「水の呼吸!」

 

「獣の呼吸!」

 

伊之助も飛び込む。

 

柱たちの攻撃が次々と重なる。

 

無惨の身体に無数の傷が刻まれる。

 

しかし。

 

「……!」

 

瞬時に再生。

 

「無駄だ!」

 

無惨が咆哮する。

 

無数の触手が爆発的に広がった。

 

「ぐあっ!」

 

「きゃあっ!」

 

隊士たちが吹き飛ばされる。

 

獪岳も大きく後退する。

 

「くっ……!」

 

息が苦しい。

 

身体が重い。

 

血が流れ続ける。

 

それでも。

 

「……まだだ」

 

刀を握る。

 

「まだ終わってない」

 

 

その時。

 

善逸が隣に立った。

 

「兄貴」

 

「……何だ」

 

「俺が道を作る」

 

「!」

 

「兄貴は――」

 

善逸が笑う。

 

「最後の一撃を頼む」

 

「馬鹿を言うな」

 

「兄貴ならできる」

 

「……」

 

「俺、もう怖くない」

 

善逸の瞳には、確かな覚悟があった。

 

「兄貴の隣で戦ってきたから」

 

「……善逸」

 

「俺の雷を、全部使う」

 

善逸が構える。

 

「火雷神」

 

獪岳も刀を構えた。

 

「……分かった」

 

二人の刀に雷が集まる。

 

「俺も全部出す」

 

無惨が迫る。

 

「消えろ!」

 

無数の触手が二人を包囲する。

 

「今だ!」

 

善逸が叫ぶ。

 

「雷の呼吸――」

 

「――改!」

 

二つの声が重なる。

 

「「極限――」」

 

雷鳴が無限城を震わせる。

 

「火雷神!!」

 

「帝釈天!!」

 

――轟ォォォォォン!!

 

二つの雷が走った。

 

善逸の雷が、無惨の攻撃を切り裂く。

 

獪岳の雷が、その隙間を縫う。

 

一歩。

 

二歩。

 

三歩。

 

獪岳は走る。

 

「――!」

 

無惨の首が見えた。

 

「させるか!」

 

無惨が触手を集中させる。

 

しかし。

 

「兄貴!」

 

善逸が最後の力を振り絞る。

 

「行って!」

 

「……!」

 

獪岳が踏み込む。

 

「善逸!」

 

「俺は大丈夫!」

 

獪岳は前を見る。

 

そして。

 

全身の力を刀へ集めた。

 

「雷の呼吸・改――」

 

世界が静かになる。

 

音が消える。

 

視界には。

 

無惨の首だけ。

 

「これが――」

 

獪岳の脳裏に、仲間たちの顔が浮かぶ。

 

しのぶ。

 

カナエ。

 

善逸。

 

炭治郎。

 

伊之助。

 

悲鳴嶼。

 

桑島慈悟郎。

 

そして。

 

これまで守ってきた全ての隊士たち。

 

「俺が積み重ねてきた――」

 

刀身に雷が集束する。

 

「最後の雷だ!!」

 

――轟ォォォォォォォン!!

 

獪岳が消えた。

 

一閃。

 

無惨の首を――。

 

「……!」

 

斬り裂く。

 

「な……に……?」

 

無惨の目が見開かれる。

 

首が宙を舞う。

 

「馬鹿な……!」

 

獪岳は着地する。

 

「……」

 

刀を握ったまま。

 

息を切らす。

 

そして。

 

「……終わった」

 

――否。

 

無惨の肉体が蠢く。

 

「まだだ!」

 

無惨が叫ぶ。

 

「私は死なん!」

 

身体が巨大化する。

 

「まだ終わっていない!」

 

獪岳の表情が変わる。

 

「……そう簡単にはいかないか」

 

善逸が隣に立つ。

 

「兄貴」

 

「ああ」

 

「もう一回だ」

 

獪岳は頷く。

 

「……ああ」

 

二人は再び刀を構える。

 

しかし。

 

遠くから。

 

朝の気配が――。

 

ほんの僅かに。

 

無限城の向こうから差し込み始めていた。

 

「……」

 

獪岳は空を見上げる。

 

「夜明けが近い」

 

善逸が笑う。

 

「じゃあ――」

 

刀を握る。

 

「最後まで耐えよう」

 

獪岳も笑った。

 

「ああ」

 

二人の雷が。

 

最後の夜を照らす。

 

そして。

 

遠くで――。

 

一羽の鴉が鳴いた。

 

「夜明けまで、あと少し!」

 

獪岳は前を見る。

 

「行くぞ、善逸」

 

「うん!」

 

最後の戦いは。

 

まだ終わっていない。

 

だが。

 

夜は確実に――。

 

明けようとしていた。

 

 

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