『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第125話 霹靂、そして慈雨――

――無限城。

 

「まだ……終わっていない……!」

 

鬼舞辻無惨が咆哮する。

 

斬り落とされたはずの肉体が蠢き、異形へと変貌していく。

 

「私は……死なん!」

 

無惨の触手が一斉に伸びる。

 

「兄貴!」

 

「分かっている!」

 

獪岳と善逸が左右へ散開する。

 

しかし。

 

「くっ……!」

 

獪岳の膝が僅かに揺れた。

 

これまでの戦いで、身体は限界に近い。

 

善逸も同じだった。

 

「兄貴……」

 

「まだ立てる」

 

「俺も」

 

二人は刀を握り直す。

 

「なら――」

 

獪岳が前を見る。

 

「最後まで戦うぞ」

 

「ああ!」

 

 

無惨が襲いかかる。

 

「死ねぇぇぇ!」

 

「雷の呼吸・改――」

 

獪岳が踏み込む。

 

「帝釈天!」

 

――轟ッ!!

 

無数の雷が触手を切り裂く。

 

その隙を。

 

「火雷神!」

 

善逸が駆け抜ける。

 

――バァン!!

 

一閃。

 

無惨の身体に深い傷が刻まれる。

 

「ぐ……!」

 

だが。

 

再生。

 

「何度やっても同じだ!」

 

無惨が嗤う。

 

「お前たちの命が先に尽きる!」

 

獪岳は荒い息を吐く。

 

「……そうかもな」

 

善逸を見る。

 

「だが――」

 

善逸も頷いた。

 

「俺たちだけじゃない」

 

その瞬間。

 

「――岩の呼吸!」

 

――ドォン!!

 

悲鳴嶼の攻撃が無惨を吹き飛ばす。

 

「南無阿弥陀仏……!」

 

さらに。

 

「水の呼吸!」

 

炭治郎が続く。

 

「獣の呼吸!」

 

伊之助も飛び込む。

 

そして。

 

「――蟲の呼吸!」

 

しのぶが舞う。

 

「――花の呼吸!」

 

カナエが続く。

 

鬼殺隊全員が。

 

最後の力を振り絞って戦っていた。

 

無惨が叫ぶ。

 

「なぜだ!」

 

「なぜ、そこまでして戦える!」

 

獪岳が答える。

 

「守りたいものがあるからだ」

 

「……!」

 

「それだけだ」

 

 

その時。

 

無惨の攻撃が獪岳を捉えた。

 

「兄貴!」

 

――ズドン!!

 

獪岳が吹き飛ぶ。

 

「獪岳さん!」

 

しのぶが駆け寄る。

 

「獪岳!」

 

カナエも叫ぶ。

 

「……大丈夫だ」

 

獪岳が起き上がる。

 

しかし。

 

口から血が流れる。

 

「もう……十分です!」

 

しのぶが叫ぶ。

 

「あなたは戦いすぎています!」

 

「……」

 

「もう私たちに任せてください!」

 

獪岳はしのぶを見る。

 

そして。

 

「……ありがとう」

 

しのぶの目が揺れる。

 

「でも――」

 

獪岳は立ち上がる。

 

「俺は最後まで、柱でいたい」

 

「……!」

 

「誰かを守るために戦う」

 

獪岳は刀を構える。

 

「それが俺の選んだ道だから」

 

しのぶは唇を噛む。

 

そして。

 

「……分かりました」

 

彼女も刀を構える。

 

「なら、最後まで一緒に戦います」

 

「……ああ」

 

二人は並んだ。

 

 

――その時。

 

無限城の壁が崩れた。

 

「!」

 

外の空が見える。

 

暗闇の向こう。

 

ほんの僅かに。

 

白い光。

 

「夜明け……!」

 

誰かが叫ぶ。

 

無惨の表情が変わる。

 

「……!」

 

初めて。

 

明確な焦りが浮かんだ。

 

「日の光……!」

 

無惨が逃げようとする。

 

「逃がすか!」

 

悲鳴嶼が鎖を振る。

 

「――!」

 

無惨の身体が止まる。

 

「今だ!」

 

獪岳が叫ぶ。

 

全員が動く。

 

「行けぇぇぇ!」

 

無惨が暴れる。

 

だが。

 

一人。

 

また一人。

 

隊士たちが身体を張って押さえ込む。

 

「離せ!」

 

「絶対に離すな!」

 

「ここで終わらせるんだ!」

 

そして。

 

獪岳も。

 

善逸も。

 

最後の力を振り絞る。

 

「兄貴!」

 

「善逸!」

 

「一緒に!」

 

二人の刀に雷が走る。

 

「帝釈天!」

 

「火雷神!」

 

――轟ォォォォォン!!

 

雷が無惨を地面へ叩き伏せる。

 

その瞬間。

 

東の空から。

 

太陽が昇った。

 

「――!」

 

無惨の身体が燃え始める。

 

「ぐああああああ!!」

 

悲鳴が響く。

 

「私は……!」

 

「私は……!」

 

「こんなところで……!」

 

肉体が崩れていく。

 

獪岳は刀を下ろす。

 

「終わりだ」

 

無惨が最後に睨む。

 

「人間……ごときが……!」

 

獪岳は静かに答える。

 

「人間だからだ」

 

「……!」

 

「限られた時間しか生きられないからこそ――」

 

獪岳は仲間たちを見る。

 

「誰かを守りたいと思える」

 

そして。

 

「それが俺たちの強さだ」

 

無惨の身体が。

 

朝日に完全に焼かれた。

 

――消滅。

 

長きに渡る鬼との戦い。

 

その元凶。

 

鬼舞辻無惨は――。

 

ついに滅びた。

 

 

「……」

 

戦場に静寂が戻る。

 

善逸がその場に座り込む。

 

「終わった……?」

 

炭治郎が空を見る。

 

「……終わりました」

 

伊之助が叫ぶ。

 

「勝ったぞぉぉぉ!!」

 

隊士たちから歓声が上がる。

 

そして。

 

獪岳は静かに空を見上げた。

 

雨が降り始める。

 

ぽつり。

 

ぽつり。

 

やがて。

 

優しい雨へと変わっていく。

 

「……雨」

 

しのぶが呟く。

 

獪岳は微笑む。

 

「慈雨だな」

 

「慈雨?」

 

「ああ」

 

獪岳は空を見上げる。

 

「長い夜を終わらせた者たちを、祝福する雨だ」

 

しのぶが隣に立つ。

 

「綺麗ですね」

 

「ああ」

 

二人の肩に雨が落ちる。

 

善逸も空を見上げた。

 

「兄貴」

 

「何だ?」

 

「……俺たち、勝ったんだね」

 

「ああ」

 

「爺ちゃんに、報告しよう」

 

獪岳は頷く。

 

「そうだな」

 

そして。

 

獪岳は仲間たちを見る。

 

炭治郎。

 

善逸。

 

伊之助。

 

しのぶ。

 

カナエ。

 

悲鳴嶼。

 

そして。

 

ここまで共に戦ってきた、全ての隊士たち。

 

誰もが傷つき。

 

誰もが涙を流した。

 

それでも。

 

生き残った。

 

「……」

 

獪岳は目を閉じる。

 

かつて。

 

強さだけを求めていた少年は。

 

今。

 

誰かを守るために強くなった男になっていた。

 

「俺は――」

 

静かに呟く。

 

「この道を選んで、良かった」

 

しのぶが微笑む。

 

「私もです」

 

「……しのぶ」

 

「あなたと出会えて、本当に良かった」

 

獪岳は少し照れたように笑う。

 

「俺もだ」

 

空から降る雨が。

 

二人を優しく包む。

 

――霹靂。

 

それは、獪岳が歩んできた雷の道。

 

――慈雨。

 

それは、仲間たちと掴んだ未来。

 

長い夜は終わった。

 

そして。

 

新しい朝が――。

 

始まった。

 

 

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