『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第七話 蟲柱・胡蝶しのぶ、救援に到着

「雷の呼吸――壱ノ型・霹靂一閃、疾風!!」

 

バリィィィン!!

 

青白い雷光が夜の森を一直線に駆け抜けた。

 

獪岳の姿が消えた次の瞬間、累の周囲を覆っていた赤い糸が次々と切断されていく。鋼鉄をも容易く断ち切るはずの糸が、雷を纏った日輪刀の前では紙のように裂けていった。

 

「……!」

 

累が目を見開く。

 

獪岳の刃が、その首へ迫る。

 

「もらった!」

 

「――僕の首は、ここだ」

 

累は咄嗟に自らの首へ糸を走らせた。

 

スパッ!

 

自分自身の首を切断する。

 

飛び散った血とともに頭部が宙へ舞い、身体だけが後方へ跳躍した。

 

「チッ!」

 

獪岳の刃が僅かに空を切る。

 

次の瞬間、累の頭部と胴体が糸で繋がり、瞬時に元へ戻った。

 

「自分で首を切りやがったか。気色悪ぃ芸当しやがる」

 

「君も、簡単には僕を殺せないようだね」

 

累の瞳に、冷たい光が宿る。

 

「僕の家族を傷つける者は……誰であろうと許さない」

 

指が動く。

 

その瞬間だった。

 

ドォォォン!!

 

山奥から凄まじい地響きが轟いた。

 

木々が薙ぎ倒され、巨大な影が月明かりの中へ飛び出してくる。

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

現れたのは、巨大な身体を持つ父蜘蛛だった。

 

炭治郎と伊之助が同時に身構える。

 

「なんだ、こいつ……!」

 

「でけぇぇぇ!!」

 

父蜘蛛は二人へ向かって拳を振り下ろした。

 

「うおおおっ!」

 

炭治郎が横へ跳ぶ。

 

伊之助も二刀を交差させて受け止める。

 

ガギィィン!!

 

「ぐっ……!」

 

「ぬおおおおっ!?」

 

二人の身体が地面を滑る。

 

「伊之助!」

 

「分かってる! こんなデカブツ、俺様が――!」

 

だが、父蜘蛛の身体がさらに膨れ上がった。

 

バキバキバキッ!!

 

皮膚を破るようにして、巨大な身体が脱皮する。

 

「なっ……!?」

 

「まだデカくなるのかよぉぉ!?」

 

脱皮を終えた父蜘蛛は、先ほどとは比較にならないほど巨大な姿へ変貌していた。

 

「グオオオオオオッ!!」

 

巨大な腕が振り下ろされる。

 

炭治郎は刀を構える。

 

(受け止めたら潰される……!)

 

逃げ場がない。

 

その瞬間――。

 

ふわり。

 

どこからともなく、藤の花を思わせる甘い香りが夜風に乗って漂ってきた。

 

「まあまあ。ずいぶん大きな蜘蛛さんですね」

 

場違いなほど穏やかな声。

 

「……え?」

 

炭治郎が振り返る。

 

月明かりを背に、一人の女性が木の枝からふわりと舞い降りてきた。

 

蝶の髪飾り。

 

紫と白の羽織。

 

そして、細身の日輪刀。

 

「胡蝶……しのぶさん!」

 

「はい。お久しぶりですね、炭治郎くん」

 

しのぶはにこりと微笑んだ。

 

「伊之助くんも。ずいぶん頑張っていますね」

 

「お、おう! あのデカブツを俺様が倒すところだったんだ!」

 

「それは頼もしいですね」

 

しのぶが笑う。

 

だが、その視線はすでに父蜘蛛へ向いていた。

 

「……ですが、少しだけ私にもお手伝いさせてください」

 

しのぶの身体が沈む。

 

「蟲の呼吸――」

 

父蜘蛛が腕を振り下ろす。

 

「蝶ノ舞――戯れ」

 

ヒュンッ!!

 

しのぶの姿が消えた。

 

次の瞬間、父蜘蛛の巨体を無数の突きが襲う。

 

「グオッ……!?」

 

一撃。

 

二撃。

 

三撃。

 

その細身の刀からは想像もできないほど正確で高速な連続刺突。

 

刃に塗られた藤の花の毒が、鬼の身体へ次々と注ぎ込まれていく。

 

「ガ……ガアアアアッ!?」

 

父蜘蛛が身体を震わせた。

 

毒が血管を駆け巡る。

 

筋肉が痙攣し、巨大な身体が崩れ落ちていく。

 

「すごい……!」

 

炭治郎が息を呑む。

 

「一瞬で……!」

 

伊之助も目を見開いた。

 

「なんだあの女……!?」

 

しのぶは静かに刀を払った。

 

「大丈夫ですか、二人とも?」

 

「はい!」

 

「俺様は全然平気だ!」

 

「ふふ。それなら安心しました」

 

その一方。

 

「遅えぞ、しのぶ」

 

累と対峙していた獪岳が、苛立たしげに声を飛ばした。

 

「随分と楽しそうにしていたようですね、獪岳さん」

 

「楽しんでねえよ」

 

「そうですか?」

 

「後方の連中はどうした?」

 

「もちろん救護を済ませています。善逸くんも無事ですよ。毒が強かったので、少し眠ってもらっていますが」

 

「そうか」

 

獪岳の表情が僅かに緩む。

 

だが、それも一瞬だった。

 

視線は再び累へ向けられる。

 

「なら問題ねえな」

 

獪岳が日輪刀を構え直す。

 

青白い雷が刀身を走る。

 

「炭治郎、伊之助。しのぶと一緒に下がれ」

 

「獪岳さん、俺も――!」

 

「駄目だ」

 

獪岳が鋭く遮る。

 

「こいつは下弦の伍だ。今のお前らが無理に相手する必要はねえ」

 

炭治郎は唇を噛んだ。

 

「……分かりました」

 

「いい返事だ」

 

獪岳は不敵に笑う。

 

「ここからは――柱の仕事だ」

 

しのぶも刀を構えた。

 

「ええ。私もお手伝いしますよ」

 

累は二人の柱を見つめていた。

 

これまで冷静だった瞳が、僅かに揺れている。

 

「柱が……二人……」

 

獪岳が一歩踏み出す。

 

「どうした、クソガキ。さっきまでの威勢はどこへ行った?」

 

「……僕は、家族を守る」

 

「なら来い」

 

バチバチバチッ!!

 

獪岳の周囲に雷気が渦巻く。

 

しのぶも静かに腰を落とす。

 

「あなたの言う『家族』が本当に守る価値のあるものなのか……少し確かめてみましょうか」

 

「……僕は負けない」

 

累の周囲に赤い糸が展開する。

 

月下の森。

 

鋼より硬い蜘蛛の糸。

 

青白い雷。

 

そして、毒を宿した細身の刃。

 

二人の柱が揃ったことで、那田蜘蛛山の戦況は大きく動き始めた。

 

下弦の伍・累。

 

その顔から、初めて隠しきれない恐怖が滲み始めていた。

 

 

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