『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第六話「禰豆子の血鬼術」

「あはははははっ!! 遅い、遅いよ!!」

 

無限列車そのものと一体化した下弦の壱・魘夢の哄笑が、夜の闇を震わせた。

 

首を斬られたはずの鬼は死んでいない。

 

むしろ、列車全体を己の肉体へと変貌させることで、その生命力をさらに増大させていた。

 

ガタン、ガタン、ガタン――!!

 

走行する車体が大きく揺れる。

 

車両の壁が生き物のように波打ち、天井から巨大な肉塊が膨れ上がる。

 

ドクン。

 

ドクン。

 

まるで巨大な心臓が列車全体に埋め込まれたかのような脈動。

 

そして――。

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

車内の至るところから、血管のような触手が一斉に伸びた。

 

眠り続ける乗客たちへ向かって。

 

「ヒヒヒヒッ! 見えるかい!? この列車にいる人間は、もう全員僕の肉体の中だ!」

 

魘夢の声が車内全体から響き渡る。

 

「柱が何人いようと関係ない! この二百人を守りながら僕を倒すなんて不可能だ!」

 

炭治郎は目を見開いた。

 

「二百人……!」

 

眠っている乗客は、まだ誰一人として目を覚ましていない。

 

このままでは、全員が魘夢の肉塊に呑み込まれてしまう。

 

「くそっ……!」

 

炭治郎が刀を握り直す。

 

しかし、目の前だけではない。

 

右からも、左からも、天井からも、床下からも肉塊が迫ってくる。

 

一人では到底対処できない。

 

その瞬間だった。

 

「――だったら、全部まとめて相手してやるよ!」

 

ドォォンッ!!

 

前方車両の扉が爆発するように吹き飛んだ。

 

猛烈な雷光が車内を駆け抜け、迫っていた肉塊を一瞬で切断する。

 

「ギャアアアアッ!!」

 

肉塊が焼け焦げ、紫煙となって消えていく。

 

その煙の向こうから、黒地に金の雷模様を刻んだ羽織を翻し、一人の男が歩いてきた。

 

鳴柱・獪岳。

 

その顔には、いつもの不機嫌さを通り越した殺気が浮かんでいる。

 

「炭治郎!」

 

「獪岳さん!」

 

「ぼさっとしてんじゃねえ!」

 

獪岳が刀を振り抜く。

 

バチィッ!!

 

青白い雷光が車内を横断し、迫っていた触手をまとめて吹き飛ばした。

 

「お前は機関車を目指せ! あそこがこの鬼の本体だ!」

 

「でも、乗客が!」

 

「乗客は俺たちが守る!」

 

獪岳が怒鳴る。

 

「杏寿郎! 善逸! 伊之助! 聞こえてんなら起きろ!」

 

その声に応えるように、別の車両から炎が噴き上がった。

 

「応!!」

 

炎柱・煉獄杏寿郎が立ち上がる。

 

眠りから完全に覚醒した善逸も、ふらつきながら日輪刀を握り直した。

 

「獪岳……! 俺もやる……!」

 

「寝ぼけたツラしてんじゃねえ! お前は後方車両を守れ!」

 

「は、はいぃぃ!」

 

そして反対側からは伊之助が飛び出してくる。

 

「俺様に任せろォォ!! この列車鬼、全部切り刻んでやるぜ!!」

 

「上等だ!」

 

獪岳が笑う。

 

「俺たちがここで食い止める。炭治郎、お前は前へ進め!」

 

「……はい!」

 

その時だった。

 

ガタッ。

 

炭治郎の背中の木箱が揺れた。

 

「禰豆子……?」

 

箱の蓋が開く。

 

眠っていた禰豆子が、ゆっくりと姿を現した。

 

しかし、その瞳には明確な怒りが宿っていた。

 

車内に充満する鬼の臭い。

 

苦しみながら眠る人間たち。

 

そして――自分の兄を襲おうとしている魘夢。

 

「禰豆子……!」

 

禰豆子は炭治郎の前へ立つと、唸り声を上げた。

 

「うぅぅ……!」

 

「そうか……一緒に戦ってくれるんだな」

 

炭治郎が微笑む。

 

その直後。

 

ズズズズッ!!

 

魘夢の肉塊が禰豆子へ向かって一斉に襲いかかった。

 

「危ない!」

 

炭治郎が刀を構える。

 

だが――。

 

禰豆子が一歩、前へ出た。

 

そして。

 

自らの腕に爪を立てる。

 

「禰豆子!?」

 

プツリ。

 

赤い血が流れ落ちた。

 

その血が、床を這う魘夢の肉塊へ触れる。

 

次の瞬間――。

 

ボッ!!

 

血が燃えた。

 

ただの炎ではない。

 

鮮やかな桃色を帯びた、不思議な炎。

 

「な……!?」

 

魘夢の声が震えた。

 

「なんだ……その炎は……!?」

 

炎が肉塊を包み込む。

 

ボォォォォッ!!

 

「ギャアアアアアアッ!!」

 

魘夢の肉体だけが激しく燃え上がる。

 

ところが――。

 

眠っている乗客たちには一切の炎が移らない。

 

「僕の肉体だけを焼いている……だと!?」

 

炭治郎も目を見開く。

 

「鬼の細胞だけを……!」

 

禰豆子は鋭い目で魘夢を睨みつける。

 

「うううううう……!」

 

そして、小さな手を前へ突き出した。

 

「血鬼術――」

 

桃色の炎がさらに膨れ上がる。

 

「爆血!!」

 

チュドォォォォン!!

 

大爆発。

 

しかし炎は乗客を避けるように走り、魘夢の肉塊だけを次々と焼き払っていく。

 

「ギャアアアアアッ!!」

 

車内を埋め尽くしていた触手が、灰となって消滅していく。

 

「す、すごい……!」

 

炭治郎が息を呑む。

 

「禰豆子……!」

 

禰豆子は振り返る。

 

その表情には、どこか誇らしげな色があった。

 

獪岳もまた、その光景を見つめていた。

 

「……なるほどな」

 

口元がわずかに吊り上がる。

 

「妹鬼の血鬼術か。便利なもん持ってやがる」

 

そして、禰豆子の頭を軽く撫でる。

 

「上出来だ」

 

「……!」

 

禰豆子が目を丸くする。

 

獪岳はすぐに視線を前へ戻した。

 

「だが、まだ終わっちゃいねえ」

 

前方を見る。

 

そこには、無限列車の機関車を覆い尽くす巨大な肉塊。

 

まるで巨大な鬼の頭部そのものだった。

 

「炭治郎」

 

獪岳の声が低くなる。

 

「禰豆子が作った道を無駄にするな」

 

「……はい!」

 

炭治郎は強く頷いた。

 

「行ってこい!」

 

「はいっ!!」

 

炭治郎と禰豆子が前方へ駆け出す。

 

その背後では、獪岳、煉獄、善逸、伊之助たちが乗客を守りながら肉塊を斬り払い続けていた。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

煉獄の炎が車内を駆ける。

 

「雷の呼吸――霹靂一閃!」

 

善逸の雷光が触手を斬り飛ばす。

 

「獣の呼吸――切細裂き!!」

 

伊之助の二刀が肉塊を細切れにする。

 

そして、その中心で獪岳が刀を構える。

 

「俺たちの後輩に、指一本触れさせるんじゃねえぞ……!」

 

バチバチバチッ!!

 

鳴柱の全身から、凄まじい雷気が迸った。

 

「来やがれ、魘夢!」

 

「お前の悪夢ごと――」

 

獪岳の瞳が鋭く光る。

 

「俺たちが叩き潰してやる!!」

 

無限列車を舞台とした決戦は、さらに激しさを増していく。

 

桃色の爆血が道を切り拓き、炭治郎と禰豆子は魘夢の本体へ。

 

そして後方では、炎と雷と獣が乗客たちの命を守る。

 

鬼の悪夢を終わらせるための最後の一手が、今まさに動き始めていた。

 

 

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