『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第七話 雷鳴、夢を貫く

「うああああッ!! 邪魔だ、邪魔だぁぁッ!! 僕の邪魔をするなァァァッ!!」

 

無限列車そのものと融合した魘夢の絶叫が、八両編成の車内を震わせた。

 

床が脈打つ。

 

天井が裂ける。

 

壁という壁から、血管のような肉の管が伸び、無数の触手が乗客たちへと襲いかかっていく。

 

眠り続ける乗客たちは、その異変に気づくことすらできない。

 

「ヒヒヒッ! もう逃げられないぞ! この列車は僕の身体そのものだ! どこを斬っても、どれだけ燃やしても、僕は死なない!」

 

「だったら、全部斬り尽くすまでだ!」

 

炭治郎が叫ぶ。

 

しかし、その前に立ちはだかる肉壁はあまりにも巨大だった。

 

その瞬間――。

 

バリバリバリバリッ!!

 

凄まじい雷鳴が車内を駆け抜けた。

 

「雷の呼吸――壱ノ型・霹靂一閃!!」

 

ドォンッ!!

 

青白い閃光が一直線に車内を突き抜ける。

 

肉壁が次々と裂け、触手が宙を舞った。

 

そして、煙の向こうから一人の少年が姿を現す。

 

「禰豆子ちゃんは……俺が守る……!」

 

我妻善逸だった。

 

普段の怯えた姿はどこにもない。

 

眠ったままの善逸は、まるで雷そのもの。

 

「霹靂一閃――六連!!」

 

バリバリバリバリバリッ!!

 

一瞬。

 

六つの雷光が車内を駆け巡り、乗客を捕らえていた触手を次々と切断していく。

 

「うむ! 見事だ、我妻少年!」

 

その背後から、炎の羽織を翻して煉獄杏寿郎が現れた。

 

「後方五両は俺と我妻少年で守る! 前方二両は嘴平少年と禰豆子少女! そして最前線は鳴柱と竈門少年に任せる!」

 

「任せろォォ!!」

 

どこからともなく伊之助の雄叫びが響く。

 

「猪突猛進だァァァ!!」

 

「ふぎゃあああっ!? 伊之助! 勝手に走るなぁぁ!!」

 

善逸の叫び声まで響き渡る。

 

それでも、三人の動きは確実に乗客たちを守っていた。

 

後方では煉獄が炎の刃で触手を焼き払い、善逸が超高速の斬撃で肉壁を切り裂く。

 

中ほどでは伊之助が二刀を振り回し、禰豆子の爆血が桃色の炎となって魘夢の肉体を焼き尽くしていく。

 

そして――最前線。

 

炭治郎と獪岳は、機関車へと続く肉の道を駆け抜けていた。

 

「炭治郎! 前だ!」

 

「はい!」

 

巨大な目玉が二人を見下ろした。

 

次の瞬間。

 

「眠れぇぇぇぇッ!!」

 

無数の眼球が一斉に開く。

 

「血鬼術・強制昏倒睡眠ノ眼!!」

 

「くっ……!」

 

炭治郎の視界が歪んだ。

 

眠気が一気に押し寄せる。

 

(まただ……! 眠らされたら、夢に――)

 

だが。

 

その前に獪岳が一歩踏み出した。

 

「……くだらねえ」

 

「獪岳さん?」

 

獪岳は――ゆっくりと両目を閉じた。

 

「目を開けてるから術にかかるんだろうが」

 

刀を抜く。

 

刀身から青白い雷が噴き上がる。

 

「だったら――目ぇ閉じてぶっ叩けばいいだけだろうが!!」

 

「な……!?」

 

魘夢の顔から笑みが消えた。

 

「目を閉じたまま、僕の位置が分かるはずがない!」

 

「分かるさ」

 

獪岳の耳が僅かに動く。

 

風の流れ。

 

肉塊が蠢く音。

 

糸の擦れる音。

 

そして、雷気によって伝わってくる微細な空気の振動。

 

すべてを感じ取る。

 

かつて生き残るために泥をすすり、幾度となく死線を潜り抜けてきた男の感覚が、研ぎ澄まされていく。

 

「俺はな……目だけで戦ってきたんじゃねえんだよ」

 

獪岳の足元が爆ぜた。

 

「雷の呼吸――参ノ型!」

 

刀身に雷が集束する。

 

「蚊竜!!」

 

ドドドドドドォンッ!!

 

獪岳の身体が高速回転する。

 

その瞬間、周囲へ放たれた雷気を纏った斬撃が、竜巻のように機関室を駆け巡った。

 

肉壁。

 

触手。

 

眼球。

 

そのすべてが、次々と切断されていく。

 

「な、なんだこれはァァァッ!?」

 

魘夢が絶叫する。

 

「見えていないはずだ! どうして僕の肉体を正確に――!」

 

「簡単な話だ」

 

獪岳が刀を止めた。

 

ゆっくりと目を開く。

 

「俺の雷は、目で見るためだけのもんじゃねえ」

 

青白い雷光が獪岳の刀身を走った。

 

「空気も、大地も、鬼の肉体も――全部まとめて感じ取るんだよ」

 

「そんな……!」

 

魘夢が後退する。

 

その瞬間だった。

 

「獪岳さん!」

 

炭治郎が叫ぶ。

 

獪岳の視線が床へ落ちた。

 

肉の床。

 

そのさらに奥。

 

何かが蠢いている。

 

「……見つけた」

 

「え?」

 

獪岳が刀の切っ先を床へ向ける。

 

「炭治郎。そこだ」

 

「そこって……?」

 

「肉の床の下だ。あの奥に、こいつの本体がある」

 

炭治郎は息を呑んだ。

 

「まさか……!」

 

「そういうことだ」

 

獪岳が口元を吊り上げる。

 

「この列車を丸ごと斬る必要なんざねえ。鬼の首がどこに隠れてようが――」

 

雷鳴が轟く。

 

「首がある場所まで、道をぶち抜きゃいいんだよ!!」

 

「はいっ!!」

 

炭治郎が刀を握り直す。

 

その瞳に、もう迷いはなかった。

 

一方、魘夢は必死に肉壁を盛り上げる。

 

「させるかぁぁぁッ!! 僕は死なない! この列車そのものが僕なんだ! 僕は――」

 

「うるせえ」

 

獪岳が踏み込む。

 

「寝台を悪夢に変えたクソ鬼が」

 

バリッ!!

 

雷光が爆ぜる。

 

「俺の後輩たちと、何百人もの乗客を巻き込んだんだ」

 

さらに一歩。

 

「なら――泥をすすってでも、地獄まで引きずり落としてやるよ」

 

「炭治郎!」

 

「はい!」

 

二人が同時に走り出した。

 

獪岳の雷が肉壁を切り開き、その後ろを炭治郎が駆け抜ける。

 

そしてついに――。

 

肉の奥深くに埋め込まれた、巨大な眼球と血管に覆われた「本体」が姿を現した。

 

「これが……!」

 

炭治郎が息を呑む。

 

魘夢の本当の急所。

 

無限列車という巨大な悪夢の心臓部だった。

 

「斬れ、炭治郎!!」

 

「はいっ!!」

 

雷鳴が夜を裂く。

 

少年の刃が、その急所へ向かって振り下ろされた。

 

無限列車を支配していた悪夢は、いよいよ終焉へと向かい始めていた。

 

 

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