『霹靂、そして慈雨。転生獪岳の鬼殺隊無双ルート』   作:夜幻

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第十五話 炎と蟲と雷

「杏寿郎! しのぶ! 今だ、ぶち込めぇぇッ!!」

 

獪岳の咆哮が、夜の荒野を震わせた。

 

『雷の呼吸 伍ノ型・熱界雷』によって、猗窩座の右半身は大きく吹き飛んでいる。

 

焼け爛れた肉が紫煙を上げ、肩から胸にかけての筋肉は炭化していた。

 

何よりも異常だったのは、上弦の参の再生が明らかに遅れていることだった。

 

猗窩座の足元に展開されていた雪の結晶のような『羅針』にも、無数の亀裂が走っている。

 

「……馬鹿な……」

 

猗窩座は、自分の右腕を見下ろした。

 

鬼となって百年以上。

 

幾度となく死線を潜り抜け、数え切れないほどの剣士を葬ってきた。

 

その自分が――人間三人によって、明確に追い詰められている。

 

「俺の『羅針』が……乱されている……?」

 

猗窩座が顔を上げた。

 

その瞬間。

 

「うむ!」

 

轟ッ!!

 

灼熱の炎が、夜の闇を真っ二つに割った。

 

「見事なり、獪岳!! 最高の隙だ!!」

 

炎柱・煉獄杏寿郎。

 

彼は一切の迷いなく、猗窩座の懐へと踏み込んでいた。

 

黄金と赤の羽織が大きく翻り、日輪刀が炎を纏って唸りを上げる。

 

「炎の呼吸――参ノ型!」

 

大地を蹴る。

 

一歩。

 

たった一歩で間合いを消し去る。

 

「気炎万象!!」

 

ゴォォォォォッ!!

 

灼熱の炎刃が大きな円弧を描いた。

 

猗窩座が咄嗟に左腕を掲げる。

 

しかし――。

 

「遅い!」

 

ザンッ!!

 

炎の斬撃が左腕を深々と斬り裂き、そのまま肩口まで叩き切った。

 

「ぐっ……!」

 

猗窩座の表情が歪む。

 

斬られた肉は瞬時に再生しようと蠢く。

 

だが、煉獄の炎がそれを許さない。

 

傷口が赤熱し、再生する細胞そのものを焼き尽くしていく。

 

「この熱量……!」

 

猗窩座が驚愕に目を見開いた。

 

その視界の端を、白い蝶が横切った。

 

「ふふっ」

 

鈴を転がすような声。

 

「隙だらけですよ、上弦の鬼さん」

 

シュッ――!!

 

音すら置き去りにする一閃。

 

蟲柱・胡蝶しのぶが、猗窩座の死角へと滑り込んでいた。

 

細身の日輪刀が閃く。

 

「蜂牙ノ舞・真靡き」

 

シュバババババッ!!

 

一突き。

 

二突き。

 

三突き。

 

目で追うことすら困難な神速の連続突刺。

 

頸筋。

 

胸部。

 

腹部。

 

肩。

 

そして両脚。

 

ありとあらゆる部位へ、藤の花の毒が叩き込まれていく。

 

「ぐっ……!?」

 

猗窩座が後退しようとする。

 

しかし、足が動かない。

 

「毒……だと……!?」

 

「ええ」

 

しのぶは微笑んだ。

 

その笑顔とは裏腹に、瞳には一切の温度がない。

 

「鬼を殺すために、私たち人間が何年も積み重ねてきたものです」

 

「こんな……毒ごときで……!」

 

猗窩座は全身の血を激しく循環させ、毒を排出しようとする。

 

だが、その瞬間。

 

「まだ終わってねえぞ」

 

低い声が響いた。

 

猗窩座が振り向く。

 

そこには、雷気を全身に纏った獪岳が立っていた。

 

黒地に金の雷模様を刻んだ羽織が、吹き荒れる雷風によって激しく翻っている。

 

「炎で焼かれ、毒で鈍らされ――最後は雷で叩き潰す」

 

獪岳が刀を構える。

 

「三人揃ってんだ。テメェ一人に逃げ道なんざ残すわけねえだろうが」

 

「……面白い」

 

猗窩座の口元が、ゆっくりと吊り上がった。

 

「素晴らしい……!」

 

傷だらけの顔に浮かぶのは、恐怖ではなかった。

 

歓喜。

 

「炎柱……雷柱……蟲柱……!」

 

「これほどの強者が三人!」

 

猗窩座の瞳が狂喜に染まる。

 

「俺は今、最高の瞬間を迎えている!!」

 

ドンッ!!

 

次の瞬間。

 

猗窩座の全身から、凄まじい鬼気が噴き出した。

 

地面が砕ける。

 

荒野の石が宙へ浮き、衝撃波によって周囲の木々が一斉になぎ倒されていく。

 

「なっ……!」

 

炭治郎が思わず腕で顔を覆った。

 

これまでとは、明らかに違う。

 

猗窩座は両腕を広げ、傷ついた肉体を強引に再生させながら叫ぶ。

 

「舐めるなよ……人間どもがぁぁぁッ!!」

 

ズズズズズ……!!

 

鬼の肉体が膨張する。

 

筋肉が盛り上がり、血管が浮き上がる。

 

そして足元の『羅針』が、これまで以上に強烈な光を放ち始めた。

 

「俺は上弦の参だ!!」

 

ゴォォォォッ!!

 

「百年以上、強者を喰らい続けてきた鬼だ!!」

 

猗窩座の殺気が爆発する。

 

煉獄が刀を握り直す。

 

しのぶが身を低くする。

 

獪岳が雷気をさらに高める。

 

三人の柱を前にしても、猗窩座は退かなかった。

 

むしろ――。

 

「さあ、もっと見せろ!!」

 

その顔には、獣のような笑みが浮かんでいた。

 

「お前たち人間が、どこまで俺を楽しませられるのかをな!!」

 

炎。

 

蟲。

 

雷。

 

三つの異なる力が交差する戦場で、上弦の参・猗窩座はついに本気を出し始めた。

 

そして炭治郎は悟る。

 

これはもう、先ほどまでの戦いとは違う。

 

これから始まるのは――。

 

柱三人と上弦の鬼による、文字通りの死闘だった。

 

 

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